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∞sARy∞

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  • 1:

    あたしの名前は矢竹紗莉。

    お前のために、

    今日も明日もこれからも。

    2006-03-03 08:54:00
  • 2:

    『サリさんお疲れ様す!!』
    『あーい。』
    軽い返事を後輩にふりかけ、
    真夏の青い青ーい空の下で、欝陶しそうに携帯をカコカコといじる女、サリ。

    2006-03-03 08:55:00
  • 3:

    『今日もアチ〜ね〜ぃ』
    ----裏のコンビニの袋をぶら下げ、長い長い茶色いロングヘアを揺らしながら
    腰まで垂れたpumaスエットに草履をはいて
    練乳アイスをくわえた女が横に座る。
    その女、メイ。

    2006-03-03 08:57:00
  • 4:

    『メイさんお疲れ様ッス!!』
    金色の髪の毛がパサパサした後輩の声が、セミの叫び声を書き割り公園に響けば、
    『んー、誰(。´v`。)あちーねー今日ー。』
    相変わらず【名前】を覚えないメイが優しい笑いを浮かべて
    アイスから滴る白い雫は、カラカラのコンクリートに水玉の絵を描いて行く。

    2006-03-03 08:58:00
  • 5:

    『メイあんた携帯また止まってんで』
    『そーなの。アハ(。´v`。)サリこそ昨日まで止まってたしょ。ってアイス溶けるん早ー。』

    2006-03-03 08:59:00
  • 6:

    ----こんな無駄話しが日課で、まだまだケツも空もキラキラと青くて、馬鹿こそ楽しかったまさしく青春の日々。

    2006-03-03 09:00:00
  • 7:

    お互いあんまり喋らない。
    毎日一緒に居るのに毎日会話は、余りない。
    今日も相変わらず、ない。
    後輩も入れ代わり立ち変わり、増えたり減ったり。
    ただただゆっくり1日一緒にいるだけ。メイとサリ。

    2006-03-03 09:01:00
  • 8:

    『オイーメイ!!起きれー!!』
    『・・・んー・・』
    いつの間にか寝ていたメイをつっつくと、自転車に辛うじて毛が生えたような愛車に鍵を突っ込むサリ。
    『ブラっち行こけー』
    ポポポと、ご機嫌な音を立て始めたスクーターは2人で買った愛車のヘレン。

    2006-03-03 09:02:00
  • 9:

    『・・フゥア・・・どこ行くーん・・』
    ----汗ばんだ体を縦にすると、睡眠中踏ん付けてたのか
    ぺしゃんこになった箱から煙草を取り出しくわえる。
    『適当ー』
    『あそ。あーネムー。てかサリ彼氏はー?同棲中やん。』

    2006-03-03 09:03:00
  • 10:

    『ほっといてー』
    ヘレンに跨がり煙草に火を燈し眉を潜める。
    『あ、また喧嘩かい(。゚∀゚。)プ淋しーねー』
    満面に笑みを浮かべて嫌みっぽく、
    茶色く長い髪の毛をパチンと結わうとメイは後ろに跨がった。

    2006-03-03 09:04:00
  • 11:

    『ん、なんかサリの太股ブルってまっせ』
    走り出して公園を出ようとしたヘレンがメイの一言により急停車。
    『あ、ほんまや』
    モソモソモソモソ・・・・細い腕でポッケをまさぐる。
    ──ピッ!!--『んー?』

    2006-03-03 09:05:00
  • 12:

    ヘレンのポポポ音が、
    ぴったりと背中に張り付いているメイの子守歌のようで、
    『・・・・・グゥ・・・zzz』
    また寝たメイに少し呆れながらサリは喋り続ける。

    2006-03-03 09:06:00
  • 13:

    +*+*このお話は、
    【サリ】と言う友達のお話な訳だが、
    サリの口から
    放たれ始めた事実を私は文章にして行くだけなので、
    実に書きにくく、実に難しい。

    2006-03-03 09:07:00
  • 14:

    ストーリー構成も、
    思うようにできないので、
    ただ、このお話はサリの生きて来た
    【生き様】として
    ご覧下さい。*+*+**+

    2006-03-03 09:08:00
  • 15:

    『はッッ!?またモメとん?っまにダルイわーぃ。てか電波悪いねん。んぁ!?とりあえず今メイとおるし行くわ。ほなな』
    ──ピッ。。!!
    『セガワやろー。誰ー?』
    『あ、メイ起きとん!?稲城のアホやー。行く?』
    ・・・・しばし沈黙が流れる。

    2006-03-03 09:09:00
  • 16:

    『帰り飯ゴチれょーぃ』
    ─コアラのように背中にまきついたまま、
    ツンツンとライターで背中をさしながら小さなメイの声。
    『稲城にゴチらすし☆んじゃ!!ちょっちイキるかー!!乱闘♪乱闘♪』
    ----血に飢えた女サリは、当時地元で1番暴れ者であった。

    2006-03-03 09:11:00
  • 17:

    夜を掻き分け、
    【世界一】なんて勝手に信じてただただ必死に生きていた。
    恋も夢も、
    それなり。

    2006-03-03 09:12:00
  • 18:

