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銀の鎖

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  • 1:

    美桜

    初めて書く小説なので、下手ですが読んでもらえれば嬉しいです。更新も少しずつになりますが、気長におつきあい下さいm(__)m

    2006-05-07 02:28:00
  • 2:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    あなたと離れてからも私の胸元で輝く銀の鎖。4年前、あなたに付けられた銀の首輪。その首輪は、あなたと離れた現在でも、私の胸元で重く、あなたの存在を示している。 離れることを決めたのは私。そして、現在もその鎖を外すことが出来ないのも私。きっとこの鎖は一生私を縛り続ける。そう、あなたとの思い出に……

    2006-05-07 02:29:00
  • 3:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    side A〜美桜〜 a.m.6:00「もっし〜、ヒロぉ?美桜だけど。今までミナミで飲んでたんだけど、飲み足りなくってさぁ。今からでも騒げる店知らない?」「…美桜…今何時だと思ってるんだ?」「ん?今?朝の6時」「朝の6時、じゃねぇっつうの!!オレはさっき家に帰ってきて寝たばっかなんだよ!年中飲みっぱなしのアル中女と同じ時間で行動してねぇんだよ!!」「あ〜、ひっど〜い。美桜アル中なんかじゃないもん!美桜は遊ぶのが好きなだけ〜。ってか、まじでどっか知らない?」「知らない」「絶対嘘!ヒロ、ミナミの店詳しいじゃん。バーでもホストでも何でもいいから紹介してよ」「うるさい、切るぞ」「切ってもいいけど、教えてくれるまで電話かけ続けるよ?花綾まだ帰りたくないもん」「…5分後かけ直す」

    2006-05-07 02:31:00
  • 4:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    美桜は早朝のミナミにいた。この街は夜中も眠らない。夢幻の不夜城。こんな朝方でも開いている店はある。美桜は眠ることが嫌いだった。起きていれば嫌な夢を見ることもない。お金と体が許す限り起きて遊んでいれば、やがて眠ってしまったことにも気づくことなく眠りがやってくる。そうやって眠ればいやな夢を見ることもない。だから美桜はお金が許す限り遊ぶ。

    2006-05-07 02:33:00
  • 5:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    独りになるのも嫌いだった。だからこの眠らない街が大好きだった。この街にいれば独りになることもない。例え一瞬独りになったとしても、すぐに「仲間」を見つけられる。そして疲れ果てて自分が眠りに落ちたことさえわからないまま眠る。それが花綾の日課だった。

    2006-05-07 02:34:00
  • 6:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    お金は腐るほどあった。実家が裕福だから。その上、美桜自身水商売で稼いでいた。生活に遣う以外のお金は全て飲み代に消えていた。それに例え生活費がなくなったところで、親や客からお小遣いを貰えばまた遊びに行ける。

    2006-05-07 02:35:00
  • 7:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    美桜はどこの店に行ってもちやほやされた。たくさんお金を遣うから。今日もいつも通っている店でたくさんお金を遣っていた。いつもその店は、お金を遣えば遣うほど皆、美桜を楽しませてくれる。けれど、今日は何だかそこでは物足りなかった。だからヒロに電話をかけて知らない店を紹介してもらおうと思ったのだ。

    2006-05-07 02:35:00
  • 8:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    物足りない理由を美桜はわかっていた。確かにお金を遣えば遣うほど、みんな美桜を楽しませてくれる。けれど、美桜が楽しめば楽しむほど、美桜を楽しませてくれる人たちは美桜を『お金』と見る。

    2006-05-07 02:36:00
  • 9:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    独りになりたくないから、楽しんでいたいから、お金を遣う。なのにそうすればそうするほど、美桜は人として見られなくなっていく。だけど、お金を遣わなければ、独りになるし、楽しめない。思いと行動が矛盾しているのはわかっていた。でも結局美桜にはお金を遣う、という方法しか知らないし、わからない。だから、段々人として見られなくなっていくのをわかっていながらも、お金を遣って人の中にいるしかなかった。

    2006-05-07 02:38:00
  • 10:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    そんなことをぼんやり考えていると、ヒロから電話がかかってきた。「オレ。ツレに電話しといた。今から迎えに行けって言ってある」「サンキュウ〜!で、どこに迎えに来るの?美桜はどこにいればいい?」「周防町の角の喫茶店わかるだろ?そこの前で待ってろ」「OK!じゃあ今から向かうね。ヒロ、起こしてごめんね?愛してるよ〜ん」「愛想ふりまかなくていいから。美桜の我儘には慣れてるし」「ばれた?でもほんとサンキュウね」「ああ。あんまハメ外してオレに恥かかすなよ」「わぁかってるって!じゃね、オヤスミ」

