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月明かりの船
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1:
雪弥
もうすぐ夏が終わる…
出会いは雨だった…。
あの小さなバス停…覚えてる?
あの日から、俺の大切な場所になったんだ…。2005-06-09 11:39:00 -
65:
走り出すしゅうを、華は後ろから見送る。
「しゅう!!ゴメンなさい!!」後ろから叫ぶ華に、しゅうは振り向き笑った。
『華、頑張ったな』渉が華の頭を撫でた。
2人でしゅうを見送る
「渉、帰ろう」華が渉の手を強く握った。渉も華の手をしっかり握る。
『…おう!!』歩き出す時、華は一瞬振り返った。
『華?どしたん?』
「なんでもな〜い☆さぁ、飲むぞー!!!」
『え゛…朝から??』【ヤレヤレ?困った姫さんだ】
ーしゅう…有難う…。大好きだった…。バイバイー2005-06-09 12:39:00 -
66:
“郁‥郁っ!!”
バス停の前に立つ。手を伸ばせば…郁が居る…。
深呼吸をし、バス停に入る・・・。
…そこに郁の姿はなかった…。郁が居ただろう場所にあるのは新品のノートだけ“・・・・”
しゅうは、ペラペラとページをめくった。ページは白でうまっている…。
その時【パサッ】という音と共に、しゅうの足元に何かが落ちた。
“…手紙‥‥?”2005-06-09 12:39:00 -
67:
しゅうは波打ち際の岩場に座り、手紙を開く。
そこには初めて知る郁の気持ちが溢れていた。
俺にひかれ、秋という人を忘れてしまう自分への戒め。…そして…
あの日しゅうが、『泣かないで』と郁に言った言葉は、秋という人の最後の言葉だったそうだ。
彼はその言葉を残し、郁を残して一人旅立った。
最後に郁は俺への手紙を、こう締め括っている。
【あなたへの想いは決して秋の代わりではなく…嘘は無かった。傷付けて…ゴメンなさい】と…。しゅうは静かに目を閉じ、封筒に手紙をしまおうとした。
“…あ‥‥”
まだ何か入ってる。
【それ】を手に取ると、柊はクスッと穏やかに笑った‥‥。2005-06-09 12:40:00 -
69:
いつもの3人が集まる
あれからも、その関係は変わらない。
ただ、あれから何が変わったかと言えば‥‥。
「あ、ねぇ…しゅう!動いたっ…!!」
華が幸せそうに笑う。
『俺に似ればいいなー』大きなお腹をさすり言う。
「ばかっ!渉に似たらぶっちゃいく決定だよ!」
“華…言いすぎだよ?”
「絶対女の子がいい」
そう…。あれからすぐに、華と渉は結婚した。2005-06-09 12:42:00 -
70:
華のお腹には今、小さな命が宿ってる。
俺達は二十歳の夏を迎えようとしていた。
流はというと、
相変わらず林檎の木を見上げる日々だ…。
挙げ句の果てには木登りまでしてるらしい…。
理解に苦しむ?2005-06-09 12:43:00 -
71:
最近では、林檎の木の根元で拾った子猫に夢中。
名前はウリエルだそうだ。
いつも一緒のメロメロぶり…。親バカだね…?
そう言えば、流に一本取られた事が今でも悔しい。2005-06-09 12:44:00 -
72:
俺はと言うと…。
【プルルルル‥‥】
『…うん。…分かった。あそこで‥‥』
あの小さなバス停で、俺は‥‥愛しい人を待つ。
バスが止まり走り去った
「柊…会いたかった」
真直ぐに俺を見つめて泣く女性を、力一杯抱き締めた。
あのノートはもういらない。
『郁…愛してる…』2005-06-09 12:45:00 -
73:
あの日、郁から受け取った封筒には、携帯が入っていた。
声が出るようになれば、電話してこいってメッセージ…。
後から聞いた話によれば、流のアイデアだそうだ。
そうでもしなきゃ、俺が努力しないから…だってさ。
やられた?2005-06-09 12:46:00 -
74:
郁は秋を忘れなかった自分を責めてたけど
関係ないよ…。
忘れなくていい。郁が忘れたら、秋という人が生きていた事が消えてしまう気がするから…。
俺は全部ひっくるめ郁を愛する事に決めた…。
人を愛するってそういう事だと思うから。
今年は2人できっと…
ー月明かりの下…あの小さな船を浮かべるだろうー2005-06-09 12:46:00