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絆-Kizuna-

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  • 1:

    頑張って書くので宜しくお願いしますm(__)m

    2005-06-26 01:28:00
  • 52:

    見たこともない女が今私が働いてる店に乗り込んできたこともある。
    英二と別れようと決めた一つのきっかけにもなった。英二は歌舞伎町、私は六本木。別の街でも噂は噂を大きくしたんだろう。
    酔っ払った品の悪い女が大声を張り上げながら入ってきた。
    「ゆかり(私の源氏名)ってどいつ?指名するからつけて。金ならあるから」
    見慣れない顔、女一人の客。店内にいた誰もがすぐに悟ったはずだ。トラブルかって。
    私の指名客も二組来ていたが、まずい話が漏れても嫌なので念のため会計チェックして帰ってもらった。

    2005-06-28 00:55:00
  • 53:

    私は少しイライラしていた。英二のことだと分かりきっていたからだ。マネージャーに頼んで女性客禁止ですと言ってもらい帰ってもらうこともできたが、仕事中に来る=ホステス潰しなわけで。
    ちょっと頭冷やさせようかなって半分楽しんでいたのかも。ラストも近くなってきて客席もポツポツだったからちょうど良かった。
    「失礼します。ご指名ありがとうございますゆかりです。」
    名刺を差し出した。
    私の名刺を手に取った女も名刺を切ってきたので受け取った。
    (なつき。歌舞伎町かー。もろ英二だよ)
    予感は的中した。

    2005-06-28 01:08:00
  • 54:

    煙草をフッと吹きながら私をジッと見る。
    「あんたさー、英二の女?」
    なにこいつ。年増ホステスみたいな顔して。
    「お答えする理由はないと思いますが」
    私は即答で答えた。
    なつきは大きな声で
    「私は英二の女なの。でもあんたが彼女だって噂が絶えないから迷惑してんのよ分かる?」
    私も性格の悪い女だ。思わずクスッと鼻で笑ってしまった。
    「なに笑ってんだよ!なめてんのか」
    声はより一層大きく響いた。店内の客はラストを迎え帰っていく。
    このなつきって女、同業なのに水商売のルール全然分かってないなぁ。掟破りだよ全く・・・

    2005-06-28 01:21:00
  • 55:

    「で?何?用はそれだけ?帰りたいから早くしてくんないかな?」
    煽るように言うと
    「だから英二の女なのかって聞いてんの」
    あー疲れる。ほんとこの手の女はだるい。
    「知らないよ誰それ」
    私は知らないふりをした。でも女はそれでもしつこく話を続ける。
    「嘘つかないでよ。調べたんだから」
    調べた?マジで痛すぎるよこの女。
    「だったらなに?」
    イライラしてきた私は思わず口走った。
    「英二と別れてよ。」
    泣きそうな顔だ。
    「はいはい分かった分かった。だから帰ってくんない?店終わりなんだよね。」

    2005-06-28 01:45:00
  • 56:

    それだけ言って私は席を立ちあの女が店を出たらボーイに塩をまいておくよう頼んでロッカールームに引き上げた。
    そして着替え終わるとそのまま英二の家に行った。ぼーっとしたまま考えてた。客だし我慢しよーかって。年増ホステスはタチが悪いからって。
    でも我慢する必要なんてないんだ。ずっと我慢はしてきた。何でも笑って許してきた。
    今日のことも英二は悪いわけじゃない。でも元をたどれば英二が原因。店に潰しいれられて我慢できるほどいい女じゃないし私。

    2005-06-28 01:57:00
  • 57:

    一人で黙々とそんなことを考えながら携帯を手にした。
    「もしもしー。ゆかりです。ちょっと潰してほしいホステスが歌舞伎町にいるんだけど」
    私が電話をかけた相手は夜の世界で働く者なら一度は名前を聞いたことがあるだろう。黒木さんという人だ。
    夜の街を取り仕切るドンみたいなものだ。黒木さんは私が17の頃からの付き合いで、指名客でもある。ずっと娘のように可愛がってもらってる。
    英二の働く店を決めてくれたのも黒木さんだった。父親のいない私にとってはお父さんのようなものだ。

    2005-06-28 02:08:00
  • 58:

    (どこの店の誰だ?)
    「えっと歌舞伎町の・・・」
    (ん分かった。どうする?出すか)
    私は少し考えた。
    「うーんそうだね」
    (おー分かった)
    そして電話を切った。やりすぎたかな?と少し悩んだが、これで夜の世界のルールも分かるだろう。
    出すってゆうのは23区内から出すということだ。歌舞伎町の店はクビ、勿論六本木や渋谷、神楽坂や銀座、池袋でも働けない。
    だいたい二年は無理だろう。写真や履歴データは全てまかれる。レッドホステスのレッテルが貼られ、雇う店が危険だからだ。

    2005-06-28 02:23:00
  • 59:

    そして私は自分の洋服や化粧品、小物やカバンなども全部整理し近くのコンビニで買ってきたいくつかの紙袋の中につめれるだけ詰め込んだ。
    タクシーを呼び部屋を出た私は鍵を閉め、ドアのポストにカチャンと鍵を落とした。合鍵はもう必要なかったからだ。
    両手いっぱいの荷物を抱えタクシーに乗った私は自宅へと帰った。
    もう疲れた。疲れすぎてたのだ。英二とはもう終わりだな・・・昔は楽しかったのに。家についた私は荷物を片付けることなく横になりウトウト眠っていた。

    2005-06-28 02:34:00
  • 60:

    名無しさん

    しおり

    2005-06-28 02:42:00
  • 61:

    最初の方にも書いてあるが英二はいつものことだろうと気にも止めていなかった。
    あれからもう一ヶ月。違う、まだたった一ヶ月なのかもしれない。英二との三年間を壊したのはホストになりたいと言った英二を止めなかった私自身だったのかな。
    でもそんなことはもういい。過ぎたことなんだ。ナンバーワンホストになった英二も建築作業してた英二も同じ英二には変わりないんだから。
    ただ時間と生活がお互いを変えただけ。

    2005-06-28 02:44:00
  • 62:

    そんなことが一気に私の頭の中をよぎった。色々あったなぁ・・・
    「聞いてる由里?」
    英二が聞いてきた。
    今日はずっと待っててくれたんだよね。こんなことするやつじゃないのに。でもちゃんと考えたい。私も将来考えなきゃなんない年になったし。
    「ねー英二。由里もう23じゃん。色々考えたいんだよねこれからのこと。いつまでも好きとかだけで動ける子供じゃないんだしさ。」
    「おー。てゆうか今日の矢口は関係あんの?お前泣いてたしさ」
    あっ矢口さんか・・・
    「ないないあるわけないじゃん矢口だよ?」

    2005-06-28 02:58:00
  • 63:

    「だよな。でもお前すげーよな。店にでも来たの?今度サイン貰っててよ」
    英二はバカだ。本当に単純で。
    「無理!もう会うことないし。残念ながら」
    そう。もう会うことはない。今日は夢みたいなものだったんだ。
    「じゃーおやすみ」
    英二が帰ってく。
    「英二!」
    私が呼ぶとクルっと英二は振り返った。
    「ごめんね今日。待っててくれたのに。ちゃんとゆっくり考えるから。お酒飲み過ぎないようにね!」
    私がそう言うと
    「お前もなー」
    と言いながら英二は手を振った。