    2006-05-07 02:39:00
  • 11:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    電話を切り、周防町にある喫茶店に向かう。いつもの道。見慣れた景色。そこを美桜は踊るような足取りで進む。この街にいる間だけ、美桜は美桜らしくいられる。だから楽しくて仕方がない。目的の場所につき辺りを見回してみたが、それらしき人間は見当たらない。でも、すぐに迎えは来るだろう。そう思い、美桜は閉店した喫茶店のシャッターの前に座り込んで、携帯を開いた。

    2006-05-07 02:40:00
  • 12:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    しばらくそうしていると、「あの、すいません」と声をかけられた。顔を上げると、そこにいたのは、黒髪ロン毛、スーツ姿の男がいた。ホストだ。男のわりに綺麗な顔をしている。(何だ、キャッチか)そう思い、美桜は意識を携帯へ戻した。美桜はロン毛の男が大嫌いだったから、キャッチをしてきた男と話す気にならなかった。

    2006-05-07 02:40:00
  • 13:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    「すいません」しつこいなぁ、と思いつつ立ち上がって男を見返す。「何?私、人を待ってんだけど」「美桜ちゃん?ヒロくんの知り合いの。オレ、迎えに行くようにヒロくんから言われて来たんだけど」

    2006-05-07 02:41:00
  • 14:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    「ああ、なんだぁ。ごめんね、キャッチだと思ったから無視しようと思っちゃった」「そうなんだ。オレ、人違いしたかと思ったよ」「ほんとにごめんね。お迎えありがとう。お店近いの?」「うん。すぐそこだよ。あそこに見えているビルの三階」「そっか。じゃ、行こっかぁ」

    2006-05-07 02:42:00
  • 15:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    美桜は一歩遅れて男に着いて行きながら、迎えに来た男がホストだったことに少し驚いていた。今までヒロに店を紹介してもらったことはあったが、ホストを紹介されたことはなかった。ヒロと美桜は兄妹のような付き合いをしているので、お互いのことはよく知っていた。美桜がなぜ夜遊びをするのか、なぜ眠りにつきたくないのか。だから、ヒロは今まで決して美桜にホストを紹介しなかった。ホストにとって女は『お金』だから…

    2006-05-07 02:43:00
  • 16:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    side B〜晧輝〜 (あー、だりぃ。つか、この女マジうざい)ボックス席で女の横に座りながら、晧輝は内心毒づく。横に座っている女は、晧輝に惚れて通ってきている水商売の女。水商売っていっても、小さなスナックで働く中年に近いホステスだ。

    2006-05-07 02:45:00
  • 17:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    派手にはしているが、元が良くないので、それが恐ろしく似合っていない。まるで、どこかの田舎の「飲み屋」にでもいそうな感じだ。少なくとも「ミナミのホステス」ではない。

    2006-05-07 02:45:00
  • 18:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    「ねぇ、晧輝ぃ。今日終わってからどこに行くぅ?」鼻にかけた甘い声で晧輝に話し掛けてくる。40歳近くにもなってこの女はそんな話し方をすれば男から可愛く見られるとでも思っているのだろうか。頭が痛くなる。

    2006-05-07 02:46:00
  • 19:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    晧輝は欝陶しいのを我慢しながら「あー、でも、オレ今日あんまり売り上げよくないから、終わってからオーナーに説教食らわされるかも」「そんなの、お客さんとアフターあるからって言えばいいじゃない」「そうもいかないんだよ、うちのオーナー。清香さんも知ってるだろ?うちのオーナーの口癖」

    2006-05-07 02:47:00
  • 20:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    「『お客さんよりオレ優先!』だっけ?」「そうそう。あの人オレら従業員に異常なほど愛着持ってるからね」「でも、お客さん大事にしないと水商売ってうまくいかないでしょ?オーナーならそのへんはわかってるでしょ?」「普段ならわかってくれるんだけどな。今日オレの売り上げマジやばいから『お客さんとアフターです』って言っても絶対信じない。説教から逃げる手段だと思われるだけ」

