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絆-Kizuna-

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  • 1:

    頑張って書くので宜しくお願いしますm(__)m

    2005-06-26 01:28:00
  • 2:

    美香はそう言うと軽くウインクした。
    「なんで言ってくれなかったの?」
    内心みんなそう思ってたに違いない。後から美香に話を聞いたら、内緒にしててくれって頼まれていたらしい。話が漏れてカメラ張りされたら困るからって。
    そういやたまに出てるよね、写真週刊誌にも激写!みたいな感じで。まぁ用心に越したことはないけど一応ねぇ・・・あーあっ分かってたらもっと気合い入れてきたのに。
    なーんてことを考えてるうちに自己紹介が始まった。私の隣にいた人が勢いよく話しだした。
    「初めましてー田村です。今日は楽しく飲みましょーイェイ」

    2005-06-26 02:07:00
  • 3:

    裕子は緊張してたせいか、少し焦り気味で早口になっていました。それを見ていたら場の雰囲気がやや和み、みんなつられて笑顔になりました。
    「野原一志です。華の独身26!かっちゃんって呼んで下さい。」
    四人の中じゃ一番ノリのよさそうな元気人。女の子のつかみは、ひとまず野原さんがリードしたみたいだ。
    「川上あゆみです!23歳A型です。化粧品販売やってます。よろしくー。」
    ハセキョー似のあゆみは私と幼なじみ。もうかれこれ20年の付き合いだ。喧嘩もするけど気付いたらずっと一緒にいる親友ってやつです。

    2005-06-26 02:46:00
  • 4:

    そうこうしてるうちにあと一人で回ってくる・・・緊張するなぁ。
    そう思いながら待ってると「はじめまして、矢口晃太です・・・」
    えっ?・・・。
    一瞬シーンとした直後、田村さんがすかさず
    「短か!」
    と突っ込んだおかげで場が繋がった。矢口晃太・・・結構好きな選手だったけどクール?
    そして私の番がきた。
    「はじめまして。相川由里です。今日はビックリして緊張してるけどよろしくでーす!」
    ってことでひとまず自己紹介終了。
    プロ野球選手と街中にいるような今時の女の子達。このコンパが彼と出会った最初の日だった。

    2005-06-26 03:06:00
  • 5:

    みんな時間がたつにつれ緊張もほぐれ、ゲームをして飲んだりロシアンルーレットの激辛料理を罰ゲームにしたり、楽しい時間が過ぎていきます。
    だけど右隣にいる矢口晃太は元気がない。食事もお酒も進んでない。左隣の田村さんは食べては飲み食べては飲み、うるさいぐらいに元気なのにまるで正反対だ。
    野原さんとあゆみは携帯交換をしながらいい感じムード。裕子も同級生君と話し込んでる。
    美香は田村さんにつられてお酒をぐいぐい飲んでるけど、意外にこの二人は似た者同士に見えた。
    私はというと、矢口さんが気になるけど何話せばいいのか

    2005-06-26 03:21:00
  • 6:

    分かんなくてドキドキ。楽しくないのかな?って私まで落ち込みそう。
    矢口さんクールなのかな。ジッと見てしまってた私に気付いた矢口晃太は
    「由里ちゃんだっけ?」と聞いてきたので私はコクンと頷いた。
    「由里ちゃんつまんないでしょごめんね。俺ちょっと今日色々あってさ。テンション上がらなくて。」
    と小さな声で言った。
    「いいよ大丈夫!由里もへこんだ時はそんなんだし誰にでもそんな時はあるから。でもご飯はちゃんと食べようよーおいしいよ?」
    私がそう言うと矢口さんは手つかずだったお皿に箸を伸ばしてくれた。

    2005-06-26 03:38:00
  • 7:

    って・・・私何言ってんの・・・しかもタメ口で。やばいよー。一人でパニクってると
    「本当だーうまいね。これ。」
    そう言いながら矢口さんは目尻にシワを作りながらニコッと笑った。ドキドキする。何これ。顔が熱くなってくのが分かった。
    矢口さん。スゴイ人なんだよね。会えたことは奇跡みたいなもので。テレビに映る姿は普通でも、実際は物凄く大きくて強そうで。
    それに優しい顔して笑う。あんな顔されたら反則だよ。
    「三つ違いかぁ。変わんないよな?由里ちゃんから見れば俺っておっさんになる?」
    「全然そんなことないですよ。」(笑)

    2005-06-26 03:56:00
  • 8:

    なんなら若いよって感じだった。
    その時、私の携帯が鳴った。見てみると仕事の先輩から。とりあえず電話にでながら個室を出てついでに化粧室に入った。
    仕事の予定確認も終わり化粧室を出るとそこには左隣に座ってた田村さんがいました。
    「こーたどう?元気出てきたっぽいけど。試合で色々あったからなーあいつ。」
    田村さんは

    2005-06-26 04:09:00
  • 9:

    あたり

    しおり?応援してます(*^▽^*)

    2005-06-26 04:16:00
  • 10:

    心配そうな顔で私にそう言った。試合で何かあったんだ?深く突っ込むといけない気がして黙って聞いてると、
    「エラーしたり最近全然打てなかったりでコーチに色々キツイこと言われたみたいでさ」
    あっ・・・そうか。
    「そうだったんだー。でも変に気にして接するより普通にしてるほうがいいと思います。楽しくいれたら気分も晴れるだろうし。」
    そう言うと田村さんは私の肩をポンと叩き、
    「よし!じゃあ明日は休みだしはじけよー」
    と言って先に個室に戻ろうと歩いて行った。その時、個室から矢口さんも出てきて田村さんと私と目が合った。

    2005-06-27 01:24:00
  • 11:

    矢口さんは何も言わずに田村さんと私の横を通り過ぎ、トイレに入って行った。何故か気まずい雰囲気に田村さんは急ぎ足で個室に入った。
    私も後を追うように席に戻った。
    しばらくして矢口さんが戻ってきたが、私達のところだけ静かな時間が流れていく。何か、何か話さなきゃ。
    「飲んでますかー?」
    そんな言葉しか出てこなかった。
    「うん。飲んでる。」
    ・・・うわー。最初と同じテンションに戻ってる。困った私をジッと見た矢口さんは
    「俺はいいから田村さんと話してていいよ。疲れてるからもう帰るしさ。」
    えっ?何で田村さんなの?

    2005-06-27 01:33:00
  • 12:

    「何で?話すなら矢口さんも一緒に話しましょーよ。」
    ・・・また間があく。
    「だったじゃん」
    ボソッと聞こえた。
    「何て言ったの?」
    「田村さんといい感じだったじゃん」
    一瞬ワケが分からずにいるとそれを聞いてた田村さんが
    「こーたお前何言ってんの?さっきはゲームのネタ合わせしてただけだよ。」
    と笑いながら言った。
    私も矢口さんも二人してキョトンとしてると、あゆみが
    「二人とも飲んでないよー飲まなきゃ!ほらほら飲んで!」
    (パンパン)
    鳴りやまない手拍子につられて私と矢口さんはお酒を一気飲みした。

    2005-06-27 01:43:00
  • 13:

    いつもなら酔っ払ってもおかしくない飲み方なのに、何故か酔いも回らず張り詰めた緊張感だけが消えずに残ってる。
    「勘違いしてたよ。田村さんのこと気に入ってんのかと思ってた。」
    えー?そりゃないよ。この中じゃ断トツ・・・ううん違う、テレビで見てても矢口さんが一番好きだったし。
    なんてそんなことは言えるはずもなくて。
    「そんなことないですよー。矢口さんが一番カッコイイし!」
    とりあえずそう言うと
    「はいはい。お世辞はいーよ。俺が野球やってるからでしょ。錯覚してるだけだよ。」
    でも少し照れ臭そう。

    2005-06-27 01:53:00
  • 14:

    「まぁ確かにね。由里は今日までテレビでしか見たことなかったから。でも矢口さん実物も本当にカッコ良いからビックリした。」
    お酒のせい?か照れてるせいか矢口さんは顔が真っ赤になり、またお酒をグイっと飲み干した。
    「由里ちゃん彼氏はいるの?嘘はなしで」
    彼氏・・・か。微妙なのがいる。彼氏じゃないけど元カレが。別れてまだ一ヶ月。今でも電話やメールがある。
    「いないですよ。最近別れたばっかりで。」
    「じゃー今フリー?番号聞いても大丈夫?」
    えーーーーーーっ?
    フリー?って番号って私の!?内心心臓バクバクで

    2005-06-27 02:07:00
  • 15:

    自分の心臓の鼓動が体中に響いた。
    「由里の番号ですか?あっあ、えっ、い、いいですよ。」
    噛み噛みの私の言葉を聞いてハハッと笑った矢口さんはズボンのポケットから携帯を出して渡してきた。
    「メルアドもオッケーなら入れてね。」
    そんな声も聞こえなくなるぐらいに私の心臓はドキドキが止まらなかった。いつもは簡単に押せるアルファベットも番号も、この時ばかりは何回も間違えた。
    ピッピッ
    (電話帳登録完了)
    やっと終わって携帯を渡すと矢口さんはまたポケットに携帯をしまった。
    あ・・・番号聞かれただけだ。私は聞いてないよ。

    2005-06-27 02:17:00
  • 16:

    かかってくる・・・わけないよね。こんなの野球選手なら日常茶飯事なんだろうなー。番号聞かれたぐらいでなに舞い上がってんだろ。
    目さませ由里!自分で自分に言い聞かせた。
    でもそのあと何を話したかよく覚えてないぐらい頭は真っ白だった。
    時間がたっても変わらず盛り上がるビップ席。今日は本当に凄い一日だ。田村さんもあんなにバカみたいに踊ったり騒いでるけど、超一流な野球選手。
    矢口さんも人気選手だし。世界の違う遠い人なのに今日は近くにいるなんて・・・。でもこんなに近くにいてもすごく遠い人なんだよね。

    2005-06-27 02:27:00
  • 17:

    そう思うと急に距離を感じた。
    (ブーブーブーブー)
    あっ携帯だ。そっと見てみると知らないアドレスからのメールだった。
    (俺もう帰るけどちょっと話さない?ちなみに隣のおっさんだけど)
    んっ?隣のおっさん?・・・?矢口晃太!?
    チラッと矢口さんを見ると指でシーって内緒サインを出した。
    (話すって出て?大丈夫だけど)
    メールを送信した。
    またメールがきた。
    (そうだよ。帰りはちゃんと送ってくからバー付き合ってよ)
    それを見て私がまたメールを作ってると
    「ムーン顔ださなきゃいけないから由里ちゃん借りてっていい?」

    2005-06-27 02:38:00
  • 18:

    「一杯飲んですぐ戻ってくるからさ」
    みんな盛り上がってるせいかあんまり聞いてない。
    「おーい」
    矢口さんがそう言うと
    「オッケーオッケー。俺らカラオケ移るかもしれないからまた移ったら連絡するから。先に帰ったりすんなよー」
    と田村さんが笑った。
    そして私と矢口さんがビップを出ようとした時、あゆみがそっと近付いてきた。
    「由里良かったね!矢口晃太めちゃくちゃ好きだったじゃん。頑張ってね!」
    と小声で囁いた。

    2005-06-27 02:49:00
  • 19:

    ?

    ???

    2005-06-27 07:06:00
  • 20:

    私は軽くあゆみとハイタッチしてバイバイしながら個室を出てお店をあとにした。
    コツコツコツ・・・
    ヒールの音が響く。
    「それヒール何センチくらいあるの?」
    「10センチだよ」
    私がそう言うと矢口さんはまたニコニコ笑いながら私の頭をポンッと撫でた。
    「マジ小っちぇー。俺184なんだよね。」
    184かぁ・・・
    「じゃー由里と27センチも違うんだー?」
    「ってことは157ってことか。ヒール履いてても小さく感じるからぬいだらもっと小さいんだよね。」
    不思議そうに私を見る矢口さん。

    2005-06-27 12:30:00
  • 21:

    やっぱり彼女になれるような人はかっこよくて綺麗で何の欠点もないぐらいキラキラしてるんだろう。
    「そ、そーなんだ。」
    何故か私は言葉が見つからなくてただ矢口さんの後ろを歩いていた。
    「もうすぐ着くからごめんね。あの青い光りの見えるとこだから」
    矢口さんが指さした先は大通りを挟んだ道路の向かい側にある綺麗な青の水槽が光る場所だった。
    ちょうど赤信号になり信号待ちをしていた私達はお互いに何を話していいのか分からないせいか沈黙が静かに続いた。
    そんなこととは反対に夜の繁華街は車の音や街中のBGM、人々の声でガヤガヤ

    2005-06-27 12:52:00
  • 22:

    している。その時だった。若い女の子達が近付いてきた。
    「あのー矢口選手ですよね?」
    「あ・・・ハイ」
    キャッキャと喜ぶ女の子達の声が響いた。
    「ファンなんです握手して下さいー」
    「私サイン欲しい!」
    そんな声が飛び交う中、隣にいた私に気付いた一人の女の子がジッと私を見た。それは決して良い目では見ていなかった。誰この子?そう思っていただろう。
    女の子達に囲まれた矢口さんに気付いた周りの人達も、何故か私をジッと見てる。
    その場の空気に耐え切れず青に変わった信号を見ると私は足早に横断歩道を渡った。

    2005-06-27 13:01:00
  • 23:

    矢口さんも気付かないままだった。渡り切った道路の向かい側を見るとまだ女の子達に囲まれてるのが見えた。
    どうしようかな・・・勝手に渡ってきたのはいいもののどうすればいいか分からなかった。
    すぐそばには青い水槽が見える。歩きながら近付くとMOONと書かれた看板が出ていた。ここかぁ。綺麗だなー。
    でも先に入ることも出来ず、そこも通り過ぎてしまった。
    (ズキン)
    また胸の奥が苦しい。舞い上がりすぎてたなー。偶然隣に座ってたから誘われただけなのに。あゆみ達のとこ戻ろう。所詮私は一般ピープル。住む世界が違うんだ。

    2005-06-27 13:09:00
  • 24:

    そう思うと開き直れたのかどうでもよくなりあゆみに電話をかけた。
    (もしーどしたの?)
    聞き慣れたあゆみの声でホッとした。
    「まださっきのお店にいる?」
    (今ねーカラオケに入るとこだよー。)
    「そっか。じゃー場所教えてよ戻るから。」
    あゆみは長年の勘で気付いたのか
    (なんかあったのー?声に元気ないよ!)
    「うん。なんでもないわけじゃないけどまた後で話すよ。」
    プルルップップッ
    その時キャッチが入った。090********?誰だろ?
    「あゆみごめんすぐかけ直すから」
    (分かったーじゃね)

    2005-06-27 13:21:00
  • 25:

    でも出るのを少しためらった。あ・・・矢口さんかもしれない。そう思うと出れなかったのだ。
    あゆみ達のとこ戻ったら言えばいい。はぐれちゃって気付かなかったって後でかけ直せばいい。私はあゆみに電話をかけ直そうと歩きながら携帯を見ていた。
    でも今日はもう帰ろうかな・・・変に神経使ったせいか私は疲れていた。どうしようかな。歩きながら考えているとまた携帯が鳴った。
    あ、まただ。さっきと同じ番号から鳴ってる。携帯を見ながら迷っていると後ろからトントンっと肩を叩かれた。
    (ドキッ)

    2005-06-27 13:31:00
  • 26:

    おそるおそる振り返るとそこに立っていたのは矢口さん・・・ではなかった。
    「由里何してんの?」
    聞き慣れた声。見慣れた顔。元カレの英二だった。
    「あ、英二こそ何してんの?今あゆみ達とはぐれちゃって。」
    「そっか。俺は結婚式の二次会の帰りでさー。飲み過ぎたー。」
    「うん、顔真っ赤だもん。気をつけなよ!じゃーねバイバイ」
    私はそう言うと英二に背を向け歩いた。
    「おい由里!ちょっと待てって。」
    振り返った私に英二は少し怖い顔で
    「由里さぁ俺・・・」
    その時だった。
    「由里ちゃーん!」
    声が聞こえる。あっ矢口さんだ。

    2005-06-27 13:46:00
  • 27:

    声に気付いた英二も矢口さんを見た。
    「うわー矢口じゃん」
    英二はビックリした声で私の顔を見た。
    走ってきた矢口さんは息切れしながら私と英二を見ると
    「知り合い?てゆうか急にいなくなるからビックリしたよ。電話もかけたんだけど?」
    「あっ・・・ごめんなさい。えっと。」
    私の手には携帯が握りしめられていた。気付かなかったとは言えない。英二も不思議そうに突っ立ってる。気まずい。
    「由里ちゃん?」
    矢口さんも困ってる。
    「俺行くわ後でまた連絡するから。」
    英二は雰囲気を察したのかそう言うと駅に向かって歩いて行った。

    2005-06-27 13:56:00
  • 28:

    偶然にしてもタイミングが悪すぎる。
    英二と別れて一ヶ月、別れてからも英二からは毎日のように連絡はあった。やり直そうって。そんな私にも迷いはあった。
    三年も付き合ってたんだ。簡単に気持ちの整理がつくわけがなかった。呆れて喧嘩もしなくなってたマンネリ化した気持ち、最後の一年はデートはいつも英二の家。
    英二は夜の顔を持つホストだった。度重なる女遊びや浮気に嫌気がさした私は別れることを決め、半同棲だった家から服や荷物を持ち帰った。
    いつものことだと英二も余裕だったはずだ。でもあれから一ヶ月、あの家に近付くこともない

    2005-06-27 14:10:00
  • 29:

    「由里ちゃん大丈夫?さっきのやつってもしかして前の彼氏とか?」
    冗談混じりで聞いた矢口さんの言葉に返事が出来ずにいると焦り顔で
    「うそっ!?本当に?マジ?あっ何ていうか今時のイケメンって感じじゃん」
    気まずい。今日は本当に気まずい。ずっといいことないし。もう本当帰りたいや・・・
    また沈黙が続くかと思ってると
    「でも元カレっしょ?今日は俺が由里ちゃん独占だよね?」
    そう言うと私の手を掴んで歩きだした。
    初夏だといっても夜は少し肌寒い。でも繋いだ手はとても大きく温かかった。

    2005-06-27 14:26:00
  • 30:

    「ここ、ここ」
    矢口さんは扉を開けてエスコートしてくれた。大人だなぁ。英二とは全然違う。って比べる次元じゃないけど。
    お店の中は真っ白いソファーやチェアがブルーの壁に映える。壁に描かれた大きな満月の絵がとても神秘的で思わず見入ってしまった。
    カウンターの中にいた渋いバーテンさんが矢口さんに気付いた。
    「おっ晃太。久々!」
    「おー久しぶり!カウンター座ってい?」
    「どーぞどーぞ」
    どうやらバーテンさんと矢口さんは知り合いみたいだ。
    「何飲む?」
    矢口さんに聞かれた私は、カクテルの名前なんて詳しく知らないし

    2005-06-27 16:50:00
  • 31:

    何よりもうすでにかなり飲んでるし。ずっとメニューとにらめっこしてると
    「んーじゃあ俺はビールで、あとこの子っぽいカクテル作って」
    バーテンさんはコクコクと小さく頷いて私の顔を見ると
    「彼女お名前は?」
    名前?何でだろ?
    「由里です。初めまして。」
    「由里ちゃんか。俺は伊藤健太。よろしくね。」
    伊藤さんはシェーカーを振りながらペコッと会釈をしてくれた。
    「はい!出来上がりー!前ごめんねー」
    そう言うと伊藤さんは私の前に可愛いピンク色をしたカクテルを出してくれた。「由里ちゃんスペシャル!どお?」

    2005-06-27 17:21:00
  • 32:

    お店の扉が開き、男の子達四人組のお客さんが入ってきた。
    「晃太ごめんまた後でな、由里ちゃんもゆっくりしてってね」
    そう言うと健にいは、奥にあるダーツでその四人の人達と遊び始めた。
    「ちゃん?」
    「えっ?ごめんなさいぼーっとしてた。」
    「さっき何でいなくなったの?」
    どうしよう・・・
    「いや、ただはぐれちゃっただけですよ。」
    とっさにそう言った。
    「信号でひっかかた時さ、わざと離れたよね?道路の向こうに渡ってく由里ちゃん見えたんだ」
    見えてたんだ・・・
    「私なんかといて勘違いされたら恥ずかしいでしょ。」

    2005-06-27 17:50:00
  • 33:

    「矢口さん有名人だしね。さっき女の子達にジロジロ見られたから勘違いされたら困るかと思ったの。」
    少しムッとした顔をした矢口さんは大きく溜め息をはいた。
    「別に俺が誰といようが周りには何も関係ないと思う。由里ちゃんが迷惑に思ったなら仕方ないけどさ。俺は由里ちゃんを誘ったんだよ?みんなさ、野球選手だからって色メガネで見てるんだよ」
    矢口さんは吐き捨てるようにそう言った。
    「由里ちゃんは今日ずっと普通に接してくれたじゃん。近付いてくる女はみんな野球選手ってブランドみたいなもんに目くらんでるやつばっかだからね。」

    2005-06-27 18:03:00
  • 34:

    「それにさっきの飲み会もわざと俺らのこと内緒にしてもらってたんだ。今まで野球につられて来るような子ばかりだったから」
    そうだったんだ・・・
    「由里ちゃんはどうして今日俺と飲み直してくれたの?」
    どうしてって・・・
    私だって分かんないよ。でも私もそのへんの子と変わらないのかも。色メガネで見てたのかな?
    ただ今日は田村さんに矢口さんが元気ないのはコーチに怒られたからだって聞いてたから・・・。
    「矢口さん元気なかったから。ちょっとでも気分転換になればいいかなと思って。」

    2005-06-27 18:19:00
  • 35:

    名無しさん

    楽しい(^^ゞ続き待ってます

    2005-06-27 20:08:00
  • 36:

    「元気ないかぁー。ちょっと成績のこととかで色々あったからさ。初めて会ったのに気使わせちゃったりしてごめん。」
    「由里は大丈夫ですよ。今日は美味しいもの食べて楽しいお酒が飲めたし。矢口さんと会えたのも嬉しかったです。」
    それから私達は間にあった壁がなくなったかのように他愛もない話しをした。
    トイレに立った私は多少の化粧を直してカウンターに戻ると健にいが戻ってきていた。
    「明日は休み?移動とかあるの?」
    そんな声が聞こえる。
    「休みだけどスケジュールぎっしり。疲れも取れる暇ないよー。明後日はこっちだし楽だけど」

    2005-06-27 21:06:00
  • 37:

    矢口さんも大変なんだなぁ。ただ熱い華やかなだけの世界でもないんだね。
    「そういや由里ちゃんってどこの子?仕事何やってんの?」
    ドキッ・・・
    嫌な話振ってくるなぁまた。
    「えっ!?お前まさかナンパ?」
    すかさず健にいが突っ込んだ。私と矢口さんは顔を見合わせ思わず笑った。目尻にできるシワ。優しい目。本当に矢口さんは子供みたいな顔して笑う。
    やばいなぁこんな顔されちゃうと。
    「実家は千葉です。今は六本木の近くで一人暮らしですけど。」
    「水商売とか?」
    健にいが冗談ぽく言った。図星だ。
    「そうですよ。」

    2005-06-27 21:34:00
  • 38:

    一番驚いてたのは矢口さんだった。口があいたまま。
    私は隠すつもりはなかった。聞かれたら答えるつもりでいた。でも今日ばかりは言わなきゃ良かったと後悔した。
    「引いた?」
    私が聞くと矢口さんは
    「そんなことないよ。意外だっただけ」
    意外・・・か。
    「だから落ち着いてるように見えたのかな」
    健にいは顔色を変えることなく私を見て言った。落ち着いてる?そうかもしれないなぁ。色々ありすぎたからね。
    ってもう4時だ。
    時計を見た私を見て矢口さんは気にしたのか
    「そろそろ帰ろっか。チェックして。」

    2005-06-27 21:44:00
  • 39:

    会計も終わり店の外まで健にいがお見送りをしてくれた。
    「由里ちゃんまたおいでね。一人でもいいし晃太とでもね。あ晃太より可愛い友達と来てくれたほうが大歓迎!」
    そう言いながら健にいはタクシーを拾いに行ってくれた。
    「由里ちゃーん」
    手招きする健にいのタクシーに乗り込んだ。
    「今日はごちそうさまでした。矢口さんも健にいもありがと。おやすみなさい。」
    矢口さんは慌てた顔。
    「送ってくよ。回ってけばついでだし。」
    私は何故か
    「ここで大丈夫です」
    と言った。
    そんな私と矢口さんのやりとりを見た健にいは

    2005-06-27 22:13:00
  • 40:

    「俺店戻るよ。じゃまた来いな」
    そう言うとゆっくりとMOONに帰っていった。
    「本当に大丈夫だから。ありがとうございました」
    私が矢口さんに言うと、困った顔で
    「分かった。遅くまでごめんね。じゃ運転手さんこれでお願いします。」
    そう言うと運転手さんに一万円札を渡した。
    「ちょっ、と。いいよ。ちゃんとあるから」
    って言ったのに矢口さんは閉めて閉めてと運転手に合図した。
    ドアが閉まりタクシーは走りだす。何か悪いことしちゃったかな・・・でも仕方ないよね。もう会うこともないだろ。
    水商売って聞いてビックリしてたし。

    2005-06-27 22:32:00
  • 41:

    前の彼女はモデルとか言ってたっけ。私なんて相手にもされるわけない。でも優しい人だったなぁ。
    テレビに映る顔はキリッとしてて強そうなのにあんな顔して笑ったりもする。それを見れただけでも超幸せだよね。
    「さっきの人、矢口選手ですよねー?」
    運転手が話し掛けてきた。行き先は言ってる。場所も分かりやすい場所だ。だから運転手の声は聞こえない、寝てるフリをした。
    目をつぶると今日一日の出来事が静かに浮かぶ。あぁ本当に眠くなってきた。
    (ブーブーブー)
    その時カバンから携帯のバイブが動いた。矢口さんからだ。

    2005-06-27 22:43:00
  • 42:

    「もしもしー」
    私は電話に出た。
    (今どのあたり?)
    えーっとここどこだっけ?あっ**通りだ。
    「**通りの公園のとこですけど。」
    (ちょっとそこでおりないで止まってて!今そっち方面向かってるから)
    返事する間もなく電話は切れた。何?仕方なく運転手さんに言って止まってもらった。
    矢口さん何なんだろ?
    しばらくするとコンと窓を叩く音がした。
    私は窓を開けた。
    「ごめん運転手さんこの子おります。お釣りいらないから。」
    そしてドアが開いた。
    えっ!?おりなきゃなんないの?ってゆうかおりなきゃね・・・。

    2005-06-27 22:54:00
  • 43:

    タクシーをおりた私の手を掴み、矢口さんは歩きだす。
    「散歩しよ!散歩!」
    そう言いながらまたあの可愛い顔で笑った。酔ってるの?酔ってないよね?
    少し歩くと公園の入口があって、矢口さんは手を繋いだまま公園に入り近くにあったベンチに腰かけた。
    でも私は手を繋いで立ったまま座らなかった。
    「あの・・・どうしたんですか?」
    夜の公園は静かだ。シーンとしてて怖いぐらい。矢口さんも黙ってる。
    「あの?」
    その時急にグイっと手を引っ張られた。と同時に私は抱きしめられてた。一瞬何が起こったのか理解できずに時間が止まった。

    2005-06-27 23:08:00
  • 44:

    名無しさん

    本当の小説みたいですね\(^_^)(^_^)/今はじめから一気に読みました。続編期待してます☆

    2005-06-27 23:10:00
  • 45:

    (ドキドキドキドキ)
    また心臓が鳴りやまない。ってどうしてこんなことになってんの?
    矢口さんは座ったまま私を膝に乗せて後ろから抱きしめたまま話し始めた。
    「由里ちゃん見送って俺もタクシー拾って帰るつもりだったんだけど・・・由里ちゃんのこと気になって自分でも分かんないけど何てゆうか・・・」
    聞こえてるはずの言葉なのに信じられない私がいる。「矢口・・・さん?」
    静かにゆっくりと時間だけが流れていく。

    2005-06-27 23:24:00
  • 46:

    名無しさん

    しおり

    2005-06-27 23:49:00
  • 47:

    「酔ってるだけだよー。今日いっぱい飲んだから。ね?」
    そう言うだけで精一杯だった。遊びでからかわれてるだけだと自分に何度も言い聞かせた。
    「由里は六本木のホステスだよ?ありえないよ。それに矢口さんも引いてたじゃん」
    矢口さんはパッと抱いていた手を離した。ほらね。そうだよね。分かってたけど悲しくて苦しかった。
    立ち上がった私は後ろを振り返ることなく足早に歩いた。そこから早くいなくなりたくて。
    一体なんなんだろう・・・今日会ったばかりなのにこんなに胸の中ひっかきまわされて。バカみたいだ。

    2005-06-28 00:00:00
  • 48:

    早く帰ろう。帰って寝れば今日のことなんてスッキリ忘れられる。でも悔しくて涙が出た。
    公園を出てすぐにタクシーを拾い家路についた。タクシーをおりマンションに入るとそこには英二がいた。何でいるの?
    「目腫れてんじゃん。どした?」
    泣き腫らした目。誰が見てもすぐ気付く。私は帰りのタクシーのなかでずっと泣いてたんだから。
    「酔ってるから泣き上戸ってやつ。年とったせいかなハハッ」
    無理して笑った。
    「英二こそ何してんのここで。何か用?」
    英二は戸惑ってた。
    分かってる。待ってたんだ。私が帰ってくるのを。

    2005-06-28 00:13:00
  • 49:

    「なぁ由里。俺ほんと更正するから。もう絶対お前に嫌な思いさせないから。だから帰ってこいよ俺のとこに」
    英二・・・。私にとっては居心地のいい場所だった。三年一緒にいたもん。私のこと全部分かってるしホステスであろうが関係ないし。
    なんならお互い同業だしね。帰ってこいかー。やり直してもいいかなって少し思った。
    でもだめだ。今まで何回も英二の浮気に目つぶってきたけど、反省するどころか同じことの繰り返しだった。
    英二は歌舞伎町のホスト。顔も元カノの私が言うのもなんだが金子賢似でカッコイイ。

    2005-06-28 00:28:00
  • 50:

    スーツに見を包めばそれだけで人を引き付けるくらいだ。
    巧みなトークにお酒の強さ。ナンバーワンになるのにもそう時間はかからなかった。
    今の英二からは想像できない。英二と出会ったのは私が以前働いていたキャバだった。
    三年半前、英二がまだ建築作業の仕事をしていた時、若い同僚の人達と一緒に飲みにきたのだ。力仕事をする英二はたくましくて、何より一生懸命に私に向かってきてくれた。
    出会ってから休みを見つけてはよく遊ぶようになり、気付けば毎日一緒にいた。そんな英二がホストになったのは私の影響も少なからずあっただろう。

    2005-06-28 00:40:00
  • 51:

    英二がホストになって約二年。半年でナンバーワンになり、それ以来ほとんどナンバーワンをキープしている。
    お金も数えるのが大変なくらい手にするようになった。硬派だった男も女遊びも覚えると変わっていく。
    女相手に仕事をしているせいもあり、女の扱いも手慣れたものになった。
    仕事だ。仕方ない。同業だし仕事の理解はせざるを得なかった。
    でも女の勘は鋭いもので、何かある時は証拠なんてなくてもすぐに分かってしまうものだった。

    2005-06-28 00:46:00
  • 52:

    見たこともない女が今私が働いてる店に乗り込んできたこともある。
    英二と別れようと決めた一つのきっかけにもなった。英二は歌舞伎町、私は六本木。別の街でも噂は噂を大きくしたんだろう。
    酔っ払った品の悪い女が大声を張り上げながら入ってきた。
    「ゆかり(私の源氏名)ってどいつ?指名するからつけて。金ならあるから」
    見慣れない顔、女一人の客。店内にいた誰もがすぐに悟ったはずだ。トラブルかって。
    私の指名客も二組来ていたが、まずい話が漏れても嫌なので念のため会計チェックして帰ってもらった。

    2005-06-28 00:55:00
  • 53:

    私は少しイライラしていた。英二のことだと分かりきっていたからだ。マネージャーに頼んで女性客禁止ですと言ってもらい帰ってもらうこともできたが、仕事中に来る=ホステス潰しなわけで。
    ちょっと頭冷やさせようかなって半分楽しんでいたのかも。ラストも近くなってきて客席もポツポツだったからちょうど良かった。
    「失礼します。ご指名ありがとうございますゆかりです。」
    名刺を差し出した。
    私の名刺を手に取った女も名刺を切ってきたので受け取った。
    (なつき。歌舞伎町かー。もろ英二だよ)
    予感は的中した。

    2005-06-28 01:08:00
  • 54:

    煙草をフッと吹きながら私をジッと見る。
    「あんたさー、英二の女?」
    なにこいつ。年増ホステスみたいな顔して。
    「お答えする理由はないと思いますが」
    私は即答で答えた。
    なつきは大きな声で
    「私は英二の女なの。でもあんたが彼女だって噂が絶えないから迷惑してんのよ分かる?」
    私も性格の悪い女だ。思わずクスッと鼻で笑ってしまった。
    「なに笑ってんだよ!なめてんのか」
    声はより一層大きく響いた。店内の客はラストを迎え帰っていく。
    このなつきって女、同業なのに水商売のルール全然分かってないなぁ。掟破りだよ全く・・・

    2005-06-28 01:21:00
  • 55:

    「で?何?用はそれだけ?帰りたいから早くしてくんないかな?」
    煽るように言うと
    「だから英二の女なのかって聞いてんの」
    あー疲れる。ほんとこの手の女はだるい。
    「知らないよ誰それ」
    私は知らないふりをした。でも女はそれでもしつこく話を続ける。
    「嘘つかないでよ。調べたんだから」
    調べた?マジで痛すぎるよこの女。
    「だったらなに?」
    イライラしてきた私は思わず口走った。
    「英二と別れてよ。」
    泣きそうな顔だ。
    「はいはい分かった分かった。だから帰ってくんない?店終わりなんだよね。」

    2005-06-28 01:45:00
  • 56:

    それだけ言って私は席を立ちあの女が店を出たらボーイに塩をまいておくよう頼んでロッカールームに引き上げた。
    そして着替え終わるとそのまま英二の家に行った。ぼーっとしたまま考えてた。客だし我慢しよーかって。年増ホステスはタチが悪いからって。
    でも我慢する必要なんてないんだ。ずっと我慢はしてきた。何でも笑って許してきた。
    今日のことも英二は悪いわけじゃない。でも元をたどれば英二が原因。店に潰しいれられて我慢できるほどいい女じゃないし私。

    2005-06-28 01:57:00
  • 57:

    一人で黙々とそんなことを考えながら携帯を手にした。
    「もしもしー。ゆかりです。ちょっと潰してほしいホステスが歌舞伎町にいるんだけど」
    私が電話をかけた相手は夜の世界で働く者なら一度は名前を聞いたことがあるだろう。黒木さんという人だ。
    夜の街を取り仕切るドンみたいなものだ。黒木さんは私が17の頃からの付き合いで、指名客でもある。ずっと娘のように可愛がってもらってる。
    英二の働く店を決めてくれたのも黒木さんだった。父親のいない私にとってはお父さんのようなものだ。