    2005-06-28 03:06:00
  • 64:

    やっと家に着くともう朝の6時を過ぎていた。中途半端に残ったお酒、ボロボロになった化粧。
    鏡に写る私は最悪だった。年とったなぁ・・・。六年前水商売に足を踏み入れた時から気付かないうちに長い長い時間が過ぎていたのだろう。
    精神的にも身体的にもギリギリなような気がした。同じ年齢のホステスがいても、水商売歴一年や二年と聞くと羨ましくなる。
    水商売が楽しくて何もかもに熱くなれた頃だった。今じゃ私は死んでいくのを待つ蝶だ。
    蝶はサナギから出ると綺麗な色をつけ毎日のように華麗に羽ばたくものだ。

    2005-06-28 03:18:00
  • 65:

    美味しい花の蜜を吸い、ヒラヒラと飛び交う。ホステスも同じだ。
    でも蝶が一匹死んでも誰も気付かないように、ホステスが一人消えてもすぐに忘れさられる。
    いくら良い服を着て良い物で着飾っていてもお店にとってのいち商品でしかないのだ。誰かがいなくなれば誰かが入る。代わりなんて腐るほどいる。
    使い捨てといえば聞こえが悪いだろうけど、経営者からしてみればそんなものなんだろう。
    お金を運ぶおもちゃなのだから。それに気付いたのはまだ最近だ。

    2005-06-28 03:29:00
  • 66:

    この六年で私はたくさんの女の子と出会ってきた。数えきれないくらい。それなのに今でも会うほど仲のいいホステスは三人しかいない。
    お店が変わると付き合いも終わる。寂しいものです。それに知り合ってきた女の子の中で悲しい別れをした子が四人もいる。
    その四人の子達はもうこの世にはいない。亡くなってしまったからだ。
    子宮癌と乳癌を併発して亡くなった早紀。ドラッグに溺れて自殺した洋子。肝硬変から肝癌になった恵美子ママ。
    そしてまだ18歳だったのに鬱病のせいで大量の睡眠薬を飲み二度と目を覚ますことのなかったリサちゃん。

    2005-06-28 03:45:00
  • 67:

    名無しさん

    しおり(*^o^*)

    2005-06-28 03:45:00
  • 68:

    特に洋子のことは今でも後悔だけが残ってて。私達は見て見ぬふりをしてたから。
    仲良く遊んだり、みんなで鍋したり。楽しい日々だった。洋子も始めはそうだった。
    でも店を休みがちになり、出勤してきたと思ったら会うたびに痩せていく。おかしかった。すぐにドラッグだと誰もが気付いた。
    腕に残ったいくつもの斑点。注射器の痕がそれを物語ってた。
    気になってどうしようもなかった私達は店が終わると洋子を連れて帰るようになった。毎日二〜三人で洋子の家に入り浸った。
    本当はもうやめたいと泣き叫ぶ洋子。

    2005-06-28 03:59:00
  • 69:

    でもドラッグの禁断症状は日に日に酷くなる一方だった。
    私達にも限界はある。病院に連れていこうとも話は出た。でも連れて行けば洋子は捕まってしまう。
    どうしようもできずにいた。そんな時、洋子が寮からいなくなった。その日は日曜日だったなぁ。いつもは最低一人でも休みの日曜日はみんな洋子の家にいたのにその日は誰も行けなかったのだ。
    多分誰かが行ってるよ。そんな安易な考えだったんだろう。無責任だった。
    それから連絡がつかない日が四日続いた。
    店の店長は洋子店も来ないし寮費取れないから早いとこ空けないとと言っている。

    2005-06-28 04:10:00
  • 70:

    そんなものなの?
    店長だって洋子のドラッグのこと気付いてるくせに。
    そんな時、洋子と一番仲の良かった綾が急いでお店に入ってきた。
    「ゆかりこれ見て」
    携帯を渡された私は悪い予感がした。
    それは洋子からのメールだった。

    大好きなみんなへ
    ごめんね。助けようとしてくれたのに、またやっちゃったんだ…。頭で分かってんのに体がどうにもなんないよ…。
    苦しいよ。やめれないよ…。でもみんなを裏切ったことがもっと苦しい。もうダメだ。
    ごめんねバカな子で。こんな私と友達でいてくれて嬉しかった。見捨てないでくれてありがとう。

    2005-06-28 04:24:00
  • 71:

    名無しさん

    泣けるわ(T_T)

    2005-06-28 04:29:00
  • 72:

    「洋子の携帯繋がんないの!?」
    「うん。昼過ぎにメール入ってたみたいなんだけど見てからすぐかけ直して何回もかけてんだけどずっと圏外なの」
    私と綾は店長に無理矢理休みにしてもらい鍵を借りて寮に向かった。
    「あっ見て五階!」
    洋子の部屋には電気がついていた。ホッとした私達は急いで部屋に走った。
    (ピンポーン)
    出てこない。開けようと思ったがドアは閉まっていた。店長に借りた鍵をいれ中に入った。
    テレビの音がする。
    「洋子ー?入るよ」
    そしてドアを開けた私達は思わず目をそむけてしまった。

    2005-06-28 04:40:00
  • 73:

    私も綾もあんなに大声で泣いたのは初めてだったんじゃないか。言葉にならない声で、ただワーワーと泣くことしかできなかった。
    30分ほどたっただろうか。ドアがガチャっと開いた。里美とチカだ。私達と同じように洋子を見てきた子達だ。
    「あんた達二人洋子の家行ったって店長から聞いて来たんだけど」
    「ねぇなんで泣いてんのよ!ねぇ!」
    苛立った二人は部屋の廊下で泣き崩れていた私達を通り越し、ドアを開けた。さっきの私達と同じ。すぐに里美がドアを閉めた。
    そして同じように泣きわめいた。

    2005-06-28 04:51:00
  • 74:

    しばらくして泣き疲れた私はとりあえず、黒木さんに連絡した。
    (はい)
    「あっ、ごめんね・・・教え、てほしいん、だけど首吊り自殺、だと警察と救急どっちに電話すればいいの?ヒック・・・ヒッ」
    (由里何あったのか?誰が首吊ったんだ?おい!?)
    結局黒木さんはすぐに来てくれた。黒木さんも洋子を知っていたし「何でこんなこと」と悲しい顔をしていた。
    その後、寮ということもあって店にも連絡が入り店長も来た。私達は発見者と通報者として色々と話を聞かれたせいか物凄く長く感じた。

    2005-06-28 05:05:00
  • 75:

    洋子の死亡原因はやはり自殺だった。ドラッグの反応もすぐに出たらしい。
    遺品などは全て洋子の親の手元に渡っていたので私達は洋子の携帯に電話をかけ、通夜に出席させてほしいとお願いしたが、出席できなかった。
    来ないでくれと言われたからだ。あまりに突然すぎて洋子の両親も悲しかっただろう。埼玉にある洋子の実家は大変だったようだ。
    通夜に出席できず、私達四人はファミレスで静かに話しこんでいた。葬儀には出席したい。そう四人で話していると、綾の携帯に洋子の携帯から電話がかかってきた。