    2006-05-07 02:49:00
  • 21:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    「ええ〜、せっかく久しぶりに晧輝とゆっくりしようと思って来たのにぃ〜」「ごめんって。また今度埋め合わせするから」「でもぉ…」「つぅかさ、ごめんっつってるじゃん。あんましつこいとオレ怒るよ?」「…ごめんなさい…」「清香さん、いい加減オレの性格わかれよ」

    2006-05-07 02:50:00
  • 22:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    夜の世界に入って四年。晧輝はずっといわゆる「オラ営」だった。偉そうな態度で接客し、我儘放題する。我儘が通らなければキレる。するとなぜか女はそんな晧輝にはまる。最初はなにがいいのかわからなかった。金を払って来ているのに、従業員のオレの機嫌を伺い、我儘を許し、あげくの果てにはキレられる。

    2006-05-07 02:52:00
  • 23:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    晧輝は自分が逆の立場だったら、絶対二度とその店には行かないだろう、と思いつつも今日まで四年間同じ営業スタイルを貫いてきた。正直、自分の何が女にウケるのかは今でもわからない。でも、それでも売り上げは確実に上がっているのでわからないままでも大した問題ではなかった。

    2006-05-07 02:53:00
  • 24:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    「…晧輝、電話鳴ってるよ」「ああ…先輩からだわ。ちょっと席外すな」そう言いながら席を立ち、スタッフルームに入る。「あ、ヒロだけど。お疲れさん。今大丈夫か?」「お疲れさまっす。大丈夫っすよ。むしろ助かりました。うざい客が来てるんで」

    2006-05-07 02:53:00
  • 25:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    「ははっ。おまえ相変わらずだなぁ。あんま客のことうざいとか言うなよ?オレら水商売、客あってのものなんだからな」「そりゃ、わかってますけどね。で、どうしたんですか?こんな時間に電話かけてくるなんて珍しい」 「ああ。オレの知り合いがな、今ミナミにいるらしくて。で、どっかいい店ないかって聞くから、おまえんとこどうかな、と思って。客来てるなら無理か?」

    2006-05-07 02:55:00
  • 26:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    「いや、いいっすよ。でも、マジ珍しいっすね。ヒロくんがオレに客紹介するなんて」「客っつぅか、妹のようなもん。この時間に下手にふらふら歩かれて変なヤツに捕まっても困るしな」「ずいぶん可愛がってるんっすね。片思いでもしてるんですか?がらにもなく」「ばぁか。んなんじゃねぇよ。とにかく頼むわ」

    2006-05-07 02:55:00
  • 27:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    「わかりました。で、どうすればいいんすか?」「迎えに行ってくれるか?どこまでなら出られる?」「今日はあんま店抜けられる状況じゃないんで…近くの喫茶店くらいまでなら行けますけど」「じゃあそこまで行くようにそいつに連絡しとくから。悪いな」

    2006-05-07 02:56:00
  • 28:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    「わかりました。あ、その子の名前は?」「美桜。美しいに桜で『みお』」「美桜ちゃんね。OK。んじゃ、行ってきますね」「くれぐれも頼むな。…手、出すなよ、じゃあな」

    2006-05-07 02:57:00
  • 29:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    切れた電話を眺めながら(へぇ、マジ珍しい。ヒロくんがここまで女構うなんて)と思いつつ、スタッフルームを出る。ヒロは晧輝よりはマシだが、女の扱いはかなり適当だった。そのヒロに珍しく、頼む、と言わせるなんてどんな女だろう…そんなことを考えながら清香の席に戻る。

    2006-05-07 02:58:00
  • 30:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    「清香さん、悪い。オレの先輩の紹介で新規の客来るから、迎えに行ってくる」「ええ〜、晧輝全然私の席にいないじゃない!!」「仕方ないだろ。世話になってる先輩の紹介だし、オレ今日まだあんま上げてないし」「そんなの、清香に関係ないじゃない!清香は晧輝がいてくれなきゃ嫌なの!!」「…うるさいって。とにかくオレ迎えに行ってくるから。そんなにオレに席に居てほしいなら、シャンパンの一本でもおろせよな」言い捨てて店を出た。

    2006-05-07 02:59:00
  • 31:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    今日はここまでですm(__)mお付き合いくださいましてありがとうございました。また明日更新します。

    2006-05-07 03:00:00
  • 32:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    今から少しだけ更新していきます。