    2005-06-28 02:08:00
  • 58:

    (どこの店の誰だ?)
    「えっと歌舞伎町の・・・」
    (ん分かった。どうする?出すか)
    私は少し考えた。
    「うーんそうだね」
    (おー分かった)
    そして電話を切った。やりすぎたかな?と少し悩んだが、これで夜の世界のルールも分かるだろう。
    出すってゆうのは23区内から出すということだ。歌舞伎町の店はクビ、勿論六本木や渋谷、神楽坂や銀座、池袋でも働けない。
    だいたい二年は無理だろう。写真や履歴データは全てまかれる。レッドホステスのレッテルが貼られ、雇う店が危険だからだ。

    2005-06-28 02:23:00
  • 59:

    そして私は自分の洋服や化粧品、小物やカバンなども全部整理し近くのコンビニで買ってきたいくつかの紙袋の中につめれるだけ詰め込んだ。
    タクシーを呼び部屋を出た私は鍵を閉め、ドアのポストにカチャンと鍵を落とした。合鍵はもう必要なかったからだ。
    両手いっぱいの荷物を抱えタクシーに乗った私は自宅へと帰った。
    もう疲れた。疲れすぎてたのだ。英二とはもう終わりだな・・・昔は楽しかったのに。家についた私は荷物を片付けることなく横になりウトウト眠っていた。

    2005-06-28 02:34:00
  • 60:

    名無しさん

    しおり

    2005-06-28 02:42:00
  • 61:

    最初の方にも書いてあるが英二はいつものことだろうと気にも止めていなかった。
    あれからもう一ヶ月。違う、まだたった一ヶ月なのかもしれない。英二との三年間を壊したのはホストになりたいと言った英二を止めなかった私自身だったのかな。
    でもそんなことはもういい。過ぎたことなんだ。ナンバーワンホストになった英二も建築作業してた英二も同じ英二には変わりないんだから。
    ただ時間と生活がお互いを変えただけ。

    2005-06-28 02:44:00
  • 62:

    そんなことが一気に私の頭の中をよぎった。色々あったなぁ・・・
    「聞いてる由里?」
    英二が聞いてきた。
    今日はずっと待っててくれたんだよね。こんなことするやつじゃないのに。でもちゃんと考えたい。私も将来考えなきゃなんない年になったし。
    「ねー英二。由里もう23じゃん。色々考えたいんだよねこれからのこと。いつまでも好きとかだけで動ける子供じゃないんだしさ。」
    「おー。てゆうか今日の矢口は関係あんの?お前泣いてたしさ」
    あっ矢口さんか・・・
    「ないないあるわけないじゃん矢口だよ?」

    2005-06-28 02:58:00
  • 63:

    「だよな。でもお前すげーよな。店にでも来たの?今度サイン貰っててよ」
    英二はバカだ。本当に単純で。
    「無理!もう会うことないし。残念ながら」
    そう。もう会うことはない。今日は夢みたいなものだったんだ。
    「じゃーおやすみ」
    英二が帰ってく。
    「英二!」
    私が呼ぶとクルっと英二は振り返った。
    「ごめんね今日。待っててくれたのに。ちゃんとゆっくり考えるから。お酒飲み過ぎないようにね!」
    私がそう言うと
    「お前もなー」
    と言いながら英二は手を振った。

    2005-06-28 03:06:00
  • 64:

    やっと家に着くともう朝の6時を過ぎていた。中途半端に残ったお酒、ボロボロになった化粧。
    鏡に写る私は最悪だった。年とったなぁ・・・。六年前水商売に足を踏み入れた時から気付かないうちに長い長い時間が過ぎていたのだろう。
    精神的にも身体的にもギリギリなような気がした。同じ年齢のホステスがいても、水商売歴一年や二年と聞くと羨ましくなる。
    水商売が楽しくて何もかもに熱くなれた頃だった。今じゃ私は死んでいくのを待つ蝶だ。
    蝶はサナギから出ると綺麗な色をつけ毎日のように華麗に羽ばたくものだ。

    2005-06-28 03:18:00
  • 65:

    美味しい花の蜜を吸い、ヒラヒラと飛び交う。ホステスも同じだ。
    でも蝶が一匹死んでも誰も気付かないように、ホステスが一人消えてもすぐに忘れさられる。
    いくら良い服を着て良い物で着飾っていてもお店にとってのいち商品でしかないのだ。誰かがいなくなれば誰かが入る。代わりなんて腐るほどいる。
    使い捨てといえば聞こえが悪いだろうけど、経営者からしてみればそんなものなんだろう。
    お金を運ぶおもちゃなのだから。それに気付いたのはまだ最近だ。

    2005-06-28 03:29:00
  • 66:

    この六年で私はたくさんの女の子と出会ってきた。数えきれないくらい。それなのに今でも会うほど仲のいいホステスは三人しかいない。
    お店が変わると付き合いも終わる。寂しいものです。それに知り合ってきた女の子の中で悲しい別れをした子が四人もいる。
    その四人の子達はもうこの世にはいない。亡くなってしまったからだ。
    子宮癌と乳癌を併発して亡くなった早紀。ドラッグに溺れて自殺した洋子。肝硬変から肝癌になった恵美子ママ。
    そしてまだ18歳だったのに鬱病のせいで大量の睡眠薬を飲み二度と目を覚ますことのなかったリサちゃん。

    2005-06-28 03:45:00
  • 67:

    名無しさん

    しおり(*^o^*)

    2005-06-28 03:45:00
  • 68:

    特に洋子のことは今でも後悔だけが残ってて。私達は見て見ぬふりをしてたから。
    仲良く遊んだり、みんなで鍋したり。楽しい日々だった。洋子も始めはそうだった。
    でも店を休みがちになり、出勤してきたと思ったら会うたびに痩せていく。おかしかった。すぐにドラッグだと誰もが気付いた。
    腕に残ったいくつもの斑点。注射器の痕がそれを物語ってた。
    気になってどうしようもなかった私達は店が終わると洋子を連れて帰るようになった。毎日二〜三人で洋子の家に入り浸った。
    本当はもうやめたいと泣き叫ぶ洋子。

    2005-06-28 03:59:00
  • 69:

    でもドラッグの禁断症状は日に日に酷くなる一方だった。
    私達にも限界はある。病院に連れていこうとも話は出た。でも連れて行けば洋子は捕まってしまう。
    どうしようもできずにいた。そんな時、洋子が寮からいなくなった。その日は日曜日だったなぁ。いつもは最低一人でも休みの日曜日はみんな洋子の家にいたのにその日は誰も行けなかったのだ。
    多分誰かが行ってるよ。そんな安易な考えだったんだろう。無責任だった。
    それから連絡がつかない日が四日続いた。
    店の店長は洋子店も来ないし寮費取れないから早いとこ空けないとと言っている。

    2005-06-28 04:10:00
  • 70:

    そんなものなの?
    店長だって洋子のドラッグのこと気付いてるくせに。
    そんな時、洋子と一番仲の良かった綾が急いでお店に入ってきた。
    「ゆかりこれ見て」
    携帯を渡された私は悪い予感がした。
    それは洋子からのメールだった。

    大好きなみんなへ
    ごめんね。助けようとしてくれたのに、またやっちゃったんだ…。頭で分かってんのに体がどうにもなんないよ…。
    苦しいよ。やめれないよ…。でもみんなを裏切ったことがもっと苦しい。もうダメだ。
    ごめんねバカな子で。こんな私と友達でいてくれて嬉しかった。見捨てないでくれてありがとう。

    2005-06-28 04:24:00
  • 71:

    名無しさん

    泣けるわ(T_T)

    2005-06-28 04:29:00
  • 72:

    「洋子の携帯繋がんないの!?」
    「うん。昼過ぎにメール入ってたみたいなんだけど見てからすぐかけ直して何回もかけてんだけどずっと圏外なの」
    私と綾は店長に無理矢理休みにしてもらい鍵を借りて寮に向かった。
    「あっ見て五階!」
    洋子の部屋には電気がついていた。ホッとした私達は急いで部屋に走った。
    (ピンポーン)
    出てこない。開けようと思ったがドアは閉まっていた。店長に借りた鍵をいれ中に入った。
    テレビの音がする。
    「洋子ー?入るよ」
    そしてドアを開けた私達は思わず目をそむけてしまった。

    2005-06-28 04:40:00
  • 73:

    私も綾もあんなに大声で泣いたのは初めてだったんじゃないか。言葉にならない声で、ただワーワーと泣くことしかできなかった。
    30分ほどたっただろうか。ドアがガチャっと開いた。里美とチカだ。私達と同じように洋子を見てきた子達だ。
    「あんた達二人洋子の家行ったって店長から聞いて来たんだけど」
    「ねぇなんで泣いてんのよ!ねぇ!」
    苛立った二人は部屋の廊下で泣き崩れていた私達を通り越し、ドアを開けた。さっきの私達と同じ。すぐに里美がドアを閉めた。
    そして同じように泣きわめいた。

    2005-06-28 04:51:00
  • 74:

    しばらくして泣き疲れた私はとりあえず、黒木さんに連絡した。
    (はい)
    「あっ、ごめんね・・・教え、てほしいん、だけど首吊り自殺、だと警察と救急どっちに電話すればいいの?ヒック・・・ヒッ」
    (由里何あったのか?誰が首吊ったんだ?おい!?)
    結局黒木さんはすぐに来てくれた。黒木さんも洋子を知っていたし「何でこんなこと」と悲しい顔をしていた。
    その後、寮ということもあって店にも連絡が入り店長も来た。私達は発見者と通報者として色々と話を聞かれたせいか物凄く長く感じた。

    2005-06-28 05:05:00
  • 75:

    洋子の死亡原因はやはり自殺だった。ドラッグの反応もすぐに出たらしい。
    遺品などは全て洋子の親の手元に渡っていたので私達は洋子の携帯に電話をかけ、通夜に出席させてほしいとお願いしたが、出席できなかった。
    来ないでくれと言われたからだ。あまりに突然すぎて洋子の両親も悲しかっただろう。埼玉にある洋子の実家は大変だったようだ。
    通夜に出席できず、私達四人はファミレスで静かに話しこんでいた。葬儀には出席したい。そう四人で話していると、綾の携帯に洋子の携帯から電話がかかってきた。

    2005-06-28 05:19:00
  • 76:

    「あっハイ。ハイ。あっいえ。ハイ・・・」
    何なんだろ?
    私達は綾の声を聞いていた。
    (ピッ)
    電話が終わりみんな顔を見合わせていると綾が言った。
    「葬儀に来て下さいって。洋子が送ったメールを見たんだって。洋子のお母さん私達のこと薬やってた仲間だって勘違いしてたって言ってた。ごめんなさいって」
    良かった・・・。お別れの言葉もなしじゃ洋子が寂しがるもん。

    2005-06-28 05:26:00
  • 77:

    そして葬儀の日、私達四人は埼玉の岩槻に向かった。お店にいる他の女の子や、店長やオーナー、マネージャーは来なかった。
    なんなら自殺した女が働いてた店だとか六本木で噂になっていることを心配しているほど。
    人って薄情だなとこの時は本当に痛感した。お焼香をあげ、ゆっくりと手を合わせる。
    洋子、ごめんね。
    助けてあげられなくて本当にごめん。病院に連れてって、洋子が捕まることになったとしても、連れて行くべきだった。ごめんね。
    何回謝っても謝りきれなかった。

    2005-06-29 00:50:00
  • 78:

    あの時、洋子がいなくなった日曜日。私達がそばにいればこんなことにはならなかったのに。
    悔しい気持ちと悲しい気持ちでまた涙がでた。もう涙はでないんじゃないかってくらいでたはずなのに、まだ残ってたんだ。
    もう一生分泣いた気がする。ううん。一生分ならいいのに。悲しくて流す涙なんてないほうがいいんだから。
    洋子を壊したドラッグを憎んでもどうにもならない。渋谷のクラブや繁華街では十代の若い子達でさえドラッグの常習だ。すぐ手に入る。
    警察の取り締まりなどあってもないようなもの。売人が捕まるなんてほんの一握りなんだから。

    2005-06-29 00:59:00
  • 79:

    軽い好奇心で手を出す。それが自分を蝕むものとその時はたいして考えていないんだろう。
    一度手を出せば後の祭り。意識障害を起こし、すぐに禁断症状がでる。ヤバイと思った時にはすでに手遅れなのだ。
    怖いものだってちゃんと知ってほしい。誰かが助けなきゃ。私達はそう誓った。

    そんな洋子との忘れられない別れが、形にはできない何かを残してくれたと思う。

    2005-06-29 01:06:00
  • 80:

    酔ったりすると時々そんなことを思い出したりする。罪悪感がどこかで消えてないからなのかもしれない。六年間の水商売歴、私に何を教えてくれたんだろう。
    やらなきゃ良かったとは思わない。でもできることなら普通の生き方もしたかったかなと思う。自分の生き方や生き様を否定するわけじゃないけどね。
    学んだこともたくさんあったし。今はやってて良かったなと。人として少しは成長できたんじゃないかなって。
    私がホステスを始めた時はまだ17歳だった。法律じゃだめなんだけどね。ナメてたってゆうか生ぬるい気持ちで入ったっけ。

    2005-06-29 01:47:00
  • 81:

    朝は新聞配達。9時から3時までは保険会社でパート。
    今考えればよく分かる。何で朝早くに新聞配達をしていたか。私達が起きる前に働いておきたかったからだ。
    朝は私達四人の学校や幼稚園の用意もあるから、考えていたんだと思う。私達が学校に行ってからパートに行き、帰ってくる頃には帰ってきていた。
    私達と過ごす時間はちゃんと今まで通り変わらないままだ。でも、今まで来てくれてた参観日や行事ごとには来てくれなかった。

    2005-06-29 02:10:00
  • 82:

    まだあまり分からなかった私達は不満を口にしていた。
    何で来てくれなかったの?明日は来れるよね?って。でも楽しみにして待っていてもお母さんは仕事に行って来てくれることはなかった。
    その頃にはお父さんとお母さんの喧嘩はひどくなる一方。お父さんは酒癖も悪く、口も悪くなった。
    「誰のおかげで飯食ってんだ!あぁ?」
    まただ。また始まった。私は喧嘩が始まると弟達を集めていつもお風呂場に連れていく。殴られたりしないように。でも何でお風呂場だったのか。

    2005-06-29 02:17:00
  • 83:

    多分みんなでそばに寄り添えたから安心できたんだ。喧嘩する怒鳴り声はおさまることがなくずっと続いた。
    「私が働いてるから食べていけてるんでしょ!もう嫌!」
    初めてお母さんが大声で逆らった。いつもは絶対にそんなことなかったのに。
    ガシャーン、ドンドン。家の中では音が鳴りやまない。風呂場では一番下の妹、美恵が泣き止まない。まだ美恵は四歳になったばかりだった。
    二つ下の弟、由輝はもう慣れっ子なのか風呂にあったオモチャで遊ぶ。四つ下の恵里は黙って私のそばから離れない。

    2005-06-29 02:26:00
  • 84:

    しばらくしてガチャンと玄関が閉まる音がした。そっと部屋に戻るとお母さんが泣いていた。
    「大丈・・夫?」
    お母さんのそばにいくと殴られた痕が痛々しく見えた。
    「・・・んた達がいなかったら」
    聞こえなかった。
    「えっ?」
    私が聞き返すと今まで見たことのない顔で
    「あんた達がいなかったら出て行けるのに」
    とお母さんは言った。
    「いいよ。出て行っても。お母さんが泣かないでいいんなら。由里がご飯作ったり洗濯もして由輝達の面倒見るから」

    2005-06-29 02:37:00
  • 85:

    私は何故かそう言ってあげることが精一杯だった。何より私達がいるせいでお母さんが苦しむのなら、もう解放してあげたかった。
    お母さんは私を見てまた泣いた。そして私を強く抱きしめた。
    「由里ごめんね。いなくなったりしないから。お母さんはあんた達おいて出てったりしないから」
    私もその時久しぶりに泣いた。一番上だから、私まで泣いちゃだめだってずっと我慢してきた分泣き出すと止まらなかった。
    それを見ていた由輝や美恵、恵里も私とお母さんのそばで泣いていた。

    2005-06-29 02:45:00
  • 86:

    それからはお母さんは私に色々なことを話してくれた。私も六年生だったから、だんだん理解できるようになった。
    お父さんがたまにしか帰ってこなくなったと同時に、家には変な電話や怖そうなお客さんが来るようになっり、そしてそれが借金取りだったということ。
    お父さんが借金を作っていたこと。今でいうア○ムやア○フルなんてざらだった。街金どころか闇金、全部で16社からの借金があった。
    その頃は全部で200万弱だったと思う。私は小さい頃、お父さんに競馬場やパチンコなんかにも連れて行かれたことがあった。

    2005-06-29 02:53:00
  • 87:

    名無しさん

    しおり★

    2005-06-29 03:00:00
  • 88:

    競馬にパチンコ、麻雀。お父さんはギャンブルにはまっていたんだろう。
    小さい頃はお土産のチョコやお菓子が楽しみだった。今思えばただのパチンコ景品だったなぁ。
    喧嘩の原因は借金だったのだ。そしてお母さんが働いていたのはその返済のため、私達の生活のためだったと気付いた。
    でもまだ六年生だった私にはどうすることもできなかった。
    それから私は中学生になり、部活にも入らず家に帰ると家事の手伝いや掃除など、できることは全てするようになった。