    2005-06-28 05:19:00
  • 76:

    「あっハイ。ハイ。あっいえ。ハイ・・・」
    何なんだろ?
    私達は綾の声を聞いていた。
    (ピッ)
    電話が終わりみんな顔を見合わせていると綾が言った。
    「葬儀に来て下さいって。洋子が送ったメールを見たんだって。洋子のお母さん私達のこと薬やってた仲間だって勘違いしてたって言ってた。ごめんなさいって」
    良かった・・・。お別れの言葉もなしじゃ洋子が寂しがるもん。

    2005-06-28 05:26:00
  • 77:

    そして葬儀の日、私達四人は埼玉の岩槻に向かった。お店にいる他の女の子や、店長やオーナー、マネージャーは来なかった。
    なんなら自殺した女が働いてた店だとか六本木で噂になっていることを心配しているほど。
    人って薄情だなとこの時は本当に痛感した。お焼香をあげ、ゆっくりと手を合わせる。
    洋子、ごめんね。
    助けてあげられなくて本当にごめん。病院に連れてって、洋子が捕まることになったとしても、連れて行くべきだった。ごめんね。
    何回謝っても謝りきれなかった。

    2005-06-29 00:50:00
  • 78:

    あの時、洋子がいなくなった日曜日。私達がそばにいればこんなことにはならなかったのに。
    悔しい気持ちと悲しい気持ちでまた涙がでた。もう涙はでないんじゃないかってくらいでたはずなのに、まだ残ってたんだ。
    もう一生分泣いた気がする。ううん。一生分ならいいのに。悲しくて流す涙なんてないほうがいいんだから。
    洋子を壊したドラッグを憎んでもどうにもならない。渋谷のクラブや繁華街では十代の若い子達でさえドラッグの常習だ。すぐ手に入る。
    警察の取り締まりなどあってもないようなもの。売人が捕まるなんてほんの一握りなんだから。

    2005-06-29 00:59:00
  • 79:

    軽い好奇心で手を出す。それが自分を蝕むものとその時はたいして考えていないんだろう。
    一度手を出せば後の祭り。意識障害を起こし、すぐに禁断症状がでる。ヤバイと思った時にはすでに手遅れなのだ。
    怖いものだってちゃんと知ってほしい。誰かが助けなきゃ。私達はそう誓った。

    そんな洋子との忘れられない別れが、形にはできない何かを残してくれたと思う。

    2005-06-29 01:06:00
  • 80:

    酔ったりすると時々そんなことを思い出したりする。罪悪感がどこかで消えてないからなのかもしれない。六年間の水商売歴、私に何を教えてくれたんだろう。
    やらなきゃ良かったとは思わない。でもできることなら普通の生き方もしたかったかなと思う。自分の生き方や生き様を否定するわけじゃないけどね。
    学んだこともたくさんあったし。今はやってて良かったなと。人として少しは成長できたんじゃないかなって。
    私がホステスを始めた時はまだ17歳だった。法律じゃだめなんだけどね。ナメてたってゆうか生ぬるい気持ちで入ったっけ。

    2005-06-29 01:47:00
  • 81:

    朝は新聞配達。9時から3時までは保険会社でパート。
    今考えればよく分かる。何で朝早くに新聞配達をしていたか。私達が起きる前に働いておきたかったからだ。
    朝は私達四人の学校や幼稚園の用意もあるから、考えていたんだと思う。私達が学校に行ってからパートに行き、帰ってくる頃には帰ってきていた。
    私達と過ごす時間はちゃんと今まで通り変わらないままだ。でも、今まで来てくれてた参観日や行事ごとには来てくれなかった。

    2005-06-29 02:10:00
  • 82:

    まだあまり分からなかった私達は不満を口にしていた。
    何で来てくれなかったの?明日は来れるよね?って。でも楽しみにして待っていてもお母さんは仕事に行って来てくれることはなかった。
    その頃にはお父さんとお母さんの喧嘩はひどくなる一方。お父さんは酒癖も悪く、口も悪くなった。
    「誰のおかげで飯食ってんだ!あぁ?」
    まただ。また始まった。私は喧嘩が始まると弟達を集めていつもお風呂場に連れていく。殴られたりしないように。でも何でお風呂場だったのか。

    2005-06-29 02:17:00
  • 83:

    多分みんなでそばに寄り添えたから安心できたんだ。喧嘩する怒鳴り声はおさまることがなくずっと続いた。
    「私が働いてるから食べていけてるんでしょ!もう嫌!」
    初めてお母さんが大声で逆らった。いつもは絶対にそんなことなかったのに。
    ガシャーン、ドンドン。家の中では音が鳴りやまない。風呂場では一番下の妹、美恵が泣き止まない。まだ美恵は四歳になったばかりだった。
    二つ下の弟、由輝はもう慣れっ子なのか風呂にあったオモチャで遊ぶ。四つ下の恵里は黙って私のそばから離れない。

    2005-06-29 02:26:00
  • 84:

    しばらくしてガチャンと玄関が閉まる音がした。そっと部屋に戻るとお母さんが泣いていた。
    「大丈・・夫?」
    お母さんのそばにいくと殴られた痕が痛々しく見えた。
    「・・・んた達がいなかったら」
    聞こえなかった。
    「えっ?」
    私が聞き返すと今まで見たことのない顔で
    「あんた達がいなかったら出て行けるのに」
    とお母さんは言った。
    「いいよ。出て行っても。お母さんが泣かないでいいんなら。由里がご飯作ったり洗濯もして由輝達の面倒見るから」

    2005-06-29 02:37:00
  • 85:

    私は何故かそう言ってあげることが精一杯だった。何より私達がいるせいでお母さんが苦しむのなら、もう解放してあげたかった。
    お母さんは私を見てまた泣いた。そして私を強く抱きしめた。
    「由里ごめんね。いなくなったりしないから。お母さんはあんた達おいて出てったりしないから」
    私もその時久しぶりに泣いた。一番上だから、私まで泣いちゃだめだってずっと我慢してきた分泣き出すと止まらなかった。
    それを見ていた由輝や美恵、恵里も私とお母さんのそばで泣いていた。

    2005-06-29 02:45:00
  • 86:

    それからはお母さんは私に色々なことを話してくれた。私も六年生だったから、だんだん理解できるようになった。
    お父さんがたまにしか帰ってこなくなったと同時に、家には変な電話や怖そうなお客さんが来るようになっり、そしてそれが借金取りだったということ。
    お父さんが借金を作っていたこと。今でいうア○ムやア○フルなんてざらだった。街金どころか闇金、全部で16社からの借金があった。
    その頃は全部で200万弱だったと思う。私は小さい頃、お父さんに競馬場やパチンコなんかにも連れて行かれたことがあった。

    2005-06-29 02:53:00
  • 87:

    名無しさん

    しおり★

    2005-06-29 03:00:00
  • 88:

    競馬にパチンコ、麻雀。お父さんはギャンブルにはまっていたんだろう。
    小さい頃はお土産のチョコやお菓子が楽しみだった。今思えばただのパチンコ景品だったなぁ。
    喧嘩の原因は借金だったのだ。そしてお母さんが働いていたのはその返済のため、私達の生活のためだったと気付いた。
    でもまだ六年生だった私にはどうすることもできなかった。
    それから私は中学生になり、部活にも入らず家に帰ると家事の手伝いや掃除など、できることは全てするようになった。