    2006-05-07 16:41:00
  • 33:

    まだ夏になりきっていないのにa.m.6:00の空はすでに明るくなっていた。暗い店から出てきたので少しの明かりすら眩しく感じる。サングラス持ってくればよかったな、と思いながら待ち合わせの場所に向かう。店のあるビルから歩いてほんの少しの距離。すでに喫茶店は見えている。

    2006-05-07 16:42:00
  • 34:

    そこに座り込んでいる女がいた。茶髪にヤンキー座り。(まさか、あれじゃないだろうな…)そう思いつつ女の側まで行き、携帯に集中している女に声をかける。

    2006-05-07 16:43:00
  • 35:

    「あの、すいません」女が顔を上げた。その瞬間、晧輝は女の瞳に惹かれた。何もかもを見通せそうな大きな瞳。少し吊り上がっていて猫を思わせる。その瞳が一瞬晧輝を見た後、すぐに携帯へ顔を戻した。

    2006-05-07 16:44:00
  • 36:

    (人違い?でも、こいつ以外にそれらしいの、いないし…)「すいません」もう一度声をかけた。すると女が立ち上がった。晧輝の顎くらいまでしかない身長。小さい女だ。しかし改めて顔を見るとやはりその瞳に惹かれる。

    2006-05-07 16:45:00
  • 37:

    だが、周りにやはりそれらしき姿はない。仕方がなく、「美桜ちゃん?ヒロくんの知り合いの。オレ、迎えに行くようにヒロくんから言われて来たんだけど」そう言った途端、女の表情が激変した。

    2006-05-07 16:47:00
  • 38:

    ふわっと微笑むと、「あぁ、なんだぁ。ごめんね、キャッチだと思ったから無視しようと思っちゃった」と笑顔のまま話す。「そうなんだ。オレ、人違いしたかと思ったよ」「ほんと、ごめんね。お迎えありがとう。お店近いの?」「うん。すぐそこだよ。そこに見えているビルの三階」「そっか。じゃ、行こっかぁ」そう言われて、女の一歩先を道案内するように歩きだした。

    2006-05-07 16:48:00
  • 39:

    第一印象最悪。でも、話した途端、雰囲気が変わった。何より晧輝はその瞳に惹かれた。こんな瞳をした女に出逢ったのは初めてだった。晧輝は店に清香がいるのも忘れて、この後の時間を少し楽しみにしながら花綾を連れて店へと戻って行った。

    2006-05-07 16:49:00
  • 40:

    side A〜美桜〜 ほんの少しの距離を美桜は男と話すことなく、店へ向かった。男はビルに着くとエレベーターで三階美桜を案内した。黒いドアに金の文字で書かれた店名。『いらっしゃいませ!!』何人もの男の声が一斉に美桜を迎えた。店は黒を基調としたコーディネートで、テーブルとカウンターは白。

    2006-05-07 16:50:00
  • 41:

    「水割りでいい?」「ロック」「酒強いの?」「うん。そこら辺のつまんない男よりはよっぽどね」「ははっ。オレもつまんないって言われないように頑張るよ」「頑張ってね。美桜、お酒弱い男、嫌いだから」「わかったよ。じゃあ乾杯!」「乾杯」

    2006-05-07 16:51:00
  • 42:

    乾杯をし、美桜は一気にグラスを空けた。喉が熱い。それから、カウンターを挟んで目の前にいる男をじっと見た。 さっき見たときに思ったが、やっぱり綺麗な顔をしている。切れ長の一重の目、鼻筋も通っている。薄い唇に、剃り跡のない綺麗な顔。(顔は好みなんだけどなあ)そう思っていると

    2006-05-07 16:52:00
  • 43:

    「何?オレの顔、なんか変?」「ううん。綺麗な顔だなぁと思って」「綺麗!?それって誉め言葉?」「うん。美桜の中では最上級の誉め言葉」「そっか。ありがとう」「いいえ。ね、名前、なんていうの?」

    2006-05-07 16:53:00
  • 44:

    「あ、オレの名前聞いてなかった?晧輝だよ」「こうき?どんな字?」「晧々と輝く、の晧と輝で晧輝」「へえ。名前も綺麗だね。本名?」「そ。オレの母親がつけた名前」「ふうん」「美桜って名前も可愛いよね。どっちが付けたの?」「さあ?きっとどっちかが適当につけただけだよ」「そんなことないだろ」「そんなことあるから、そう言ってるの」

