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ジョニー・デップはなぜ死なない(IGN JAPAN)


「オリエント急行殺人事件」を見た。今年日本で公開されるジョニー・デップ主演映画の最後の作品だ。と言うとデップが亡くなったかのように聞こえるがそうではない。ちゃんと健在だ。なのにちょっとジョニー・デップのお葬式を目撃しているようでもある。それも無理もない。なぜなら「オリエント急行」でのデップの役どころはストーリーが始まって30分足らずで殺されてしまう”被害者“なのだ。見せ所もセリフもオーラも少なく、ついでに言うなら死体としてのグロさも全くない。豪奢なセットの中で一人ミニマリズムを追求しているのか。あのゴージャスすぎる男ジョニー・デップ様とも思えない、何やら荒涼とした寂寥感すら漂っている。

「オリエント急行殺人事件」画像・動画ギャラリー



あのゴージャスすぎる男ジョニー・デップ様とも思えない、寂寥感

デップの役どころは“自称”骨董商のエドワード・ラチェット。時は1937年、大金持ちしか乗車できないヨーロッパきっての豪華列車、オリエント急行に乗り込む客の一人だ。ラチェットは怪しさと感じの悪さが鼻に付く、腹に十物くらいあるアブナイオヤジという風体。自分の富をちらつかせながらも何かに怯えている、ナーバスな様子。同じ列車に有名な探偵が乗っていることを知ると早速近づいてボディガードを頼むラチェット。その数分のやりとりがデップ様の殆ど唯一の見せ場なのだ。

「大金を出すよ」、とラチェットが依頼する。

「断る」、と探偵が答える。「あんたの顔は虫が好かない。」

この身もふたもない会話のわずか数時間後にラチェットは殺され、翌朝死体で発見されるという展開だ。ジョニー・デップというスーパー大物俳優にとってこの出番はあまりに物足りないのではなかろうか? 次にデップを目にするのは仰臥する死体となった彼を、天井から見下ろす形のカットだ。十箇所以上、鋭利な刃物でメッタ刺しにされているという設定だがその残忍さが全く伝わってこない、お行儀の良い犯行現場。全体的に「オリエント急行殺人事件」は品良く抑制が効いており、なぜここでデップを起用したのか、いまいちわからない作品だ。




2017年に公開されたデップ映画はあと二つ。「パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊」と、娘のリリー・ローズと共演した「コンビニ・ウォーズ~バイトJK VS ミニナチ軍団~」。どちらも主演というよりは助っ人的な存在で、見せ場は若手俳優陣に譲っている。5月には福山雅治と共演したアサヒスーパードライのCMが話題を呼んだが、業界関係者の間ではジョニー・デップは最早ピンで集客できないと囁かれている。30年以上もハリウッドで主役をはってきたデップもついにスポットライトから外れる時がきたのかもしれない。

しかしデップは足掻いている。

しかしデップは足掻いている。長年の看板商品である「パイレーツ」でも今年はCGでお顔にお直しを入れて若き日のジャック・スパロウを披露し、「俺もまだまだ!」感を前面に押し出している。主役でなくても、セリフが少なくても、CG合成でも、とにかく仕事し続ける頑固な覚悟が見てとれる。理由はどうやら彼の経済状況にあるようだ。彼の経理を担当している会社から破産宣告をされ、怒ったデップがその会社を告訴したことはアメリカのゴシップ紙を賑わせた。その真偽はともかく、お金に困っていることは確かなようだ。前妻のアンバー・ハードと電撃結婚の後、突然の離婚宣言。それもハードがデップを、暴力を理由に告訴した模様。その裁判で多額の借金を作ってしまい、支払いが大変だという報道もあった。




そもそもデップの金遣いの荒さは有名だ。一カ月で300万円もワインに使ったり、ハードとの結婚式に何1000万もの大金を投じたり。フランス人女優ヴァネッサ・パラディとの間の2人の子供を溺愛するあまり、カリブ海の島を2つ買い取り、それぞれの子の名前をつけたという逸話も。極めつけは2005年、親友であったアメリカの名物ジャーナリスト、ハンター・トンプソンの葬儀を一手に引き受け、トンプソンの遺灰をなんと大砲からぶっ放したのだ。こちらの請求書は300万ドル。円に換算すると、えーと、もう書きたくもない数字だ。そんなこんなで彼の家計はずっと火の車なのだ。リリー・ローズをさっさとデビューさせ、元パートナーのパラディとの共演も厭わず、なりふり構わず働らき続けるハリウッドの大物俳優。ギャラは全盛期の5分の1にまで落ち込んだという噂もある。そして去年、アメリカの経済誌「フォーブス」はデップに「最も採算のとれない俳優」という残念なレッテルを貼り付けた。

しかしジョニー・デップはまだ闘う気だ。最終ラウンドのゴングが鳴るまでは、絶対にリングを降りない決意が見てとれる。フラフラとパンチを受けるだけに見えて実はじっくりと次の作戦を練っているのかもしれない。低迷するハリウッド映画界をここまで牽引してきたジョニー・デップ。そのカリスマの炎はまだ彼の中でくすぶっている。いつかそれがまたメラメラと燃えあがる作品が登場することを、とりあえず信じて待つことにしよう。そう言えば「ジョニーへの伝言」なんて歌、大昔にあったなあ。

提供元:Yahooニュース
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