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月明かりの船

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  • 1:

    雪弥

    もうすぐ夏が終わる…

    出会いは雨だった…。
    あの小さなバス停…覚えてる?

    あの日から、俺の大切な場所になったんだ…。

    2005-06-09 11:39:00
  • 31:

    『仲直りしなよ☆渉も華も、もちろん流も俺の大事な友達なんだからさ』
    華はしゅうの言葉にひるんだ。
    やっぱりしゅうは、華を女として見てないんだ…。
    只の友達・・。
    ねぇ?しゅう…華は女のコだよ…。
    「帰るねっ☆」
    そう言うのが精一杯だった。

    2005-06-09 12:06:00
  • 32:

    『来たばかりなのに』
    と言うしゅうに華は、
    「ゴメンね☆」と言い
    振り返らずに靴を履くと部屋を出た。
    ドアをしめるとその場に座りこんだ。
    “しゅうは、華の気持ちを知らない…だから仕方ない…。それに、友達という
    【カタチ】を選んだのは華自身だもん”
    ーだから今はまだ…泣けないー

    2005-06-09 12:07:00
  • 33:

    待ち合わせは夜8時。
    しゅうが海へ行くと、郁は先に来て待っていた。
    『ゴメン待った?』
    ノートに書いて見せると、郁は笑って言った。
    「今来たとこ☆始めよっ」
    花火に火を付ける。赤や緑に光る花火は相変わらずキレイだ。2人は花火の光で宙に文字を書いてはしゃいだ。

    2005-06-09 12:08:00
  • 34:

    線香花火に火を付ける
    「…ねぇ、柊君は…死後の世界って信じる?」
    唐突でびっくりした。よく笑う郁からは想像つかない発言だ…。
    流みたいな事を言う。
    流はよく夢を見るそうだ。キラキラしたクリスタルの森。大きな林檎の木。
    そして…
    大切な誰かとサヨナラした夢・・・。
    流はよくその話をしゅうにした。

    2005-06-09 12:09:00
  • 35:

    そんな事考えた事もないし、そんな風に聞かれたのも初めてだったけど
    『俺は…信じるかな』
    と言った。流の影響かな?郁は涙声で言った。
    「私、一年前に…大切だった人を亡くしたのね。」
    しゅうはだまって聞いた。郁が淋しそうに笑う。
    「救ってあげれなかった…。私まだ…彼に縛られてるのかもしれない…」
    線香花火がポトっと静かに落ちた。

    2005-06-09 12:10:00
  • 36:

    「柊くんと同じ名前だったよ…。彼は“秋”だから漢字は違うけどね。雰囲気もそっくりで…びっくりしちゃった。」

    しゅうは【ズキン】と胸が痛かった。
    郁が自分に向ける笑顔も、自分を呼ぶ声も、自分を擦り抜けていたのか?
    郁が見ていたのは…自分に重ねた、秋の幻・・・?
    それなら残酷すぎる…。
    郁は何かを言ってたけど、耳には入らなかった。

    2005-06-09 12:11:00
  • 37:

    この時初めて、しゅうは郁を女のコとして見ている自分に気付く。
    でもまだ引き返せる。
    まだ恋じゃない。
    しゅうは、そう思うしかなかった。
    そして、郁の鎖は郁にしか外せないと思った。
    郁はしゅうにこの話をした真意を伝えたが
    その時のしゅうには、耳に入らない。しゅうは大切な事を聞き逃した。
    そして2人はすれ違う。

    2005-06-09 12:12:00
  • 38:

    郁が最終のバスに乗った後、しゅうは一人海に居た。どうしても帰る気にはなれなかった。
    ボーっとしていると、ぼんやりした光が目に入った。ふと見ると、
    ロウソクを乗せ、特別な紙で作られた小船を海に流す人がちらほら居た。

    ーそう言えばお盆も終わりだー

    2005-06-09 12:13:00
  • 39:

    小舟を海に流すのは、この村に昔から伝わる行事…
    【黄泉送り】
    お盆には死んだ人の魂が帰ると言う…。
    お盆が終わる頃、魂を小舟で海に帰すらしい。
    秋と言う人もまた、
    郁の元へと帰っているのだろうか…。
    参った。死んだ奴に勝てる訳がない・・。
    自分の気持ちも、あの小舟のように…溶けて無くなればいいのに…。

    2005-06-09 12:14:00
  • 40:

    初めての感情は、自分が自分じゃない程に女々しく…そして・・。
    滑稽だった。
    決して叶わない…。
    郁への気持ちは恋なのか?
    これが恋なら…
    こんな気持ちになるのなら、知らない方が…気付かない方が良かった。
    誰もがそう思うのだろうか…。

    2005-06-09 12:15:00
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