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10代で何かに猛烈に心を奪われた経験をもつ人へ…中森明夫著「推す力」は上質な成長譚だ(松尾潔)(日刊ゲンダイDIGITAL)

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【松尾潔のメロウな木曜日】#60
ぼくのX(旧ツイッター)で長らく冒頭に固定しているポストが、2022年9月に始まった本連載の初回の写真。そこでぼくはふたりの60代作家に挟まれている。彼らにはいくつかの共通点があるが、なかでも興味深いのは、それぞれ「作家」以外にもたしかな肩書きを持っていることだろう。
【写真】元ジャニーズひかる一平さんが語る 事務所退所後の苦労と性加害問題について思うこと
まずは島田雅彦。大学生時代にデビューした彼は長い執筆キャリアで知られるが、一方で大学教員という顔もある。20年前から法政大学国際文化学部教授を務め、それ以前も近畿大学の教壇に立っていた島田さんは、作家よりも教員として「センセイ」と呼ばれることのほうが圧倒的に多い人生だよと、酒場でにこやかに語ってくれたことがある。
そして中森明夫。「おたく」の名付け親で、80年代は「新人類」のトップランナー。近年は大杉栄や寺山修司といったレジェンドを自作小説の中で次々に蘇生させた奇才だが、もうひとつの顔はきわめて稀有。ずばり、アイドル評論家。それって何よ? と訝しむ人は、今すぐ「アイドル評論家」でググってみればいい。トップ画面から彼の名前と写真で埋めつくされるさまは圧巻のひとこと。
■決意表明と呼びうる一冊
中森さんの新著『推す力』(集英社新書)は、副題に「人生をかけたアイドル論」とある通り、決意表明と呼びうる一冊だ。著者が11歳だった71年に16歳でデビューした南沙織を起点とする極私的アイドル論。2019年発表の小説『青い秋』も自伝的性格が強かったが、今回は新書とあって、固有名詞を駆使した体験談がふんだんに綴られる。平易な語り口からは著者の声が聞こえてくるようで、肩の凝らない読みものになっている。
いきなり第1章からぐいぐいと読ませる。伊勢志摩の漁村で酒屋を営む家庭の次男坊として生まれ育った著者が〈70年代前半の中学生男子のある日曜日〉という設定で切りとったあまやかなメモワール。登場するアイドルは、のちの大女優・原田美枝子だ。
テレビから『スター誕生』の萩本欽一の素っ頓狂な声が流れてくる茶の間。母親が運んでくる昼食を、少年は「うわっ。またサカナの煮付けだ!?」と忌避する。「黒々とした骨だらけのサカナ」が苦手な彼が、心のなかで「自分一人だけボンカレーでも作って食べよう」と悪態をつく場面はなんとも象徴的。日本、地方、家族、単調といった、若き日の著者が苦手としていたものが凝縮されているからだ。彼はほどなくして上京、退屈を捨て、刺激的な日々に猛スピードで突入していく。その手がかりを作ってくれたのはいつも女性アイドルだった。
AKB48誕生の前夜、仕掛け人の秋元康氏から依頼されて秋葉原の小さな劇場に足を運んだ日の逸話がおもしろい。終演後に某アイドル系ライターと述べあった感想が全く違うことを解説しながら、「本物のアイドルおたく」と「所詮はアイドル評論家の私」の相違をあざやかに描いてみせるのである。
では「アイドルのファンに批評は必要ない」と言われ、「批判にさらされがち」な評論家の存在意義とは何か。著者の言いぶんは一点の曇りもない。曰く「批評家とは、ファンに向けて語るものではない。社会に向けて発信するものだ」と。どうだろう。これ以上なく明確、すがすがしいほどではないか。
還暦を過ぎた著者は〈おひとりさまシニア〉。「一度も結婚しなかった。妻も子供もいない。同棲したこともない。ずっと一人暮らし(中略)ああ、自分の人生って、いったい何だったんだろう」と述懐する瞬間もある。では母の作る煮魚よりボンカレーを選び、終夜営業の牛丼屋を友とする人生に後悔があるのか。それはない。なぜならアイドルを「推す」ということは──。この結論部分こそが中森明夫の決意表明であり真骨頂。アイドルに関心はなくとも、10代で何かに猛烈に心を奪われた経験をもつ人すべてにお勧めしたい、上質な成長譚である。
なお12月1日(金)に下北沢の本屋B&Bで『推す力』刊行記念の対談を中森さんと行います。お近くの方はぜひご来場ください。オンラインでも参加可能です。
(松尾潔/音楽プロデューサー)
提供元:Yahooニュース