    2006-05-07 16:54:00
  • 45:

    そう言うと美桜はグラスを差し出す。「空いてるんだけど」「ああ、ごめんね」晧輝がグラスに焼酎を注ぐ。それを美桜はまた一気に飲み干した。

    2006-05-07 16:55:00
  • 46:

    「ちょ、美桜ちゃん、いくら強いったって、そんなペースで飲んで大丈夫?」「大丈夫。今までお酒でつぶれたことないから。そんなこと気にしないでいいから早く注いで」晧輝が心配そうな顔をしながら焼酎を足す。

    2006-05-07 16:56:00
  • 47:

    「ねえ、何か話してよ」「何か、って何?どんな話がいいの?」「楽しくなるような話」「美桜ちゃんはどんな話をすれば楽しめるの?」「そんなの、自分で考えれば?それが晧輝の仕事でしょ」美桜は冷たく言い放つ。そして同時に少しがっかりした。

    2006-05-07 16:58:00
  • 48:

    美桜のことをよく知っているヒロが紹介してくれた店だから、と多少の期待をしていたのに、どうやら晧輝は最近多い『顔だけが取り柄』の男のようだ。

    2006-05-07 16:59:00
  • 49:

    「美桜ちゃん、結構きついね。ヒロくんとはどういう知り合いの?」「ヒロのこと晧輝に話したって、美桜は楽しくないんだけど」「そう?でもオレは楽しいと思うよ」「何で?」「オレが見たことのないヒロくんの話聞けるかもしれないし。だから、オレは楽しい」

    2006-05-07 17:00:00
  • 50:

    「はあ!?何で美桜が晧輝を楽しませなきゃいけないの!?」「だって美桜ちゃん、きっとオレが何言ったって笑ってくれないだろ?だから、せめてオレが楽しませてもらう」

    2006-05-07 17:01:00
  • 51:

    美桜はドキッとした。ほんの5分ほど話しただけで、晧輝のことを『話の出来ない男』と判断していたので、すでに楽しむ気は失せていた。それを見透かされた?「あのさ、美桜ちゃん、オレだって遊びで水商売やってきたわけじゃないんだよ」晧輝が静かに話し出す。

    2006-05-07 17:02:00
  • 52:

    「待ち合わせの場所で美桜ちゃんが笑顔を見せてくれたのは、ヒロくんの顔を立ててのお愛想。で、店入ってきてから美桜ちゃんはオレを品定めしていた。そしてどうやら期待外れだったらしい。それくらいはわかるよ」「…で、それが晧輝は面白くないってわけ?」「いや、別に。そんなのいつものことだし」

    2006-05-07 17:03:00
  • 53:

    「…どういうこと?」「ホストに来る女なんて、皆、同じような反応しか見せないよ」淡々と晧輝は話し続ける。「勝手にオレに何かを求めてやって来る。で、勝手に期待したくせに、オレが思い通りに動かないと、泣いたり怒ったり」「……」

    2006-05-07 17:04:00
  • 54:

    「客はホストに感情なんてないって、思ってんじゃない?客からすれば、オレ達ホストは人じゃないんだよ」「…人じゃなかったら、何?」「言葉を話し、人間の体温を持っていて、思い通りに動かすことの出来る自分好みの人形」そう言って晧輝は自嘲気味に笑った。

    2006-05-07 17:05:00
  • 55:

    ひとまず更新はここまでです。読んで下さっている方がいれば是非感想お願いしますm(__)m

    2006-05-07 17:06:00
  • 56:

    ラビ

    読んでるよ??頑張ってね。一つ疑問なんだけど…花綾ってだれ?美桜じゃなくて?

    2006-05-07 23:40:00
  • 57:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    ラビさんへ 読んで下さってありがとうございます。この小説は書き溜めていたものをコピペして掲載していってるんですよ。書き溜めているときの主人公の名前が『美桜』ではなく『花綾』だったので…全て直したつもりだったんですが抜けがあったようで…ややこしくて申し訳ないですm(__)mなので『花綾』=『美桜』です。

    2006-05-08 00:52:00
  • 58:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    今からまた少しだけですが更新していきます。