    真剣になんて出来なくて、
    なにげにチャラく、
    程々イキって、
    【それなり】に生きてきた

    2006-03-03 09:13:00
  • 19:

    『さてー!!!稲城に飯ゴチって貰おかーい(。´v`。)ノ』
    散々暴れて腹もペコペコ。
    頼りないが故、可愛い後輩達を引き連れ歩く。
    夜明け前、青と紫の間のような少し淋しい空の下。
    『あんま金ないんすヶドー!!!ほんままじで安飯で勘弁して下さいよー!!』

    2006-03-03 09:14:00
  • 20:

    『メイ何食いたいん』
    『親子丼ー』
    『ほな正宗行こか。焼鳥屋やし親子丼あるし飲めるし』
    ----御一行は知り尽くした街を賑やかに笑いながら歩く。
    静かな道が、まるで永遠に続くように思っていた。

    2006-03-03 09:15:00
  • 21:

    ━━それから一年。

    なんやかんやと世話しなく流れる時間と共に、
    相変わらずそれなりに生きて、一年なんてさっさと過ぎた。

    2006-03-03 09:16:00
  • 22:

    『あちー!!!メイー!!!真面目にあちーよー!!』
    ・・・・一年前と同じ。
    見慣れ居慣れた公園でサリの茹だる声が響く。
    『サリ毎年それやねー(。´v`。)てかあんた結婚してんのに毎日暇やね』
    『主婦ってかなり暇よー』

    2006-03-03 09:17:00
  • 23:

    『あち。アイスかってこよ。サリもいる?』
    『うん(。・v・。)パピコ☆』
    ----去年よりも、まだ少し伸びた髪の毛は
    真夏の太陽を引き込み、
    キラキラと去年よりも少し明るい。

    2006-03-03 09:18:00
  • 24:

    パールまじりの
    茶色い髪の毛を揺らしながら
    ゆっくりと離れて行くメイの背中を眺める。

    ───その時だった・・・。

    2006-03-03 09:19:00
  • 25:

    『!!?…うっ…ゲッホ!!ゲホ』

    俯いた唇からは透明の唾液がしたたる。
    カラカラに渇き、ひび割れたアスファルトに、
    一滴、また一滴と。唾液が流れ落ちる。

    2006-03-03 09:20:00
  • 26:


    『まじで…』

    薄いTシャツの上からお腹をさすり、囁くように呟く声は誰にも聞こえない。
    無情に鳴き続ける蝉の金切り声だけが、そこに響いていた。

    2006-03-03 09:20:00
  • 27:



    離婚を決めた日から、わずか2日目の、暑い日だった。

    2006-03-03 09:21:00
  • 28:

    『っちィィー!!!熔けるって』
    気がつくと、アイスをくわえて横に
    ストン・・・
    欝陶しげにメイが座っていた

    2006-03-03 09:22:00
  • 29:

    『・・・・・?なに?あ、あんたのパピコも有るって』
    ----ガサガサと不思議そうな顔で袋に手を入れるメイ。
    『ホレ。・・・おいサリ?』
    『ん?あぁ、ありがと』
    …唇がほつれる。

    2006-03-03 09:23:00
  • 30:

    『なんか有ったー?』
    聞こえる優しい声が、ゆっくりと耳を突く。
    『なんもないブー』
    やっとの一言。
    まるで壊れたパソコンが煙りを吹き出しているかのよう。頭が回らない。

    2006-03-03 09:24:00
  • 31:

    帰り道。
    いつもより重々しい帰り道。
    玄関に入れば段ボールが無気力そうに並んでいる。
    もうすぐ出て行く旦那の、少ない少ない段ボール達。

    2006-03-03 09:25:00
  • 32:

    俯いたまま履き慣れた草履から足を抜くと、
    夕刻の薄暗がりに包まれた部屋へと
    段ボールをソッと退かして奥へ行く。
    ・・・・ポスッッ!!!
    黙ってため息をついたまま、ソファに倒れ込む。

    2006-03-03 09:27:00
  • 33:

    『・・・・・フゥ』
    吐き出した吐息が長く黒い前髪にかかる頃。
    ♪♪♪♪♪♪♪♪♪

    ケツポッケで鳴り出した電話に少しびっくりする。

    2006-03-03 09:28:00
  • 34:

    ◆mail受信◆旦那◆

    『ハァ(。´_`。)何やねん』

    カコカコ・・・・

    2006-03-03 09:28:00
  • 35:

    《今日の夜8時くらいに荷物取りに行くわ》

    『さいでっか。』

    パタンッッと片手で携帯を折り曲げると、またまたため息。

    2006-03-03 09:29:00
  • 36:

    気がつくと寝ていたようで、
    寝起きには明る過ぎる蛍光灯が目をつんざく。
    旦那が段ボールを動かしている光景が
    ぼんやりと視界のピントを徐々に合わして行く。
    『あ、起きた?俺の荷物はこんだけやんな』

    2006-03-03 09:30:00
  • 37:

    『そーちゃうか。あたしは触ってへんで』
    まるで鉛でも背負っているかの様に重い、体と言う固体。
    半ば無理矢理に引きずり上げると目に写る光景はピントがしっかり合う。
    『何、サリ風邪?』
    旦那の言葉は小さく冷たい。

