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月明かりの船
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1:
雪弥
もうすぐ夏が終わる…
出会いは雨だった…。
あの小さなバス停…覚えてる?
あの日から、俺の大切な場所になったんだ…。2005-06-09 11:39:00 -
61:
《流と林檎の木》
朝早く、まだ日が昇らない程早く流は、あの場所に行く。大きな林檎の木…。
毎日流は同じ夢を見る。だけど
思い出せそうで、思い出せない…。何故この場所はこんなに落ち着くのだろう?
流は不思議だったが
誰かが自分を守ってくれている事だけは感じた。
ー流はきっとこの先も、あの遠い記憶を思い出す事は無いだろう…ー
流は歩きだした。ふいに何かを感じ振り返った…。『あ…!』2005-06-09 12:35:00 -
62:
渉は華の手を握り歩いた。時計を見ると、7:45‥‥。
“間に合った・・・”『渉…ここ…』そこにあったのは
ーあのバス停ー
渉は華を真直ぐ見つめた。華は渉の手を強く握り【こくん】と頷いた。
“今アタシが…出来る事”
“有難う渉。渉が導いてくれなかったら…アタシ、もっと後悔する所だった”2005-06-09 12:36:00 -
63:
【ぐっ】と覚悟を決めバス停の中に入る。
「華さん‥‥」郁はびっくりしていたが、華に向けて笑ってくれた。
華は愕然とした‥‥。“アタシがあなた達を引き離したのに…”
ふいに泣きそうになる。
“しゅうは彼女のこういう優しさに、ひかれたんだろうな。勝てる訳がない”
そして華はゆっくり口をひらいた…。
『郁ちゃん。聞いてほしいの・・・』2005-06-09 12:37:00 -
64:
しゅうはぼんやり座っていた。感情がマヒしてる。自分が自分じゃないような…俯瞰で見る感覚。
【バンッ!】とふいに部屋のドアが開いた。
渉が息を切らして前に座り、しゅうの肩を揺らした。
「郁ちゃんが…」しゅうの手がピクッとした。
『もういいんだ…』
「郁ちゃんが、お前に…バス停に来てほしいって!!」
『…!!!』しゅうは立ち上がると走って部屋を飛びだした。2005-06-09 12:38:00 -
65:
走り出すしゅうを、華は後ろから見送る。
「しゅう!!ゴメンなさい!!」後ろから叫ぶ華に、しゅうは振り向き笑った。
『華、頑張ったな』渉が華の頭を撫でた。
2人でしゅうを見送る
「渉、帰ろう」華が渉の手を強く握った。渉も華の手をしっかり握る。
『…おう!!』歩き出す時、華は一瞬振り返った。
『華?どしたん?』
「なんでもな〜い☆さぁ、飲むぞー!!!」
『え゛…朝から??』【ヤレヤレ?困った姫さんだ】
ーしゅう…有難う…。大好きだった…。バイバイー2005-06-09 12:39:00 -
66:
“郁‥郁っ!!”
バス停の前に立つ。手を伸ばせば…郁が居る…。
深呼吸をし、バス停に入る・・・。
…そこに郁の姿はなかった…。郁が居ただろう場所にあるのは新品のノートだけ“・・・・”
しゅうは、ペラペラとページをめくった。ページは白でうまっている…。
その時【パサッ】という音と共に、しゅうの足元に何かが落ちた。
“…手紙‥‥?”2005-06-09 12:39:00 -
67:
しゅうは波打ち際の岩場に座り、手紙を開く。
そこには初めて知る郁の気持ちが溢れていた。
俺にひかれ、秋という人を忘れてしまう自分への戒め。…そして…
あの日しゅうが、『泣かないで』と郁に言った言葉は、秋という人の最後の言葉だったそうだ。
彼はその言葉を残し、郁を残して一人旅立った。
最後に郁は俺への手紙を、こう締め括っている。
【あなたへの想いは決して秋の代わりではなく…嘘は無かった。傷付けて…ゴメンなさい】と…。しゅうは静かに目を閉じ、封筒に手紙をしまおうとした。
“…あ‥‥”
まだ何か入ってる。
【それ】を手に取ると、柊はクスッと穏やかに笑った‥‥。2005-06-09 12:40:00 -
69:
いつもの3人が集まる
あれからも、その関係は変わらない。
ただ、あれから何が変わったかと言えば‥‥。
「あ、ねぇ…しゅう!動いたっ…!!」
華が幸せそうに笑う。
『俺に似ればいいなー』大きなお腹をさすり言う。
「ばかっ!渉に似たらぶっちゃいく決定だよ!」
“華…言いすぎだよ?”
「絶対女の子がいい」
そう…。あれからすぐに、華と渉は結婚した。2005-06-09 12:42:00 -
70:
華のお腹には今、小さな命が宿ってる。
俺達は二十歳の夏を迎えようとしていた。
流はというと、
相変わらず林檎の木を見上げる日々だ…。
挙げ句の果てには木登りまでしてるらしい…。
理解に苦しむ?2005-06-09 12:43:00