    2005-06-29 03:00:00
  • 89:

    ある時、お父さんが久しぶりに帰ってきたと思ったらお母さんのカバンを取り上げ財布を探している。
    お母さんは必死で取り返そうとしたが財布は見つかり、中に入っていた全部のお札とお金の入っていた銀行の封筒を取って出て行った。
    私はぼーっと立ったまま何もできなかった。
    「由里どうしよう。返済のお金と生活費だったのに・・・。」
    その頃の返済は毎月17万。お母さんは新聞配達と保険会社のパート、夜もスナックで週三回のバイトを始めていた。朝の新聞配達は7万、パートは12万、夜は10万だった。
    全部合わせて30万切る。

    2005-06-29 03:10:00
  • 90:

    でもその三分の一は捨て金のようなものだ。
    どうしようと言われてもどうにもならない。お父さんは働いてもお金は一円も持って帰ってこず、全部ギャンブルで使っていた。
    自分の父親が情けなかった。憎かった。
    わずかに残っていたお金で食事には困らなかったが、電話は鳴り借金取りは毎日のように来る。近所迷惑なんて関係ないぐらい怒鳴り声を張り上げるのだ。
    同じマンションに住む同級生に見られたこともあった。恥ずかしいというより悲しかった。

    2005-06-29 03:15:00
  • 91:

    「逃げようか」
    そうお母さんに言われたこともあった。私は何でお母さんや私達は悪くないのに逃げなきゃなんないの?といつも言った。
    その頃はスーパーで万引きしたりもした。週三回、お母さんが夜働きにいく日は万引きしてきた肉や野菜でご飯作ったりして。
    なるべく食費浮かせようとか、お母さんにはばれないようにしながら冷蔵庫の物は使わないようにした。
    それから二年生になった私は、お母さんが朝働く新聞屋で夕方の夕刊配りをした。幼なじみのあゆみは色々なことを知っていたせいか、毎日手伝ってくれたり力になってくれた。

    2005-06-29 03:26:00
  • 92:

    あゆみとは小さい時からずっと仲が良い。それは今も変わらない。私はあゆみがいたから家でも外でも笑ってられた。
    あゆみは小さい頃からお父さんがいなかった。だからあゆみも寂しい気持ちや辛い気持ちが分かるんだと思った。
    夕刊配りが終わると、私の家にきて一緒に勉強したり語ったり、とにかくよく一緒にいた。
    お母さんとあゆみのお母さんもたまに家で話したりしていた。大人にしかわからない話もあるのか、お母さん達が二人して泣いていたのを見たこともあった。

    2005-06-29 03:33:00
  • 93:

    そしてそんな日々を過ごしながら中学三年になったある日、借金をまとめるという話をされた。17ヶ所あるところを1ヶ所にするというものだった。
    銀行からの融資で借金し、それで全部の金融会社に払う。そして毎月銀行に返済していく。そうすれば利子も利息も銀行ならほんの少しで済むからだ。
    その頃には借金額が三年前の200万から400万近くに増え、倍近くになっていた。
    そして銀行からの融資もでき、お母さんが全部の金融会社に返済をした。それからは毎月5万円の返済。全てが順調そのもののはずだった。

    2005-06-29 03:42:00
  • 94:

    (○○ファイナンスですがお父さんいらっしゃいますか?)
    えっ・・・一瞬頭が真っ白になった。○○ファイナンス?
    ってあの!?
    「今いないですけど伝えておきますがどういった御用件ですか?」
    心臓がバクバクする。
    (返済期日過ぎておりますので早急にご返済いただけますようお伝え下さい)
    ガチャ・・・
    電話を切った私はしばらくぼーっとしていた。返済ってどうゆうこと?全部返したじゃん!
    お母さんが帰ってきてその話をすると、電話をかけ始めた。
    「えっ!?あ、ハイ、ハイ・・・」
    切った直後お母さんは放心状態だった。

    2005-06-29 03:57:00
  • 95:

    「何だったの?もしかしてまた借りてたの?違うよね?」
    私は静かに聞いた。
    「100万だって」
    100・・・万?
    しばらく私とお母さんは黙り込んだ。全部返済してからまだ四ヵ月しかたってない。嫌な予感がする。
    お母さんも同じだった。以前借金していた会社に順番に電話をかけ、確認をとる。
    そのうち8社からまた借金していたことが分かった。総額360万。呆れて言葉も出なかった。殺してやりたいとまで思った。
    銀行に400万借りたのも水の泡。もうなすすべもない。

    2005-06-29 04:05:00
  • 96:

    私は一度は辞めた夕刊配りを始めた。受験勉強しながらだ。
    お母さんも辞めていた夜のスナックにまた行かなけらばならなくなった。そしてある日の朝、お父さんは突然帰ってきた。
    またお金だ。財布を取り上げている。お母さんは前の時からちゃんとお金を隠し、新しい通帳を作っていて全て私の部屋のクローゼットの中に隠してあった。
    「金入ってねーじゃねーかよ」
    「ないよお金なんて」
    私はドキドキしていた。クロゼットまで探されたらどうしようと。

    2005-06-29 04:12:00
  • 97:

    話を聞いてみればお母さんも聞いたことがない金融屋だったようで、全く意味が分からなかったって。
    ただ、お父さんの借金だってことは間違いないみたいだ。
    私はもうたくさんだった。そして今でいう消費者管理センターのようなところを色々調べてお母さんと相談に行くことにした。
    書類記入や話の経過を話したらまず最初に担当者はこう言った。
    「離婚は考えていないんですか?」
    何度も離婚の話はしてきた。でも突然帰ってきてはいなくなり、帰ってきてはいなくなり。その繰り返し。離婚の話をすれば殴られるだけだった。

    2005-06-29 04:44:00
  • 98:

    担当者の人は男の人だったが調停のことや、詳しい話を色々してくれてとても親切で優しい人だった。
    そして離婚はできることになったが養育費の話し合いなどはできなかった。
    私達は引越しすることになり、借金の件もこれで全て解放される。そう思っていたが、そんなに甘いものではなかった。
    引越したマンションにも闇金は関係なくきた。お父さんが勝手にお母さんを保証人にしていた闇金の3社はお母さんのもとに取り立てにくる。

    2005-06-29 04:55:00
  • 99:

    そんな17歳になったばかりの時、私の楽しみは週に一回あゆみと遊びに行くことだった。
    その日は久しぶりに遊びに行った新宿で夕方からずっと遊んでた。そしてその時出会ったのが夜のドンこと黒木さんだった。
    「君らいくつ」
    振り返るとそこにいたのは見るからに怖そうなイカツイ人だった。黒いスーツに金むくの時計。
    私は借金取りを思い出した。
    「17です」
    そう答えると黒木さんはフーと溜め息をついた。
    「18になって夜の仕事に興味があったら連絡しておいで」
    そう言って名刺を渡してくるとスタスタと歩いて行った。

    2005-06-29 05:17:00
  • 100:

    その時は気にも止めずに貰った名刺も適当にカバンにしまった。
    そして終電で家に着いた私は由輝に話があると言われた。
    「お母さんが最近しんどそうなんだ」
    由輝の話を聞いていると私は最近お母さんとあまり話していなかったんだなぁと反省した。
    「42つってもやっぱり無理しすぎだよな」
    由輝も中学三年になると色々と気にするようになったみたいだ。
    そしてその二日後、居酒屋のバイト中に店に電話があった。由輝からだった。お母さんが倒れたという話だった。

    2005-06-29 05:24:00
  • 101:

    すぐに病院に行くと、過労が原因の身体的疲労だと先生に言われた。
    寝ていたお母さんを見て思った。こんなに痩せてたっけ?こんなに小さかったっけ?
    疲れていたんだなぁと改めて感じさせられた。三日間は入院することになり様子を見ると言われ、夜も遅いので由輝と家に帰った。
    家で待っていた恵里と美恵も心配そうにしてたが、とりあえず寝かせて由輝と二人で話をした。
    「全部おやじのせいだよな。マジ殺したいよ。くそっ」
    由輝が言うのも分かる。私はその何倍もそう思ってる。

    2005-06-29 05:40:00
  • 102:

    「由里が頑張るから、あんた受験生なんだし自分のことだけ考えとけばいいよ。大丈夫だから。」
    とは言ったものの、入院は思わぬ出費だった。あーあっ・・・何でこんなに嫌なことばっかり続くんだろ。その時だった。
    (ピンポーン)
    えっ?私は時計を見た。11時じゃん。誰?こんな時間に。
    「ねーちゃん!おやじなんだけど」
    インターホンに出た由輝が部屋にきた。
    「開ける?」
    私は首を横に振った。
    「でも俺でちゃったんだけど。」
    「ほっとけばいーよ」
    それから5分ぐらいたった時、またチャイムが鳴った。まだいるよ・・・。

    2005-06-29 06:07:00
  • 103:

    どうしよう。何しに来たんだろ?
    「もう出てくる」
    ゆっくりと由輝が玄関に歩いていく。私も仕方なくいった。
    ドアを開けると苛立った顔のお父さんが
    「なめてんのかお前?さっさと開けろよバカかクソガキ」
    と言って中に入ってきた。「何しに来たの?お母さんならいないよ。お金もない」
    私がそう言うとお父さんはジロッと私をにらんだ。それでも中に入ってきて、お母さんを探している。
    「倒れたんだよ。誰のせいだと思ってんだよ。もし何かあったら俺絶対許さねーからな」

    2005-06-29 06:14:00
  • 104:

    由輝が初めて男らしく見えた。大きくなったなぁと。そして私は倒れた経緯と、理由をお父さんに話した。いくら嫌なやつでも少しは反省するだろうと思ってた。少なくとも私は。
    「で、お前は俺のせいって言ってんのか?あぁ?おい、なぁ」
    でも次の瞬間お父さんは由輝につかみかかった。嘘・・・でしょ?
    「あぁそうだよ。お前のせいだよ全部お前がブッ壊したんだよ!」
    由輝がそう言いながらお父さんに殴り掛かった。もうダメだ。由輝は殴りあいどころか一方的にお父さんに殴られ始めた。
    殴られ蹴られ、見ていられなかった。

    2005-06-29 06:23:00
  • 105:

    私は自分の意識だったのかは分からないが、キッチンに行き出刃包丁を手にしていた。
    刃を逆さまに縦に向けた。人を刺すなら逆さまで刺せと何かのテレビで見たことかあった。
    「お姉ちゃんお願いだからやめて!」
    美恵が泣きながら私に言った。でもそんなのもう聞こえなかった。
    玄関で由輝を殴り続ける。ドンドンと音が響く。もうたくさんだ。もういい加減にしてほしい。
    好き勝手やるのはいい。でも人を巻き込むのはどうしてなの?
    「ねーちゃん!」
    私に気付いた由輝が叫んだ。

    2005-06-29 06:31:00
  • 106:

    お父さんも私を見た。少し顔が変わった。
    「な、なんだお前。気狂ってんのか」
    由輝を殴る手は止まった。
    「あー狂ってるよ。あんたのせいでめちゃくちゃだよ。どうして変わっちゃったの?昔はあんなに優しかったじゃん!みんなお父さんのこと好きだったんだよ?」
    そして私はお父さんを刺した。どこを刺そうなんて考える余裕などなかった。ただ次の瞬間血が私の頭を覚まさせた。
    手だ。包丁はてのひらに貫通していた。私は怖くなり声がでなかった。

    2005-06-29 06:42:00
  • 107:

    でもお父さんは包丁を自分で抜き、近くにあったTシャツで手を覆い、何も言わずに出て行った。
    刺しちゃっ・・・た。どうしよう。
    「ねーちゃん大丈夫だって。手でかばったから刺さったとこもたいしたことないよ。」
    確かにそうだ。例え警察が来ても正当防衛だと言えば話は済む。住居侵入で暴力を振るったのだから。
    でも私が気にしていたのはそんなことじゃない。自分の親を刺してしまった。本当に刺してしまったんだ。刺さったのが違う場所だったら死んでいたかもしれないのに。

    2005-06-29 06:50:00
  • 108:

    私がここにいるのは、生まれてこれたのはお父さんがいたからなのに。何故か涙が出た。
    警察は来なかった。連絡もなかった。そしてその話は入院が一週間延びてしまったお母さんには話さなかった。お父さんは大丈夫なんだろうか、私はそんなことを考えていた。
    由輝と恵里と美恵の四人でお母さんの入院してる病院にお見舞いに行った日、私は心臓が止まりそうになった。
    病院のロビーにお父さんがいたからだ。凍りつく私に、由輝は
    「大丈夫そうじゃん」
    と言った。確かにギブスはしているけど大丈夫そうだ。

    2005-06-29 06:58:00
  • 109:

    とその時、私達に気付いたお父さんはこっちに向かって歩いてくる。
    やばい、逃げなきゃ。
    そう思っていた。
    「人差し指から小指まで四本全部の神経切れたみたいでもう箸も持てないって。」
    「え・・・?」
    神経?って。
    「まぁ大丈夫だから。それよりちょっとそこで飯食わないか」
    病院の近くには中華料理屋があった。私達は返事をすることなく歩いていくお父さんのあとをついて行った。
    店に入り注文が済み、静かな空気が流れる。誰も何も話さない。そして料理だけが慌ただしく運ばれてくる。

    2005-06-29 07:09:00
  • 110:

    みんな何も話さないまま箸を持ち、目の前にある料理をゆっくり食べている。
    重い空気、息がつまる。だけどそれよりも慣れない左手で食べやすい炒飯をレンゲをもらいポロポロこぼしながら食べてるお父さんを見ていると何故か涙が止まらなかった。
    ごめん。そう思っても言葉にはならなかった。お父さんは今までの嫌なお父さんじゃなく、優しい顔で
    「早く食え」
    とだけ私に言った。

    2005-07-14 04:39:00
  • 111:

    食事も済み、店を出た私達は病院に戻ろうと歩きだした。その時お父さんがちょっと待ってと呼び止めてきた。
    「今まで悪かったと思ってる。もうお前達の前には現れないから。許してくれとは言わない、でも忘れないでくれな」
    あんなに横暴で自分勝手だったお父さんが小さく見えた。私達に背を向け、足早に歩いていく寂しそうな背中を見えなくなるまで私達は見ていた。
    分からないけど多分お父さんは泣いていたような気がした。

    2005-07-14 04:45:00
  • 112:

    病院に戻った私達は、お母さんの様子を見に行き先生も状態は良好だと言ってくれたので安心した。
    でもその反面、もうお前達の前に現れないからと言ったお父さんのことも気になっていた。あんなに嫌いだったはずなのに。
    やっぱり血の繋がりは深いのかななんて思ったりしたっけ。お母さんの入院中、私は家でやらなければならないことが山ほどあった。でも借金や入院費用など、出費ばかりでお店は休めなかった。

    2005-07-14 04:51:00
  • 113:

    約600万の借金。どうせだったら払ってからいなくなってほしかったな・・・酔うと私はそんなことばかり思ってた。でもお父さんは私のお父さんだし、仕方なかった。
    最後に会った時のあの背中を見て、いつの間にか許せてたのかもしれない。
    私が水商売を始めたきっかけは親の借金だったわけだけど、なるようになるもんなんだなって思った。フルで出勤して月80〜90万。それでも六本木なら稼げた方だった。
    月に50〜60は返済にあてて、一年ちょっとで全額完済した。

    2005-07-14 05:02:00
  • 114:

    お店ではナンバー1をはり、人一倍頑張ってたけど周りの女の子達が稼いだお金で見た目を着飾るのとは正反対だった。
    ある女の子は私にこう言った。
    「給料何に使ってるんですかー?ゆかりさんって贅沢しないですよねー」
    しない?しないんじゃなくてできないんだよって言えなかった。変なプライドが邪魔して強気なことばっかり口にしてた。
    「全額貯金。あんたみたいにバカみたいにお金使ってる子が羨ましいよ」
    皮肉な言葉。

    2005-07-14 05:07:00
  • 115:

    でもそれも借金完済と同時になくなった。水商売をする意味もなくなったからだった。
    これからどうしよう。そう思っていた時に黒木さんは私にこう言った。
    「したいことがないなら続けるのもいいんじゃないか。何よりこの一年でお前はここまで走ってこれたんだ。一番を続けることも楽しいことかもしれないぞ」
    黒木さんの言うことは何故か言葉に重みがあり、きっと今日のこの日まで夜の世界にいた理由の一つになっていたのかもしれない。

    2005-07-14 05:12:00
  • 116:

    夜のドンが一番の味方で、何も不自由することなく好き勝手に六本木を泳いでた。何かあれば黒木さんが型をつけてくれ、私には怖いものなんて何もなかった。
    ずっと守ってもらってた。きっと本当の私の生き様を知っていたから、助けてくれてたんだと思う。感謝してもしきれない。
    本当にいろんなことがあった。何年も六本木でホステスをするなんて初めは検討もつかなかったのに。

    2005-07-14 05:17:00
  • 117:

    そんな私もこの歳になってやけに老けてきたかなーって思うと、新しく入ってきた若い新人さんを羨ましく見てしまう。
    いいなー。あんな時もあったなって。ムチャして飲み過ぎて潰れてても、泣きながらグチ言ってても、みんな可愛いなって。
    たくさん出会ったお客さんにも恵まれてたなぁ。六年間ずっと通い続けてくれるお客さんも、半年に一回しか来ないけど忘れずにのぞいてけれるお客さんも。
    本当にお客さんは大切だなぁって。

    2005-07-14 05:22:00
  • 118:

    一人でこうしてマンションに帰ってくるとこんな昔のことばかりが目まぐるしく思い出される。
    今は英二のこともちゃんと考えなきゃなんないのに。やり直す・・・それもいいかもね。結局ラクなんだし。
    ウトウトそんなことを考えながら私はいつの間にか眠りについていた。
    (♪〜♪〜〜♪)