    2006-03-03 09:31:00
  • 38:

    『ご懐妊や』
    ──囁くと旦那を見つめる。
    その目は実にしっかりと
    的を得て、
    静かに部屋に充満して行く緊迫感と言う空気だけが漂っていた

    2006-03-03 09:32:00
  • 39:

    『産むん?』
    眉一つ動かす事はなく、
    目の前の男は段ボールを積み上げている。
    『産むわい』
    『・・・・そ。生活費は心配すんなや。…頑張って。』

    2006-03-03 09:33:00
  • 40:



    『・・・・はは。』

     。

    2006-03-03 09:34:00
  • 41:

    パタンと閉まるドアの音。
    枯れたはずの涙が静かに頬を伝って落ちて行く。

    ひとりぼっち。

    2006-03-03 09:35:00
  • 42:

    誰も居ない部屋なのに、
    誰からも見られても
    誰にも気を使う事ないのに、
    声を殺して一人で涙を必死に堪える。
    溢れ出す涙は、拭う掌を濡らして行く。

    2006-03-03 09:35:00
  • 43:

    涙で歪む視界が辛い。
    もう、そこに存在するなにもかもが辛い。
    永遠を誓った華奢な指輪が虚しく輝く。
    キラキラ、涙のメッキに照らされて。

    2006-03-03 09:36:00
  • 44:



    ドクッッ・・・・

    2006-03-03 09:37:00
  • 45:

    『え・・・ズッ・・何・・・・・』

    ドクッッ・・・・

    2006-03-03 09:38:00
  • 46:

    『痛ッッ・・痛い・・・』
    お腹をさする手に力が入る。
    『・・・・・聞こえる?』
    さすりながら、呟いた。
    『聞こえるか?なぁ・・・・』

    2006-03-03 09:39:00
  • 47:



    『・・・・・お母さんやで。』

    2006-03-03 09:40:00
  • 48:

    ドクッッ・・・ドクッッ・・!!

    『あたしが、』ドクッッ!!

    『あたしがあんたを守るから』

    2006-03-03 09:41:00
  • 49:

    ドクッッ・・・・・・・・・・

    『…絶対。絶対守るから。
    産まれておいで。』

    2006-03-03 09:42:00
  • 50:



    ──締め付けられるかのように苦しい痛みは、ゆっくりと引いて行った。

    2006-03-03 09:43:00
  • 51:


    『で*゚Д゚)、離婚するし子供産むと、』
    『うん。報告(。゚∀゚。)メイにはとりあえず1番にと思いましてな☆』
    『ハァ。´ζ`。)あんたさぁ…』
    『まぁまぁ☆こんなあたしもお母さんになるのだ☆めでたいではないか(。・v・。)ノ』

    2006-03-03 09:44:00
  • 52:

    その時のメイの顔ったら、
    こっちがびっくりする位に不細工だった。
    でも、これがウチラの
    《人間性》

    2006-03-03 09:45:00
  • 53:

    《否定も肯定もしない。
    でももし
    なんか有ったら
    何が有っても守っちゃる》

    2006-03-03 09:46:00
  • 54:

    ──年月は思いの外早く過ぎて行き、
    もうパツンパツン。・v・。)

    《《臨月》》

    2006-03-03 09:47:00
  • 55:

    『なぁサリ見て見て(。´v`。)ノ可愛いやろ☆』
    『帽子?』
    『編んだんやぞ☆オヒョヒョ☆』
    『でも毛糸やん。』
    『(。゚∀゚。)それが何?毛糸やないと編まれへんやんけ』

    2006-03-03 09:48:00
  • 56:

    『メイらしぃねー(。´v`。)』
    『(*゚Д゚)!?』
    『夏産まれやのに毛糸って。熱中症なりますなー』
    『(`Д´*!!!お前はよ言えや。もー・・・』
    ━━それは、相変わらず素っ頓狂なメイとの相変わらずな会話の真っ只中だった。

    2006-03-03 09:49:00
  • 57:



    ・・・・・・☆

    『(。゚∀゚。)ぁ!!』

    2006-03-03 09:50:00
  • 58:

    『ん(*゚θ゚)!?腹減ったんか?出前取りま?』
    『出るかも』
    『は(。゚∀゚。)?』
    『産まれる(。゚∀゚。)』

    2006-03-03 09:51:00
  • 59:



    ・・・・・・(ΦДΦ*)!!!!

    2006-03-03 09:52:00
  • 60:

    それからのメイと言ったらそれはそれは滑稽だった。

    『コルァおっさんちゃっちゃか走れやァァ!!!』

    タクシー運転手に、やかるやかる。

    2006-03-03 09:53:00
  • 61:

    『産まれるやろがぁァァ!!!』

    普段めったに怒らず血の気の薄っぺらいメイの、
    鬼の如し、恐ろしい形相を見たのは、
    この時初めてだった。

    2006-03-03 09:54:00
  • 62:

    まぁ、配車に電話して20分もかかるわ
    道間違えるわ
    ってなかなか最悪なタクシーだったのも
    立派な理由だったのだが。

    2006-03-03 09:55:00
  • 63:

    ━━病院に着いてからはあっという間だった。
    『矢竹さんー?はい、まだイキんだらあかんよー』
    ---助産婦さんの優しい声。
    『イテ・・痛ッッいたたた』
    『痛いねー。ゆっくり深呼吸してねー』

    2006-03-03 09:56:00
  • 64:

    『痛ッッ!!痛いー!!!』
    『はいイキんで!もう頭が出ますよ!』
    『んぁ!!痛ー!!』
    『もうちょっと!』
    『ーーーー!!!!』

    2006-03-03 09:58:00
  • 65:



    ・・・ギャア!!ンギャ────!!

