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ホラー漫画黒塗り騒動から考える、放送禁止曲に見る文化的価値観とは(MusicVoice)
<記者コラム:オトゴト>
一部シーンが黒塗りで20日に発売される予定だった、ホラー漫画『殺戮モルフ』(秋田書店)の第2巻が発売中止となったことが大きな波紋を呼んでいる。
原作者の外薗昌也(ほかぞの・まさや)氏は、出版社側が無断でこの状態で発売しようとしていたとして、見本の当該箇所を自身のTwittter上で公開し「このままでは発禁になると判断しての処置みたいです」とツイート。ネット上で「検閲かな?」などの声が上がり、大きな話題となった。出版社側は、外薗氏と協議の結果「このまま状態なら発売して欲しくない」という意向を受け、この形では発売しないことを決めた。
暴力などを含む描写が教育上好ましくないとして、18歳未満や15歳未満が閲覧できないR-18指定や、R-15指定で鑑賞者を制限するなどの方法でグロテスクな映像作品はこれまでその市場を確保してきた。
過激な表現は映像に限ったことではない。その歌詞の過激さや社会的情勢などで、放送禁止や発売禁止された楽曲も多数存在する。
70年代に活動していた、英ロックバンドのセックス・ピストルズの「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」は英国歌と同名異曲だが、ジャケットや歌詞が女王批判と受け止められ、ジャケットの一部が黒塗りにされたり、当時のBBCなどの放送局では日中は放送禁止の措置が取られた。
ザ・ビートルズが1967年に発売したアルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』収録曲の「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」は、歌詞の中に麻薬を連想させる部分“I'd love to turn you on”「君に刺激を与えたい」や“4000holes”「4000の穴(ヘロイン注射痕を連想させる)」などがあるため、BBCでは放送禁止となった。
昨年亡くなった、米シンガーソングライターのプリンスさんが1980年に発売した『ダーティー・マインド』の収録曲「ヘッド」、「シスター」の詞は性的表現が露骨過ぎると放送禁止になった。
もちろん、日本でも同様の曲があり、テレビやラジオで放送の際には自主規制などで、問題とされる歌詞を差し替えて放送することがある。
これらの楽曲は放送では聴けないものだが、オリジナルとして音源購入者は聴くことができるのが通例だ。『殺戮モルフ』の一件のように、自主規制をおこなうことが当たり前となってしまうと、ただ耳障りの良い言葉だけが並べられた歌詞だけが横行するだろう。そこに人々の悲しみや怒りを込めることはとても困難であろうし、その負の感情はいつか、違った形で吹き出してしまうことになるのではないか。
表現者が納得のいく作品をつくり、それが市場で社会的な価値観や倫理観といったものではなく、感情的に人を揺さぶり論理的に表現できない、まさに芸術、文化として正しく評価されて売買される、そういった価値観を今一度根本から考える必要があるのではないだろうか。【松尾模糊】
提供元:Yahooニュース