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  • 1:

    あたしの名前は矢竹紗莉。

    お前のために、

    今日も明日もこれからも。

    2006-03-03 08:54:00
  • 2:

    『サリさんお疲れ様す!!』
    『あーい。』
    軽い返事を後輩にふりかけ、
    真夏の青い青ーい空の下で、欝陶しそうに携帯をカコカコといじる女、サリ。

    2006-03-03 08:55:00
  • 3:

    『今日もアチ〜ね〜ぃ』
    ----裏のコンビニの袋をぶら下げ、長い長い茶色いロングヘアを揺らしながら
    腰まで垂れたpumaスエットに草履をはいて
    練乳アイスをくわえた女が横に座る。
    その女、メイ。

    2006-03-03 08:57:00
  • 4:

    『メイさんお疲れ様ッス!!』
    金色の髪の毛がパサパサした後輩の声が、セミの叫び声を書き割り公園に響けば、
    『んー、誰(。´v`。)あちーねー今日ー。』
    相変わらず【名前】を覚えないメイが優しい笑いを浮かべて
    アイスから滴る白い雫は、カラカラのコンクリートに水玉の絵を描いて行く。

    2006-03-03 08:58:00
  • 5:

    『メイあんた携帯また止まってんで』
    『そーなの。アハ(。´v`。)サリこそ昨日まで止まってたしょ。ってアイス溶けるん早ー。』

    2006-03-03 08:59:00
  • 6:

    ----こんな無駄話しが日課で、まだまだケツも空もキラキラと青くて、馬鹿こそ楽しかったまさしく青春の日々。

    2006-03-03 09:00:00
  • 7:

    お互いあんまり喋らない。
    毎日一緒に居るのに毎日会話は、余りない。
    今日も相変わらず、ない。
    後輩も入れ代わり立ち変わり、増えたり減ったり。
    ただただゆっくり1日一緒にいるだけ。メイとサリ。

    2006-03-03 09:01:00
  • 8:

    『オイーメイ!!起きれー!!』
    『・・・んー・・』
    いつの間にか寝ていたメイをつっつくと、自転車に辛うじて毛が生えたような愛車に鍵を突っ込むサリ。
    『ブラっち行こけー』
    ポポポと、ご機嫌な音を立て始めたスクーターは2人で買った愛車のヘレン。

    2006-03-03 09:02:00
  • 9:

    『・・フゥア・・・どこ行くーん・・』
    ----汗ばんだ体を縦にすると、睡眠中踏ん付けてたのか
    ぺしゃんこになった箱から煙草を取り出しくわえる。
    『適当ー』
    『あそ。あーネムー。てかサリ彼氏はー?同棲中やん。』

    2006-03-03 09:03:00
  • 10:

    『ほっといてー』
    ヘレンに跨がり煙草に火を燈し眉を潜める。
    『あ、また喧嘩かい(。゚∀゚。)プ淋しーねー』
    満面に笑みを浮かべて嫌みっぽく、
    茶色く長い髪の毛をパチンと結わうとメイは後ろに跨がった。

    2006-03-03 09:04:00
  • 11:

    『ん、なんかサリの太股ブルってまっせ』
    走り出して公園を出ようとしたヘレンがメイの一言により急停車。
    『あ、ほんまや』
    モソモソモソモソ・・・・細い腕でポッケをまさぐる。
    ──ピッ!!--『んー?』

    2006-03-03 09:05:00
  • 12:

    ヘレンのポポポ音が、
    ぴったりと背中に張り付いているメイの子守歌のようで、
    『・・・・・グゥ・・・zzz』
    また寝たメイに少し呆れながらサリは喋り続ける。

    2006-03-03 09:06:00
  • 13:

    +*+*このお話は、
    【サリ】と言う友達のお話な訳だが、
    サリの口から
    放たれ始めた事実を私は文章にして行くだけなので、
    実に書きにくく、実に難しい。

    2006-03-03 09:07:00
  • 14:

    ストーリー構成も、
    思うようにできないので、
    ただ、このお話はサリの生きて来た
    【生き様】として
    ご覧下さい。*+*+**+

    2006-03-03 09:08:00
  • 15:

    『はッッ!?またモメとん?っまにダルイわーぃ。てか電波悪いねん。んぁ!?とりあえず今メイとおるし行くわ。ほなな』
    ──ピッ。。!!
    『セガワやろー。誰ー?』
    『あ、メイ起きとん!?稲城のアホやー。行く?』
    ・・・・しばし沈黙が流れる。

    2006-03-03 09:09:00
  • 16:

    『帰り飯ゴチれょーぃ』
    ─コアラのように背中にまきついたまま、
    ツンツンとライターで背中をさしながら小さなメイの声。
    『稲城にゴチらすし☆んじゃ!!ちょっちイキるかー!!乱闘♪乱闘♪』
    ----血に飢えた女サリは、当時地元で1番暴れ者であった。

    2006-03-03 09:11:00
  • 17:

    夜を掻き分け、
    【世界一】なんて勝手に信じてただただ必死に生きていた。
    恋も夢も、
    それなり。

    2006-03-03 09:12:00
  • 18:

    真剣になんて出来なくて、
    なにげにチャラく、
    程々イキって、
    【それなり】に生きてきた

    2006-03-03 09:13:00
  • 19:

    『さてー!!!稲城に飯ゴチって貰おかーい(。´v`。)ノ』
    散々暴れて腹もペコペコ。
    頼りないが故、可愛い後輩達を引き連れ歩く。
    夜明け前、青と紫の間のような少し淋しい空の下。
    『あんま金ないんすヶドー!!!ほんままじで安飯で勘弁して下さいよー!!』

    2006-03-03 09:14:00
  • 20:

    『メイ何食いたいん』
    『親子丼ー』
    『ほな正宗行こか。焼鳥屋やし親子丼あるし飲めるし』
    ----御一行は知り尽くした街を賑やかに笑いながら歩く。
    静かな道が、まるで永遠に続くように思っていた。

    2006-03-03 09:15:00
  • 21:

    ━━それから一年。

    なんやかんやと世話しなく流れる時間と共に、
    相変わらずそれなりに生きて、一年なんてさっさと過ぎた。

    2006-03-03 09:16:00
  • 22:

    『あちー!!!メイー!!!真面目にあちーよー!!』
    ・・・・一年前と同じ。
    見慣れ居慣れた公園でサリの茹だる声が響く。
    『サリ毎年それやねー(。´v`。)てかあんた結婚してんのに毎日暇やね』
    『主婦ってかなり暇よー』

    2006-03-03 09:17:00
  • 23:

    『あち。アイスかってこよ。サリもいる?』
    『うん(。・v・。)パピコ☆』
    ----去年よりも、まだ少し伸びた髪の毛は
    真夏の太陽を引き込み、
    キラキラと去年よりも少し明るい。

    2006-03-03 09:18:00
  • 24:

    パールまじりの
    茶色い髪の毛を揺らしながら
    ゆっくりと離れて行くメイの背中を眺める。

    ───その時だった・・・。

    2006-03-03 09:19:00
  • 25:

    『!!?…うっ…ゲッホ!!ゲホ』

    俯いた唇からは透明の唾液がしたたる。
    カラカラに渇き、ひび割れたアスファルトに、
    一滴、また一滴と。唾液が流れ落ちる。

    2006-03-03 09:20:00
  • 26:


    『まじで…』

    薄いTシャツの上からお腹をさすり、囁くように呟く声は誰にも聞こえない。
    無情に鳴き続ける蝉の金切り声だけが、そこに響いていた。

    2006-03-03 09:20:00
  • 27:



    離婚を決めた日から、わずか2日目の、暑い日だった。

    2006-03-03 09:21:00
  • 28:

    『っちィィー!!!熔けるって』
    気がつくと、アイスをくわえて横に
    ストン・・・
    欝陶しげにメイが座っていた

    2006-03-03 09:22:00
  • 29:

    『・・・・・?なに?あ、あんたのパピコも有るって』
    ----ガサガサと不思議そうな顔で袋に手を入れるメイ。
    『ホレ。・・・おいサリ?』
    『ん?あぁ、ありがと』
    …唇がほつれる。

    2006-03-03 09:23:00
  • 30:

    『なんか有ったー?』
    聞こえる優しい声が、ゆっくりと耳を突く。
    『なんもないブー』
    やっとの一言。
    まるで壊れたパソコンが煙りを吹き出しているかのよう。頭が回らない。

