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∞sARy∞
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75:
『グラス取ってチョ☆』
テーブルに腰掛けた女の声が、背中から聞こえてくる。
『ん。』
『ありがと。・・・・で。あんがい冷静やね』
冷蔵庫に手を突っ込み、ガラガラと氷の冷たい音を鳴らしながら、その女はわざとらしい小さな声で問い掛ける。2006-03-03 10:10:00 -
76:
『まぁね。余裕余裕☆』
少し間髪を入れ、わざとらしい小さい声で言い返す。
『サリらしーねー。あ、サリも焼酎かい?』
『もちろん(。゚∀゚。)レモンも入れてょん☆』
----顔を合わせる事なく、静かに会話が途切れた。2006-03-03 10:12:00 -
78:
ホステスとして、ただ理由なんて金の為。
夜の繁華街は北新地に立つ。
懐かしい香りは、
金、愛欲、絶望。
懐かしい場所に立ち、サリは重い扉を開いた。2006-03-03 10:14:00 -
79:
『お昼はOLもやってますよ。お酒は…好きですね☆』
ほのかに染まった赤い頬で、優しく笑いかけるサリは、
ホステスとしての舞台に立つ事を選んだ。
──理由?
『片親だからって娘には金で不自由させたくない。』2006-03-03 10:15:00 -
80:
それはそれは、辛い事も多々有っただろう。
昼も夜も働いて、
夜一本になった頃には
新地では顔の知られるホステスになり、
もとより体の弱かった為、何度も何度も病院に運ばれた。2006-03-03 10:17:00 -
81:
それでも一度たりとも弱音は吐き出す事はなく、
計り知れない孤独と、不安と、戦いながら彼女は毎日を生きていた。
気がつけば娘はすくすくと伸びて行き、
私達は立派なんて言えないが、大人になっていた。2006-03-03 10:18:00 -
82:
『もうハタチよー。』
『ねぇ(。´v`。)ノでもー、『まだハタチか』って位に老けたな。うん老けた。』
『サリはね。わたしまだまだピチピチYO☆』
『メイのほうが老けたって。明らか老けた。とりあえず、飲むかい(。´v`。)ノ乾杯ー☆』
----あでやかな晴れ着に身を包み、静かな飲み屋でグラスをカチンと鳴らしていた。2006-03-03 10:19:00 -
83:
『あ(。゚∀゚。)そー言えば、メイ彼氏出来たんやったっけ』
『隆介かい?』
『ホストとか。』
『まぁそんなもの。あ、ライター貸して』
小さめのテーブルで煙草をくわえるメイ。2006-03-03 10:20:00 -
84:
『ん。あれ、私の煙草無い。一本くれろ』
ライターを手渡し、星が無数に散らばる箱に手をおくサリ。
---シュボッ!!!
『サリは?彼氏作らんの?』2006-03-03 10:21:00 -
85:
─賑やかで煙りがモクモクと天井を曇らせ、
換気扇に吸い込まれる動作の繰り返す店内。
サリの表情は一瞬のみだったが曇っていた。
焼き鳥の放つ煙りに撒かれて、その表情が目に染みるメイ。
静かに手元のグラスに手をかける。2006-03-03 10:22:00 -
86:
黄金色にキラキラと、霜を降らせながらグラスは持ち上げられて白い泡をゆらゆら揺らす。
『……彼氏なぁ…』
----白い泡を通り、黄金色の水液は喉を通り少し炭酸がぴりっと痛い。
『…いらんわ(。゚∀゚。)メリが居てたら男いりませーん☆あ、あたしもビール飲みたい☆メイのん、エビス?あたしもエビス飲もっと☆』
一瞬、垣間見せた曇った表情を掻き消す様に明るくあっけらかんとした声がテーブルに響く。2006-03-03 10:23:00 -
87:
──サリは前の旦那と離婚してから、彼氏と言う存在は一度たりとも創らない。
まるで何かから逃げる様に、
彼氏を創らない。
【恋愛してなきゃ死ぬ】
が語録だったサリと言う女を見て来た分、『それ』は随分と意外なものだった──2006-03-03 10:25:00 -
88:
『男と飲みたきゃホスト行けばいいしねー(。゚∀゚。)』
----メイが手に握る黄金色のグラスとお揃いの、なみなみ注がれたビールを片手に揺らし、サリは言う。
『……恋とか愛とか、ぶっちゃけメンドイし。』
ホラまた。一瞬曇らせる表情。メイはただボゥっとその笑顔をグラス片手に見つめていた。2006-03-03 10:25:00 -
89:
───それから間もなく、
メイは彼氏、隆介と、
元カレ、コウタとに挟まれて
散々な修羅場劇を毎日の様に繰り広げていた。2006-03-03 10:27:00 -
93:
『まじ勘弁(。´v`。)』
鳴り響く携帯を持ち上げ、煙草をくわえてベットから立ち上がる。
──ピッ…!!!『もーしー?おはようさん。俺?今起きたとこ。今日寒いね〜』2006-03-03 10:31:00 -
95:
ピシッとのりで立てられたシワひとつないスーツは鎧。身を纏う香水は甘くたちめく。
カツカツと街を歩き、
行き交う人々を掻き分けながら今日も雅也は
【自分の居場所】へと足を動かしていた。2006-03-03 10:33:00 -
96:
『遅刻ゥゥ〜!!まじで終わってるやろぉ!!てか〜カズキは最近どうなぁん?相変わらず?3なぁん?キャハハ〜!!嫌みじゃないねんで〜!!』
----遅刻遅刻と尖らせぼやいた唇は、急ぐそぶりすら見せずに甘ったるい声を出す。
『そやなぁ〜。まぁボチボチ。ユリも相変わらず?4かい?あ、俺も嫌みじゃないよ〜』2006-03-03 10:35:00 -
97:
『嫌味やぁん!!もぉ〜!!いかへんからなッッ』
尖んがったり膨れたり。
女ってのはホントに忙しい生き物だ。
『はいはい。仕事頑張ってね。遅刻でしょー?俺も行くわ。頑張ってね』
目下にあるカチカチに固められた大きな薄茶色い頭をそっと撫で、雅也は笑った。2006-03-03 10:36:00 -
98:
『お疲れやーん☆』
突然背中に重たいなにかがのしかかる。
『って重たい重たい。何おまえ居たんや。・・ケホッ』
振り返ると共に雅也は吸い込んだ煙にむせ返した。
『あれユリチャンやん?相変わらず頭でかいね〜!!てか俺同伴ブチられてー。まじしょっく。カズキは〜?』2006-03-03 10:39:00 -
99:
ニカッと笑うと真っ白な八重歯がチラリズム。
同店不動の?1、ハヤト。
『同伴ちゃうよ。早めに起きたし飯食お思って。ハヤト一緒に食い行く?』
『じゃあ味一いこ(。゚∀゚。)ダシマキ食いたい〜』
細く引き締まった体を包む、お気に入りのスーツが歩き出す。2006-03-03 10:40:00 -
100:
『あ、あの子かわいい』
歩き出した背中がぴたりととまった。
『なぁなぁカズキ、かわいいってあの子』
二人組の女の子をチラリと指差して、ハヤトは小さな声で雅也に笑いかける。
『あー。キャバ嬢っぽいねー。特に左のコ。』2006-03-03 10:41:00