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『ひよっこ』遂に最終週!「何者にもならなかった」愛すべきヒロインが教えてくれたこと(rockinon.com)


女優の有村架純がヒロインを務めるNHK連続テレビ小説『ひよっこ』がいよいよ最終週、残り数回というところで、登場人物の誰かが毎朝ハッピーになるという幸せのお裾分けが止まらない。1964年という東京オリンピックが開催された年から始まり、茨城から上京するヒロインの青春を描いた同ドラマ。とはいえ主人公の谷田部みね子は何か叶えたい夢を持って上京したわけではなく、「集団就職」というちょっぴり暗い響きをした時代の流れと共に、父親が行方不明になるという込み入った事情があってやってきた。


茨城の奥茨城村を舞台に『ひよっこ』が始まった当初、ちょっとこのドラマは物足りないな、退屈かもしれないなと思った人もいたのではないだろうか(筆者がそうです)。それはきっと谷田部家をはじめとする主要な登場人物たちが、あまりにも善良な人々だったからだ。例えば峯田和伸が演じるみね子の叔父・宗男は戦時中の傷跡が今も背中に残っていたりと、暗い過去を持つ者はいるけれど「だからこそ笑って生きてやるんだ」と逞しかった。時子(佐久間由衣)や三男(泉澤祐希)といったみね子の幼なじみや村の人々も、基本的にみんないい人だらけ。しかし、みね子や同級生らが上京してそれぞれの人生を歩み、色んな出来事に直面する中で、そんな善良な人々の困難を耐え抜く強さや真っ直ぐな心に触れ、何度も驚かされた。そこが『ひよっこ』の面白さであった。


忘れられないのは、みね子と同じアパートで暮らしていた恋人・島谷が親に縁談をすすめられて悩んだ末、みね子に「家族と縁を切ろうと思う」と打ち明けたシーン。彼女は迷わず「私、親不孝な人は嫌いです」と返したことに心を打たれた。家族と縁を切り、大学も辞め、お金がなくなるかもしれないけど一緒に生きていこうという彼に向かって、お金がないということがどういうことか知らないからそんなことを言えるんだと更に言い放った。これぞ、小さい頃から家族と力を合わせて一生懸命に生きてきた、ありのままの谷田部みね子なのだ、と思い知らされた。


しかもこのシーンの直前、時子とこんなやり取りがあった。「生まれ変わったらどんな人になりたい?」と時子が聞くと「お金持ちのお嬢様がいい。親に決められた結婚相手がいて、その人は昔からいいなと思っていた人なの」と、みね子。それは島谷がいずれ結婚するであろう相手に思いを馳せた、いじらしい発言だった。そこで劇団員である時子に「ちょっと演じてみて」と促され「ごきげんよう」とお嬢様を気取ってみせるも、それを見た時子は「ダメだ、茨城の田舎娘だ」とバッサリ。


もうすぐ『ひよっこ』は終わるが、谷田部みね子は何者にもならなかった。東京オリンピック開催後の激動の東京を生き、見た目がちょっぴり垢抜けたりレストランでの仕事ができるようになったりしながらも、その純粋で家族思いで温かな人間味を変わらずに持ち続けた。都会暮らしの中で、「もうトランジスタラジオなんて作りたぐねえ」とか「仕送りなんかしたぐねえ」なんてやさぐれるわけでもなく、恋に落ちて暴走するでもなく、周りの人たちと愛し愛されながら毎日を笑顔で生きたのだ。


単なるシンデレラストーリーではない、観ている者が優しい目線で一喜一憂しながら応援できる、それが『ひよっこ』が描いた新たなヒロイン像。視聴者としても実に名残惜しいがラストに向かって岡田惠和による脚本も役者たちもどんどんテンションが上っているように感じる今作、最後の最後まで見届けたい。(上野三樹)

提供元:Yahooニュース
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