    2006-03-03 09:24:00
  • 31:

    帰り道。
    いつもより重々しい帰り道。
    玄関に入れば段ボールが無気力そうに並んでいる。
    もうすぐ出て行く旦那の、少ない少ない段ボール達。

    2006-03-03 09:25:00
  • 32:

    俯いたまま履き慣れた草履から足を抜くと、
    夕刻の薄暗がりに包まれた部屋へと
    段ボールをソッと退かして奥へ行く。
    ・・・・ポスッッ!!!
    黙ってため息をついたまま、ソファに倒れ込む。

    2006-03-03 09:27:00
  • 33:

    『・・・・・フゥ』
    吐き出した吐息が長く黒い前髪にかかる頃。
    ♪♪♪♪♪♪♪♪♪

    ケツポッケで鳴り出した電話に少しびっくりする。

    2006-03-03 09:28:00
  • 34:

    ◆mail受信◆旦那◆

    『ハァ(。´_`。)何やねん』

    カコカコ・・・・

    2006-03-03 09:28:00
  • 35:

    《今日の夜8時くらいに荷物取りに行くわ》

    『さいでっか。』

    パタンッッと片手で携帯を折り曲げると、またまたため息。

    2006-03-03 09:29:00
  • 36:

    気がつくと寝ていたようで、
    寝起きには明る過ぎる蛍光灯が目をつんざく。
    旦那が段ボールを動かしている光景が
    ぼんやりと視界のピントを徐々に合わして行く。
    『あ、起きた?俺の荷物はこんだけやんな』

    2006-03-03 09:30:00
  • 37:

    『そーちゃうか。あたしは触ってへんで』
    まるで鉛でも背負っているかの様に重い、体と言う固体。
    半ば無理矢理に引きずり上げると目に写る光景はピントがしっかり合う。
    『何、サリ風邪?』
    旦那の言葉は小さく冷たい。

    2006-03-03 09:31:00
  • 38:

    『ご懐妊や』
    ──囁くと旦那を見つめる。
    その目は実にしっかりと
    的を得て、
    静かに部屋に充満して行く緊迫感と言う空気だけが漂っていた

    2006-03-03 09:32:00
  • 39:

    『産むん?』
    眉一つ動かす事はなく、
    目の前の男は段ボールを積み上げている。
    『産むわい』
    『・・・・そ。生活費は心配すんなや。…頑張って。』

    2006-03-03 09:33:00
  • 40:



    『・・・・はは。』

     。

    2006-03-03 09:34:00
  • 41:

    パタンと閉まるドアの音。
    枯れたはずの涙が静かに頬を伝って落ちて行く。

    ひとりぼっち。

    2006-03-03 09:35:00
  • 42:

    誰も居ない部屋なのに、
    誰からも見られても
    誰にも気を使う事ないのに、
    声を殺して一人で涙を必死に堪える。
    溢れ出す涙は、拭う掌を濡らして行く。

    2006-03-03 09:35:00
  • 43:

    涙で歪む視界が辛い。
    もう、そこに存在するなにもかもが辛い。
    永遠を誓った華奢な指輪が虚しく輝く。
    キラキラ、涙のメッキに照らされて。

    2006-03-03 09:36:00
  • 44:



    ドクッッ・・・・

    2006-03-03 09:37:00
  • 45:

    『え・・・ズッ・・何・・・・・』

    ドクッッ・・・・

    2006-03-03 09:38:00
  • 46:

    『痛ッッ・・痛い・・・』
    お腹をさする手に力が入る。
    『・・・・・聞こえる?』
    さすりながら、呟いた。
    『聞こえるか?なぁ・・・・』

    2006-03-03 09:39:00
  • 47:



    『・・・・・お母さんやで。』

    2006-03-03 09:40:00
  • 48:

    ドクッッ・・・ドクッッ・・!!

    『あたしが、』ドクッッ!!

    『あたしがあんたを守るから』

    2006-03-03 09:41:00
  • 49:

    ドクッッ・・・・・・・・・・

    『…絶対。絶対守るから。
    産まれておいで。』

    2006-03-03 09:42:00
  • 50:



    ──締め付けられるかのように苦しい痛みは、ゆっくりと引いて行った。

    2006-03-03 09:43:00
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