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ちっちゃな黒猫の話。
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1:
せぇ
なぁなんで?
どこに行ったン?
いつも一緒だったじゃん
嬉しい時も悲しい時も
あんたゎ何にも言わずに
側にいてくれたよな。
あたしゎあんたの顔を見ただけで
あんたのふわふわの毛をなでるだけで
心が温かくなるのを感じてん。
なぁチビクロ
なんであんたが先に死ぬん?
人を幸せにするあんたが。2005-11-17 17:26:00 -
457:
せぇ
あたしはそれっきり、詮索を辞めた。だけど、しょーちゃんの時のように、彼一人だけにはまり、依存してしまうことに、今までは無かった恐怖を感じた。
あたしはいつも、『今度こそは』とか、『彼だけは』とか、毎回毎回思ってたけど、そんなのは、
−やっぱりないんだろう。
だからあたしは、彼とも距離を置いた。少しずつ、少しずつ。2006-06-12 00:14:00 -
458:
せぇ
彼に好かれている、彼があたしだけを好きでいることには、不思議とそれなりの自信ががあった。言葉は不器用でも、きつくても、そこにやさしさを何度も感じた。彼のそういうところがあたしの好きなところでもあったし、あたし自身も素直になれないことはいっぱいあったから。「似たもの同士やな」って、何度も思った。そしてその度に彼を愛しく思った。
2006-06-12 00:15:00 -
459:
せぇ
だけど、やっぱりが無くならない。なんて言えばいいのかわからないけど、多分、『一生あたしの側にいてくれるかどうか』その自信が、なくなってしまった。きっと、『いついなくなるかわからない』とか、そういう。2006-06-12 00:15:00 -
460:
せぇ
あの頃のあたしは、きっとすごく汚かった。
愛されたくて、あたしだけを見てほしくて、あたしがそう想っている通りに、あたしのことも想ってほしかった。きっと、必要とされたくて。
そのくせ、やっぱり素直になれなくて、強がってばかりだった。
仁にも、チビクロにも−…。2006-06-12 00:20:00 -
461:
せぇ
2006-06-12 00:20:00 -
462:
名無しさん
更新されてるぅ?
楽しみにしてます?2006-06-12 12:13:00 -
463:
せぇ
何も変わらないように見えて、少しずつ何かが変わっていた。あの頃も、今でも、あたしは二人がいてくれるだけで、それだけでよかったのに。きっと永遠なんて、やっぱりどこにもなくて、だけど手に入らないものばかり欲しがるあたしは、わかってても、それが欲しくて欲しくて仕方なかった。
紐に縛り付けてでも、三人で閉じこもっておけばよかった。誰に何て言われたって、やっぱりそれは今でも思う。
それが、『永遠』なら…−。2006-06-15 13:01:00 -
464:
せぇ
仁はきっと、あたしが知っていることを、わかっていると思う。金曜日に何をしているのか、どうやって知ったのか。だけど何も言わなかったし、様子も変わらなかった。
多分、それが答え。
彼にはどこか踏み込めないところがあって、だけどあたしは、あたしにだけはそれも教えて欲しかった。
毎日一緒にいた所で、毎日笑いあったって。距離を置いていたのは、あたしだけじゃなかった。2006-06-15 13:16:00 -
465:
せぇ
チビクロは日に日に大きくなっていった。
今日は、約束していたお花見の日。大きな公園の真ん中に、一本だけある大きな桜の木の下で待ち合わせ。朝六時に起きて、お弁当を作った。仁の好きなものばかりをたくさん詰めて。
別に特別な約束をしたわけでも何でもない。だけと何となく今日は『特別な日』だと思った。約束は一時。チビクロは丸くなって眠っている。2006-06-15 13:55:00 -
466:
せぇ
一度だけ、ホストのキャッチに着いていったことがある。一年前、先輩とミナミに遊びに行った日。お金も電車も、行くトコもなくて、足になってくれる男もいなくて、あたし達は途方にくれていた。その時スーツを着た胡散臭い二人組に声をかけられて、仕方なく着いていくことになった。顔なんて覚えてない。だけど、お金を出してくれるって言うから着いていった。