    2006-03-03 09:59:00
  • 66:

    産まれた我が子は
    猿みたいで、
    横でしわくちゃになって泣いているメイも
    猿みたいで。
    ----幸せってこれかと思った。

    2006-03-03 10:00:00
  • 67:

    愛おしい生き物の骨頂。
    何がなんでも守るって決めた、幸せ過ぎる時間だった。
    強くなくても良い。
    秀才でなくても良い。
    その存在だけで、良いと思った

    2006-03-03 10:01:00
  • 68:



    ━━━2年後━

    2006-03-03 10:02:00
  • 69:

    『まーまー』
    歩く姿もサマになり、
    サリはようやく仕事に安心して通えるようになっていた。
    『なんやー?ご飯作ってるからあっちいっときやー』
    ----フライパンから漂う匂いは暖かい家庭の香り。

    2006-03-03 10:03:00
  • 70:

    『うらたん?なぁー!!!まーまー。うらたん?』
    ----足元に絡まる丸く柔らかい娘が下手くそな言葉で語りかけると
    『そやでー☆グラタンやでー。メリの好きなグラタン(。・v・。)やし向こうで遊んどいて〜』

    2006-03-03 10:04:00
  • 71:

    ----ゴンゴンッッ!!

    『あ、メリ開けたげて☆』
    『はーい!!だぇー(゚O゚;)?』

    パタパタ・・・・!!!

    2006-03-03 10:05:00
  • 72:

    ──ガチャ・・・・!!!

    『………(* ̄Д ̄)』
    『メリ(。"∀"。)!!逢いたかったどゥォォゥ!!』
    『なぁんや豆ババかーぁ・・・』

    2006-03-03 10:06:00
  • 73:

    『ホレホレ(。´∀`ノ)ノ抱っこしちゃろやないか☆』
    『いやーやーぁ(。>▽

    2006-03-03 10:08:00
  • 74:

    『おばんですー』
    『あ、メイ。ほんまごめんやで急に呼んで。』
    『おほ。モウマンタイ(。゚∀゚。)飯食わせろしー』
    『もーすぐグラタン出来るからとりあえず飲んどいて』
    ----擦れ違いさまに会話を交わすと、秋暮れの外の匂いが少し冷たく漂う。

    2006-03-03 10:09:00
  • 75:

    『グラス取ってチョ☆』
    テーブルに腰掛けた女の声が、背中から聞こえてくる。
    『ん。』
    『ありがと。・・・・で。あんがい冷静やね』
    冷蔵庫に手を突っ込み、ガラガラと氷の冷たい音を鳴らしながら、その女はわざとらしい小さな声で問い掛ける。

    2006-03-03 10:10:00
  • 76:

    『まぁね。余裕余裕☆』
    少し間髪を入れ、わざとらしい小さい声で言い返す。
    『サリらしーねー。あ、サリも焼酎かい?』
    『もちろん(。゚∀゚。)レモンも入れてょん☆』
    ----顔を合わせる事なく、静かに会話が途切れた。

    2006-03-03 10:12:00
  • 77:

    その日の夕食はとても優しく、とても素晴らしいものだった。

    2006-03-03 10:13:00
  • 78:

    ホステスとして、ただ理由なんて金の為。
    夜の繁華街は北新地に立つ。
    懐かしい香りは、
    金、愛欲、絶望。
    懐かしい場所に立ち、サリは重い扉を開いた。

    2006-03-03 10:14:00
  • 79:

    『お昼はOLもやってますよ。お酒は…好きですね☆』
    ほのかに染まった赤い頬で、優しく笑いかけるサリは、
    ホステスとしての舞台に立つ事を選んだ。
    ──理由?
    『片親だからって娘には金で不自由させたくない。』

    2006-03-03 10:15:00
  • 80:

    それはそれは、辛い事も多々有っただろう。
    昼も夜も働いて、
    夜一本になった頃には
    新地では顔の知られるホステスになり、
    もとより体の弱かった為、何度も何度も病院に運ばれた。

    2006-03-03 10:17:00
  • 81:

    それでも一度たりとも弱音は吐き出す事はなく、
    計り知れない孤独と、不安と、戦いながら彼女は毎日を生きていた。
    気がつけば娘はすくすくと伸びて行き、
    私達は立派なんて言えないが、大人になっていた。

    2006-03-03 10:18:00
  • 82:

    『もうハタチよー。』
    『ねぇ(。´v`。)ノでもー、『まだハタチか』って位に老けたな。うん老けた。』
    『サリはね。わたしまだまだピチピチYO☆』
    『メイのほうが老けたって。明らか老けた。とりあえず、飲むかい(。´v`。)ノ乾杯ー☆』
    ----あでやかな晴れ着に身を包み、静かな飲み屋でグラスをカチンと鳴らしていた。

    2006-03-03 10:19:00
  • 83:

    『あ(。゚∀゚。)そー言えば、メイ彼氏出来たんやったっけ』
    『隆介かい?』
    『ホストとか。』
    『まぁそんなもの。あ、ライター貸して』
    小さめのテーブルで煙草をくわえるメイ。

    2006-03-03 10:20:00
  • 84:

    『ん。あれ、私の煙草無い。一本くれろ』
    ライターを手渡し、星が無数に散らばる箱に手をおくサリ。
    ---シュボッ!!!