    2005-06-29 03:00:00
  • 89:

    ある時、お父さんが久しぶりに帰ってきたと思ったらお母さんのカバンを取り上げ財布を探している。
    お母さんは必死で取り返そうとしたが財布は見つかり、中に入っていた全部のお札とお金の入っていた銀行の封筒を取って出て行った。
    私はぼーっと立ったまま何もできなかった。
    「由里どうしよう。返済のお金と生活費だったのに・・・。」
    その頃の返済は毎月17万。お母さんは新聞配達と保険会社のパート、夜もスナックで週三回のバイトを始めていた。朝の新聞配達は7万、パートは12万、夜は10万だった。
    全部合わせて30万切る。

    2005-06-29 03:10:00
  • 90:

    でもその三分の一は捨て金のようなものだ。
    どうしようと言われてもどうにもならない。お父さんは働いてもお金は一円も持って帰ってこず、全部ギャンブルで使っていた。
    自分の父親が情けなかった。憎かった。
    わずかに残っていたお金で食事には困らなかったが、電話は鳴り借金取りは毎日のように来る。近所迷惑なんて関係ないぐらい怒鳴り声を張り上げるのだ。
    同じマンションに住む同級生に見られたこともあった。恥ずかしいというより悲しかった。

    2005-06-29 03:15:00
  • 91:

    「逃げようか」
    そうお母さんに言われたこともあった。私は何でお母さんや私達は悪くないのに逃げなきゃなんないの?といつも言った。
    その頃はスーパーで万引きしたりもした。週三回、お母さんが夜働きにいく日は万引きしてきた肉や野菜でご飯作ったりして。
    なるべく食費浮かせようとか、お母さんにはばれないようにしながら冷蔵庫の物は使わないようにした。
    それから二年生になった私は、お母さんが朝働く新聞屋で夕方の夕刊配りをした。幼なじみのあゆみは色々なことを知っていたせいか、毎日手伝ってくれたり力になってくれた。

    2005-06-29 03:26:00
  • 92:

    あゆみとは小さい時からずっと仲が良い。それは今も変わらない。私はあゆみがいたから家でも外でも笑ってられた。
    あゆみは小さい頃からお父さんがいなかった。だからあゆみも寂しい気持ちや辛い気持ちが分かるんだと思った。
    夕刊配りが終わると、私の家にきて一緒に勉強したり語ったり、とにかくよく一緒にいた。
    お母さんとあゆみのお母さんもたまに家で話したりしていた。大人にしかわからない話もあるのか、お母さん達が二人して泣いていたのを見たこともあった。

    2005-06-29 03:33:00
  • 93:

    そしてそんな日々を過ごしながら中学三年になったある日、借金をまとめるという話をされた。17ヶ所あるところを1ヶ所にするというものだった。
    銀行からの融資で借金し、それで全部の金融会社に払う。そして毎月銀行に返済していく。そうすれば利子も利息も銀行ならほんの少しで済むからだ。
    その頃には借金額が三年前の200万から400万近くに増え、倍近くになっていた。
    そして銀行からの融資もでき、お母さんが全部の金融会社に返済をした。それからは毎月5万円の返済。全てが順調そのもののはずだった。

    2005-06-29 03:42:00
  • 94:

    (○○ファイナンスですがお父さんいらっしゃいますか?)
    えっ・・・一瞬頭が真っ白になった。○○ファイナンス?
    ってあの!?
    「今いないですけど伝えておきますがどういった御用件ですか?」
    心臓がバクバクする。
    (返済期日過ぎておりますので早急にご返済いただけますようお伝え下さい)
    ガチャ・・・
    電話を切った私はしばらくぼーっとしていた。返済ってどうゆうこと?全部返したじゃん!
    お母さんが帰ってきてその話をすると、電話をかけ始めた。
    「えっ!?あ、ハイ、ハイ・・・」
    切った直後お母さんは放心状態だった。

    2005-06-29 03:57:00
  • 95:

    「何だったの?もしかしてまた借りてたの?違うよね?」
    私は静かに聞いた。
    「100万だって」
    100・・・万?
    しばらく私とお母さんは黙り込んだ。全部返済してからまだ四ヵ月しかたってない。嫌な予感がする。
    お母さんも同じだった。以前借金していた会社に順番に電話をかけ、確認をとる。
    そのうち8社からまた借金していたことが分かった。総額360万。呆れて言葉も出なかった。殺してやりたいとまで思った。
    銀行に400万借りたのも水の泡。もうなすすべもない。

    2005-06-29 04:05:00
  • 96:

    私は一度は辞めた夕刊配りを始めた。受験勉強しながらだ。
    お母さんも辞めていた夜のスナックにまた行かなけらばならなくなった。そしてある日の朝、お父さんは突然帰ってきた。
    またお金だ。財布を取り上げている。お母さんは前の時からちゃんとお金を隠し、新しい通帳を作っていて全て私の部屋のクローゼットの中に隠してあった。
    「金入ってねーじゃねーかよ」
    「ないよお金なんて」
    私はドキドキしていた。クロゼットまで探されたらどうしようと。

    2005-06-29 04:12:00
  • 97:

    話を聞いてみればお母さんも聞いたことがない金融屋だったようで、全く意味が分からなかったって。
    ただ、お父さんの借金だってことは間違いないみたいだ。
    私はもうたくさんだった。そして今でいう消費者管理センターのようなところを色々調べてお母さんと相談に行くことにした。
    書類記入や話の経過を話したらまず最初に担当者はこう言った。
    「離婚は考えていないんですか?」
    何度も離婚の話はしてきた。でも突然帰ってきてはいなくなり、帰ってきてはいなくなり。その繰り返し。離婚の話をすれば殴られるだけだった。

    2005-06-29 04:44:00
  • 98:

    担当者の人は男の人だったが調停のことや、詳しい話を色々してくれてとても親切で優しい人だった。
    そして離婚はできることになったが養育費の話し合いなどはできなかった。
    私達は引越しすることになり、借金の件もこれで全て解放される。そう思っていたが、そんなに甘いものではなかった。
    引越したマンションにも闇金は関係なくきた。お父さんが勝手にお母さんを保証人にしていた闇金の3社はお母さんのもとに取り立てにくる。

    2005-06-29 04:55:00
  • 99:

    そんな17歳になったばかりの時、私の楽しみは週に一回あゆみと遊びに行くことだった。
    その日は久しぶりに遊びに行った新宿で夕方からずっと遊んでた。そしてその時出会ったのが夜のドンこと黒木さんだった。
    「君らいくつ」
    振り返るとそこにいたのは見るからに怖そうなイカツイ人だった。黒いスーツに金むくの時計。
    私は借金取りを思い出した。
    「17です」
    そう答えると黒木さんはフーと溜め息をついた。
    「18になって夜の仕事に興味があったら連絡しておいで」
    そう言って名刺を渡してくるとスタスタと歩いて行った。

    2005-06-29 05:17:00
  • 100:

    その時は気にも止めずに貰った名刺も適当にカバンにしまった。
    そして終電で家に着いた私は由輝に話があると言われた。
    「お母さんが最近しんどそうなんだ」
    由輝の話を聞いていると私は最近お母さんとあまり話していなかったんだなぁと反省した。
    「42つってもやっぱり無理しすぎだよな」
    由輝も中学三年になると色々と気にするようになったみたいだ。
    そしてその二日後、居酒屋のバイト中に店に電話があった。由輝からだった。お母さんが倒れたという話だった。

    2005-06-29 05:24:00
  • 101:

    すぐに病院に行くと、過労が原因の身体的疲労だと先生に言われた。
    寝ていたお母さんを見て思った。こんなに痩せてたっけ?こんなに小さかったっけ?
    疲れていたんだなぁと改めて感じさせられた。三日間は入院することになり様子を見ると言われ、夜も遅いので由輝と家に帰った。
    家で待っていた恵里と美恵も心配そうにしてたが、とりあえず寝かせて由輝と二人で話をした。
    「全部おやじのせいだよな。マジ殺したいよ。くそっ」
    由輝が言うのも分かる。私はその何倍もそう思ってる。

    2005-06-29 05:40:00
  • 102:

    「由里が頑張るから、あんた受験生なんだし自分のことだけ考えとけばいいよ。大丈夫だから。」
    とは言ったものの、入院は思わぬ出費だった。あーあっ・・・何でこんなに嫌なことばっかり続くんだろ。その時だった。
    (ピンポーン)
    えっ?私は時計を見た。11時じゃん。誰?こんな時間に。
    「ねーちゃん!おやじなんだけど」
    インターホンに出た由輝が部屋にきた。
    「開ける?」
    私は首を横に振った。
    「でも俺でちゃったんだけど。」
    「ほっとけばいーよ」
    それから5分ぐらいたった時、またチャイムが鳴った。まだいるよ・・・。

    2005-06-29 06:07:00
  • 103:

    どうしよう。何しに来たんだろ?
    「もう出てくる」
    ゆっくりと由輝が玄関に歩いていく。私も仕方なくいった。
    ドアを開けると苛立った顔のお父さんが
    「なめてんのかお前?さっさと開けろよバカかクソガキ」
    と言って中に入ってきた。「何しに来たの?お母さんならいないよ。お金もない」
    私がそう言うとお父さんはジロッと私をにらんだ。それでも中に入ってきて、お母さんを探している。
    「倒れたんだよ。誰のせいだと思ってんだよ。もし何かあったら俺絶対許さねーからな」

    2005-06-29 06:14:00
  • 104:

    由輝が初めて男らしく見えた。大きくなったなぁと。そして私は倒れた経緯と、理由をお父さんに話した。いくら嫌なやつでも少しは反省するだろうと思ってた。少なくとも私は。
    「で、お前は俺のせいって言ってんのか?あぁ?おい、なぁ」
    でも次の瞬間お父さんは由輝につかみかかった。嘘・・・でしょ?
    「あぁそうだよ。お前のせいだよ全部お前がブッ壊したんだよ!」
    由輝がそう言いながらお父さんに殴り掛かった。もうダメだ。由輝は殴りあいどころか一方的にお父さんに殴られ始めた。
    殴られ蹴られ、見ていられなかった。

    2005-06-29 06:23:00
  • 105:

    私は自分の意識だったのかは分からないが、キッチンに行き出刃包丁を手にしていた。
    刃を逆さまに縦に向けた。人を刺すなら逆さまで刺せと何かのテレビで見たことかあった。
    「お姉ちゃんお願いだからやめて!」
    美恵が泣きながら私に言った。でもそんなのもう聞こえなかった。
    玄関で由輝を殴り続ける。ドンドンと音が響く。もうたくさんだ。もういい加減にしてほしい。
    好き勝手やるのはいい。でも人を巻き込むのはどうしてなの?
    「ねーちゃん!」
    私に気付いた由輝が叫んだ。

    2005-06-29 06:31:00
  • 106:

    お父さんも私を見た。少し顔が変わった。
    「な、なんだお前。気狂ってんのか」
    由輝を殴る手は止まった。
    「あー狂ってるよ。あんたのせいでめちゃくちゃだよ。どうして変わっちゃったの?昔はあんなに優しかったじゃん!みんなお父さんのこと好きだったんだよ?」
    そして私はお父さんを刺した。どこを刺そうなんて考える余裕などなかった。ただ次の瞬間血が私の頭を覚まさせた。
    手だ。包丁はてのひらに貫通していた。私は怖くなり声がでなかった。

    2005-06-29 06:42:00
  • 107:

    でもお父さんは包丁を自分で抜き、近くにあったTシャツで手を覆い、何も言わずに出て行った。
    刺しちゃっ・・・た。どうしよう。
    「ねーちゃん大丈夫だって。手でかばったから刺さったとこもたいしたことないよ。」
    確かにそうだ。例え警察が来ても正当防衛だと言えば話は済む。住居侵入で暴力を振るったのだから。
    でも私が気にしていたのはそんなことじゃない。自分の親を刺してしまった。本当に刺してしまったんだ。刺さったのが違う場所だったら死んでいたかもしれないのに。

    2005-06-29 06:50:00
  • 108:

    私がここにいるのは、生まれてこれたのはお父さんがいたからなのに。何故か涙が出た。
    警察は来なかった。連絡もなかった。そしてその話は入院が一週間延びてしまったお母さんには話さなかった。お父さんは大丈夫なんだろうか、私はそんなことを考えていた。
    由輝と恵里と美恵の四人でお母さんの入院してる病院にお見舞いに行った日、私は心臓が止まりそうになった。
    病院のロビーにお父さんがいたからだ。凍りつく私に、由輝は
    「大丈夫そうじゃん」
    と言った。確かにギブスはしているけど大丈夫そうだ。

    2005-06-29 06:58:00
  • 109:

    とその時、私達に気付いたお父さんはこっちに向かって歩いてくる。
    やばい、逃げなきゃ。
    そう思っていた。
    「人差し指から小指まで四本全部の神経切れたみたいでもう箸も持てないって。」
    「え・・・?」
    神経?って。
    「まぁ大丈夫だから。それよりちょっとそこで飯食わないか」
    病院の近くには中華料理屋があった。私達は返事をすることなく歩いていくお父さんのあとをついて行った。
    店に入り注文が済み、静かな空気が流れる。誰も何も話さない。そして料理だけが慌ただしく運ばれてくる。

    2005-06-29 07:09:00
  • 110:

    みんな何も話さないまま箸を持ち、目の前にある料理をゆっくり食べている。
    重い空気、息がつまる。だけどそれよりも慣れない左手で食べやすい炒飯をレンゲをもらいポロポロこぼしながら食べてるお父さんを見ていると何故か涙が止まらなかった。
    ごめん。そう思っても言葉にはならなかった。お父さんは今までの嫌なお父さんじゃなく、優しい顔で
    「早く食え」
    とだけ私に言った。

    2005-07-14 04:39:00
  • 111:

    食事も済み、店を出た私達は病院に戻ろうと歩きだした。その時お父さんがちょっと待ってと呼び止めてきた。
    「今まで悪かったと思ってる。もうお前達の前には現れないから。許してくれとは言わない、でも忘れないでくれな」
    あんなに横暴で自分勝手だったお父さんが小さく見えた。私達に背を向け、足早に歩いていく寂しそうな背中を見えなくなるまで私達は見ていた。
    分からないけど多分お父さんは泣いていたような気がした。