    2005-07-14 05:25:00
  • 119:

    携帯の着信音が鳴り、目が覚めた。
    (矢口さん)
    えっ?矢口さん?どうして?何なの?
    動揺した私は電話に出るのをためらった。着信音が切れ、ホッとしているとまた電話が鳴る。仕方ない、出てみよう。
    「ハイ」
    (あっ・・・矢口ですけど。今大丈夫?)
    「あ大丈夫です」
    (あの、昨日ねあの、ごめん。何てゆうか由里ちゃんがホステスとかそうゆうの考えてみれば関係ないなって)
    何言ってんのこの人。昨日思いっきり引いてたじゃん。
    「気使ってもらわなくて大丈夫ですよ。全然気にしてないしもう会うこともないんだし」
    少し間があいた。

    2005-07-14 05:32:00
  • 120:

    (いや、そうじゃなくて。俺よく考えたら由里ちゃんのこと傷付けたなって。会ったばっかなのにヒドイことしちゃったからただ謝りたかったんだ。)
    よく分かんない・・・
    「そうですか。本当に気にしてないんで、大丈夫です」
    (じゃあ今日少し会えないかな?少しでいいから時間ない?)
    え?今日・・・お店あるしなぁ。また嫌な思いさせられるかもしれないし。
    「今日仕事なんです」
    (仕事何時から?俺一緒に行ってあげるから飯でも食いながら少し話そうよ)

    2005-07-14 05:38:00
  • 121:

    矢口晃太が同伴!?ありえないよ!?
    「あの本当にまた今度でいいですか?」
    私がそう言うと矢口さんは少し黙った。
    (うーん無理。今日じゃなきゃ駄目なんだ。だから6時にあの公園にきて。待ってるから)
    そう言うと電話は切れた。6時!?って今4時じゃん。私は少し考えた。行くべきなのかどうなのか。でも考えてる暇はなかった。
    とりあえず急いでシャワーを浴び、美容院に急いだ。

    2005-07-14 05:44:00
  • 122:

    美容院で化粧をしながら時計を見るともう6時前。とにかく急いであの公園に向かった。
    着いたのはいいけど矢口さんはいない。やっぱりからかわれただけかもしれないな。夏の6時はまだまだ明るい。
    子供達も遊んでる。楽しそうだなーってぼーっと見てると後ろから急に帽子をかぶされた。
    焦って帽子を取って振り返ると矢口さんがニコッと笑ってる。この帽子は?私が手に持った帽子を見ていると
    「お揃い。ちゃんとかぶれよー」
    矢口さんは照れ臭そうに笑った。

    2005-07-14 05:50:00
  • 123:

    お揃いの帽子なんかかぶってたら目立つのに・・・何考えてんだろ。
    そんなことを考えてると矢口さんは私の隣に座るとぎゅっと私を引き寄せた。昨日はこんなドキドキした後にすごいへこまされたんだよなぁ。
    「本当に昨日はごめん。ちゃんと会って言いたかったんだ。俺普段は人のことあんまり気にしないんだけど昨日は帰ってからも由里ちゃんのことが気になって寝れなかったから。」
    私は黙って頷いた。
    「よし!仲直りってことで飯でも行こー。ムーンでいい?」

    2005-07-14 05:57:00
  • 124:

    自然と手を繋ぎ、歩いてると持っていた帽子をかぶせられた。
    「昨日みたいに気付かれたら由里ちゃんにもまた嫌な思いさせるかもしれないしね。」
    優しいなぁ本当。
    「また逃げられちゃ困るし」
    イタズラっぽく笑う矢口さんは本当に子供みたいで私までつられて笑ってた。私も単純だなぁ。昨日は泣いてたのに。
    タクシーに乗りムーンの前に着くと、ちょうど健にいがお店の前にいて出迎えてくれた。
    「今日の初お客だよ」
    そう言ってまたカウンターに案内してくれた。

    2005-07-14 06:22:00
  • 125:

    「どした?昨日の今日でまたデート?あついねー。てゆうか晃太お前今日予定ギッシリじゃなかったの?」
    あ・・・そういえば昨日言ってたよなぁ。
    「あー夕方までに全部つめてきた。夜は先輩と約束あったけど断ってさ。由里ちゃんに会いたかったから。」
    ドキドキするじゃん。本当に心臓に悪いよ。
    「ふーん。お前がねー珍しいこともあるんだなぁ。何でも面倒くせーって感じなのに」
    「今日は特別なんだよ。ね?」
    ね?って言われても・・・分かんないよ。

    2005-07-14 06:30:00
  • 126:

    おまかせで運ばれてくる料理はどれも全部おいしかったけど驚いたのは健にいが全部作ってたってこと。
    すごいなーって感心。
    矢口さんがトイレに立った時に健にいはそっと私に話してきた。
    「昨日何があったの?晃太あれからまたここ戻ってきてずっと溜め息ついてて。」
    「あー。ちょっと・・・たいしたことじゃないんですけど。」
    「そーなんだーならいいんだけど。」
    健にいは不思議そうな顔でうんうんと頷いた。矢口さんが戻ってくると二人は目で合図をした。

    2005-07-14 06:43:00
  • 127:

    そのすぐ後に大きなケーキが出てきてカウンターに出された。ケーキにはRelation healと書かれてあった。
    意味が分からなかったけど、健にいが私と矢口さんが仲直りできたからって書いてくれたらしい。
    嬉しくて食べるのがもったいなかった。そうしているうちに時間は流れ、気付いたらもう8時になっていた。あ、もう時間だ。
    時計を見ていると矢口さんがチェックを始めた。
    「間に合う?同伴だから大丈夫だよね?」
    えーーーー?

    2005-07-14 06:47:00
  • 128:

    って本当に来る気?
    「えっ?お前由里ちゃんの店に行くのかよ」
    健にいが笑いながら言うと
    「今日無理矢理誘ったからね。そのお礼。」
    ちょ、ちょっと待ってよ。大丈夫なの?
    「いーよ本当に。間に合うしここでゆっくり健にいと飲んでて。」
    私が焦って言うと矢口さんは黙って首を横に振った。
    「じゃーまた来るわ」
    そう言うと矢口さんは私の手を繋ぎ、ムーンを出た。健にいにぺこっとおじぎしながらお店を出た私は本当にパニクってしまった。

    2005-07-14 06:53:00
  • 129:

    そりゃお客さんに芸能人の人とかたくさんいるけど、ピンで同伴しかもお店に来たことない人だし・・・それより超有名な矢口晃太で。
    タクシーに乗りながらもずっと手を繋いだままで私はドキドキが鳴りやまなかった。
    そして六本木に着き、お店までの少しの道を歩いていると、やっぱり周りは気付いてた。一人が気付くとみんな気付く。
    それでも矢口さんは手を離さなかった。

    2005-07-14 06:57:00
  • 130:

    「俺プライベートであんまり飲みに来たりしないんだよね。先輩に連れられてくことはあるけど」
    矢口さんがそんなことを話している間にお店についた。
    一階の扉前にいたマネージャーが目を丸くさせながら驚いた。
    「い、いらっしゃいませっ!」
    だいたい業界の人は一人で来ることが少ない。まして同伴なんて目立つようなことはしない。だからビックリしたんだ。私もそうだし。
    お店に入り、ビップと言われてる奥の席に案内された。
    「着替えてくるから待っててね」
    私はそう言って急いでロッカールームに入った。

    2005-07-14 07:04:00
  • 131:

    ドレスに着替えていると仲のいい久美ちゃんがビックリした顔で
    「あれって矢口でしょ?すごいじゃん同伴」
    と言った。やっぱりみんな同伴にビックリしてたんだ。
    「たまたまだよ。すぐ帰ると思うし。」
    着替え終わった私は何故か急いで矢口さんの席に戻った。ヘルプの女の子もいつもより積極的に見えた。名刺も置いてあったくらいだ。
    「ごめんね。」
    謝る私をじーっと見ながら矢口さんは腕組みをした。
    「それ肌出しすぎじゃない?」
    えっ?
    「え?変・・・かな」

    2005-07-14 07:12:00
  • 132:

    「いや、そうじゃなくて。可愛いけどそんなに肌出してたらオヤジに触られたりしないかなと思って」
    オヤジ?
    「大丈夫だよ。ちゃんとガードできるから」
    「そうかなー。なんか羽織るようにしろよ。心配だし」
    矢口さんの言う一つ一つの言葉で一喜一憂する私。バカみたいだけど嬉しくてあったかくなる。
    お店が混みだし、指名が他の席でかかって移動してる時も矢口さんが見ているのが分かった。
    だからいつもより変な緊張感が消えない。私もヘルプの女の子が気になってた。

    2005-07-14 07:19:00
  • 133:

    ようやく矢口さんの席に戻れたのに矢口さんは不機嫌で何を言ってもウンしか言わない。私が黙ってると
    「やっぱり俺だめだ。由里がオヤジといるの見てるといやんなる。今日もう一緒に帰ろ」
    由・・・里?今由里って言ったよね?なんだか恥ずかしくなった。
    気付けばもう三時間?4時間もいたんだ。他のお客さんも帰ったし帰っちゃおうかな。
    「じゃあ待ってて」
    私はマネージャーに矢口さんのアフターと言うと、上がれ上がれ、行ってこいと言われた。そのままロッカールームに着替えに行き、ロッカールームを出ると矢口さんが待っててくれた。

    2005-07-14 07:28:00
  • 134:

    「もうチェック済んだから。行こっか」
    そう言うとまた私の手を繋いだ。同じ帽子かぶって、夜の六本木を手を繋いで歩くなんて初めてだ。
    英二とも六本木や夜の繁華街では繋いで歩いたことはない。お互いホステスとホストだったから。
    矢口さんは有名人なのに堂々としてるなぁ。
    「由里!もう帰りか」
    すれ違った時に聞き慣れた声がした。黒木さんだ。私はビックリして手を離した。
    「あっ帰りです。」
    「そうかーお疲れ様」
    黒木さんはそう言うとまた歩いて行った。

    2005-07-14 07:34:00
  • 135:

    黒木さんは英二のこともよく知ってる。どう思ったかな?いつも言われてたのに。夜の世界で働く以上、夜の街では男の影さえも見せるなって。
    なのに手を繋いで歩いてるとこ見られるなんて。
    「お客さん?めちゃくちゃ恐そうだね」
    矢口さんは何も知らないんだよね。だよね。
    「んー。由里の六本木での守り神みたいな。夜の世界では裏のドンなんだ」
    矢口さんは
    「大丈夫なの?俺まずかったかな?」
    「大丈夫だよ。気にしないでも」
    私は駄目だと分かってたけど離した手をまた繋いだ。

    2005-07-14 07:40:00
  • 136:

    タクシーに乗り、どこに行くかと思えば
    「成城まで」
    と矢口さんが言った。
    「あ、由里ここからけっこう近いんです」
    「分かってるよ六本木の近くって言ってたもんね。でも今日は一緒にいたいから。ちょっとだけいて。帰りは送るから」
    私は拒めなかった。私も一緒にいたかったから。繋いだままの手を離したくなかった。
    タクシーが止まり、大きなマンションの前でおりると、そこが矢口さんのマンションだった。

    2005-07-14 07:46:00
  • 137:

    これがプロ野球選手の生活なんだー。すごいなぁ本当。感心しっぱなしだった。
    「座りなよ」
    矢口さんは着替えながら私に言った。
    ソファーに座ったままキョロキョロしていると矢口さんが隣に座ってそのまま寝転んで膝まくらで私の顔を下からじっと見た。
    またドキドキする。
    矢口さんは私の顔を両手で持ち、自分の顔に寄せた。その時に初めてのキス。変な感じだったけど優しいキスだった。

    2005-07-14 07:59:00
  • 138:

    それから矢口さんは小さい頃はパイロットになりたかったことや、野球漬けの毎日だった学生時代のこと、育った環境を私にたくさん話してくれた。
    知れば知るほど惹かれていく。会ったばかりなのに。不思議な感覚が私を狂わせる。
    「明日昼から球場行くけどそれまで一緒にいてくれる?」
    私はうんと頷いた。
    遊ばれてもいいやって感じかな。傷付いてもいい、今は一緒にいたいってそう思った。
    寝室に入ると大きなTシャツを貸してくれて私はそれに着替えた。

    2005-07-14 08:04:00
  • 139:

    本当に大きすぎて膝まで隠れるくらいだ。
    「本当ちっちぇーな由里って」
    ニコッと笑う矢口さんの顔が本当に好きになってく。前の彼女はモデルさんだっけ。矢口さんは私のことどう思って今日ここに連れてきたんだろ。
    やっぱりやりたいのかな。うん多分そうだよね。
    一人でそんなことばかり考えてると矢口さんが寝転びながらこっちおいでって手招きしてきた。
    私がベッドに入るとギュッとしてきてしばらく静かな空気が流れた。私のドキドキ?違う矢口さんのドキドキだ。
    聞こえてきた音は矢口さんの心臓の鼓動だった。

    2005-07-14 08:11:00
  • 140:

    「俺ね、今日由里に会ってちゃんと言おうと思ってたの。まだ会ったばっかで信用できないかもしれないけど好きになったっぽいんだよね」
    「もーいいよ。ありえないから」
    私は何が何だか分からなくて話をはぐらかした。
    「本当だって。今日思った。由里と一緒にいたいって。明日からもずっと。大事にするよ?俺」
    何なの?これ夢?酔っ払ってるせい?

    2005-07-14 08:16:00
  • 141:

    矢口さんは私を抱きしめたままいろんな言葉を言ってくれた。
    「俺は由里大事にしたいし今日もこうして隣で寝てるだけで十分なんだよ」
    って。私はいつの間にかドキドキが止まり、心地いい安心感に変わっていた。本当に矢口さんは何時間もずっとそのまま、私を抱きしめて眠りについた。
    結局私は寝ることができず、矢口さんが起きるまでずっと起きていた。

    2005-07-14 08:22:00
  • 142:

    そして起きた矢口さんはバタバタと用意を始めた。私は作れるなら何か作ろうかと冷蔵庫を開けたけどあるのはビールやジュースだけ。
    「由里何してんの?」
    「冷蔵庫こんなに大きいのに空っぽだね。何かあったら作ろうかと思ってたの。」
    矢口さんはちょっと嬉しそうな顔で笑った。
    「じゃあ今日作ってよ。夜、食べたいなー」
    「って今日?夜?」
    そう言うと矢口さんはカギを渡してきた。
    「これ俺のだけど置いてくから今日ここにいて。お金置いてくし大きいスーパーすぐそこにあるから。合鍵も近いうち作りに行こ」

    2005-07-14 08:30:00
  • 143:

    合鍵ぃーーー!?
    スーパー!?
    ちょっと・・・すごい展開になってんだけど。何なの本当に。
    「じゃあ俺もう出なきゃなんないから。練習中にでも電話するからね。いってきまーす」
    ガチャン。
    ドアが閉まった。
    いってきます、か。英二を思い出すなぁ・・・。って私大変なことになってんじゃないの?矢口晃太の部屋だよ?
    しかも本当にお金置いてってるし。ってことは何作ればいいのー?分かんないよ好きなものとか嫌いなもの。本当にどうしよう・・・

    2005-07-14 08:35:00
  • 144:

    名無しさん

    ?

    2005-07-14 08:48:00
  • 145:

    ゅーき

    コレを読んで、恋愛ッτいいなぁって思いました?続き楽しみにしてます?頑張って下さい?

    2005-07-14 14:13:00
  • 146:

    名無しさん

    実話?

    2005-07-14 14:38:00
  • 147:

    違いますよ?ホステスをやってるとか多少は本当なとこもあるけどストーリーはオリジナルに混ぜてるので?
    また今から頑張って書きます_?書き込みしてくれた方達ありがとう?