    2006-05-08 00:53:00
  • 59:

    side B〜晧輝〜 話をしながら晧輝は、今自分が言っていることは八つ当りだと自覚していた。美桜が晧輝に何かを期待をしていたように、晧輝も期待をしていたのだ。今まで出逢った女たちとは違うかも、と。ところが、店に入ってきてからの美桜は今まで店でたくさん知り合ってきた女たちと似たような反応を示していた。それが晧輝を落胆させたのだ。

    2006-05-08 00:55:00
  • 60:

    それでつい、いつもなら口にしないようなことを言ってしまっていた。少し、しまった、と思いながら美桜の顔を見ると、美桜はなぜか微笑んでいた。それも愛想笑い、ではなく本物の笑顔だった。でもその笑顔は寂しそうな笑顔だった。

    2006-05-08 00:56:00
  • 61:

    「何がおかしい?」そう晧輝が尋ねると、「ううん。おかしいんじゃなくて、何だかホッとして」「え?」「晧輝、美桜と似てるかも…美桜もね…」そう言うと美桜は少しずつ話し始めた。眠りたくないこと、独りになりたくないこと。でもそうならないための手段がわからず、お金を遣って遊び、結局は孤独になってしまう。

    2006-05-08 00:58:00
  • 62:

    そういうことを寂しそうな笑顔のまま、美桜は話し続けていた。 「…だからね、さっき晧輝が言ったことに何だか凄く共感できた。同じような考えの人、見つけたと思ったら何だかホッとして」

    2006-05-08 00:58:00
  • 63:

    「……そっか」「今までね、ヒロが美桜にホストを紹介したことなんてなかったの。だから、晧輝を紹介されたことが意外だったんだけど、何となくヒロが晧輝を紹介した意味がわかったよ」

    2006-05-08 01:00:00
  • 64:

    「何で?」「わからない?じゃあ自分で考えてみて?」そう言うといたずらっぽい微笑みを浮かべ美桜はグラスを持ち上げた。「ね、晧輝。もう一回乾杯しよ?」「何に?」「今日、晧輝と美桜が出会えた記念に。で、私たちを引き合わせてくれたヒロに」

    2006-05-08 01:01:00
  • 65:

    「……何だかよくわからないけど、美桜ちゃんがしたいなら」そう言い、晧輝もグラスを持ち上げる。「じゃあ、改めて乾杯!!」「乾杯」乾杯と同時に一気に飲み干し、二人はグラスを置いた。「さあ、今からじゃんじゃん飲むよぉ!人生楽しまなきゃ損だぁ!」と、いきなりテンションを上げた美桜。それを見て晧輝は思わず微笑んでいた。――その時、

    2006-05-08 01:02:00
  • 66:

    『清香さんからドンペリいただきました!!ありあ〜っす!』思いがけない、清香の席からのシャンパンコール。忘れていた。席を離れるときに言った捨てゼリフ。きっとあまりに席に戻らない晧輝に、清香は我慢しきれなくなったのだろう。すると―――

    2006-05-08 01:03:00
  • 67:

    『晧輝ーーーっ!!清香の席へ帰ってこーい!』とシャンパンコールをしていた従業員からマイクを奪い清香が大絶叫していた。(あの、バカ女!!)晧輝は清香を殴り飛ばしたい気分なのを抑えながら美桜の顔を見た。

    2006-05-08 01:04:00
  • 68:

    「大変だね〜、晧輝。美桜も騒ぐけど、あれは恥ずかしい」苦笑いしながら晧輝に同情していた。「いいよ、行ってきたら?美桜は他の子と遊んでるから。楽しめる子、つけてね」「……悪い。すぐ戻ってくるから」そう言って晧輝は、軽く美桜のグラスに自分のグラスを合わせて『ごちそうさま』をし、清香のテーブルへと歩いていった。

    2006-05-08 01:06:00
  • 69:

    side A〜美桜〜 皓輝と初めて会った日から一週間が経っていた。あの日皓輝は結局美桜の席に戻ってくることはなかった。シャンパンコールで戻っていった席で立て続けにドンペリが5本もおり、皓輝はその5本をほとんど一人で空け、そのまま潰れてしまった。だからあの日皓輝と話したのは結局30分ほどだった。

    2006-05-08 01:08:00
  • 70:

    30分。たったそれだけの時間しか過ごしていないのに、あれ以来美桜の頭から皓輝のことが離れなかった。(皓輝、元気してるかなぁ…。電話番号すら聞く暇も無かったし、ヒロに聞くのもなぁ…)

    2006-05-08 01:09:00
  • 71:

    今日は土曜で美桜の店は休み。どこかへ出かけようかと思いながらも皓輝のことをぼんやりと考えていた。ふと気づくと鳴り響く携帯の着信音。知らない番号だ。(誰だろう?)

