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■春夏秋冬■
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11:
昨晩のドラマの展開予想をしながらクラスに入る。
エリカの『おはよう』と響く声に、やまびこの様にそちらこちらから返ってくる。
エリカは社交的で、物怖じしないタイプだ。栗色のふんわりと柔らかなカーブがかった髪は、彼女の『女らしさ』をより一層ひきたてた。
あたしは、彼女の横で少し卑屈になる時がある。ただの僻み。エリカの様な人間であれば、このモノクロの世界も極彩色に感じたはず…
あたしの世界は今日も変わりなく、色を失ったままだ。2006-01-04 16:38:00 -
12:
『アダチさん』
教科書を押し込む手を止め、あたしの名を呼ぶ聞き慣れない声の主に顔を向ける。
『ああ、ミハラ君。おはよう』
『おはよう。はい』
彼は事務的に挨拶を交わし、右手の紙の束から一枚を差し出してきた。何日か前の化学のプリント。2006-01-04 16:44:00 -
13:
『ありがと』
彼はそのままエリカにもプリントを手渡して、順に席をまわっていった。
昨日ラブホで鉢合わせたというのに、何の動揺もなくあたしと言葉を交わす彼の眼鏡の奥に、何か特別な感情を抱いた。
涼しい顔した本性に興味がわいた。
一瞬だけ、白黒の世界にノイズが走って、彼だけを着色する。2006-01-04 16:53:00 -
14:
プリントの隅に、小さく何か書かれている。
『昼休み 管理凍の裏、西側に来てほしい。昨日のアレについて ミハラ』
彼からの伝言。
あのクールなマスクの下に、少し焦りと言う人間味を感じた気がした。
あたしの『なんとなく』だった世界がにわかに動きだしたみたいだ。2006-01-04 17:06:00 -
15:
昼休み、あたしはメモ書きの場所へ向かう。綺麗とは言えないが、バランスの整った読みやすい字だった。彼の性格が少しにじみでている。
もぅ桜は青々とした葉をまとっていて、一見しただけでは『桜』とはわからなくなっていた。
『アダチさん』2006-01-05 11:37:00 -
16:
振り返ると、眼鏡をはずして階段にしゃがみこんでいた。脇にはジュースとパンの袋。
『もしかして一人でご飯食べてたの?』
『だって時間指定してなかったから、いつ来るかわからなくて。呼び出しといて遅れるワケにもいかないだろ?』
少し俯き気味の彼の耳が、赤く熱をもっているように見えた。
『あはは。そっか。で?用件は?告白だったらヤメてよね』2006-01-05 11:48:00 -
17:
『茶化すなよ。わかってるだろ?』
ザリッと砂を靴の裏でなでる。
『…昨日のおばさん彼女?だとしたら、相当ミハラ趣味いいねぇ』
『生憎だけど俺はそんな趣味持ち合わせてないよ』
『ま、なんでもいいケド。大丈夫、誰にも言わないから』2006-01-05 11:55:00 -
18:
『そうしてくれると助かるよ』
『まさか、タダだなんて思ってないでしょ?』
彼が何かを察知したように、スボンのポケットから黒い長財布をとりだしてきた。
骨張った間接だけがやたらと強調された彼の指がしずかに紙を数えている。
『今は手持ちで1万8千円しかないよ。いい?』2006-01-05 14:57:00 -
19:
あたしは『だめ』と意地悪く両手の人差し指を顔の前で交差させる。彼の眉間には深くしわがよる。
『お金なんていらない。今日さ、一緒に帰ろ』
突然のあたしの申し出に、『何考えてんだ?』とでも言いたそうな怪訝な顔をした。
『…別にいいけど』
『じゃあ決まりね』2006-01-05 15:06:00 -
20:
あたしは彼に背中ごしに手を振って、その場を離れた。
振り返り、一瞬だけ目の端で彼の姿をとらえる。取り残された彼は、周りの風景よりも鮮やかに、その色を発していた。
なんとなく、彼にはあたしと同じ『ニオイ』がする。似た人種なんだと感じる。
なんとなくはなんとなくであって、根拠なんてまったくない漠然としたモノなんだけれど。
あてにならない直感を、たまには信じてみようかと思った。2006-01-06 22:19:00