    2005-07-15 19:20:00
  • 148:

    私はキッチンに突っ立ったまましばらくぼーっとしていた。
    あっいけない。調味料とかちゃんとあるのかな?さっき冷蔵庫は本当に生活感全くなしだったし。
    最近別れたとか言ってたけど前の彼女は料理作ったりしてなかったのかな?
    キッチンの引きだしを開けたり扉を開けてみても塩や砂糖、油さえない。いくらなんでもそれはないよね。大きな広いキッチン、大きな冷蔵庫。綺麗なままのレンジや炊飯器。
    使われてないのが不思議だった。

    2005-07-15 19:29:00
  • 149:

    そしてテーブルに置いてあったお金を見て私は少し笑った。スーパーに行くだけなのに三万円も置いてあったからだ。
    0が一つ多いんじゃないかって。やっぱり感覚が違うんだろうなぁ。でも昨日朝まで話した時に言ってたなぁ。
    矢口さんは元々、お金持ちでもなく普通だったって。いい暮らしをしてたわけじゃないって。プロ野球選手になってから両親が住む家を建ててあげたことも聞いた。
    「親孝行は生きてるうちにしないと。したいと思ってもできない人もいるんだから。」
    矢口さんの言葉は私の心を突き抜けた。

    2005-07-15 19:41:00
  • 150:

    この人は本当に優しい心を持ってる。知れば知るだけ好きになる。人をこんなに猛スピードで好きになったことはあっただろうか。
    動き始めた気持ちにはもうブレーキはかからなかった。そして私はマンションを出て言われた通りの道筋で歩いていくとすぐそこにスーパーが見えた。
    入ってみると成城のスーパーなせいか少し品があるような気がする。私はとりあえず料理のいわゆる(さしすせそ)調味料や、使いそうなものは全てかごに突っ込んだ。

    2005-07-15 19:49:00
  • 151:

    一通り揃えたのはいいものの、何を作ればいいのかで私はずっと悩んだ。
    何が好きなのかな。食べれないものがあるかもしれないし。魚料理?肉料理?とりあえず早く決めなきゃ・・・。
    生鮮売り場に行くと魚がたくさんあった。からすがれいが目に止まり、手に取って考えた。多分かれいの煮付けならよく作ってるし失敗はない。
    そう思うと私はかれいをカゴに入れた。アサリやお豆腐、鶏肉のささ身、キャベツトマトに胡瓜。
    スポーツをするならタンパク質が不可欠。低カロリーなささ身は筋肉を作るのにも良いとテレビで見たことがあった。

    2005-07-15 20:02:00
  • 152:

    たくさん買ったせいか、かごはいつの間にかいっぱいになっていて、持って帰れるのかちょっと不安だ。
    レジを済ませ、袋に詰めている間も絶対重いのが分かっていたからか、帰りの少しの距離が物凄く長く思えた。
    両手に袋を持って歩いているとやっぱり重いし何回も立ち止まった。頑張れ由里!自分で言いたくなるぐらい重かった。
    料理酒やみりん、お醤油とか張り切って買ったけどこんなに重いとは・・・まぁ仕方ないや。そんなことを考えながら歩いているとやっとマンションに着いた。

    2005-07-15 20:09:00
  • 153:

    セキュリティ抜群だけどいくつもあるオートロックがこの時ばかりは面倒だった。
    やっと家に着いた私は疲れていたので少し休憩しようとソファーに座った。その時携帯が鳴ったので見てみると矢口さんからだった。
    「もしもしー?」
    (何してたの?買い物行った?)
    「うん今行ってちょうど帰ってきたとこ」
    (マジで?試合終わったら早く帰るから。だいたい試合終わって一時間後かな。だからテレビで見ててよ。)
    「うん分かったぁ」
    (じゃあ今から練習するから。また後で休憩した時でもかけるよ)
    「はーいじゃーね」

    2005-07-15 20:17:00
  • 154:

    電話を切った私は多分すごい笑顔になっていた。気持ち悪いぐらい。一人でいるのにこんなにニコニコしてるなんてヤバイ。
    でもこんなに幸せな気持ちならやばくても何でもいいや。恋をした時は誰しもが似た想いをしたことがあると思う。
    相手を思うだけで幸せだって。ただ、いいことばかりじゃなくて。喧嘩したり泣いたり怒ったり。ずっと同じ気持ちではいられないものだから・・・
    ずっとこの先も一緒にいるなんて誰にも分からないもんだし。でもずっと一緒にいれるといいなって人を好きになると思うもんなんだよね。

    2005-07-15 20:24:00
  • 155:

    一息ついたところで私はついでに買ってきたハブラシとメイク落としを持ってシャワーを浴びようと洗面所をのぞいた。
    そこには二本並んだハブラシがあった。洗顔料なんかも置いてある。前の彼女のだなってすぐに分かった。モヤモヤする気持ちもあったけど、それを捨てることもできず静かにバスルームに入った。
    シャワーを浴びてる間、そのモヤモヤを流すように頭からずっとシャワーを浴び続けた。バスルームから出た私はサッパリできた・・・わけがない。

    2005-07-15 20:31:00
  • 156:

    まだ3時過ぎ。帰ってくるまであと何時間あるんだろう。
    ハブラシを見てからの私は何故かさっきまでの幸せな気持ちが消え、妙な不安に変わっていた。
    だってモデルだったんだよ彼女。綺麗な人だったのかな。私は家に帰りたくなった。
    でも鍵を持っている私は帰ることもできない。一時間ほどたっただろうか。一人でずっといろんなことを考えていた。
    そして軽く化粧をした後、あゆみから電話があった。

    2005-07-15 20:38:00
  • 157:

    「はい。どしたの?」
    (由里今日って仕事?休みだったらご飯行こうかと思ってさ。英二から相談の電話もあったしゆっくり話そうよ)
    「あ・・・のね、休みなんだけど今矢口さんの家にいて・・・なんか夜ご飯作ることになっちゃって」
    (えーー?マジで?)
    あゆみの声は大きくなった。
    (超展開早くてビックリなんだけど。)
    「うん。由里もよく分かんないんだけど。」
    (じゃあまた落ち着いたら電話ちょーだい。)

    2005-07-15 20:45:00
  • 158:

    どうしよう。英二のこともあったんだ。ちゃんと考えるって言ったのに。矢口さんのことで頭いっぱいになってた。
    あー本当に何が何だか分かんないよ。ってそういえばお米ってあったのかな?
    私はふと思い出した。探してみたけど予想通りなかった。
    またスーパーかぁ。疲れるなぁ。仕方ない行くか・・・

    2005-07-15 20:49:00
  • 159:

    お米を買いに行き帰ってくるとエレベーターからおりてきた人の顔を見てビックリした。
    あの人気歌手だったからだ。テレビで見るよりかっこよくて大きく感じた。すごいマンションだな本当に・・・
    部屋に戻ってまずはお米をとぎ、セットだけしておいた。試合終わって一時間後って言ってたし、試合終わったくらいにスイッチ入れればちょうどいい頃だ。

    2005-07-15 22:06:00
  • 160:

    軽く掃除をしたけど汚れてるところもなく、すぐに終わってしまった。
    もうそろそろご飯作ろっか。そうして私は食事の用意を始めた。かれいは一匹丸ごとで大きかったのでおろした後、半分は冷凍庫に保存しておいた。
    鶏のささ身はゆで、細長くほぐして千切りにしたキャベツと胡瓜の上にのせた。トマトを乗っけてバンバンジーっぽいサラダが完成。
    あさりは砂抜きして、お味噌汁に。あとは簡単なだし巻きとお豆腐をミニ冷奴にすれば一通りオッケー。

    2005-07-15 22:20:00
  • 161:

    小さい時から料理はやらなきゃならなかったので一応はできる。でも初めて作る時はやっぱり緊張するものだなぁと思った。
    英二の時もそうだったから。食べてもらう時の変な緊張感は言葉では表しにくい。恥ずかしいような嬉しいような不安なような。
    その時かれいの味付けが終わり落としぶたがないことに気付いた。
    どうしようかな?仕方ない、アルミホイルで代用しよう。

    2005-07-15 22:25:00
  • 162:

    コトコトと煮ている間、テレビで野球が始まったので見てみるとそこには矢口さんが映っていた。
    今まではテレビで見るこの距離が当たり前だったのに。テレビに映る姿を見ているとやっぱり矢口さんは凄い人なんだなと思った。
    でも寂しくも感じた。遠い人な気がして。とその時、矢口さんが初打席でタイムリーヒットを打った。
    私は手を叩いて喜んだ。歓声にわく球場、矢口さんのガッツポーズ。かっこいいなぁと改めて思った。

    2005-07-15 22:32:00
  • 163:

    二打席目も四打席目もヒットを打ち、猛打賞。試合も5−1で勝った。ヒーローインタビューも矢口さんだった。
    嬉しそうに笑う矢口さん。私も凄く嬉しかった。と、気付けばもう9時過ぎ。
    炊飯器のスイッチを入れ、帰りを待つことにした。
    何だかソワソワして落ち着けずにいると矢口さんから電話が鳴った。
    「もしもーし」
    (由里見たー?俺の固め打ち)
    聞いただけで分かる嬉しそうな声。
    「見たよ、超かっこよかった。良かったね」
    (おー由里が見てると思って頑張ったんだ。勝って帰りたかったから。)

    2005-07-15 22:51:00
  • 164:

    「へへ、そうなんだ。矢口さんさー」
    (てゆうか由里さぁ、矢口さんってやめようよ。晃太でいいから。呼んでみて今)
    え・・・こ、こーた?
    ドキドキするよ。
    「晃太・・・くん」
    (君づけかよ)
    そう言うと矢口さんは笑った。新鮮な気持ちだなぁ本当。名前を呼ぶだけなのにこんなにドキドキして。
    (じゃあ早く帰るから待っててね。)
    そう言うと電話は切れた。

    2005-07-15 22:57:00
  • 165:

    晃太・・・か。呼んじゃっていいのかな私なんかが。その時あゆみからメールがきた。
    [矢口打ちまくりだったね?スゴイじゃん?良かったね?]
    メールを見て、また嬉しくなった。
    お味噌汁を温めなおしてるとご飯が炊けた音が鳴った。よし!バッチリ。そして、インターホンが鳴り矢口さんかと思ってモニターを見てみるとそこにいたのは矢口さんではなく女だった。
    出ていいのかも分からず、ほっておくしかできなかった。

    2005-07-15 23:05:00
  • 166:

    誰だろ・・・私の予感では前の彼女かもしれないと思った。
    このマンションはオートロック専用のカギがある。だから入るにはカギがあるか住人がボタンを押して開けるしかない。
    誰なんだろう。やっぱり・・・。どうしよう、もう矢口さんも帰ってくる頃なのに。

    2005-07-15 23:15:00
  • 167:

    しばらくしてまたインターホンが鳴り、モニターを見ると矢口さんだったので解錠ボタンを押した。
    玄関の鍵を開けて待っているとガチャと開く音がし、矢口さんが帰ってきた。
    「ただいまー」
    「あ、おかえりぃ」
    普通に言った。本当はさっきの女のことで頭がいっぱいだったのに。
    「由里ー」
    そう言うと矢口さんはすぐに私を抱きしめた。私は話そうか迷った。でも抱きしめられてると不安な気持ちはなくなるどころがどんどん増えていく。

    2005-07-15 23:26:00
  • 168:

    こんなに近くにいるのに何でこんなに寂しくなるんだろう。
    「由里元気ないね。どうしたの?」
    私の顔を覗き込む。
    「なんでもないよ。あっすぐご飯食べる?」
    「うん食う!」
    余計なことは考えないでおこう。それに今日は猛打賞ヒーローでお立ち台に上がってきたんだから。一緒に喜んでたい。

    2005-07-15 23:44:00
  • 169:

    「由里ー。キッチンほんとに何もなかったでしょ?うわ、これ全部一人で持てたの?米とか。大丈夫だった?朝俺も一緒に行けば良かったなぁ」
    矢口さんはキッチンを見ながらブツブツ話していた。食事の用意が済み、テーブルに並べると矢口さんはビックリしていた。
    「これ全部由里が作ったの?これとか買ってきたやつ?」
    そう言うと矢口さんはかれいを指さした。
    「あ、それも作った。てゆうか全部作ったんだけど。かれいは半分残ってるから冷凍してあるよ」
    「すげー。うまそうだし。食べていい?いただきまーす」

    2005-07-15 23:52:00
  • 170:

    お味噌汁を飲んでまず大きく頷いた。
    「うまい!俺アサリとか貝の味噌汁めちゃくちゃ好きなんだよね」
    それを聞いてひとまず安心した。それから矢口さんはご飯をおかわりしながらも全部きれいに残すことなく食べてくれた。
    私も一緒に食べてたけど、本当に作ったかいがあったなぁと思った。と、その時だった。
    またインターホンが鳴ったのだ。矢口さんがモニターをのぞいてチラッと私を振り返った。

    2005-07-15 23:58:00
  • 171:

    きっとさっきの人なんだ。どうしよう私。
    矢口さんは何も言わずインターホンに出た。
    「はい。うん。電気?」
    話は続く。
    「あー今日ずっと家に彼女いるから。ってお前さっきも来たの?」
    そう言うと矢口さんは私を見た。きっと相手は前の彼女で、部屋に電気がついていたから矢口さんがいると思って来たのだ。
    「で、何?いいよ本当に。そういうの嫌なんだよ。彼女も気分悪いだろうから。」
    そう言ってインターホンの受話器を置いた。

    2005-07-16 00:06:00
  • 172:

    「ごめん、ね。また嫌な思いさせちゃったな。」
    困った顔・・・。
    「大丈夫。気にしないでいいよ」
    私はそう答えること、平気な顔をすることで自分の気持ちを隠していた。
    よくならない空気のまま、私は食器を洗い、静かに片付けを済ませた。よし、もう帰ろう。このままいると何か嫌なこと言ってしまうかもしれないから。
    「由里もう帰るよ。」
    私が言うと矢口さんは私の手を取りソファーに座らせた。
    「何でさっき言わなかったの?」
    「さっきって?」
    「アミ、あっ前の女来てたこと」
    アミ・・・アミって言うんだ。

    2005-07-16 00:17:00
  • 173:

    「気付かなかったっていうのは嘘だけど・・・誰かも分かんなかったし」
    「インターホン出れば良かったじゃん。今は由里が彼女でしょ?」
    ・・・え?
    「え由里彼女なの?」
    「えっ!?違うの?昨日話したじゃん。俺の空回り?」
    ほ、本気なの?本当に彼女になっていいの?
    「由里でいいの?本当にいいの?」
    私が聞くと、矢口さんは私の頭をポンっと軽くたたいた。
    「由里でいいじゃなくて由里がいいんだよ」

    2005-07-16 00:30:00
  • 174:

    名無しさん

    ?

    2005-07-16 00:51:00
  • 175:

    その言葉を聞いて私は肩の力が抜けた。
    「今日もここにいてくれない?明日球場行く途中に送ってくから」
    真面目な顔で矢口さんは言った。
    「うん。分かった」
    そして私達はテレビを見ながらお笑い芸人の話をしたり、本当に普通の会話が続いた。会って時間もそんなにたってないのに矢口さんのそばにいるのが心地良かった。

    2005-07-16 01:55:00
  • 176:

    試合の話や野球についての話も少しはしたけど、特にしたりはしないもんなんだなぁと思った。
    「明日仕事なの?」
    と、突然聞いてきた。
    「うん、そーだよ」
    そう答えると矢口さんは少し黙った。
    「由里これからもキャバ続けるの?」
    私はちょっと考えた。
    「何で?分かんない」
    「俺昨日行って思ったんだけどさ。やっぱ心配っつーかさ」

    2005-07-16 02:12:00
  • 177:

    心配か・・・やっぱり嫌なものなのかな?
    「どうするかゆっくり考えてみる。」
    「そっか。じゃ仕事やめて俺とここで住むってのもあり?」
    えっ!?私がビックリしていると
    「それもありじゃね?急がせるわけじゃないけど考えてて」
    矢口晃太と一緒に住む!?同棲するってこと!?てゆうか何もかも話進むの早くない!?

    2005-07-16 04:49:00
  • 178:

    矢口さんと過ごす時間はあっという間で、気付けば夜の2時を過ぎていた。
    今日も昨日と同じようにくっついたままベッドに並んだ。
    「由里が隣にいるから体に悪いんだよね」
    矢口さんが笑いながら言った。え!?どういう意味なの?
    「なにが?由里なにかしたかな?」
    「本当は昨日もすげー我慢したんだ。今日もけっこう我慢してたりして」

    2005-07-16 05:21:00
  • 179:

    あっそういうことか。
    「でも俺まだ頑張れるかも。由里が隣で寝てるだけであったかい気持ちになれるから。大事にするって約束したもんな」
    私は胸の奥がしめつけられた。少女漫画で見たことあるような感じにキュンとなった。
    そして矢口さんの手をギュッと掴んでいた。
    「てゆうか由里ー。由里ずっと晃太って呼んでくれないよなー。」
    だ、だって・・・恥ずかしくなるんだもん。

    2005-07-16 05:56:00
  • 180:

    「言ってみて」
    「・・・晃太?」
    「もう一回」
    「晃太」
    呼んでいる私が照れてしまう。
    「由里の彼氏は誰?」
    「え・・晃太?」
    矢口さん、じゃなくて晃太は顔をくしゃくしゃにして笑った。
    「俺のこと好き?」
    晃太はいたずらっぽく聞いてきた。
    「好きだよ。超好き」
    そう言うと矢口、じゃなくて晃太は私を強く抱きしめておでこにキスをした。優しいキス、幸せなキス。こんなに幸せで大丈夫なのかな、なんて思ってしまう。

    2005-07-16 06:03:00
  • 181:

    そして3時がすぎたころ私は昨日ずっと寝ていなかったせいか、晃太の腕に包まれたままいつの間にか寝てしまっていた。
    目が覚めると9時過ぎ。起こさないように起きた私は顔を洗い歯磨きをしたりバタバタした後、朝ご飯でも作ろうかと思い昨日行ったスーパーに行った。
    朝ご飯なんて普通の私の生活ではないもの同然だ。起きたら同伴の食事、仕事が終わればアフターや友達との軽いご飯。
    朝食なんてもの一人暮らしをしてから食べたことがあっただろうか。

    2005-07-16 06:09:00
  • 182:

    英二の部屋で半同棲をしていた時も、一緒に食事をするのは休みの日ぐらいだった。
    私より不規則な英二の生活には合わせることが難しかったから。たまにご飯を作って待っていても酔っ払って帰ってきて食べなかったり。
    そんなことを考えながらまた何を作ろうかと悩んでると晃太から電話が鳴った。
    「もしもし?」
    (由里今どこ?)
    「〇〇スーパー」
    (ビックリするじゃん起きたらいないから。てゆうかちょっと待ってて俺も行くから)
    「分かったぁ」

    2005-07-16 06:15:00
  • 183:

    って何しに来るんだろ?そして十分もたたないうちに晃太が来た。
    寝ぐせがついたままの髪、起きたばかりの少し腫れた目、Tシャツに半パン。私は思わず笑ってしまった。
    「何笑ってんだよー」
    晃太がスネた顔で言う。
    「だってぇ・・・晃太がこんなかっこしてたら変なんだもん」
    また私が笑うと晃太もつられて笑った。
    「俺がいる時にまとめて買い物しよ。重いもんとかさ。あと俺朝あんまり食べれないからおにぎりとかそんな感じがいいなー車ん中でも食えるし」