    2006-05-08 01:10:00
  • 72:

    「もしもし…?」「美桜ちゃん?」「そうだけど…」「オレ、皓輝」それは皓輝からの電話だった。「…皓輝!?何で美桜のケー番知ってるの?」「ああ、ヒロくんに聞いたから…まずかった?」

    2006-05-08 01:11:00
  • 73:

    「ううん、それは全然いいんだけど…どうしたの?」「いや、あの日結局美桜ちゃんの席に戻れなかったことずっと気になってたんだけど、忙しくてなかなか電話できなくて。あの日は、ごめんな」「それだけ?それだけの為にわざわざ電話して来てくれたの?」

    2006-05-08 01:12:00
  • 74:

    「いや、それだけっていうわけじゃないんだけど……」口ごもる皓輝。「何?どうしたの?何かあった?」「…何か緊張してる」「はぁ!?緊張!?何で?」「何でって言われても…何でだろ…」どうやら皓輝は本当に緊張している様子だった。

    2006-05-08 01:13:00
  • 75:

    電話越しに伝わる皓輝の緊張が美桜には面白かった。美桜も水商売。勿論客に電話をすることはあるが、どんな客に対してでも、緊張などしたことがない。どういう風に話を繋ぐのだろう、と楽しみながら少し待っていると、

    2006-05-08 01:15:00
  • 76:

    「腹減った」「え?」「飯、何がいい?」「え?何がいいって言われても…今そんなにお腹減ってないし…」「そっか。じゃあ、一時間後にひっかけのツタヤ前で待ち合わせで」と、皓輝が言い、そのまま電話は切れてしまった。

    2006-05-08 01:16:00
  • 77:

    美桜は切れた電話をしばらく呆然と見つめながら、(今、ご飯に誘われたんだよね?てか、何?今の電話…?)通話時間はたったの2分。しかも、一方的に約束を取り付けられてしまった。『緊張している』と言ったそばから何て自己中心的な誘い方だろう。

    2006-05-08 01:17:00
  • 78:

    でも、美桜は不思議と腹が立たなかった。腹が立つどころか、気分は既に1時間後のことを考えていた。とにかく今から急いで用意をしよう。皓輝の顔を見たら一言目は何を言おう、そんなことを考えながら美桜は出かける用意をし始めた。

    2006-05-08 01:18:00
  • 79:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    今日はここまでです。次の更新は明日の夜になると思います。気長にお付き合いいただければ幸いです。

    2006-05-08 01:19:00
  • 80:

    名無しさん

    2006-05-08 03:00:00
  • 81:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    読んで下さる皆様ありがとうございます。今から少しですが更新させていただきます。

    2006-05-08 21:26:00
  • 82:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    sideB 〜皓輝〜 切った電話を皓輝もしばらく見つめていた。(今、オレ凄い自己中な誘い方したよな…?)と自問自答をしていた。本当はもっとちゃんと色々言葉を考えていたのだが、いざ美桜の声を聞くと、用意していた言葉が全部吹き飛んでしまった。

    2006-05-08 21:27:00
  • 83:

    切ってしまった電話がかかってくるかとしばらく待ってみたが、電話は鳴らない。美桜が来るかどうかはわからないが、とにかく誘ったのは自分なので待つしかない。とにかく今からの1時間をどう過ごそうか、そう考えながら皓輝はひっかけ橋へと向って行った…

    2006-05-08 21:28:00
  • 84:

    1時間後。皓輝は今までにないほど緊張をしながらツタヤの前で美桜を待っていた。初めて彼女と待ち合わせしたときでもこれほど緊張はしなかった。(本当に、オレ何でこんな緊張してんだろ…)

    2006-05-08 21:28:00
  • 85:

    そう思いながらもう何本目かもわからないほど吸っているタバコに火を付ける。一口吸ってから視線を巡らす。心臓が跳ね上がる。人混みの中に美桜がいた。

    2006-05-08 21:30:00
  • 86:

    美桜はまだこちらに気づいていない。少し目を伏せるようにしながらこちらへ向ってくる。白いシャツにジーンズ。どこにでもいそうな、ごく普通の姿だが美桜にはオーラがあった。事実、周りの男が美桜を振り返る。