    『サリは?彼氏作らんの?』

    2006-03-03 10:21:00
  • 85:

    ─賑やかで煙りがモクモクと天井を曇らせ、
    換気扇に吸い込まれる動作の繰り返す店内。
    サリの表情は一瞬のみだったが曇っていた。
    焼き鳥の放つ煙りに撒かれて、その表情が目に染みるメイ。
    静かに手元のグラスに手をかける。

    2006-03-03 10:22:00
  • 86:

    黄金色にキラキラと、霜を降らせながらグラスは持ち上げられて白い泡をゆらゆら揺らす。
    『……彼氏なぁ…』
    ----白い泡を通り、黄金色の水液は喉を通り少し炭酸がぴりっと痛い。
    『…いらんわ(。゚∀゚。)メリが居てたら男いりませーん☆あ、あたしもビール飲みたい☆メイのん、エビス?あたしもエビス飲もっと☆』
    一瞬、垣間見せた曇った表情を掻き消す様に明るくあっけらかんとした声がテーブルに響く。

    2006-03-03 10:23:00
  • 87:

    ──サリは前の旦那と離婚してから、彼氏と言う存在は一度たりとも創らない。
    まるで何かから逃げる様に、
    彼氏を創らない。
    【恋愛してなきゃ死ぬ】
    が語録だったサリと言う女を見て来た分、『それ』は随分と意外なものだった──

    2006-03-03 10:25:00
  • 88:

    『男と飲みたきゃホスト行けばいいしねー(。゚∀゚。)』
    ----メイが手に握る黄金色のグラスとお揃いの、なみなみ注がれたビールを片手に揺らし、サリは言う。
    『……恋とか愛とか、ぶっちゃけメンドイし。』

    ホラまた。一瞬曇らせる表情。メイはただボゥっとその笑顔をグラス片手に見つめていた。

    2006-03-03 10:25:00
  • 89:

    ───それから間もなく、
    メイは彼氏、隆介と、
    元カレ、コウタとに挟まれて
    散々な修羅場劇を毎日の様に繰り広げていた。

    2006-03-03 10:27:00
  • 90:


    ♪♪リンコロ♪♪リンコロ♪♪

    、とあるマンションの一室に、時代錯誤な単音のメロディで携帯が鳴り響いていた。

    2006-03-03 10:28:00
  • 91:

    ──ピッ。。。。

    『…‥んー…んぅ?…おはよ。うん。はぃはい〜』

    ──ピッ!!!

    2006-03-03 10:29:00
  • 92:

    『…ハァ。眠いって…。』
    欝陶しそうな面持ちで、体を起こすと

    ♪♪リンコロ♪♪リンコロ♪♪♪

    2006-03-03 10:30:00
  • 93:


    『まじ勘弁(。´v`。)』

    鳴り響く携帯を持ち上げ、煙草をくわえてベットから立ち上がる。
    ──ピッ…!!!『もーしー?おはようさん。俺?今起きたとこ。今日寒いね〜』

    2006-03-03 10:31:00
  • 94:



    神崎 雅也

    職業は……【ホスト】

    2006-03-03 10:32:00
  • 95:

    ピシッとのりで立てられたシワひとつないスーツは鎧。身を纏う香水は甘くたちめく。
    カツカツと街を歩き、
    行き交う人々を掻き分けながら今日も雅也は
    【自分の居場所】へと足を動かしていた。

    2006-03-03 10:33:00
  • 96:

    『遅刻ゥゥ〜!!まじで終わってるやろぉ!!てか〜カズキは最近どうなぁん?相変わらず?3なぁん?キャハハ〜!!嫌みじゃないねんで〜!!』
    ----遅刻遅刻と尖らせぼやいた唇は、急ぐそぶりすら見せずに甘ったるい声を出す。
    『そやなぁ〜。まぁボチボチ。ユリも相変わらず?4かい?あ、俺も嫌みじゃないよ〜』

    2006-03-03 10:35:00
  • 97:

    『嫌味やぁん!!もぉ〜!!いかへんからなッッ』
    尖んがったり膨れたり。
    女ってのはホントに忙しい生き物だ。
    『はいはい。仕事頑張ってね。遅刻でしょー?俺も行くわ。頑張ってね』
    目下にあるカチカチに固められた大きな薄茶色い頭をそっと撫で、雅也は笑った。

    2006-03-03 10:36:00
  • 98:

    『お疲れやーん☆』
    突然背中に重たいなにかがのしかかる。
    『って重たい重たい。何おまえ居たんや。・・ケホッ』
    振り返ると共に雅也は吸い込んだ煙にむせ返した。
    『あれユリチャンやん?相変わらず頭でかいね〜!!てか俺同伴ブチられてー。まじしょっく。カズキは〜?』

    2006-03-03 10:39:00
  • 99:

    ニカッと笑うと真っ白な八重歯がチラリズム。
    同店不動の?1、ハヤト。
    『同伴ちゃうよ。早めに起きたし飯食お思って。ハヤト一緒に食い行く?』
    『じゃあ味一いこ(。゚∀゚。)ダシマキ食いたい〜』
    細く引き締まった体を包む、お気に入りのスーツが歩き出す。

    2006-03-03 10:40:00
  • 100:

    『あ、あの子かわいい』
    歩き出した背中がぴたりととまった。
    『なぁなぁカズキ、かわいいってあの子』
    二人組の女の子をチラリと指差して、ハヤトは小さな声で雅也に笑いかける。
    『あー。キャバ嬢っぽいねー。特に左のコ。』

    2006-03-03 10:41:00
  • 101:

    『そぅ(。゚∀゚。)左が好み☆新地の匂いがプンプンやん♪』
    目を細め、獲物をしっかりと見つめるその目付きは、立派なハンター。
    『行く?』
    『カズキはどっちがィィ?』
    『どっちゃでも。でも左のコはきつそうなので、正直ゆーたら右のコがィィ。』

    2006-03-03 10:42:00
  • 102:

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━その頃。

    2006-03-03 10:43:00
  • 103:

    『てか腹減ったー(。´`。)』
    『飯行く?』
    『もちろんです。サリなに食べたいー?』
    『ん〜肉かしら。』
    『焼き肉でも行こか。今日はメリ居てないからツマランなぁ…』

    2006-03-03 10:44:00
  • 104:

    『何してんの〜!!』
    突如、後方から声が聞こえて振り返る。
    『あ、キャッチ?』
    サリの言葉の先にはホストらしいスーツが二人。
    どちらも大層男前だが、声をかけて来た方は何と言うか、チャライ

    2006-03-03 10:45:00
  • 105:

    『キャッチちゃうで〜☆暇やったら遊びましょ☆』
    ニッとかわいらしく笑ったホストを見ると、
    ━あ、このホストは八重歯がチャームポインツなのね━
    そんな事を思っているかのようにサリがふと笑う。

    2006-03-03 10:46:00
  • 106:

    『名刺ちょうだい?お店に遊びに行くから☆』
    八重歯に負けじとサリは優しく微笑む。
    普通、カッチョィィ売れっ子ホストがプライベートで遊んでくれるなら、なんともやっぱりうれしいはず。
    でもサリは絶対にプライベートでは係わり合おうとしなかった

    2006-03-03 10:47:00
  • 107:

    ──この当時、
    豆とサリはモデルの仕事もチラホラしていた。
    カットモデルやら、美容院のホームページやプリクラのモデル。
    なので、遊びも自粛するようにとマネージャーモドキに常々言われていた。
    サリはそれを理由に男の人との係わりを拒絶していた。ホステスもやりながらのモデル業、喫茶店アルバイトとモデル業の豆なんかよりも遥かに疲れていたのかもしれない。

    2006-03-03 10:48:00
  • 108:

    ただでさえホステスをやりながらモデルなんかしていると周りの反感も少なくはない。
    けれどサリにとっては、モデルだろうがホステスだろうが、
    全てはお金の為。
    娘の為に使い貯める為。
    なので正直、彼氏なんて作ってる余裕はどこにもなかったのかもしれない。

    2006-03-03 10:50:00
  • 109:


    『ほな、名刺わたしとくわ。電話してよぃ(。゚∀゚。)』
    ----ホストは小綺麗なスーツから、はたまた小綺麗な名刺ケースを取り出すとさっさと名刺を差し出す。
    『ありがと。えっとー、ハヤトくん?今度行くわ☆』
    軽く挨拶をかわし、女二人と男二人は別々に歩き出した。

    2006-03-03 10:51:00
  • 110:

    『好み〜?』
    後方からイシシと笑うメイ。
    『チャライ。』
    つまらなさそうに名刺をコートに突っ込むと、カツンカツンとヒールを鳴らし歩き出す。
    『確かにチャライね。でも飲みたくなったら行ってみよ』

    2006-03-03 10:52:00
  • 111:

    それから、
    たいした問題もなくただ月日は流れて行った。
    何もかもが順調に、
    ……行っているかのように思えた。

    2006-03-03 10:53:00
  • 112:



    確実に、狂って行く前兆だとは誰しもが気付きもしないでいた

    _

    2006-03-03 10:54:00
  • 113:

    『あ、そーいやメリも幼稚園慣れてきた〜?』
    大好きな彼氏と同棲を始め、幸せ色に頬を染めたメイがメリをポッキーでつんつん。
    『うっさいわ(。゚∀゚。)』
    最近めっきり生意気になったメリはポッキーをふんだくる。

    2006-03-03 10:55:00
  • 114:

    『なッッ(*゚Д゚)!!!メリ生意気なったねー』
    悲しそうにへしゃげてメイはポッキーをぽりぽり。
    『メイ気にせんとコツいたってや。メリ生意気やし』
    サリはクスッと笑ってグラスに刺さったひんやり冷たいポッキーを摘んで振り回す。