    2005-07-16 06:23:00
  • 184:

    良かったー。おにぎりなら超楽勝だ。
    スーパーからの帰り道、晃太が話し始めた。
    「俺さ、彼女に家で飯作ってもらったの初めてだったんだよね。だからめちゃめちゃ嬉しかった」
    「前の彼女アミ?さんだっけ?あの人は?」
    聞かなくてもいいこと、聞きたくないことなのに何故か私はそんなことを口走っていた。
    「あー。一回もないよ。付き合ってたのも5ヶ月ぐらいだったしうちに来たのも数えるぐらいしかないから」
    「そ、そーなんだ」
    私は変な反応をしてしまっていた。

    2005-07-16 06:30:00
  • 185:

    「気になるの?」
    「え、ううんそんなことないよ」
    「前の女は俺の名前と金に惚れてたんだよ。あれ買ってくれだのやたらと友達に会わされて自慢っぽくされたりとか」
    そうだったんだ・・・。嫌なことを聞いちゃったかな?
    「俺もモデルって響きにつられたようなもんだったしお互い気持ちはなかったんだよね。一緒にいるとどんどん冷めてったの」
    「じゃあ晃太がふったの?」
    「そんな感じかなー」

    2005-07-16 06:36:00
  • 186:

    少しホッとした。少なくとも好きなまま別れたとかじゃなくて良かったなって思った。
    マンションに着いて晃太とエレベーターを待っていると昨日すれ違ったあの歌手さんがちょうど帰ってきた。
    「あっどうもー」
    軽く会釈をする二人。
    同じエレベーターに乗り込みその歌手さんは
    「昨日大活躍だったね。今日も頑張れよ!」
    そう言うと13階でおりていった。
    すごいなぁ本当に。軽く話せちゃうんだもん晃太は。

    2005-07-16 06:42:00
  • 187:

    「由里一緒にいて大丈夫だったの?」
    少し考えて言った。
    「何が?大丈夫に決まってんじゃん」
    晃太がそう言ってくれただけで何故かホッとできた。コーヒーを飲みながら新聞を読む晃太。こんな姿が見れる私はきっと世界一の幸せものだ。
    昨日テレビで見ていた溌剌としたかっこいい晃太も、今目の前にいる普通の晃太も全部が晃太なんだよね。特別な目で見る必要はない。
    私といる時の晃太が自然なありのままの晃太なんだから。

    2005-07-16 06:48:00
  • 188:

    私は帰る用意をしながら晃太にもらった揃いの帽子を持って洗面所の鏡の前に行った。
    かぶって合わせてみたりしているとあることに気付いた。朝はあったはずなのにあのハブラシと洗顔料がなくなっていたのだ。
    そしてキッチンに置いてあったごみ箱をそっと見ると、その二つが捨てられてあった。それを見ていた私に気付いた晃太は静かに言った。
    「あ、ごめんなそれ。俺バカだから気付かなくて。デリカシーねーよな本当」
    そんなことない。晃太は優しいよ。

    2005-07-16 06:55:00
  • 189:

    「今日由里仕事ってことは明日は?会えない?」
    「明日・・・は一応シフト入ってるの」
    晃太はハァと溜め息をついた。
    「あさっての金曜から遠征で来週の月曜まで帰って来れないんだよね。だから行く前に会いたかったんだけど・・・しかたないか」
    寂しそうな晃太。
    どうしよう・・・。
    「よし、そろそろ行こうか。鍵も作っておきたいしちょっと早めに出ないと」
    「鍵?」
    「そう鍵。由里のね」
    「あっ・・・」
    鍵作ってくれるんだ。いいのかな本当に。

    2005-07-16 07:03:00
  • 190:

    もう仕事のことなんて半分どうでもよかった。私だって会いたいと思ってる。
    「分かった。お休みにしてもらう。由里も晃太といたいもん」
    「本当に!?」
    嬉しそうに晃太が言った。こんな顔されたら離れたくなくなっちゃうよ。

    2005-07-16 07:18:00
  • 191:

    名無しさん

    しぉり☆
    この話メッチャぃぃ!ここの中で1番ぉもろぃ〜!!

    2005-07-16 10:40:00
  • 192:

    読んでくれてありがとう?まだ長くなると思いますが、頑張って書くのでたまにのぞいて下さいね?

    2005-07-18 02:58:00
  • 193:

    私が車をおりた後、ベンツの窓を開けた晃太は私がマンションに入るまでずっと見送ってくれた。
    私はバイバイしながら何度も晃太を振り返った。ずっと会えなくなるわけじゃないのに、物凄く寂しくなった。
    家に戻ってからもずっといろんなことを考えた。気付けばお客さんからの電話も丸二日出ていない。メールの返信さえもしてなかった。
    この何年間も、ホステスをやっていた間ずっとナンバーにこだわり続けてきた私が・・・

    2005-07-18 03:12:00
  • 194:

    ナンバーにこだわっていたのも変なプライドだった。上に上がってしまった人間は下がることを恥ずかしく思ってしまう。
    ナンバー1をキープすることで自分の居場所を確立してきてたから。なのにそんなプライドさえも今はなくなりつつある・・・
    晃太の嫌がる仕事をしていていいのか。自問自答する私がいた。

    2005-07-18 03:17:00
  • 195:

    晃太は同じドレスを見てムッとしてた。
    怒った顔で何か羽織れって。そういう普通のヤキモチが、私は嬉しく感じた。
    心の中で晃太の存在がどんどん大きくなっていく。考えても考えても足りないくらい。さっきバイバイしたばかりなのに・・・
    私はじっとしてられなくて晃太にメールをした。
    [由里ホントに晃太の彼女だよね?]
    それからすぐに携帯が鳴った。晃太だ。
    「はいもしもし」
    (どうした?由里は俺の彼女だろ?次そんなこと聞いたら怒るよ)

    2005-07-18 03:33:00
  • 196:

    「ごめん・・・ね」
    私が謝ると晃太は笑っていた。
    (うそうそ!怒んないから。今ねー、合鍵待ちしててさ。早く作って渡してあげたかったから)
    「えっ?本当にもう作ってくれてるの?」
    (そしたら由里が少しは安心できるでしょ?俺まだ信用されてないみたいだしさ)
    晃太・・・
    「ううん。信じた。もう信じた。晃太のこと信じてるよ」
    (本当に?じゃーまた試合終わったら連絡するね。あっ由里仕事中か・・・んーメール入れるよ)
    「うん分かった。ごめんね何か。頑張ってね」

    2005-07-18 03:43:00
  • 197:

    私何やってんだろ。晃太はちゃんと考えてくれてるのに。不安になんてなってちゃだめだよね。
    そうとは思いつつも昨日見た前の彼女のことがひっかかっていた。忘れよう。もう終わったことなんだから。
    それから私も英二にちゃんと言おう。きちんと終わらせないと何も始まらない。晃太ならきっと大丈夫。私を幸せにしてくれる。
    そう自分に言い聞かせた。干しっぱなしになってあった洗濯物を取り込んだ後、お風呂に入った。お風呂での半身浴は私の日課だ。

    2005-07-18 04:33:00
  • 198:

    約30分、お風呂に入りながら営業メールをする。携帯をラップでぐるぐるに巻き、持ち込むのだ。
    そして晃太といた間、メールを返していなかった上客達にメールを返した。
    次々にメールが返ってくる。
    [今日?に行こう。同伴大丈夫だから]
    早速予定が入った。そしてその後もメールは続き来店予定客は三組が確定した。そろそろ出よう。そしてお風呂から出た私は、まだ3時だし久しぶりにネイルサロンに行くことにした。

    2005-07-18 04:45:00
  • 199:

    すっぴんのまま晃太に貰った帽子を被り、新宿にあるネイルサロンに向かった。そしてお店に入ると美香も来ていて偶然隣同士になった。
    「あれからどう?」
    美香が聞いてきた。
    あれから?あっそうか。あのコンパの日、私途中で抜けたからなぁ。あゆみには話したけど・・・何て言えばいいんだろ。
    「あーうん。別に普通だよ。」
    家に行ったとか、ましてや付き合ったなんて言ったら何て言われるか分かんない。何故か私は晃太とのことを隠してしまった。

    2005-07-18 04:53:00
  • 200:

    「そうなんだー。でも矢口ってクールだよねー。かっこいいけどさ。何考えてるか分かんないタイプじゃん」
    「そ、そうかな?」
    晃太を否定されてるようで少し腹が立った。
    「でも田村が言ってたんだけど矢口の元カノ超キレーなんだって。モデルらしいんだけどさー。何かの雑誌に専属決まったんだって。何の雑誌なんだろうね」
    ズキン
    何かが刺さったように胸の奥が痛くなった。
    「ふーんそうなんだ」

    2005-07-18 05:01:00
  • 201:

    聞きたくないことばかりが耳に入ってくる。
    「あっ!でも由里いい感じだったじゃん。矢口狙っちゃえば?今フリーなんだし」
    「んーそだね。考えとくよ」
    気分転換にネイルしに来たのに意味がなかった。来るんじゃなかったなぁ。美香はケアが終わると先に帰って行った。
    「由里ちゃん矢口ってあの矢口晃太?」
    担当の夏美さんが私にそっと聞いた。
    「あ・・・えっと」
    「ごめんね言いたくなかったらいいよ。変なこと聞いてごめん!」
    夏美さんは慌てて謝ってきた。

    2005-07-18 05:08:00
  • 202:

    「そう。あの矢口晃太なんですけど・・・」
    夏美さんには隠すこともないや。そう思い私は話した。夏美さんはもうすぐ30歳を迎えるいわばアネゴ的な人。
    夏美さんと話をしにここに通う女の子も多い。私もそうだった。英二のことや仕事のグチとか、いろんなことを今まで聞いてもらってきた。
    「で、どうなの?本当のところは」
    鋭い質問だった。
    「自分でもよく分からないってゆうか。信じられないんだけど。付き合ってる・・・みたいな」

    2005-07-18 05:13:00
  • 203:

    ?鈴夏?

    はぢめて読ませてもらったぁ??こんな話しぁったらィィのにッてめちゃ考えたッ?ワラ
    続き楽しみにしてまぁ?ッス?

    2005-07-18 05:28:00
  • 204:

    「そりゃあなりますよ。でもいいんです。信じて遊ばれてたとしても自分で決めたことだし。いい女が現れて由里から離れて行くことになっても」
    私がそう言うと夏美さんはニコッと笑った。
    「そう。私はそれが聞きたかったんだ。強い気持ちがあるっていいことだよ。いい恋すると綺麗になるしね。でも羨ましいなぁ」
    夏美さんはそう言うとフーッと溜め息をついた。
    「私さ、結婚・・・なくなったんだー。」

    2005-07-18 05:37:00
  • 205:

    えっ・・・?
    夏美さんには8年間付き合っていた彼がいた。私も何度かお店で見たことがあった。そして、今年の秋には結婚するかもという話も聞いていた。
    「どうして?何かあったんですか!?」
    「うーん。やっぱり八年って長すぎたのかな。由里ちゃんぐらいの若い女に乗り換えられちゃったよ。私も怒る気にもなれなくてね。30歳を目前にして弱気になったみたいな」

    2005-07-18 05:42:00
  • 206:

    名無しさん

    ?

    2005-07-18 05:49:00
  • 207:

    うそ・・・でしょ?
    私もショックで言葉が出なかった。あんな風になりたいなって、ずっと憧れてきた二人だったのに。夏美さんは二十代のほとんどをあの人と過ごしてきたのに。
    「ごめんね。つまんない話しちゃって。もう完成するよー。」
    夏美さんは無理して笑っていた。本当は苦しいのに。泣きたいのに。でも私みたいな若造の前でなんて泣けないんだろうな。
    なんでだろう。年をとるごとに人前で涙を流すことは減っていく。大人だから?我慢しなきゃいけないの?

    2005-07-18 05:50:00
  • 208:

    「はい!終わりぃー」
    夏美さんはいつもの夏美さんに戻った。
    「あの、今度また一緒にご飯でも行きましょうよ!いいお店見つけたんです」
    私は夏美さんに元気を取り戻してほしかった。私なんかで埋めれる傷なわけないけど、おいしいもの食べて馬鹿な話したりして。
    「オッケー。じゃあまた電話ちょうだい。楽しみにしてるよ。今日はありがとね」
    お店を出た私はすれ違うたくさんのカップルを見て、一瞬立ち止まった。
    この人達はずっと幸せでいられるのかな。そして私も晃太と幸せでいられるのだろうか。

    2005-07-18 06:02:00
  • 209:

    不安になった。
    怖くなった。晃太に会いたくなった。
    同伴の約束がある。仕事だ仕事。しかたない。美容院に向かい、着いた私はカーラーを巻いている間に化粧を始めた。
    セットをしてもらうにつれ変わっていく私。“由里”から“ゆかり”に変わっていく。セットも終わり、急ぎ足で待ち合わせ場所に向かった。ちょうど6時半だ。
    晃太はもう試合が始まってるころ。勝ってるかな?どうなんだろう?そんなことばかりが頭によぎる。
    お客さんと食事をしていても上の空。こんなこと今までなかったのに。

    2005-07-18 06:13:00
  • 210:

    その時だった。
    「今日勝ったみたいだぞー。連勝だな」
    そんな会話が聞こえてきた。連勝?もしかして・・・聞き耳を立てて聞いているとやっぱり晃太のチームだった。
    良かった。私は嬉しくてお酒が美味しく感じた。ちょっとしたことで喜んだり、馬鹿みたいだけど素直に嬉しかった。
    「ゆかりさんバックお願いします」
    テーブルボーイが呼びにきた。また別の指名客の席だ。盛り上がってても会話がいつも途切れ途切れになるんだよなぁ。
    「ちょっと待ってね。すぐ戻ってくるから」
    そう言って私は席を立った。

    2005-07-18 18:27:00
  • 211:

    そしてその時三人組の客が店内に入ってきた。マネージャーが近付いてきて私の耳元で小さく囁いた。
    「矢口さんビップ入れるから」
    や、矢口さんって?
    少し酔いが回っていた私は意味が分からない。でも三人組の一番後ろには間違いない、晃太がいる。
    晃太達に気付いた他のお客さんや女の子がザワザワし始めた。もちろん私もビックリしていた。

    2005-07-18 18:32:00
  • 212:

    「うまく回すからとりあえず指名あるから矢口さんのテーブル付いてて」
    マネージャーにそう言われ、晃太の席についた。他の二人もチームメイトの人だった。女の子二人が付きみんなが話し始める。
    「どうしたの?急に」
    私は晃太が急に来てビックリしていた。
    「え?来ちゃだめだった?」
    全然・・・いいけど
    「そんなことない。ただちょっとビックリして。試合勝ったんでしょ?」
    「おかげさまでね。てゆうか由里今指名いくつかかってんの?」

    2005-07-18 18:39:00
  • 213:

    「ここ入れたら四席?かな?」
    晃太は周りを見渡していた。
    「さっきから俺らめちゃくちゃ見られてない?すげー視線感じるんだけど」
    それもそのはずだ。見られているのは間違いない。

    2005-07-18 18:49:00
  • 214:

    「だって晃太達がいるんだもん見ちゃうよ」
    私と晃太がそんなことを話していると、一緒に来ていた二人が珍しくジーっと見てきた。
    「由里ちゃんって君のこと?今日晃太がどうしても来たいっつーからさー。俺らはオマケでついてきたってわけ」
    「ちょっ、言わないで下さいよ」
    晃太が慌ててる。
    「一人で行くの恥ずかしいからって俺らに頼んできたじゃん晃太」
    「ほんまや。照れんでええやん」
    二人にいじられてる晃太。焦ってたりして可愛かった。

    2005-07-19 03:06:00
  • 215:

    「今日終わったらそのまま来れない?俺ここ最後までいるか近くで待っててもいいんだけど」
    き、今日そのまま?
    「あ・・・急にだからなぁ。どうしよう?取りに帰りたい物もあるし」
    「分かった!じゃあついでに由里んとこ寄って、一緒に帰ろう」
    「うん、そーだね」
    晃太は強引すぎるぐらいいつも豪快だ。考えるすきを与えてくれない。でもそのくらいの方が私には丁度良かった。

    2005-07-19 03:13:00
  • 216:

    「由里さんバックお願いします」
    マネージャーに呼ばれた。あぁもう交代か・・・嫌だなぁ。ヘルプにも心配があった。
    前に名刺置いてた子もいたし。ま、晃太は持って帰んなかったけど。指名客の客席に戻った私は、いつも通りの接客に戻った。
    でも晃太が・・・見てるのが分かる。そう思うと何をすればいいのか分からなくなった。
    晃太は嫌がってるんだよね・・・。

    2005-07-19 03:20:00
  • 217:

    それからまたテーブルを二カ所回り、晃太の席に戻れた。
    「由里ちゃんってナンバー1なん?」
    関西弁の須藤さんが急に聞いてきた。須藤さんは晃太と同じ歳だ。チーム内でも一番仲が良いと言っていた。
    「えっと、あ、一応ですけど」
    「やっぱりなー。さっきから君ばっかりあっち行ったりこっち行ったりしてるもんな。晃太心配しとったで」
    晃太を見るとそんなことないよって顔をする。須藤さんにも何言ってんだよってアイコンタクトしてた。

    2005-07-19 03:28:00
  • 218:

    「ごめんね何か。」
    晃太が謝ってきた。
    「えっ!?何が?」
    晃太の顔が少し悲しそうに見えた。
    「俺が来たら邪魔しに来てるようなもんだよね。俺も会いたいから来てるのにつまんねー嫉妬してイライラしたりさ。マジかっこわりーよ」
    そんなことない。来たくない慣れない場所にまで私に会いにきてくれた。私だって会いたかった。晃太のことばっかり考えてた。
    仕事が手につかなくて頭の中いっぱいで、それで勝手に不安になって・・・。