    2005-07-14 04:45:00
  • 112:

    病院に戻った私達は、お母さんの様子を見に行き先生も状態は良好だと言ってくれたので安心した。
    でもその反面、もうお前達の前に現れないからと言ったお父さんのことも気になっていた。あんなに嫌いだったはずなのに。
    やっぱり血の繋がりは深いのかななんて思ったりしたっけ。お母さんの入院中、私は家でやらなければならないことが山ほどあった。でも借金や入院費用など、出費ばかりでお店は休めなかった。

    2005-07-14 04:51:00
  • 113:

    約600万の借金。どうせだったら払ってからいなくなってほしかったな・・・酔うと私はそんなことばかり思ってた。でもお父さんは私のお父さんだし、仕方なかった。
    最後に会った時のあの背中を見て、いつの間にか許せてたのかもしれない。
    私が水商売を始めたきっかけは親の借金だったわけだけど、なるようになるもんなんだなって思った。フルで出勤して月80〜90万。それでも六本木なら稼げた方だった。
    月に50〜60は返済にあてて、一年ちょっとで全額完済した。

    2005-07-14 05:02:00
  • 114:

    お店ではナンバー1をはり、人一倍頑張ってたけど周りの女の子達が稼いだお金で見た目を着飾るのとは正反対だった。
    ある女の子は私にこう言った。
    「給料何に使ってるんですかー?ゆかりさんって贅沢しないですよねー」
    しない?しないんじゃなくてできないんだよって言えなかった。変なプライドが邪魔して強気なことばっかり口にしてた。
    「全額貯金。あんたみたいにバカみたいにお金使ってる子が羨ましいよ」
    皮肉な言葉。

    2005-07-14 05:07:00
  • 115:

    でもそれも借金完済と同時になくなった。水商売をする意味もなくなったからだった。
    これからどうしよう。そう思っていた時に黒木さんは私にこう言った。
    「したいことがないなら続けるのもいいんじゃないか。何よりこの一年でお前はここまで走ってこれたんだ。一番を続けることも楽しいことかもしれないぞ」
    黒木さんの言うことは何故か言葉に重みがあり、きっと今日のこの日まで夜の世界にいた理由の一つになっていたのかもしれない。

    2005-07-14 05:12:00
  • 116:

    夜のドンが一番の味方で、何も不自由することなく好き勝手に六本木を泳いでた。何かあれば黒木さんが型をつけてくれ、私には怖いものなんて何もなかった。
    ずっと守ってもらってた。きっと本当の私の生き様を知っていたから、助けてくれてたんだと思う。感謝してもしきれない。
    本当にいろんなことがあった。何年も六本木でホステスをするなんて初めは検討もつかなかったのに。

    2005-07-14 05:17:00
  • 117:

    そんな私もこの歳になってやけに老けてきたかなーって思うと、新しく入ってきた若い新人さんを羨ましく見てしまう。
    いいなー。あんな時もあったなって。ムチャして飲み過ぎて潰れてても、泣きながらグチ言ってても、みんな可愛いなって。
    たくさん出会ったお客さんにも恵まれてたなぁ。六年間ずっと通い続けてくれるお客さんも、半年に一回しか来ないけど忘れずにのぞいてけれるお客さんも。
    本当にお客さんは大切だなぁって。

    2005-07-14 05:22:00
  • 118:

    一人でこうしてマンションに帰ってくるとこんな昔のことばかりが目まぐるしく思い出される。
    今は英二のこともちゃんと考えなきゃなんないのに。やり直す・・・それもいいかもね。結局ラクなんだし。
    ウトウトそんなことを考えながら私はいつの間にか眠りについていた。
    (♪〜♪〜〜♪)

    2005-07-14 05:25:00
  • 119:

    携帯の着信音が鳴り、目が覚めた。
    (矢口さん)
    えっ?矢口さん?どうして?何なの?
    動揺した私は電話に出るのをためらった。着信音が切れ、ホッとしているとまた電話が鳴る。仕方ない、出てみよう。
    「ハイ」
    (あっ・・・矢口ですけど。今大丈夫?)
    「あ大丈夫です」
    (あの、昨日ねあの、ごめん。何てゆうか由里ちゃんがホステスとかそうゆうの考えてみれば関係ないなって)
    何言ってんのこの人。昨日思いっきり引いてたじゃん。
    「気使ってもらわなくて大丈夫ですよ。全然気にしてないしもう会うこともないんだし」
    少し間があいた。

    2005-07-14 05:32:00
  • 120:

    (いや、そうじゃなくて。俺よく考えたら由里ちゃんのこと傷付けたなって。会ったばっかなのにヒドイことしちゃったからただ謝りたかったんだ。)
    よく分かんない・・・
    「そうですか。本当に気にしてないんで、大丈夫です」
    (じゃあ今日少し会えないかな?少しでいいから時間ない?)
    え?今日・・・お店あるしなぁ。また嫌な思いさせられるかもしれないし。
    「今日仕事なんです」
    (仕事何時から?俺一緒に行ってあげるから飯でも食いながら少し話そうよ)

    2005-07-14 05:38:00
  • 121:

    矢口晃太が同伴!?ありえないよ!?
    「あの本当にまた今度でいいですか?」
    私がそう言うと矢口さんは少し黙った。
    (うーん無理。今日じゃなきゃ駄目なんだ。だから6時にあの公園にきて。待ってるから)
    そう言うと電話は切れた。6時!?って今4時じゃん。私は少し考えた。行くべきなのかどうなのか。でも考えてる暇はなかった。
    とりあえず急いでシャワーを浴び、美容院に急いだ。

    2005-07-14 05:44:00
  • 122:

    美容院で化粧をしながら時計を見るともう6時前。とにかく急いであの公園に向かった。
    着いたのはいいけど矢口さんはいない。やっぱりからかわれただけかもしれないな。夏の6時はまだまだ明るい。
    子供達も遊んでる。楽しそうだなーってぼーっと見てると後ろから急に帽子をかぶされた。
    焦って帽子を取って振り返ると矢口さんがニコッと笑ってる。この帽子は?私が手に持った帽子を見ていると
    「お揃い。ちゃんとかぶれよー」
    矢口さんは照れ臭そうに笑った。

    2005-07-14 05:50:00
  • 123:

    お揃いの帽子なんかかぶってたら目立つのに・・・何考えてんだろ。
    そんなことを考えてると矢口さんは私の隣に座るとぎゅっと私を引き寄せた。昨日はこんなドキドキした後にすごいへこまされたんだよなぁ。
    「本当に昨日はごめん。ちゃんと会って言いたかったんだ。俺普段は人のことあんまり気にしないんだけど昨日は帰ってからも由里ちゃんのことが気になって寝れなかったから。」
    私は黙って頷いた。
    「よし!仲直りってことで飯でも行こー。ムーンでいい?」

    2005-07-14 05:57:00
  • 124:

    自然と手を繋ぎ、歩いてると持っていた帽子をかぶせられた。
    「昨日みたいに気付かれたら由里ちゃんにもまた嫌な思いさせるかもしれないしね。」
    優しいなぁ本当。
    「また逃げられちゃ困るし」
    イタズラっぽく笑う矢口さんは本当に子供みたいで私までつられて笑ってた。私も単純だなぁ。昨日は泣いてたのに。
    タクシーに乗りムーンの前に着くと、ちょうど健にいがお店の前にいて出迎えてくれた。
    「今日の初お客だよ」
    そう言ってまたカウンターに案内してくれた。

    2005-07-14 06:22:00
  • 125:

    「どした?昨日の今日でまたデート?あついねー。てゆうか晃太お前今日予定ギッシリじゃなかったの?」
    あ・・・そういえば昨日言ってたよなぁ。
    「あー夕方までに全部つめてきた。夜は先輩と約束あったけど断ってさ。由里ちゃんに会いたかったから。」
    ドキドキするじゃん。本当に心臓に悪いよ。
    「ふーん。お前がねー珍しいこともあるんだなぁ。何でも面倒くせーって感じなのに」
    「今日は特別なんだよ。ね?」
    ね?って言われても・・・分かんないよ。

    2005-07-14 06:30:00
  • 126:

    おまかせで運ばれてくる料理はどれも全部おいしかったけど驚いたのは健にいが全部作ってたってこと。
    すごいなーって感心。
    矢口さんがトイレに立った時に健にいはそっと私に話してきた。
    「昨日何があったの?晃太あれからまたここ戻ってきてずっと溜め息ついてて。」
    「あー。ちょっと・・・たいしたことじゃないんですけど。」
    「そーなんだーならいいんだけど。」
    健にいは不思議そうな顔でうんうんと頷いた。矢口さんが戻ってくると二人は目で合図をした。

    2005-07-14 06:43:00
  • 127:

    そのすぐ後に大きなケーキが出てきてカウンターに出された。ケーキにはRelation healと書かれてあった。
    意味が分からなかったけど、健にいが私と矢口さんが仲直りできたからって書いてくれたらしい。
    嬉しくて食べるのがもったいなかった。そうしているうちに時間は流れ、気付いたらもう8時になっていた。あ、もう時間だ。
    時計を見ていると矢口さんがチェックを始めた。
    「間に合う?同伴だから大丈夫だよね?」
    えーーーー?

    2005-07-14 06:47:00
  • 128:

    って本当に来る気?
    「えっ?お前由里ちゃんの店に行くのかよ」
    健にいが笑いながら言うと
    「今日無理矢理誘ったからね。そのお礼。」
    ちょ、ちょっと待ってよ。大丈夫なの?
    「いーよ本当に。間に合うしここでゆっくり健にいと飲んでて。」
    私が焦って言うと矢口さんは黙って首を横に振った。
    「じゃーまた来るわ」
    そう言うと矢口さんは私の手を繋ぎ、ムーンを出た。健にいにぺこっとおじぎしながらお店を出た私は本当にパニクってしまった。

    2005-07-14 06:53:00
  • 129:

    そりゃお客さんに芸能人の人とかたくさんいるけど、ピンで同伴しかもお店に来たことない人だし・・・それより超有名な矢口晃太で。
    タクシーに乗りながらもずっと手を繋いだままで私はドキドキが鳴りやまなかった。
    そして六本木に着き、お店までの少しの道を歩いていると、やっぱり周りは気付いてた。一人が気付くとみんな気付く。
    それでも矢口さんは手を離さなかった。

    2005-07-14 06:57:00
  • 130:

    「俺プライベートであんまり飲みに来たりしないんだよね。先輩に連れられてくことはあるけど」
    矢口さんがそんなことを話している間にお店についた。
    一階の扉前にいたマネージャーが目を丸くさせながら驚いた。
    「い、いらっしゃいませっ!」
    だいたい業界の人は一人で来ることが少ない。まして同伴なんて目立つようなことはしない。だからビックリしたんだ。私もそうだし。
    お店に入り、ビップと言われてる奥の席に案内された。
    「着替えてくるから待っててね」
    私はそう言って急いでロッカールームに入った。

    2005-07-14 07:04:00
  • 131:

    ドレスに着替えていると仲のいい久美ちゃんがビックリした顔で
    「あれって矢口でしょ?すごいじゃん同伴」
    と言った。やっぱりみんな同伴にビックリしてたんだ。
    「たまたまだよ。すぐ帰ると思うし。」
    着替え終わった私は何故か急いで矢口さんの席に戻った。ヘルプの女の子もいつもより積極的に見えた。名刺も置いてあったくらいだ。
    「ごめんね。」
    謝る私をじーっと見ながら矢口さんは腕組みをした。
    「それ肌出しすぎじゃない?」
    えっ?
    「え?変・・・かな」

    2005-07-14 07:12:00
  • 132:

    「いや、そうじゃなくて。可愛いけどそんなに肌出してたらオヤジに触られたりしないかなと思って」
    オヤジ?
    「大丈夫だよ。ちゃんとガードできるから」
    「そうかなー。なんか羽織るようにしろよ。心配だし」
    矢口さんの言う一つ一つの言葉で一喜一憂する私。バカみたいだけど嬉しくてあったかくなる。
    お店が混みだし、指名が他の席でかかって移動してる時も矢口さんが見ているのが分かった。
    だからいつもより変な緊張感が消えない。私もヘルプの女の子が気になってた。

    2005-07-14 07:19:00
  • 133:

    ようやく矢口さんの席に戻れたのに矢口さんは不機嫌で何を言ってもウンしか言わない。私が黙ってると
    「やっぱり俺だめだ。由里がオヤジといるの見てるといやんなる。今日もう一緒に帰ろ」
    由・・・里?今由里って言ったよね?なんだか恥ずかしくなった。
    気付けばもう三時間?4時間もいたんだ。他のお客さんも帰ったし帰っちゃおうかな。
    「じゃあ待ってて」
    私はマネージャーに矢口さんのアフターと言うと、上がれ上がれ、行ってこいと言われた。そのままロッカールームに着替えに行き、ロッカールームを出ると矢口さんが待っててくれた。

    2005-07-14 07:28:00
  • 134:

    「もうチェック済んだから。行こっか」
    そう言うとまた私の手を繋いだ。同じ帽子かぶって、夜の六本木を手を繋いで歩くなんて初めてだ。
    英二とも六本木や夜の繁華街では繋いで歩いたことはない。お互いホステスとホストだったから。
    矢口さんは有名人なのに堂々としてるなぁ。
    「由里!もう帰りか」
    すれ違った時に聞き慣れた声がした。黒木さんだ。私はビックリして手を離した。
    「あっ帰りです。」
    「そうかーお疲れ様」
    黒木さんはそう言うとまた歩いて行った。

    2005-07-14 07:34:00
  • 135:

    黒木さんは英二のこともよく知ってる。どう思ったかな?いつも言われてたのに。夜の世界で働く以上、夜の街では男の影さえも見せるなって。
    なのに手を繋いで歩いてるとこ見られるなんて。
    「お客さん?めちゃくちゃ恐そうだね」
    矢口さんは何も知らないんだよね。だよね。
    「んー。由里の六本木での守り神みたいな。夜の世界では裏のドンなんだ」
    矢口さんは
    「大丈夫なの?俺まずかったかな?」
    「大丈夫だよ。気にしないでも」
    私は駄目だと分かってたけど離した手をまた繋いだ。