    2006-03-03 10:56:00
  • 115:

    『まぁ、ちょっと早い思春期って奴ね(。´v`。)ノ』
    何をされようとメイは相変わらず怒らない。
    『幼稚園児が思春期とか…早。ポリポリ…』
    また少しクスッと笑ってサリはポッキーをポリポリ。

    2006-03-03 10:57:00
  • 116:

    『…で、話って何?』
    メイは煙草を口に宛て、ライターを探しながら呟いた。
    『んー・・・・・』
    ポリポリと無表情にポッキーをくわえたまま、サリは浮かない返事をする。

    2006-03-03 10:58:00
  • 117:

    『実はー…』
    --------その時。
    ♪♪リンロン♪♪♪リンロン♪♪♪
    サリの手元の携帯電話が世話しなくなりだした。
    まるで急かすかのように。まるで会話を断ち切るかのように。

    2006-03-03 10:59:00
  • 118:

    ─パカッ……
    携帯を開いたサリの表情は、相変わらず浮かない。
    『出んの?』
    『……出てくる』
    スクッと立ち上がり、細い足を重々しく行進させてサリはリビングから出て行った。

    2006-03-03 11:00:00
  • 119:

    数分して戻って来たサリから出た言葉は

    『何話したいんか忘れたからもうええわ(。゚∀゚。)』

    妙な笑顔でそう言った。

    2006-03-03 11:01:00
  • 120:

    『なんやソレ(。´v`。)』
    返した言葉の真意は、
    本当の所気にはなったものの、踏み込んではいけないような変な勘が、メイは働いていた。

    2006-03-03 11:02:00
  • 121:

    ・・・・・・その勘は、後に『やっぱり』に変わる事となる。

    2006-03-03 11:03:00
  • 122:


    ・・・・・数週間後。

    .

    2006-03-03 11:04:00
  • 123:

    『ちょっと!!どーゆう事!?電話でもゆったやん!!』

    深夜、とある部屋の玄関。

    女の声が響き渡る。

    2006-03-03 11:05:00
  • 124:



    その声の主は、サリ。

    2006-03-03 11:06:00
  • 125:

    『メリは何処!!!返して!あんた自分が何やってるかわかってんの!?』

    怒鳴り付けるその声は、
    しとしとと雨のふりつける、
    初夏にしては寒い夜だった。

    2006-03-03 11:07:00
  • 126:

    『ちょっと、…うるさい。とりあえず入れば?近所迷惑』

    冷たく言い放つ声は、

    元、旦那。マサヨシ。

    2006-03-03 11:08:00
  • 127:

    『メリ返せや!!はよ返して!!何処やねん!』
    荒々しいサリの声は息をするのも忘れるかのように切羽つまったものだった。
    『早く!!メ・・・・』
    『メリは実家や。おかんがみてるわ。』
    サリは過呼吸気味になりながらも瞬時に耳を疑った。

    2006-03-03 11:09:00
  • 128:

    その日、
    サリは体調が悪く、病院へ行こうとしたが、
    メリも前日から風邪をひいて薬を服用して寝ていたので連れて行く事を躊躇い、メイに電話をしていた。
    あいにく仕事だったメイには頼れず、
    丁度、面会日だったマサヨシは仕事も休みでかけつけた。

    2006-03-03 11:10:00
  • 129:

    メリを身篭った時、
    親権をマサヨシに渡す事で、マサヨシの親に離婚を承諾されていたサリは、
    離婚してすぐに引越した。
    親としての関わりはマサヨシが望むなら与えてあげたいと、サリは常々言っていた。
    『マサヨシの子でもあるねんから、マサヨシも義母も義父も、メリを愛してくれたらあたしはうれしい。』

    2006-03-03 11:11:00
  • 130:

    しかしある時から
    マサヨシの義母はメリを引き取りたいと申し出だした。
    開業医のマサヨシの家は、マサヨシの唯一の兄は結婚をしないで遊びっぱなし。
    働く事すらなく、跡取りはマサヨシだけ。
    義母の欲は年々嵩張り始めていった。

    2006-03-03 11:12:00
  • 131:


    『お義母さん何考えてるん!?そんなやり方めちゃくちゃちゃうん!!だいたいメリは今風邪やねんで!!返し…』
    『……親権は…親権はこっちが持ってるからな。』
    ──そのマサヨシの声に、掴みかかったサリの両手は、ドクンと不快な心音で揺らめいた

    2006-03-03 11:13:00
  • 132:

    『ぶっちゃけ、おかん等はメリ返すつもりな…』

    --バキッ!!!

