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生きるために政治は必要だが、生き心地を確かめるには文学が役に立つ(松尾潔)(日刊ゲンダイDIGITAL)

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【松尾潔のメロウな木曜日】#22
金融緩和策をとってきた日銀の黒田総裁の任期が4月8日に満了する。翌9日と23日は統一地方選挙。首相は国民負担増を想起させるワードの使用を控えることに余念がない。財務省と政権が防衛費の財源確保のために全面増税の機会を窺っているのは明らかなんだけどね。NGワードの最たるものは「増税」。だが国民の目をそらそうと少子化対策を話しても、同性婚を語っても、舌禍は続くよどこまでも。何かを隠す目的ありきで時間を埋めるためだけに発した言葉には、どう隠しても本音が露見するからだ。げに恐ろしきは言葉かな。
久保田利伸さんとBunkamuraの夜…長年のファンほど真剣に在りし日の幻影を追ってしまう
言葉には、話し言葉と書き言葉がある。前者は概して正確な伝達よりも円滑なコミュニケーションを主目的とする。それゆえ柔らかさを重んじるし、聞き手の警戒心を解くために平易でくだけた表現を優先する場合も多い。もちろんスピードや声のトーンといった要素も無視できない。話し言葉と書き言葉、ふたつの架け橋となるのが朗読。たとえ黙読を前提として書かれた文章であっても、語りのプロが朗読すれば、描かれた情景は見事に立ちあがってくる。
クルマ通勤が主流の米国を筆頭に欧州や中国ではオーディオブック市場が活況を呈している。それほどまでには盛り上がっていない日本でも、聴き放題サービスの広告を目にする機会が増えてきた。日本能率協会総合研究所の予測によれば、2020年には100億円に満たなかった市場規模が24年には260億円に達する見込み。ぼく自身この2年ほど移動時や就寝前によく利用しているので、朗読の効果は日々体感している。
■新宿「風花」朗読会の夜
だから昨年末に3回目の訪問となった新宿のバー「風花」で、同店常連の中森明夫さんと島田雅彦さんから朗読会出演を請われたぼくは、ふたつ返事でお受けしたのだった。出演の条件はただひとつ〈自作を読む〉。語りのプロではなく、書き言葉の主が自ら文章を読みあげたとき、そこに現れる(のか?)情景のかたちに興味があった。
風花朗読会は2000年秋に作家の古井由吉が始めたもの。本人が毎回ホストと前座を務め、一人あるいは二人の作家のゲストが自作を読んで語りあう催しは10年以上も続いたという。日本で新型コロナウイルス感染症が確認された翌月の20年2月、古井さんは82歳で亡くなった。今回の朗読会は、感染状況はある程度落ち着いたという判断のもと、進行を文芸誌『新潮』編集長の矢野優さん、ホストを島田・中森両氏が分担する形で再開した第一回。中森さんの新作小説『TRY48』の出版直後という絶好のタイミングでもあった。
満員御礼のなか、島田さんが登場。やや粘性の高い、だがズドンとした量感もある声で、古井さんの言葉も引用しつつ追悼文を読みあげる。いつも談論風発で騒がしい風花が一瞬にして静謐な図書館に。島田さんからマイクを受けたぼくは、詩人の田村隆一さんとの邂逅を綴ったエッセイ、天童よしみさんに提供した歌詞「帰郷」、そして当コラムから自選2本を朗読。「帰郷」に目を潤ませるお客さんが視界に入って、あやうくもらい泣きしそうになったのは、自作朗読会ならでは、かも。
このあとはいよいよ中森さんです……とぼくが言いかけたところでサプライズ。鈴木涼美さんのご登場。芥川賞候補作『グレイスレス』から、ご実家の様子を仔細に描いた場面を朗読。これはすばらしかった。数日経ったいまでも「脚立」の響きがちくりと痛みを伴って耳に残るほどだ。そして中森さん。新作は、もし生きていたら現在85歳の寺山修司がアイドルグループをプロデュースするという奇想を熱い筆致で描く快著。それをときに寺山を思わせる青森風イントネーション(本人曰く「特訓した」)を交えて読みあげるのだ。ねじれた時空に身を置いたような奇妙な感覚を十分に愉しませてもらったのだった。
生きるためには政治が必要だが、生き心地を確かめるには文学が役に立つ。書き言葉を話す時間を通して、そう確信した風花朗読会の夜だった。
(松尾潔/音楽プロデューサー)
提供元:Yahooニュース

