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月明かりの船
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1:
雪弥
もうすぐ夏が終わる…
出会いは雨だった…。
あの小さなバス停…覚えてる?
あの日から、俺の大切な場所になったんだ…。2005-06-09 11:39:00 -
2:
しゅうは家族が住む実家の近くで、1人暮らす18才。しゅうが住む土地は凄く田舎で、見渡す限り山ばかりだ。
少し歩くと海がある。先が見えない程に、長く長く続く浜辺は、夏の終わりを迎え人は居なかった。
今日は風が強い…。水面が揺れてキラキラ光っていた…。2005-06-09 11:40:00 -
3:
浜辺を上がった道路には、小さな屋根付きの古いバス停が1つあるだけ。
波打ち際にある岩場に腰掛けて、1人空を見上げる。
雲が流れるのを見る瞳は
辛いこと…悲しい事すべてを忘れさせる・・・。
しゅうはこの瞬間が1番スキだ。2005-06-09 11:41:00 -
4:
【ポタッ…ポタッ】
“…通り雨?”
ついてないなぁ…。しゅうは近くのバス停に走った。
“あ…誰か居る。
ー先客だ…めずらしいー
見れば同い年位だろうか?女のコだった。2005-06-09 11:42:00 -
5:
しゅうも、そのコも頭からびしょびしょだ…。
そのコはベンチに座って
足をブラブラさせていた。
しゅうは少し離れて座った・・・。
無言の空間。
雨の音が耳にうるさい。
・・・・
女のコは「くしゅんっ」
とくしゃみをした。2005-06-09 11:43:00 -
6:
しゅうは思い出したように、荷物をあさりタオルを差し出した。
ふと見上げたそのコの目は、泣いていたのだろうか?潤んでキラキラしていた。
「あ…。ありがとう」
女のコは【にこっ】と笑うと頭を下げた。2005-06-09 11:44:00 -
7:
しゅうは【にこっ】と笑うと、少し離れ座った。
“この辺のコなのかな?”
『どこから来たの?』
と聞きたかったが聞けなかった。
ーしゅうは声が出ない病気だったから・・ー2005-06-09 11:45:00 -
8:
ふと友達の言葉がぼんやり浮かんだ。
声が出なくなる前からの友達の流が言った。
「しゅう彼女作らないのか?」・・・。
『しゃべれないから』
と手話をした。
「しゅうらしいな…」
と流は笑った。
少し前までは声があったのに…そう。先天性ではなく事故が原因だった。2005-06-09 11:46:00 -
9:
しゅうはいつも、首を隠した。鉄パイプが刺さった跡があるから。
見せるのが嫌だった。
リハビリや治す意志、努力すれば声が戻るかもしれない…と医者は言った。
でもしゅうは治そうとは思わない…耳は聞こえるから。手話が出来る今では不便でもないし・・。2005-06-09 11:47:00 -
10:
そんな事を思い出して、ぼーっとしていると
しゅうの目の前にアメが1つ…。“?”不思議に思って見上げると
【んっ】と女のコが手を出していた。受けとると
「お礼っ☆」
と女のコが笑った。
“何でアメなんだ?”
子供のような可愛らしい行動に、思わず笑ってしまった。
しゅうは【ペコリ】と頭を下げた。2005-06-09 11:48:00