    サリの拳は、無情すぎる言葉を遮ろうとしてマサヨシの頬を無意識のうちにも思い切りぶん殴っていた。

    2006-03-03 11:14:00
  • 133:

    『…ッッた・・・・』
    頬を痛々しく、さするマサヨシをサリは睨みつける。
    『…信じて……あんたら親子…信じてメリを会わしてたんちゃうんか…?せやのに…』
    落胆したサリのもたれかかったドアは、雨に湿らされてじとじとと生ぬるい。

    2006-03-03 11:15:00
  • 134:

    『……悪かった…』
    『悪かった!?そんなんいらんねん!!メリを…メリを返してや…メリは!!メリはあたしの唯一の……』
    もう力はカケラも残っていないのか、サリはその場にへしゃげこむ。

    2006-03-03 11:16:00
  • 135:

    ━━━━━━━━━━━━━━━━何分、いや何時間、
    そこにくたばっていたのか。
    サリは泣き疲れた表情でゆっくりと立ち上がりドアノブに手をかけた。

    『……また来る…。メリ返してくれるまで……何回でも来るから…!』

    2006-03-03 11:17:00
  • 136:

    振り絞った最後の力を使い精一杯、
    マサヨシを睨みつける。

    ──フラフラと朝を迎えた街を歩く。行く宛てもなく、家に帰るとまた辛くなるだろう。サリはフラフラとミナミへと歩き出した。

    2006-03-03 11:18:00
  • 137:

    見慣れたミナミは、幾分か気持ちを和らげた。
    『仕事帰り〜???』
    振り返ると、酔っ払いのサラリーマンが、
    おぞましいアルコール臭を蒔き散らしながら笑いかけていた。

    2006-03-03 11:19:00
  • 138:

    会話や会釈なんてする気力はどこにもない。
    無視をして歩き出す。
    『待って〜や〜ねえちゃん〜!!ナンボや!?ホテル代別でお泊りしてぇや〜』
    しつこいサラリーマンの触れる腕をソッと振り払う。

    2006-03-03 11:20:00
  • 139:

    『無理なんか〜!?ちょっとべっぴんやからってなぁ〜』
    ----フラフラと千鳥足の、そのサラリーマンはサリに絡み出した。
    『…離して。』
    泣き腫らした瞼を手で拭いながら精一杯の会釈を振るう。
    しかしサラリーマンは引かなかった。

    2006-03-03 11:21:00
  • 140:

    『態度わっるいの〜!!ええやんけ、お泊り位〜。俺と子作り励も〜…』

    ・・・・・限界だった。

    バコッッ・・・バキッ・・!!!

    2006-03-03 11:22:00
  • 141:


    『うわッッ!あのオッサン血だらけやん!!てかあの女イッてんの?ヤバイんちゃん?』

    ----通行人の声がぼんやりと聞こえる。
    何もわからない。気がつくと、南署にいた。

    2006-03-03 11:23:00
  • 142:

    酔っ払いサラリーマンは、
    家族があるのか、
    さっさと血まみれのまま帰っていったらしい。
    『ミナミはなぁ…よーある事やから。でもおねーちゃんやり過ぎやで(。´v`。)』
    初老の私服警察官が湯気をくゆらしたコーヒーを机にコトッッと置いて向かいに座る。

    2006-03-03 11:24:00
  • 143:

    『身元引き受け人は、一応誰か来て貰わなあかんからな』
    警察官はメモと安っぽいボールペンを差し出す。
    スラスラとボールペンを滑らすと、
    『……御浜めい…さんやな。平仮名やったらマメさんやな〜アッハッハ』
    警察官はメモを取り出ていった

    2006-03-03 11:25:00
  • 144:

    飛んできたのか、ものの数分でメイは現れた。

    『ああああんた!(* ̄Д ̄)!!何し◎◆※£$★◇!!!』

    寝起きを全面に醸し出した寝癖頭とヨレたTシャツ。メイを見て、毛羽だった気持ちがフワッと軽くなった。

    2006-03-03 11:26:00
  • 145:

    タクシーに乗ると、
    ぼーっと外の景色を虚ろに眺める。
    視界を彩る光景は、
    世話しなく流れるスーツの群れは、夜のけばけばしさは微塵も感じさせない。
    それは、やけに淋しい気持ちにさせる明るい景色。

    2006-03-03 11:27:00
  • 146:

    『……って事が有った訳。ごめんねメイ。…なんか迷惑かけちゃって』
    意味はなく何となく入った喫茶店で全てを語り終え、サリはグラスに浮かぶ氷をくるくるといじる。
    『…………。』
    向かいに座るメイは、相変わらずヒョロリと立ったままの寝癖を手でガシガシといて呆然とグラスを眺めていた。

    2006-03-03 11:27:00
  • 147:

    『…いや…迷惑ではないけどもやね・・・・』
    腑に落ちないメイの面持ちは、ドスッピンで眉毛がない顔でもしっかりと解る程に、ひん曲がっていた。
    『まー・・・・何とかするわー☆』

    2006-03-03 11:28:00
  • 148:

    クシャッッと煙草を灰皿に擦りつけ、サリは笑う。

    『なんで笑ってんの』

    メイは今にも零れ落ちそうなその言葉をアイスコーヒーと一緒に飲み込んだ。

    2006-03-03 11:30:00
  • 149:

    それから何日も、
    サリはマサヨシの家を尋ね続けた。

    そんなある日。

    2006-03-03 11:31:00
  • 150:

    いつもの様に
    ホストとしての職務を松任する一人の男、雅也。
    彼はお客様の送り出しを終え、ミナミを闊歩していた。

    ──その時。

    2006-03-03 11:32:00
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