    2006-05-08 21:31:00
  • 87:

    そんな周りの視線を少しも気にすることなく、美桜はこちらへ近づいてくる。視線が合った。微笑む美桜。その笑顔を見て皓輝の心臓はさらに跳ね上がる。(おいおい、オレ大丈夫かよ…)

    2006-05-08 21:32:00
  • 88:

    「ごめんね、待った?」ハスキーな美桜の声。1週間ぶりに聞くその声が耳に心地よい。「いや、オレも今来たばっかりだから…」すると美桜はいたずらっぽい笑顔を浮かべる。「何?」「嘘ばっかり」「え?」「今来たばっかりって嘘だよね?」相変わらず意地悪な笑顔を浮かべながら美桜が言う。

    2006-05-08 21:33:00
  • 89:

    「まじで今来たばっかりだって」「へーえ?皓輝って、すっごいヘビースモーカーなんだね〜。今来たばっかりでもうこんなにタバコ吸ったの?」と言いながら美桜は皓輝の足元を指差す。

    2006-05-08 21:34:00
  • 90:

    そこには1箱分はありそうな吸殻の山。(!!…いつの間に…)結局電話を切ってからどこへ行くにも中途半端なのでそのまま待ち合わせの場所へ皓輝は来たのだ。だから足元の吸殻の山は勿論1時間分。だが皓輝は1時間の間、上の空で美桜を待っていたので、そんなところまで気が回っていなかった。

    2006-05-08 21:35:00
  • 91:

    美桜はくすくすと笑いながら、「控え目にしないと早死にするよ〜?」と皓輝の目を覗き込みながら言う。「…おう…」極度に緊張している上に、やってしまった失態で皓輝は上手く言葉を繋ぐことができない。

    2006-05-08 21:36:00
  • 92:

    そんな皓輝を楽しそうに見ながら美桜は、「何食べに行く?皓輝、結構お腹減ってる?」「まぁ…」「どこに行くかもう決めてるの?」「いや、特には…」すると、美桜が弾けるように笑う。

    2006-05-08 21:37:00
  • 93:

    「ちょっと、皓輝、自分から誘っておいて、しかも1時間も時間あったのに何にも考えてないの?」何がそんなにおかしいのかとにかく美桜は目に涙を浮かべるほど笑い転げている。

    2006-05-08 21:38:00
  • 94:

    「んだよ、何がそんなにおかしいんだよ」あまりの笑われっぷりに少し腹を立てながら皓輝が言うと、「だって、今まであれだけ失礼な誘い方しておいて何が食べたいかすら決めてない、なんて人いなかったんだもん!」と笑い続けながら美桜が言う。

    2006-05-08 21:39:00
  • 95:

    それは確かにそうだろう。皓輝は返す言葉もない。「じゃ、皓輝は何が好き?」「…あっさりしたもの」その言葉を聞き更に笑う美桜。「また、えらく範囲が広いね〜。あっさりしたものね。何だろう…」「…寿司…」「お寿司?お寿司が食べたいの?」「いや、今何となく頭に浮かんだから…」

    2006-05-08 21:40:00
  • 96:

    「てか、皓輝、考える気ある?もういいや、お寿司にしよう!どこか良い所知ってる?」「いつも行ってる店があるけど」「じゃあ、そこに決定で!」「おう」「では、案内よろしく!」そう言って美桜は皓輝の横に並ぶ。

    2006-05-08 21:41:00
  • 97:

    「んじゃ」と言い歩き出しながら皓輝はいつもの調子が出ない自分にかなり戸惑っていた。でも、皓輝には何故自分がいつもの調子を出せないのか、その理由も本当は気づいていた。

    2006-05-08 21:41:00
  • 98:

    気づきながら今はまだ気づかないふりをしながら美桜を連れ店へと向かって行った…

    2006-05-08 21:43:00
  • 99:

    side A〜美桜〜 黙って歩く皓輝と並んで歩きながら美桜は楽しくて仕方がなかった。皓輝の態度が楽しくて。

    2006-05-08 21:44:00
  • 100:

    電話を切ってすぐ、美桜は出かける用意をし、用意ができた途端、飛び出すように家を出た。早く皓輝に会いたかったから。家を出てタクシーに乗り、タバコに火をつけてふと考えた…(私はどうしてこんなに急いでいるのだろう?)

    2006-05-08 21:45:00
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