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阿部サダヲ、変幻自在の俳優は天職 映画「彼女がその名を知らない鳥たち」(カナロコ by 神奈川新聞)
123分の映画を見終えたとき、「誰も救われなかった。誰も幸せにならなかった」と胸がズーンと重くなった。浮かんだ言葉は「生きづらさ」。主演する阿部サダヲ(47)に伝えると、「僕も脚本を読んだとき、そう感じました。そんなふうに感じる作品も少ないので、見た人にそう感じてもらえる映画にしようと思って…」と汚れ役に徹した新作について口を開いた。
イヤミス(読了後に嫌な後味が残るミステリー作品)の女王・沼田まほかるの同名小説が原作の映画「彼女がその名を知らない鳥たち」(28日公開)に登場するのは不潔な男・佐野陣治(阿部)、自分勝手な女・北原十和子(蒼井優)、性欲が抑えきれない不倫男(松坂桃李)、保身のために女を道具にする男(竹野内豊)と半端者ばかり。「共感度0%、不快度100%」とPRされ、ダブル主演の蒼井も「演じるほどに最低で、クズ合戦だった」と苦笑いするほどだ。
ボサボサの髪に汚れた爪、泥だらけの作業着姿の陣治は、大けがを負った十和子を目にした瞬間、恋に落ちる。一線を越えず、無償の愛を注ぐが、十和子はつれない。
十和子が元彼に似た男(松坂)との情事にのめり込むようになると、「だまされているだけ」と監視するなど異常行動に出る。それぞれが自分を殺し、窮屈に生きている。
「オレが目を覚まさせてやる」。複雑に絡んだ関係を清算しようと決めた陣治は、「オレを産んでくれ」と十和子に懇願する。阿部は「そんなセリフ思いつかない。『腹の中に何か入ったら、オレだと思ってくれ』と言える陣治はすごい。愛しているよりも深い言葉。本当に穏やかに笑い合える相手はお互いしかいなかったのかも」と、切ない恋を振り返った。
デビュー25年目を迎えたことしは、大河ドラマで徳川家康を務め、ロックバンド「グループ魂」のボーカルとして音楽フェスに出演。主演舞台「髑髏(どくろ)城の七人~鳥」では大立ち回りも披露する多才ぶりだ。グリッと大きな瞳の“猫顔”は親しみやすく、即席麺、掃除用具、アルコール飲料などCMにも引っ張りだこだ。社交的な人と思いきや、他者と接点を持たなくてよさそうという理由でトラックの運転手をしていた過去がある、とはにかんだ。
「子どものころから変身願望が強くて、いつも何かになりたかった。戦国武将、マイホームパパ、悪役。何にでもなれる俳優は天職」と言い切る。「『阿部サダヲってどんな人?』。インターネットで調べれば、いくらでも情報が出てくると思うけれど、そのイメージを常にかわしていきたい」。変幻自在のカメレオン俳優は、いたずらっぽく笑った。
提供元:Yahooニュース