    2005-07-14 07:40:00
  • 136:

    タクシーに乗り、どこに行くかと思えば
    「成城まで」
    と矢口さんが言った。
    「あ、由里ここからけっこう近いんです」
    「分かってるよ六本木の近くって言ってたもんね。でも今日は一緒にいたいから。ちょっとだけいて。帰りは送るから」
    私は拒めなかった。私も一緒にいたかったから。繋いだままの手を離したくなかった。
    タクシーが止まり、大きなマンションの前でおりると、そこが矢口さんのマンションだった。

    2005-07-14 07:46:00
  • 137:

    これがプロ野球選手の生活なんだー。すごいなぁ本当。感心しっぱなしだった。
    「座りなよ」
    矢口さんは着替えながら私に言った。
    ソファーに座ったままキョロキョロしていると矢口さんが隣に座ってそのまま寝転んで膝まくらで私の顔を下からじっと見た。
    またドキドキする。
    矢口さんは私の顔を両手で持ち、自分の顔に寄せた。その時に初めてのキス。変な感じだったけど優しいキスだった。

    2005-07-14 07:59:00
  • 138:

    それから矢口さんは小さい頃はパイロットになりたかったことや、野球漬けの毎日だった学生時代のこと、育った環境を私にたくさん話してくれた。
    知れば知るほど惹かれていく。会ったばかりなのに。不思議な感覚が私を狂わせる。
    「明日昼から球場行くけどそれまで一緒にいてくれる?」
    私はうんと頷いた。
    遊ばれてもいいやって感じかな。傷付いてもいい、今は一緒にいたいってそう思った。
    寝室に入ると大きなTシャツを貸してくれて私はそれに着替えた。

    2005-07-14 08:04:00
  • 139:

    本当に大きすぎて膝まで隠れるくらいだ。
    「本当ちっちぇーな由里って」
    ニコッと笑う矢口さんの顔が本当に好きになってく。前の彼女はモデルさんだっけ。矢口さんは私のことどう思って今日ここに連れてきたんだろ。
    やっぱりやりたいのかな。うん多分そうだよね。
    一人でそんなことばかり考えてると矢口さんが寝転びながらこっちおいでって手招きしてきた。
    私がベッドに入るとギュッとしてきてしばらく静かな空気が流れた。私のドキドキ?違う矢口さんのドキドキだ。
    聞こえてきた音は矢口さんの心臓の鼓動だった。

    2005-07-14 08:11:00
  • 140:

    「俺ね、今日由里に会ってちゃんと言おうと思ってたの。まだ会ったばっかで信用できないかもしれないけど好きになったっぽいんだよね」
    「もーいいよ。ありえないから」
    私は何が何だか分からなくて話をはぐらかした。
    「本当だって。今日思った。由里と一緒にいたいって。明日からもずっと。大事にするよ?俺」
    何なの?これ夢?酔っ払ってるせい?

    2005-07-14 08:16:00
  • 141:

    矢口さんは私を抱きしめたままいろんな言葉を言ってくれた。
    「俺は由里大事にしたいし今日もこうして隣で寝てるだけで十分なんだよ」
    って。私はいつの間にかドキドキが止まり、心地いい安心感に変わっていた。本当に矢口さんは何時間もずっとそのまま、私を抱きしめて眠りについた。
    結局私は寝ることができず、矢口さんが起きるまでずっと起きていた。

    2005-07-14 08:22:00
  • 142:

    そして起きた矢口さんはバタバタと用意を始めた。私は作れるなら何か作ろうかと冷蔵庫を開けたけどあるのはビールやジュースだけ。
    「由里何してんの?」
    「冷蔵庫こんなに大きいのに空っぽだね。何かあったら作ろうかと思ってたの。」
    矢口さんはちょっと嬉しそうな顔で笑った。
    「じゃあ今日作ってよ。夜、食べたいなー」
    「って今日?夜?」
    そう言うと矢口さんはカギを渡してきた。
    「これ俺のだけど置いてくから今日ここにいて。お金置いてくし大きいスーパーすぐそこにあるから。合鍵も近いうち作りに行こ」

    2005-07-14 08:30:00
  • 143:

    合鍵ぃーーー!?
    スーパー!?
    ちょっと・・・すごい展開になってんだけど。何なの本当に。
    「じゃあ俺もう出なきゃなんないから。練習中にでも電話するからね。いってきまーす」
    ガチャン。
    ドアが閉まった。
    いってきます、か。英二を思い出すなぁ・・・。って私大変なことになってんじゃないの?矢口晃太の部屋だよ?
    しかも本当にお金置いてってるし。ってことは何作ればいいのー?分かんないよ好きなものとか嫌いなもの。本当にどうしよう・・・

    2005-07-14 08:35:00
  • 144:

    名無しさん

    ?

    2005-07-14 08:48:00
  • 145:

    ゅーき

    コレを読んで、恋愛ッτいいなぁって思いました?続き楽しみにしてます?頑張って下さい?

    2005-07-14 14:13:00
  • 146:

    名無しさん

    実話?

    2005-07-14 14:38:00
  • 147:

    違いますよ?ホステスをやってるとか多少は本当なとこもあるけどストーリーはオリジナルに混ぜてるので?
    また今から頑張って書きます_?書き込みしてくれた方達ありがとう?

    2005-07-15 19:20:00
  • 148:

    私はキッチンに突っ立ったまましばらくぼーっとしていた。
    あっいけない。調味料とかちゃんとあるのかな?さっき冷蔵庫は本当に生活感全くなしだったし。
    最近別れたとか言ってたけど前の彼女は料理作ったりしてなかったのかな?
    キッチンの引きだしを開けたり扉を開けてみても塩や砂糖、油さえない。いくらなんでもそれはないよね。大きな広いキッチン、大きな冷蔵庫。綺麗なままのレンジや炊飯器。
    使われてないのが不思議だった。

    2005-07-15 19:29:00
  • 149:

    そしてテーブルに置いてあったお金を見て私は少し笑った。スーパーに行くだけなのに三万円も置いてあったからだ。
    0が一つ多いんじゃないかって。やっぱり感覚が違うんだろうなぁ。でも昨日朝まで話した時に言ってたなぁ。
    矢口さんは元々、お金持ちでもなく普通だったって。いい暮らしをしてたわけじゃないって。プロ野球選手になってから両親が住む家を建ててあげたことも聞いた。
    「親孝行は生きてるうちにしないと。したいと思ってもできない人もいるんだから。」
    矢口さんの言葉は私の心を突き抜けた。

    2005-07-15 19:41:00
  • 150:

    この人は本当に優しい心を持ってる。知れば知るだけ好きになる。人をこんなに猛スピードで好きになったことはあっただろうか。
    動き始めた気持ちにはもうブレーキはかからなかった。そして私はマンションを出て言われた通りの道筋で歩いていくとすぐそこにスーパーが見えた。
    入ってみると成城のスーパーなせいか少し品があるような気がする。私はとりあえず料理のいわゆる(さしすせそ)調味料や、使いそうなものは全てかごに突っ込んだ。

    2005-07-15 19:49:00
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