2006-06-21 13:05:00 -
467:
せぇ
ずっと前のこと過ぎて、毎日毎日、映画みたいにあっという間に終わってしまう日常のせいで、そんなことはすぐに忘れてた。だけど、思い出してしまった。美化してるのかもしれない。たった一年前のことなのに。
2006-06-21 13:09:00 -
468:
せぇ
キラキラ、キラキラ。
いくつも天井に吊されたシャンデリアが、やたらとまぶしくて、眠たかったあたしの目にしみた。嘘臭い笑顔で、『ホスト』っていう見えない仮面をつけて、男が話し掛ける。あたしはただ眠たくて仕方なくて、男を無視してボーッとしていた。2006-06-21 13:13:00 -
469:
せぇ
だんだん霞んでくる視界の中で、照れたように笑う女の子、同性だからわかる、恋をしている目をいくつも見つけた。そして、幼いからこそわかる、それと反対の目を、それよりも多く見つけた。
キラキラ光る、ガラス張りの嘘の世界。『擬似恋愛』の世界。
仁は、その中にいる。2006-06-21 13:18:00 -
470:
せぇ
2006-06-21 13:21:00 -
471:
名無しさん
更新されてるやん(笑)
2006-06-21 13:25:00 -
472:
せぇ
『いい天気やなぁ〜』
ポツリとつぶやき、チビクロの背中を撫でた。小さく、鈴がゆれて音がなる。
ずっと付け忘れていた、あの赤色の首輪を、今日初めてチビクロにつけてみた。真っ黒のチビクロによく似合う、真っ赤な首輪。ネームカードには
『CHIBIKURO』
あたしの、猫。2006-06-21 13:26:00 -
473:
せぇ
チビクロは大きくなっても、相変わらずビビリで。ひらひら舞い落ちる桜の花びらが恐いのか、あたしの側を離れようとしない。そんなチビクロを見つめながら、あたしはMDプレーヤーの電源を入れて、イヤホンを付けた。
−『K』−
仁が教えてくれた、黒猫の歌。2006-06-21 13:30:00 -
474:
せぇ
嫌われもの黒猫は、いつも石を投げていじめられていた。人を信用できなくなって、いつも独りぼっち、だけど胸を張って生きていた。ある日、黒猫は一人の絵描きに拾われる。最初は嫌がっていた黒猫も、絵描きのやさしさにひかれて、二人は親友になった。絵描きは毎日黒猫の絵を書いた。だけどその絵は売れなくて、黒猫ばかり描くから、黒猫は『不吉』だから、売れなくて。とうとう絵描きは倒れた。『これを届けて、待っててくれと、残してきた恋人に。』絵描きは黒猫に最後の願いを預けた。黒猫は手紙を加えて走った。絵描きの、大好きな絵描きの、大切な人の元に。
黒猫だからと、通りすがりの人に石を投げられても、足がちぎれるくらい痛くても、あきらめなかった。大好きだったんだろう、初めて出来た友達だったから。彼の『黒』を、はじめて誉めてくれた人やったから。2006-06-21 13:45:00 -
475:
せぇ
ナッ…
歌に聞き入って、目を閉じていたあたしは、一気に現実世界に引き戻された。
チビクロの声。チビクロ?2006-06-21 13:51:00 -
476:
せぇ
どこ?
チビクロ?
ねぇどこ?2006-06-21 13:52:00 -
477:
せぇ
歌のラストは、幸せなハッピーエンドじゃない。
だって黒猫は死んでしまうから。
不吉だと石を投げられても、遠くても、足が千切れそうなくらい走り疲れても−…。大好きな友達の、最後の願いを叶えるために、黒猫は走り続けた。そして絵描きの恋人に手紙を預けて−…黒猫は息絶えるの。2006-06-21 14:34:00 -
478:
せぇ
『…せぇ!せぇッ!』
チビクロを見失って、焦りまくるあたしは、過呼吸みたいなのを起こして、約束の桜の木の下で倒れていた。そんなあたしを呼ぶ仁の声が耳に入る。涙で霞む視界に、仁と、チビクロ…。
仁はチビクロを抱いて、心配そうにあたしの顔をのぞいて、あたしを抱き締める。少しずつ、あたしの呼吸が落ち着いていく。ふわふわのチビクロの体が、あたしの顔にあたる。
安心する。一気に。それだけで。2006-06-21 14:44:00 -
479:
せぇ
黒猫の、絵描きからもらった『(Night)−夜』と言う名前に、絵描きの恋人は一文字だけ付け足して、亡骸を土の中に埋めた。
『騎士(Knight)』2006-06-21 14:53:00