    2005-07-19 03:36:00
  • 219:

    「晃太待ってて!もうお客さんに体調悪いから上がるって言って帰らせてくる。じゃあもうお店上がれるから」
    「いーよ本当に気にすんなって。」
    晃太は止めたけど私は席を立ち、順番にお客さんを帰らせた。マネージャーに晃太達のアフターだと言うとオッケーをもらえた。
    ロッカールームで着替え終わり晃太の席に戻った。
    「俺やっぱりこっちの由里のほうがいい」
    そう言って晃太は私の頭を撫でてきた。
    「別人やなぁ」
    須藤さんはジロジロ見てくる。

    2005-07-19 03:43:00
  • 220:

    ドレスを来てキラキラしたアクセサリーを着けているだけで変われるものなんだ。
    着替えて戻った私は黒のタンクにジーンズ。晃太に貰った帽子をかぶれば普通の女に戻る。
    でもそんな普通の私の方がいいって言ってくれる晃太で良かった。いつも綺麗に着飾ってるのって疲れちゃうから。

    2005-07-19 03:48:00
  • 221:

    私達はとりあえずお店を出た。しばらく歩いて立ち止まり、まだ飲むと言っていた須藤さん達二人とそこで別れた。
    そして晃太が止めたタクシーに二人で乗り込んだ時、私のカバンからはあの着信音が鳴った。
    ―aikoの花火―
    英二からの着信だった。私は音を切り携帯をしまった。
    「出ないでいいの?」
    私は静かにうんうんと頷いた。
    でもタクシーが走りだしたその時だった。英二がいた。すぐ近くに立っていた。私に気付いていた。

    2005-07-19 04:01:00
  • 222:

    ドキドキ・・
    ドキドキ・・
    何故か心臓の鼓動か早くなった気がした。
    英二に見られたから焦ってるのか晃太が気付いたらどうしようって焦ってるのか私は自分でもよく分からなかった。
    それより何で英二があんなとこ・・・仕事中なはずなのに。まさか来るつもりだったのかな?
    すぐに私のマンションに着き、晃太も来ると言ってきたので一緒に家に戻った。そして充電器や化粧品を用意していると晃太が静かになった。
    なんでだろうと気になってキッチンにいた晃太を見てみると英二と揃えた食器類をジッと見ていた。

    2005-07-19 04:11:00
  • 223:

    ほとんどが二つずつ揃ってあった。晃太何を思ったんだろう。
    「晃太ぁ?もう用意できるから座っててごめんね」
    「あ、うん」
    リビングに晃太を座らせた私は部屋に戻った。私の部屋には晃太に見られたら嫌な思いをさせる物が他にもあった。
    英二の服もそうだし男物のベルト、とにかく見られたくない。晃太に嫌な思いさせたくない。
    早く用意を済ませ、リビングに戻った。
    「できたよ行こっか」
    「おー行くか」
    玄関に向かった私は靴をはいていた。振り返ると晃太がいない。

    2005-07-19 04:18:00
  • 224:

    ちょっ、どういうこと?
    「晃太!?」
    私が慌てた声で呼ぶと晃太が洗面所から出てきた。そして手には髭そりとハブラシが握られていた。
    「捨てていいよね?」
    晃太が静かに言った。
    「うん。いいよ」
    私がそう答えると晃太は私にそれを渡してきた。えっ?何?
    「由里が自分で捨ててほしい。俺は自分で捨てたから。まぁケジメみたいなもんかな?いちいちうるさくてごめんね」
    「あ・・・大丈夫。捨ててくるから。」
    部屋に戻ってごみ箱に捨てた私はゴミ袋をそのまま捨てようと持って出た。

    2005-07-19 04:24:00
  • 225:

    これでいいんだ。そう、これでいい。
    そして私はゴミ捨て場にゴミを捨てた。英二のハブラシも・・・英二への残った気持ちも。でも私達がマンションを出た時、そこには英二がいた。
    二度目だ。あの日と同じ。晃太と初めて会ったあの日と。
    晃太は知ってる。英二が元カレだってことを。でも英二は知らない、晃太と付き合っていることを。
    私がどうにも出来ずに立ち止まっていると英二がこっちに歩いてきた。

    2005-07-19 04:30:00
  • 226:

    「由里どういうことだよ。何でお前んちから矢口と出てくるんだよ。なぁ!お前遊ばれてるって目ぇ冷ませよ」
    英二が大声で怒鳴った。そして晃太にも。
    「俺ら今は別れてますけど絶対こいつ俺のとこ戻ってきますから。もう由里に手出すのやめてほしいってゆうか。遊びなら他にも女いるじゃないですか。だいたいあんた野球選手じゃん?ほらアナウンサーとかさ、もっと上っつーかこいつより上ってゆうか」
    それを聞いていた晃太が英二よりも大声になった。

    2005-07-19 04:37:00
  • 227:

    「お前さぁ、さっきから聞いてるけど何が言いたいわけ?」
    「えっ、あ、だから手出すなら他にもいい女がいるってあんたならさ・・・」
    晃太は見たことのない顔で英二に言った。
    「お前さ、いい女とかこいつより上のとか言ってるけど俺は由里がいいから。由里より上がいるならお前がいけよって話だろ?」
    英二は黙りこんだ。
    「言いたいことはそうじゃねーだろ?回りくどい言い方しても何も伝わんねーぞ。好きなら好きだって俺に宣戦布告してこいよ」

    2005-07-19 04:45:00
  • 228:

    「す・・きだけど。好きだよ!悪いか?」
    英二はからかわれて怒った子供みたいだった。
    「よし、それでいいんだよ。でもな選ぶのは由里なんだ。由里の気持ち、ちゃんと聞こう。な?」
    「由里、俺今日お前に会いに行ってたんだ。で、お前達見てどうしようもなくて気付いたらここまで来てた」
    英二・・・やっぱりそうだったんだ。
    「店抜けてから今までずっと客からもオーナーからの電話もシカトしてて。でも俺、そんなこと今はどうでもいい。ナンバー1は手放せてもお前のことは手放せないって分かったんだ」

    2005-07-19 04:53:00
  • 229:

    ちひろ

    由里ちゃん応援してます?私色々と悩みあるんやけどこの小説見るの楽しみにしてて、読んでるといつのまに悩みも吹っ飛ぶし、何が言いたいかよくわからんけど。。。??頑張ってね?完結まであたたかく見守ってゅきます??〃

    2005-07-19 04:54:00
  • 230:

    英二の言葉は私の中で大きく響いた。英二がこんな風に一生懸命なこと言うのって、三年前のあの頃だけだったのに。
    私は何故か涙が出た。
    嬉しいから?英二が元に戻ってくれたから?ううん、違う。そうじゃなかった。私は分かっていた。
    いつの間にかもう英二とは終わってたことが。私の中に英二より大きな晃太という存在ができていたことが。
    「ご、ごめん英二」
    私が話し始めると晃太は距離を空けるようにマンションの入口から離れた場所に座った。

    2005-07-19 05:02:00
  • 231:

    「ありがとね。本当に嬉しかった。英二が昔に戻った気がして。ずっと一緒にいたもんね由里と英二」
    「そうだな。だから分からなくなってたんだよ。近くにいすぎてそれが当たり前でさ。お前はいつでも許してくれてたから、だから懲りずに女遊びしたりして。馬鹿だよな俺」
    「うん、馬鹿だね。由里言ったじゃん?もう若くないんだしこれからのこと考えてるって。でもね、英二とのこれからをいくら考えても何も答えが出なかったんだ・・・」

    2005-07-19 05:07:00
  • 232:

    「何も?」
    「うん。きっとね、戻ったとしても英二はホスト辞めずに続けて由里はホステスして結局今までと同じで時間だけが流れてくだろうなって。だって今から就職したり落ち着く気なんてないでしょ?社会人になろうって。だからね、先が全然見えなかった。それに英二バカだからまた浮気したりして不安にさせられるだろうって思った。我慢させられるって。言わなかったけど英二の客が店に来たこともあったんだから」

    2005-07-19 05:13:00
  • 233:

    ちひろちゃんありがとう?読んでもらえて嬉しいです?頑張っていきます?

    2005-07-19 05:15:00
  • 234:

    「え・・・?それマジかよ?」
    「それだけじゃないよ。酔って帰ってきた日にシャツにグロスがベッタベタについてたりラブホのレシート見つけたり。でもずっと言わなかった。やってないって自分に言い聞かせてた。英二はそんなことしないって。でもね、普通の女の子ってそんなことしないよ?当たり前に喧嘩して怒ったりさ。由里ね、あゆみとか見てて羨ましかったんだ・・・普通の恋愛して普通に幸せそうなのが。英二といると楽しかったよ本当に。だから嫌なことも我慢できたと思う。でも気付いたんだよね」

    2005-07-19 05:28:00
  • 235:

    「好きって思う気持ちは我慢に繋がるはずじゃないって。壊れそうだったよずっと。割り切らなきゃって。ずっとホステスしてきたけど同伴とかアフター以外で客と会うことなんてなかった。英二と付き合ってた間、男と二人で会ったことなんてなかった。何でだか分かる?由里は英二の由里だったから。いくら裏切られて泣かされても、英二のこと好きだったから」

    2005-07-19 05:35:00
  • 236:

    自分でも何を言っているか分からなかった。拭いても拭いても流れ出る涙。言いたいこともまとまらないまま出てくる言葉を必死で並べた。
    「俺、もう手遅れなの?なぁ由里、俺お前にもう何もしてやれないの?最低な男のまま終わるのかよ」
    英二はそう言うと壁に自分の手をドンとぶつけた。
    「最低な男のままじゃないよ。だって英二さっき超かっこよかった。いい男になったじゃん。由里にできなかったこと、次に大事に思う子ができた時にしてあげてよ。もう泣かしたり我慢させたりしないでね。」

    2005-07-19 05:45:00
  • 237:

    「あいつ、あ、矢口は何なの?あいつお前と付き合ってんの?」
    「うん三日前から。英二さっき言ったじゃん?遊ばれてるって。あれさ、他の人にも言われたんだよね」
    私も分かってる。夏美さんみたいに永遠の相手と思っていても別れることがあったり、相手が別の誰かを好きになることがあるって。
    「だったら何で?遊ばれてもいいってことか?あいつ野球選手だぜ?俺よりひどいよ絶対」
    英二は何時も同じようなことを言った。
    「でも由里は信じようと思ってる。あの人そんなに悪い人じゃないよ。遊ばれたならそれまでだし」

    2005-07-19 05:50:00
  • 238:

    「俺にはもう勝ち目はないの?」
    英二が悲しい目で私を見た。
    「勝ち目とかそんなんじゃないじゃん」
    そんな言葉しか見つからなかった。
    「俺やっぱムリだわ」
    えっ?何が・・・?
    「今はとりあえず何言っても無理だし待ってるよ。お前が選んであいつのとこ行っても。いつでも戻ってこいな。お前に恥ずかしくないように俺も頑張って変わるから」
    そう言うと英二は晃太の所に歩いて行った。
    「ちょっと待ってよ」
    私は追い掛けた。

    2005-07-19 05:57:00
  • 239:

    「あの、俺、由里のこと諦めませんから。とりあえずは振られたけど絶対諦めませんから。あと、泣かせたりしたらマジでぶっ殺すから」
    英二の言葉を聞いて晃太が言った。
    「俺は大事にするよ。多分君のとこには戻らない。」

    2005-07-19 06:01:00
  • 240:

    名無しさん

    ???

    2005-07-19 08:25:00
  • 241:

    「戻るとすればそれは俺より君のことが大事だったってこと、でも俺は由里を傷付けたり泣かせたりしない。幸せにする自信あるから」
    晃太・・・。
    そして私の手を掴み、引っ張りながら晃太は歩いた。英二の方を振り返るとただ呆然と私達を見ていた。
    ごめんね英二。もう気持ち動きだしちゃったんだよ・・・。

    2005-07-20 01:31:00
  • 242:

    男と女。こればっかりは本当に分からない。
    答えなんていつまでも見つからない。色んな恋愛があっていくつものストーリーがある。
    今日は幸せで笑っていても明日には壊れてしまうこともあったり。永遠を誓い合って結婚しても結局別れてしまったり。
    本当に変わらない想いなんてこの世に存在するんだろうか。好きで大好きで相手も同じように思ってくれてずっとずっと幸せでいれることなんてあるのかな。

    2005-07-20 01:48:00
  • 243:

    私は止まらない涙をただ流し続けた。
    タクシーを拾い、晃太の隣にいても何故か泣きやめなかった。
    でも晃太のマンションに着いてやっと涙も止まった。新しい自分、新しい恋、新しい・・・
    幸せにならなきゃ。英二にあんな顔させておいて私まで暗い顔してられない。晃太にもこんなんじゃ嫌われちゃう。
    「明日さ、由里試合見に来る?気晴らしって言ったら変だけど」
    試合?晃太の?
    「え?」
    「いい席取ってあげるからさ。おいでよ」
    「うん行く!」
    ちょっと嬉しかった。きっと晃太は元気づけてくれてるんだろうな。

    2005-07-20 02:09:00
  • 244:

    もう外は明るくなってきてる。いつの間にか朝になってた。
    そして今日も晃太と私はキスして手を繋ぎ何もしないまま寝た。でも繋いだ手はいつもより強く感じた。
    晃太といる時間が心地いい。あんなに泣いてたのに今はもうこんなに落ち着いてる。私も単純だなぁ。
    ピピーピピー
    気付けば時計のアラーム音で目が覚めた。泣き疲れて寝てしまってたみたいだ。顔を洗って起きた後、ご飯を炊いておいた。
    晃太リクエストのオニギリを作るため。そして晃太を起こすため寝室に戻ると急に晃太に手を引っ張られ、そのままベッドで抱きしめられた。

    2005-07-20 02:17:00
  • 245:

    「そろそろ起きてもうお昼になっちゃうよ」
    私は抱きしめられたままで少し苦しかった。
    「いーの!由里ぃ、俺のこと好き?」
    甘えた声で聞く晃太。
    いつもは大人でクールな感じなのにこの時は可愛く思えた。
    「好きだよ」
    私が答えると晃太はそのまままた私をギュッと抱きしめた。
    その時気付いた。晃太は勃ってた。どうしよう・・・何故か恥ずかしくて気付かないふりをした。
    「俺の由里だよね?」
    私はウンと頷いた。
    「俺だけの由里にしたいんだ・・・いい?」
    それってHするってこと!?

    2005-07-20 02:27:00
  • 246:

    いい・・・ってゆうより恥ずかしくて答えられなかった。ただ晃太の背中をギュッと抱きしめた。
    すると晃太は私の顔を見てキスをする。おでこにも頬にも唇にも。首筋にキスされた時、体中がゾクっとした。
    晃太の優しいキスで私の体は痺れる。
    「由里かわいい」
    晃太がそう言うと私は晃太が欲しくなった。早く抱かれたいって。

    2005-07-20 02:35:00
  • 247:

    着ていたキャミと短いスエットパンツをぬがされ、下着だけになった。晃太は私の体中にキスしながら舐めてくる。
    押さえようとしても漏れる私の声を聞くと晃太は息を荒げた。
    晃太の唇は今まで感じたことがないくらい柔らかくて優しい。全身が感じてしまう。
    そしてそのまま下着も取られ晃太の唇は私の胸元、それからあそこにも動いていった。
    恥ずかしさと気持ちよさでおかしくなりそうだった。

    2005-07-20 02:48:00
  • 248:

    全てを書くと思い出して恥ずかしくなるからこんなところで終わります。晃太との初めてのHはこんな感じで初Hながらも凄く感じた。
    それから晃太がシャワーを浴びている間に、オニギリを作り晃太の仕事の準備をしてソファーでテレビを見ていた。
    シャワーから出てきた晃太は私の隣に座りまた私を抱きしめた。
    「可愛いなーマジで」
    晃太にそう言われると何故か照れ臭かった。
    出かける用意ができ晃太を玄関まで送る時
    「はい、これ」
    そう言ってカギを手渡された。
    あ・・・これって作ってくれた合鍵?

    2005-07-20 02:58:00
  • 249:

    「本当に持ってていいの?」
    晃太は笑顔でウンウンと頷いた。
    「何時頃来る?今日」
    あ、そうだ。今日見に行くんだった。
    「うーん何時頃から行けばいいの?」
    私は今まで数えるぐらいしか観戦に行ったことがなく、何時に入れるのかなどよく分からなかった。
    「そうだなぁ、試合は六時からだから六時頃でもいいし早く来るなら練習やってるし四時とかでもいいよ」
    そんな早くから入れるんだぁ。
    「じゃー早く行くよ」
    「チケット出しておくから窓口で・・・」
    そう言って受け渡しのやり方を説明してくれた。

    2005-07-20 03:05:00
  • 250:

    「ほんじゃー行くね。いってきます」
    そう言って晃太は出て行った。
    私はウキウキだった。何だか特別な気がして嬉しかった。渡された合鍵を見ていると自然と顔がにやけてくる。馬鹿みたいな顔だ。
    早く用意しなきゃ。そしてシャワーを浴び、私も用意を始めた。
    何着てこっかなぁ。暑いだろうし・・・結局白のタンクとジーンズで行くことにした。まだ時間もあったので髪を軽く巻いて、鏡の前で晃太に貰った帽子をかぶってみた。
    よし!オッケー。こんな感じでいいや。
    少しテレビを見た後、私もマンションを出た。

    2005-07-20 03:23:00
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