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おいしいパンを食べながら映画も楽しめる貸本屋 全国から注目のユニーク空間(産経新聞)
冬でも柔らかな湘南の陽光が、ショーウインドーから優しく注ぎ込んでいた。小田急電鉄江ノ島線の鵠沼(くげぬま)海岸駅から続く細い商店街の一角に、写真館だった建物をそのまま生かす形で、映画と本とパンの店「シネコヤ」はたたずんでいる。
■どこに座っても「また来たい」
同じ神奈川県藤沢市内から自転車で20分ほどかけて来ていた中国語講師の平藤香織さん(42)は、今年4月のオープン以来、映画のプログラムが代わるたびに足を運んでいる。
「映画のセレクションもいいし、そろっている本もセンスがあるんですよね。子育てをしていると、毎日同じ生活になってしまいますが、映画に触れることで2時間でも3時間でも違う人生を生きられる。いろんな意味で豊かさを感じられるし、本当にここができてよかったです。海と太陽だけではない、鵠沼の誇りですね」と笑顔で語る。
シネコヤは映画館ではない。木製の扉を開けて中に入ると、入り口近くにはテケツ(切符売り場)ではなくショーケースが置かれ、焼きたてのおいしそうなパンが並ぶ。このパンを買ってコーヒーなどと一緒にテーブル席で食べることもできるし、ちょっとおしゃれな喫茶店といった風情だ。
奥の廊下の先には、アンティークな家具が配されたこぢんまりとした部屋があり、壁の書棚にはさまざまな本が彩る。さらに木の階段を上ると、2階にも書棚に囲まれたシックな部屋があり、ここで1日に5回ほど映画が上映される。
座席数は、やはりアンティーク調の椅子など、予備を入れても18席しかない。「最初は25席作ったのですが、ゆったりした席と狭い席の差が激しく、狭いところに座ると、また来たいとは思わないなと思って。どこに座ってもまた来たいと思わせる空間の取り方をすると、ここまで絞るしかなかったんです」と、代表を務める竹中翔子さん(33)は説明する。
竹中さんがシネコヤを作ろうと思ったのは、藤沢市内から老舗の映画館が消えてしまったことがきっかけだった。幼いころから藤沢で育った竹中さんは、映画作りを勉強したいと東京工芸大学映像学科に進学するが、たくさん映画を見るうちに「自分が作らなくてもいい映画がいっぱいある」と見せる側に興味を持つ。学生時代には地元の「フジサワ中央」でアルバイトをし、もう1軒の「藤沢オデヲン座」にも足しげく通っていた。
だが2007年に、アート系の作品も上映していたオデヲン座が閉館。2010年には最後のとりで、フジサワ中央も幕を閉じ、藤沢市内に映画館が1館もなくなってしまった。その後、11年にJR辻堂駅前にシネコンの109シネマズ湘南ができたものの、もっと小さな規模で、映画だけの目的だけではない、いろんな人が楽しめる空間を作りたい、という夢を持つようになった。
■ショーウインドーのある貸本屋
「東京都内でも渋谷などだんだんとミニシアターがなくなっていたので、今までのように大きいホールで映画館を維持していくというのは無理なんだなと思った」と竹中さん。
最初はボランティアで手伝っていたNPO(民間非営利団体)の物置みたいなところで月に2回ほど、知り合いを中心に古い映画を見ることから始めたが、ちゃんとお店を開くところまでつなげたいと、自主上映会を主宰するようになる。鵠沼海岸にあるレンタルスペースを借りて、徐々に回数を増やしながら、映画関係者や常連客らにいつかは常設館を持ちたいと、夢を語り続けた。こうして4年の助走期間を経て、2017年4月8日、ついにシネコヤをオープンする。
「ショーウインドーのあるお店がいいなと思って、古い写真館や美容院はチェックしていたが、ここは家賃が高くて無理だなと諦めていたんです。でもたまたま不動産会社の担当者が映画好きで、こういうことをやりたいと話したら乗ってくれた。大家さんも共感してくださって、何とか借りられました」と喜ぶ。
本は絶対に並べたいと思い、調べるうちに貸本屋という言葉を見つけた。
「貸本屋っていいかも」と思った。
映画館ではないから入場料は取れない。その代わりに「貸本料」として、一般1500円で一日中、本は読み放題、映画も出入り自由、というシステムにした。誤算は、貸本屋と言いながら店外に本を持ち出せないことだった。著作権の関係で貸し出しは難しいことが分かった。現在は店内で読むだけで、「せめて年間パスポートの人だけでも借り出せたら」と残念がる。
■涙、涙で出てくる共感性
その年間パスポートも、痛しかゆしといったところだろう。貸本料1万円で1年間出入り自由というきわめてお得な制度で、すでに地元の人を中心に約500人が購入しているが、ここに来て伸び悩んでいる。
「もうある程度、この地域に住んでいて、ここに来たいと思っている人は来ていると思う。今後はどうやって都内などに広げていくか。映画を見るなら、普通の映画館じゃなくてここで見たい、と思ってもらえるようにしていきたいと思うので、そのためには何が必要なのか、ということを今、すごく考えています」
約3千冊の蔵書は、ほとんどが寄贈によるものだ。またもう一つの売りであるパンも、竹中さんが以前から気に入っていた自家製天然酵母で焼いているパン職人に声をかけ、シネコヤで焼いている。
「その世界観はとても楽しいのに、食べ物は全然おいしくないな、という気持ちになるのが嫌なんです。パンは音も出ないし、映画との組み合わせはいいんですよ」
このユニークな空間は全国で注目を集め、問い合わせの電話やメールが相次いでいるという。先日も九州は佐賀県から、まちづくりに生かしたいと行政関連の担当者が視察に訪れた。
「各地にその街なりの違ったスタイルでシネコヤができたらいいですね」と話す竹中さんは、何といってもその中心に映画があるからこそだと強調する。
「ここは映画館ではないけれど、映画館って、街の人たちが集う公共性のある場所だなということを改めて感じています。だからこそ地元の人に長く愛されて通ってもらう場所になっていく必要があると思う。お互いに知らない人たちが映画を見た後、みんな涙、涙で出てきて、言葉を交わしてはいないけど、そこには共感性がある。その空気感がすごく好きで、そういうものを作りたいなという思いはありますね」(文化部 藤井克郎)
シネコヤ 2017年4月8日開店。オープニング作品は「シーモアさんと、大人のための人生入門」と「パーソナル・ソング」の2本立てだった。1日出入り自由で、貸本料は一般1500円、小中学生1000円。営業時間は午前9時~午後7時(ラストオーダー)。水曜定休。
今後は12月23~29日に、6月に上映して満席が続いた「人生フルーツ」をアンコール上映する。年末年始の休みの後、1月7~20日は「わたしは、ダニエル・ブレイク」「パレードへようこそ」、21日~2月3日は「ラ・ラ・ランド」「ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣」の予定。神奈川県藤沢市鵠沼海岸3の4の6。(電)0466・33・5393。
提供元:Yahooニュース