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1:
美桜
初めて書く小説なので、下手ですが読んでもらえれば嬉しいです。更新も少しずつになりますが、気長におつきあい下さいm(__)m
2006-05-07 02:28:00 -
201:
毎日がそれの繰り返しだった。もっとも嫉妬のおかげで、清香の席ではいつもシャンパンがおり、皓輝の売り上げは驚くほど上がっていた。
2006-05-10 21:49:00 -
202:
「そっかぁ。皓輝も大変だね〜。美桜あんまり来ない方がいいのかなぁ…」「それはダメっすよ!美桜姉来なくなったら俺らが困る!」と真剣な表情で悠馬が言う。
2006-05-10 21:50:00 -
203:
「何で?」「だって機嫌の悪い皓輝さんの相手できるのって、美桜姉くらいだもん。それに、美桜姉来なくなったら俺ら飢え死にする!」「おいおい、売り上げのことじゃなくて、悠馬たちのお腹の心配〜?」「俺たちにとっては切実な問題なの!!」と悠馬が言い返す。
2006-05-10 21:51:00 -
204:
悠馬は美桜より3歳年下の二十歳。甘え方が上手なので、今ではすっかり本当の弟のような存在だった。「はいはい。で、今日は晩御飯食べた?」「まだ!!」と元気良く悠馬が答える。
2006-05-10 21:52:00 -
205:
「じゃあ、美桜も少しお腹減ったから悠馬の食べたいの何か適当に頼んで?あ、皓輝はご飯食べた?」「まだじゃないっすかね?俺が出勤してきたら皓輝さんソファでダウンしてたんで」
2006-05-10 21:53:00 -
206:
「そっか、じゃあ皓輝の分も一緒に頼んでおいて」と言いながら、美桜は席を立つ。「あ、皓輝さん厨房ですよ」と言う悠馬に「はいは〜い」と返事をしながら厨房へ向う。
2006-05-10 21:53:00 -
207:
厨房の床に崩れるように皓輝がいた。ひどく苦しそうな顔をしながら眠っている。そっと近づき「皓輝?」と声をかける。「……ん」と寝言のように皓輝が返事をする。
2006-05-10 21:54:00 -
208:
「お〜い、皓輝くん。仕事の時間ですよ〜。起きなさ〜い」とさっきより少し大きな声で美桜は話しかける。「…わかってる…」ととりあえず返事だけはしているが、皓輝は眠り続けている。
2006-05-10 21:55:00 -
209:
美桜はため息をつきながら皓輝の耳元へ顔を寄せ、「皓輝さん!後5分でオーナー来るって!」と叫んだ。「…まじで!?」と皓輝は飛び起きる。
2006-05-10 21:56:00 -
210:
「って、ヤバ!!悠馬、今何時!?」どうやら皓輝はまだ少し寝ぼけているようで悠馬に起こされたと思っているようだ。「おはよ、皓輝」としゃがみこみながら声をかける。
2006-05-10 21:57:00 -
211:
「え?美桜?何で?」と驚きながら辺りを見回し、「てか、お前ここ厨房。スタッフ以外出入り禁止」と急に目が覚めたようにしっかりと返す。「大丈夫だよ。まだ他にお客さん来てないから。只今の時刻は午前1:00です」と少しふざけて返す美桜に、
2006-05-10 21:58:00 -
212:
「そういう問題じゃなくて…とりあえず席に行こう」と美桜の腕を摑み厨房を出る皓輝。「おはようございます!」と一斉に従業員たちが挨拶をする。
2006-05-10 21:59:00 -
213:
「おはようさん。ていうか、お前ら起こせよ」「いや、俺ら何度も起こしましたって。起こしたら皓輝さん自分でソファから歩いて厨房まで行ったじゃないですか!」「…そうだっけ?」と惚ける皓輝。
2006-05-10 22:00:00 -
214:
「もう、皓輝さんまじ勘弁して下さいよ〜。皓輝さんがダウンしてると毎回俺らがオーナーに怒られるんっすよ?」と悠馬と同期の陽太が言う。「まぁ、仕方ないだろ」と皓輝。「オレ客多いから毎日飲む量ハンパじゃないしな〜」
2006-05-10 22:01:00 -
215:
と言いながら、スタッフルームへ引っ込む。そんな皓輝を見送りながら美桜は、「ほんっと迷惑な奴だね〜」と陽太に話しかける。「ね〜。ほんっと皓輝さんには困ったもんですよ!」と苦笑しながら陽太が言う。
2006-05-10 22:01:00 -
216:
「てか、美桜姉さすがだね。ダウンしてる皓輝さん起こせるのってオーナーと美桜姉だけだわ」と横から悠馬が言う。「皓輝さんがダウンしてるときは美桜姉、起こしに来てよ!」
2006-05-10 22:02:00 -
217:
「美桜はここのスタッフか?」と苦笑しながら返す美桜に、「あ、それナイス!美桜姉ここで働けば?」と半ば本気で悠馬が言う。
2006-05-10 22:03:00 -
218:
ばぁか!ここで働く=皓輝の世話係、でしょ?そんなダルい仕事無理〜」とそんな会話をしている内に、用意を終えた皓輝がスタッフルームから出てきて美桜の横に座る。
2006-05-10 22:04:00 -
219:
「あぁ、ダル…」とそのままカウンターにうつ伏せる。「こらこら皓輝。まだ全然仕事してないっつーの!てか、それがお客様の前でする態度〜?」と美桜がからかうと、
2006-05-10 22:05:00 -
220:
「美桜は客じゃないからこれでいい」と皓輝は呟く。「いやいや、皓輝くん。美桜ちゃんとお金払ってるじゃん。客じゃなかったら何なのよ?」と返すと、一瞬間が空き、
2006-05-10 22:06:00 -
221:
「…オレのおふくろ」とうつ伏せたまま皓輝は言う。「はぁ!?美桜こんなデカい子供持った覚えないし!」「オレも美桜に育てられた覚えないし…」とダルがりながらもしっかり言い返す皓輝。
2006-05-10 22:07:00 -
222:
「もう!ほんっとやる気ないでしょ?」「…うん、無理。飯来るまでしばらく寝かせて…」と言いながら皓輝は本気で眠り出した。
2006-05-10 22:08:00 -
223:
そんな2人を見ながら悠馬が「皓輝さんまじ疲れてるから勘弁してやってよ、美桜姉」と。「ん。別に美桜はいいんだけど、下の子にしめしつかないじゃん」「大丈夫。俺ら皓輝さんが誰より頑張ってること知ってるから…」
2006-05-10 22:08:00 -
224:
皓輝はあまり出てこないオーナーに代わり、店を任されている。従業員の管理、売り上げの管理、お客さんの管理、色々雑用が多くほとんど眠る時間などないことは美桜も知っていた。
2006-05-10 22:09:00 -
225:
加えて皓輝には病気がちの母親がいてその世話に追われ、失踪した父親の残した莫大な借金もあった。皓輝は店にいても、家にいても、心の休まる時間がない。それは美桜も知っているのだが、後輩たちの手前というものもある。
2006-05-10 22:10:00 -
226:
「皓輝さん、美桜姉の横じゃないとゆっくりできないんだよ…」と悠馬が言う。「だから悪いけど、しばらく寝かせてやって」そこまで悠馬に言われれば美桜にはダメと言う理由がない。
2006-05-10 22:11:00 -
227:
「仕方ないか!デキの悪い子ほど可愛いっていうし!?」とふざけて美桜が返すと、悠馬も「美桜姉の子供デキ悪過ぎ〜」と返し、2人で笑い合った。
2006-05-10 22:12:00 -
228:
「悠馬もゆっくりしておいで?出前来たらちゃんと呼んであげるから」「でも、俺までいなくなったら美桜姉、暇じゃん?」「大丈夫!眠ってても皓輝がいてくれてるから…」
2006-05-10 22:13:00 -
230:
厨房に入る悠馬を見送り美桜は皓輝に視線を戻す。さっきまでとは違い気持ち良さそうな顔で眠っている。顔にかかる前髪が少しうっとうしそうなので、美桜はかき上げた。
2006-05-10 22:15:00 -
231:
すると皓輝が目を開ける。「ごめん、起こした?」と静かに話しかける。「…ん、大丈夫。…美桜…」「何?」「ごめん、全然構ってやれない…」と美桜の目を見ながら皓輝は言う。
2006-05-10 22:16:00 -
232:
「毎日来てくれてるのに、いつも話せる時間ほとんどなくて、ごめん」「大丈夫だよ。美桜は皓輝の頑張ってる姿を見るのが好きだから」「…ん。忙しくなくなったらちゃんと時間作って美桜の話いっぱい聞くから…」そう言いながら皓輝はまた眠りに落ちた。
2006-05-10 22:17:00 -
234:
いつも偉そうにお客さんに物を言いお客さんを放ったらかしにし、それでも詫びの一言もない。そんな皓輝が美桜のことをちゃんと考えしかも「ごめん」という。
2006-05-10 22:18:00 -
236:
美桜 ◆kJmhGaf60.
一旦ここで中断させていただきます。また後で更新できれば、と思いますができなければすいませんm(__)mその場合次回更新は明日の夜とさせていただきます。
2006-05-10 22:20:00 -
237:
名無しさん
?
2006-05-11 04:24:00 -
238:
名無しさん
??
2006-05-11 11:58:00 -
239:
美桜 ◆kJmhGaf60.
今から更新させていただきます。読んでいて下さっている方いれば、ありがとうございます。
2006-05-11 22:17:00 -
240:
美桜 ◆kJmhGaf60.
Side B〜皓輝〜 情けなくも美桜に縋りついたあの日から美桜は皓輝を心配してか、毎日のように店に来てくれていた。だが、毎日のように美桜が店に来てくれていても、皓輝が美桜の席につけるのは一日で多くて一時間ほど。
2006-05-11 22:18:00 -
241:
ひどい日は、挨拶だけをし一度も席につけないこともあった。それでも美桜は楽しそうに悠馬や陽太と遊んでくれている。悠馬や陽太も美桜によく懐き、今では直接美桜に電話をしたりしているようだった。
2006-05-11 22:19:00 -
242:
普通なら口座を持つ客とヘルプが仲良くするのは、揉め事の原因になるのであまり良くないことだったが、美桜に関してはそんな心配もなく、ヘルプたちから電話があったことや、今度ご飯に行っていいか、などきちんと皓輝に報告をしてくれる。
2006-05-11 22:20:00 -
243:
今日も美桜は来てくれていた。いつもの通りカウンターに座り、悠馬と楽しそうに話をしている。皓輝はといえば、清香が来ていてその席から離れることが出来ない。
2006-05-11 22:21:00 -
244:
「ねえ、皓輝聞いてるの!?」と清香が皓輝の腕を引っ張りながら言う。正直美桜に気を取られていたので、清香の話など全く耳に入っていなかった。
2006-05-11 22:22:00 -
245:
「悪い、聞いてなかった。何?」「だからぁ、今度遊びに行こうって!」と清香は上目遣いに皓輝を見ながら言う。冗談じゃない。
2006-05-11 22:23:00 -
246:
ただでさえ店の雑用や実家のことで忙しく、美桜ともろくに話せない状況なのに、と思いながら、「時間が出来たらな」と素っ気なく返す。
2006-05-11 22:24:00 -
247:
と、突然清香が「皓輝。あの子皓輝の何?」と顎で美桜の方を示す。「何って客」「あの子皓輝の口座だよね?」「だったら何?」と少し苛立ちながら皓輝は返す。「毎日毎日カウンターに座って、大したお金も使わないでさぁ。何しに店に来てるの?」そう言いながら美桜の方を見る。
2006-05-11 22:25:00 -
248:
「皓輝の口座のくせに皓輝とは全然話さないで、毎日ヘルプと話すだけ。可哀想だよね〜」と何故か嬉しそうに言う清香。誰のせいで美桜がそんな目に遭ってるんだ!?と怒鳴り返したいのを抑えながら、
2006-05-11 22:26:00 -
249:
「別にあの子はオレに色恋求めて来てるわけじゃないからあれでいいんだよ」「それにしたってさあ、全然お金使ってないのに毎日来られたら皓輝も迷惑でしょ?」と言いながら清香は立ち上がる。
2006-05-11 22:26:00 -
250:
「…どこに行くんだよ」嫌な予感がし皓輝は清香を引き留める。「清香さんの席はここだろ!?」そんな皓輝の言葉を無視し、清香は美桜のほうへと近づいていく。慌てて腕を摑み止めようとしたが「ちょっと!」と清香が美桜に声をかける方が一瞬早かった。
2006-05-11 22:27:00 -
251:
振り返り少し驚きながら清香を見る美桜。「何?」と美桜が清香に言う。「あんた目障りなんだよね」「は!?」「毎日大したお金も使わず店来てさ、皓輝が迷惑してるのわからないの!?」「清香さんっ!!」と止めに入る皓輝に向って、「皓輝は黙ってて」と一言いい美桜に向き直る。
2006-05-11 22:28:00 -
252:
「毎日に来るお金があるんだったら、週に1度くらいにしてその分一気に使えば?そんなに少しずつ使われたって皓輝が恥かくだけなんだけど」「私のお金をどう使おうが、あなたに関係ないと思うけど?」と美桜は冷静に返す。
2006-05-11 22:30:00 -
253:
てか、厚かましいんだよ。たったそれぐらいのお金で皓輝の口座だなんて!」と清香は叫ぶ。「皓輝の客だったらさぁ、もっとお金使えば!?ナンバー1の客にあんたみたいな細客はいらないんだよ!!」
2006-05-11 22:31:00 -
254:
叫ぶ清香を見ながら怒った様子もなく美桜は、「あなたの言い分だと、お金をたくさん使った人が皓輝とたくさん時間を過ごせるのね?」と返す。「当然でしょ!?ここをどこだと思ってるの!?」美桜が冷静なのが気に入らないのか、更に怒り狂ったように清香は叫ぶ。
2006-05-11 22:32:00 -
255:
「私くらい皓輝と話したければもっと使ってみれば!?あんたみたいな細客には無理でしょうけどね!」「いい加減にしろって!!」さすがに皓輝も我慢の限界が来て、清香を席へ引きずっていこうとした。そこへ
2006-05-11 22:33:00 -
256:
「私があなたよりたくさん使えば皓輝との時間を譲ってくれるのね?」と静かに美桜は言う。「それであなたは大人しく引き下がってくれるのね?」更に静かに美桜は続ける。
2006-05-11 22:34:00 -
257:
そんな美桜を見て清香は、「出来るものならやってみれば?それができればいくらでも皓輝のこと譲ってあげるわよ!」勝ち誇ったように清香は言う。
2006-05-11 22:35:00 -
258:
それを受け美桜は、「そう。わかった」と言いながら、自分のカバンから何かを取り出し、カウンターの上に投げ出した。清香が息を飲む。…帯のついた札束だった。しかも3つ。
2006-05-11 22:36:00 -
259:
「これで皓輝のこと譲ってくれるのよね?」と美桜が言う。「あなたさっき、自分で言ったよね?たくさん使った方が皓輝とたくさん時間を過ごせるって。だったらこれでいいでしょう。今すぐ私に皓輝をちょうだい」
2006-05-11 22:37:00 -
260:
そして更に冷たい声で言い放つ。「それとも、これ以上のお金をあなたが皓輝に使えるの?だったら私はもっと使うだけ」清香は返す言葉もなく立ち尽くす。それは皓輝も、その場にいた悠馬や陽太も同じだった。
2006-05-11 22:38:00 -
261:
まさか美桜がこれほどの金を持っているなんて誰も予想していなかった。しかもこんなに冷たい瞳をした美桜を誰も見たことなんてない。冷静にだが確実に美桜は怒っている。
2006-05-11 22:39:00 -
262:
「遊び方も知らないんだったら、大人しくしていなさい。その歳になって人を見下すことでしか優越感を感じることが出来ないなんて可哀想な人だね」
2006-05-11 22:40:00 -
263:
と突き放すように言うと美桜は何事もなかったように、カウンターに向き直り、「悠馬、お酒作って」と悠馬に話しかけた。「あ、ああ、はい」茫然としていた悠馬が我に返り、美桜のグラスを受け取る。
2006-05-11 22:41:00 -
264:
「さっきのちょっと濃かったよ?もう少し薄めでね〜」と本当に何事もなかったかのように振る舞う美桜。清香のことなんてもう目に入っていないようだった。
2006-05-11 22:42:00 -
265:
さすがに清香が少し可哀想になり皓輝は、「清香さん?」と声をかけると、「勝手にすれば!!」と叫び財布の中から何枚かの札を抜き取り皓輝に投げつけ、清香は出て行った。
2006-05-11 22:43:00 -
266:
「ばっかみたい」と美桜が呟く。そして皓輝を振り返り、「ごめんね、皓輝。どうしても我慢できなかった…」と小さくなりながら美桜は謝る。
2006-05-11 22:43:00 -
267:
「本当にごめんなさい…」さっきまでとは別人のようにいつもの美桜がそこにいた。「いや、オレの方こそゴメン。気ぃ悪い思いさせて…」と皓輝も謝りながら、
2006-05-11 22:44:00 -
268:
「それにしても美桜…この金は…」「…親から貰ったお金…」ため息とともに吐き出すように美桜は言う。「ごめん、皓輝。美桜まだ皓輝に言っていないことがあるの…今から話聞いてくれる?」
2006-05-11 22:45:00 -
271:
名無しさん
?
2006-05-11 22:50:00 -
272:
名無しさん
頑張って
2006-05-12 09:30:00 -
273:
ラビ
読みやすい!この話が一番大好きです、これからも頑張ってね!!
2006-05-13 12:48:00 -
274:
美桜 ◆kJmhGaf60.
ラビさん読んで下さってありがとうございます。昨日は更新できなくてごめんなさい。今から少しだけですが更新させていただきます。
2006-05-13 22:06:00 -
275:
美桜 ◆kJmhGaf60.
side A〜美桜〜 21歳の春、美桜は家を飛び出した。汚い物を見るように美桜を見る父。怯えたように美桜を見る母。そして両親にも美桜にも無関心な妹。その何もかもが嫌になり、家を飛び出した。そうなった原因は16歳の冬にさかのぼる……
2006-05-13 22:07:00 -
276:
美桜の家は裕福で父は社会的にそれなりの地位もあり、世間体をひどく気にする父に本当に厳しく育てられていた。父は二言目には「藤沢家の長女なんだから…」と言う。
2006-05-13 22:08:00 -
277:
幼稚園、小学校、中学校と美桜は金銭的には何不自由なく育てられた。欲しいものは全て買い与えられ、物質的不満を感じることなどなかった。だが精神的にはいつも孤独だった。
2006-05-13 22:09:00 -
278:
父は『跡取り』として美桜を育てようとし、テストでどれだけ良い点を取ろうと、作文や絵のコンクールで賞などを貰おうと決して美桜を誉めることがなかった。
2006-05-13 22:09:00 -
279:
母は大人しい人で厳しく育てられている美桜を不憫には思っていたのだろうが父のやり方に口を挟むことができず、いつも黙って寂しそうな顔をしているだけだった。
2006-05-13 22:10:00 -
282:
強烈な吐き気。立っていられないほどのめまい。急にやって来ためまいのせいで机の上の物を落としながら美桜はその場に崩れた。物が落ちる大きな音に驚いた母が飛んできた。
2006-05-13 22:14:00 -
283:
「美桜ちゃん、美桜ちゃん!!どうしたの!?」すぐ側にいるはずの母の声が途方もなく遠くから聞こえる。「…だ・・・だいじょう…」
2006-05-13 22:15:00 -
285:
昨日の夜ご飯を食べたのが最後で空っぽのはずの胃が何かを吐き出そうとする。だがもちろん空っぽの胃からは何も出ることはない。吐きたいのに吐けない。強烈な苦しみに襲われながら、美桜は軽いパニックに陥っていた。
2006-05-13 22:17:00 -
286:
(何…これ!?)前日まで美桜はいたって元気だった。風邪を引きかけているような様子もなく、睡眠が不足しているわけでもない。美桜がトイレの中でパニックに陥っている最中、扉の外ではひたすら母が美桜に呼びかけている。
2006-05-13 22:17:00 -
289:
目が覚めたのはそれから3時間程後でもう昼に近かった。目を覚ますと蒼白になった母の顔が目に入った。「美桜ちゃん、気がついたのね!大丈夫!?」
2006-05-13 22:20:00 -
290:
目に入ってくる母の顔と、その後ろに見える見覚えのない天井。(ここは…?)どうやら美桜はあのまま救急車で病院に運ばれたようだった。恐る恐る体を起こす。
2006-05-13 22:21:00 -
291:
「美桜ちゃん、起きて大丈夫なの!?」母が心配そうに声をかける。ところがさっきの苦痛は嘘のように、吐き気もめまいも消えている。そんな美桜の様子を見ながら母がナースコールで看護師を呼んだ。
2006-05-13 22:22:00 -
292:
しばらくして看護師とともに医者がやって来た。「気分はどう?倒れる前のこと覚えているかな?」と穏やかに医者が問いかける。「…もう大丈夫です。倒れる前のこともちゃんと覚えています」「そう。少し検査させてもらいたいんだけど、動けるかな?」「はい。大丈夫です」
2006-05-13 22:23:00 -
293:
それから2時間ほど血液検査やレントゲンなど色々なところを検査された。ところが…「血液検査の結果はまだわかりませんが、今のところ特に目立った症状は無いですね」と医者の言葉。
2006-05-13 22:24:00 -
294:
その言葉に母も美桜も愕然とする。あれだけ苦しかったのに悪いところがない!?「恐らく一時的に血圧が低下しそれでめまいや吐き気が起こったんだと思いますよ」と大したことなさそうに医者は続ける。
2006-05-13 22:25:00 -
296:
午後になってからも特に体調が悪くなることも無く、本当に医者が言うように一時的なことだったのだと母も美桜も思っていた。だが次の日の朝…
2006-05-13 22:27:00 -
297:
目が覚め制服に着替えようとした途端、また昨日のように吐き気・めまいに襲われ、パニック症状が美桜を襲った。そんなことがそれから1週間も続き、美桜は1週間学校を休んでいた。
2006-05-13 22:28:00 -
298:
(本当にどこも悪くないの!?)(どこも悪くないなら毎朝のように苦しいのは何故!?)と理由のわからない不安をぬぐうこともできないまま日々を過ごしていた。
2006-05-13 22:29:00 -
299:
だが具合が悪くなるのは午前中。しかも決まって学校のある平日の朝。それが午後になると朝の苦しみが嘘のように以前と変わらず元気になる。
2006-05-13 22:30:00 -
300:
母は毎朝そんな美桜を見ていたので『仮病』とは思っていなかったのだが、父は違った。父は毎朝出勤が早いため滅多に朝美桜と顔を合わせることが無い。
2006-05-13 22:31:00