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月明かりの船
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1:
雪弥
もうすぐ夏が終わる…
出会いは雨だった…。
あの小さなバス停…覚えてる?
あの日から、俺の大切な場所になったんだ…。2005-06-09 11:39:00 -
11:
「あのっ…良かったら、だけど名前教えて…?」
しゅうは少し戸惑った。
初めてしゃべれない事に、劣等感を感じた。
彼女は、下を向き戸惑ってるしゅうに気付き、
気遣ってか足をブラブラさせた・・。
「雨…すごいね」
彼女は空を見上げた。
しゅうは何だか“悪い事しちゃったな”と思い荷物から、おもむろにノートとペンを取り出した。2005-06-09 11:48:00 -
12:
しゅうは、もたれていた後ろの壁を手で
【コンコン】と叩き
彼女にノートを見せた。
『柊ーしゅうーです』
彼女はびっくりしていた。「…うそ。こんな事って…あるの…?」
彼女はぼそっと呟いた。
『どうかした?』
彼女は【はっ!】とし
笑顔でつくろった。
「あっ!ううん、何でもないよ」2005-06-09 11:49:00 -
13:
この時何故か、しゅうは何も聞かない方が良さそうだと思った。
「私の名前は郁ーいくー」
「あなた・・・、まさか声が…?」
しゅうは【にこっ】と笑いながらペンを走らせる
『“あなた”じゃなくて、しゅうだよ!うん…声は出ないんだ…』
郁は黙って下を向いた。
覗きこんだその顔は、今にも泣きそうだった。
しゅうは慌ててペンを走らせた2005-06-09 11:50:00 -
14:
『泣かないで…?』
その言葉を見た瞬間、郁は両手で顔をおおい、泣いてしまった。
“あれ…?泣かせてしまった…?え…俺?”
何て言えばいいのか、言葉が浮かばない。
オロオロするばかりだ。
今思えば郁は誰かに話を聞いてほしかったのだろう。だけど郁の涙の本当の意味など、この時のしゅうには知るよしもない。2005-06-09 11:51:00 -
15:
雨がやみ1時間に1便しか来ないバスが来た。
郁はバスに乗り込む瞬間
振り返り
「また会える?」
と不安そうに聞いた。
しゅうはペンを走らせ
『うん。いつでも』
と見せてノートを閉じた 不思議なコだった。
よく笑う。よく笑うのに…何かがひっかかる。2005-06-09 11:52:00 -
16:
郁は柊の名前をキレイと言った。そんな事を言うコは初めてだ。変わってる。
帰ってから、しゅうは郁の事を考えていた。
初対面の奴の前で泣く程、郁は何に追い詰められたんだろう。
その時【ピンポーン】と家のチャイムがなった。
ドアの前には流が立っていた。2005-06-09 11:53:00 -
17:
流が来るのはいつもの事
「土産だ」と酒を持ってきた。
おいおい?俺ら未成年やん…等と思う訳もなく、いつものように酒を飲む。
ふと見ると流の服に葉っぱが付いてた。
『またあそこかよ』
「え?あ、バレた?」
林檎の木なんか見て何が楽しいのかね。と言うと、流は落ち着くんだと言った。2005-06-09 11:54:00 -
18:
しゅうは今日の事を流に話した。郁の事だ…。
「ん、で?しゅうはどうしたい訳?」
流は相変わらずストレートだ…参った。気になるけど…これはきっと…きっと恋とは違う。
だけど…気になる気持ちは嘘じゃない・・・。
『ほっとけない…かな』
しゅうはそう言うしかなかった。流は、そうか。
とだけ言った。恋愛に変わればいいなと流は思った。2005-06-09 11:55:00 -
19:
流はずっと、しゅうを傍で見てきた・・・。
声を失った時のしゅうは、見てる方が辛い程荒れて
不安定だった。
他校から女のコが見にくる位、皆の憧れだったのに
声を失ってからは、異性を避けた。
だからしゅうの『ほっとけない』と言う言葉に驚いた。純粋過ぎる所は心配だが、この変化は嬉しかった。2005-06-09 11:56:00 -
20:
【ピンポーン】チャイムがなった。ドアを開けると、幼なじみの渉ーわたるーと
華ーはなーだった。
「お土産ぇ」と華は袋を渡した。また酒だ…?
「あ〜流、久しぶりぃ」
華の言葉に渉はゲラゲラ笑っている。流は呆れながら言った。
「毎日この部屋で会ってるだろ・・・」2005-06-09 11:56:00