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シンデレラ

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  • 1:

    ちぃ

    2004.5/3。晴天。
    見上げれば青い空。綺麗なブルーの宙に、白やピンクの花がフワフワと舞っている。
    『おめでとー!』
    次々に友人達から向けられる、お祝いの言葉。様々な過去を経て私はここに立っている。赤く紅く…何処までも続きそうなバージンロードの上に。眩しいほどに輝く純白のドレスに包まれて。この光は罪さえも柔らかく包んでくれる…。私な、アンタの魔法にかけられて、綺麗になったよ。

    2005-12-09 13:41:00
  • 2:

    ちぃ

    運命の2004年、5月3日。
    うちは、その日花嫁になった。うちにはモッタイないくらいの真っ白で繊細で綺麗なドレスに身を包んで…。
    子供の頃から憧れてた、お姫さまみたいなドレス。この一生に一度日の為に、シンプルだけど女性らしく誰もがハッとするような華のあるドレスを選んだ。ブーケも、3本の百合の花を白いリボンをあしらうだけのシンプルなブーケをオーダーした。この日の為に濃いブラウンにまでトーンダウンさせた髪は綺麗にアップにされて、パールのネックレスにイヤリングが、可憐とゆう言葉が似合わん私をソレらしくしてくれる。

    2005-12-09 14:17:00
  • 3:

    ちぃ

    2番の誤字訂正
    ×=一生に一度日の為に
    ○=一生に一度の日の為に
    です(*_*)スミマセン。

    2005-12-09 14:21:00
  • 4:

    ちぃ

    ヘアメイクも終わり、『さぁ、準備が出来ましたよ。ご新郎様も喜ばれるでしょうね。とっても綺麗です!』
    ヘアメイク担当のお姉さんにそういわれ、うちは鏡越しに『ありがとう』と持ち前の明るい笑顔を振り撒いた。実は王子さまは、このウェディングドレスをまだ見てない。ドレス担当のお姉さんとの企みで、彼に内緒で選んだから。

    2005-12-09 14:31:00
  • 5:

    ちぃ

    カーテン越しにコツコツと靴が鳴る音が聞こえる、少し緊張してるみたいな足音やった。
    準備が出来た姫を王子が迎えにやって来た。靴の音がカーテンの前に止まる。担当のお姉さんに説明されてるらしかった。(うわぁ…めっちゃドキドキしてきたぁ。カーテン開いたら何て言おう??『似合う?』とか?いやいやちゃうなぁ…『どぅ?』一緒やん…アカン思い付かんわぁ)と頭を左右に振りながらアタフタしていると、シャッと勢い良くカーテンが開いた。

    2005-12-09 14:41:00
  • 6:

    ちぃ

    一瞬、2人の時間が止まったような気がした。
    王子さまは黒の上下でピシッと決めてた。肩まで伸びた癖のある金髪を頭半分までコーンロウにして、もう半分を癖っ毛の髪質を生かして爆発させた頭。ちょっとオモチャっぽい服や髪型が似合う個性的な王子さまは、今日の門出の日も彼らしさを突っ走っていた。いつでも【私達らしく】これが2人のモットー。

    2005-12-09 14:54:00
  • 7:

    ちぃ

    むしろ彼は、私の変身ぶりに驚きを隠せんようやった。『おしとやかに……!』なぁんて、言われても出来ひんし、似合わないのが普段の私やもん。そんな普段の大魔王ぶりから一転して、手をちゃんと前で重ねて、ちょこんと礼儀正しく、彼に一礼した私。あん時の、目ぇ飛びだすんちゃうか!?ってくらいの西○きよしさん並に驚いた顔を思い出すだけで吹き出してしまう(^。^;)

    2005-12-09 15:02:00
  • 8:

    ちぃ

    でも、うちが一礼し終えた後には、照れが交じった泣き出しそうな顔で『…綺麗だね』って言うてくれた。アンタ、人前でそんな照れ臭いこと言えん人やのにね。うちも嬉しくって『おおきに!アンタも格好いいで』って伝えると、顔を真っ赤にして照れてた。『関西弁の明るくて可愛らしいご新婦さまで新婦様も幸せですね』っとお姉さん達に言われて、更に真っ赤になった顔で『ハイッ!』とハニかんでた。(なんや今日ってゆう日が夢見たいやわ…)うちは、窓越しに、産まれ育った街ではない街の空を見て、そう思っていた。

    2005-12-09 15:11:00
  • 9:

    ちぃ

    うちが産声をあげて生まれた街は、大阪。
    都会でもなく田舎でもない平凡な下町で、金持ちでもなく貧乏でもない普通の家庭で育った。家族構成は、お父ちゃんと、お母ちゃんと、甘えたでちょっとマザコン気味の3歳離れた可愛い弟とうちの4人家族。見た目は仲良しこよしの普通の家族やったけど、うちが物心ついた時には家庭内のドロドロのぬかるみが見え隠れしてた。

    2005-12-09 15:20:00
  • 10:

    ちぃ

    そん時は、えらいうちも小さかったから良く分からんかったけど、良く覚えてる光景がある。アレはうちが幼稚園の年少さんやった時かなぁ。。。うちが幼稚園で使ってる粘土と粘土板を持ってかえってきて、遊んでた時の事。住んでたアパートの風呂場から、発狂したお母ちゃんの声と、怒鳴り散らしてるお父ちゃんの声が、うちの耳を通過していった。気になってトコトコ歩いていったら、お母ちゃんがキラキラ光るもんを手にもって暴れてる姿が、お父ちゃんが立ってる隙間から見えた。(お母ちゃん何してるのん?)うつむきながら近寄ると、お父ちゃんが『好きにせぇ!!』と小さいウチに気付かずに、6畳間の畳の部屋でテレビを見ながら酒をあおり始めた。更にうつむいて風呂場にやるとお母ちゃんが背中むけてしゃがみこんでた。

    2005-12-09 15:32:00
  • 11:

    ちぃ

    『お母ちゃん…?』と不思議そうな声で呼び掛けると、ハッとした顔で、台所まで走っていってしまった。胸に隠しているキラキラした物が、異様にウチは気になった。いくら小さいゆうても勘は鋭く働くもんで、胸騒ぎがした幼いウチは、すぐさまお母ちゃんのいる台所までトコトコ走っていった。途中、6畳間を通りすぎた時にお父ちゃんを横目に見たが、酒で顔を真っ赤にしながらテレビを直視しているだけだった。

    2005-12-09 15:39:00
  • 12:

    ちぃ

    台所にいくと、電気も付けずにお化けみたいに下を向いてしゃがみこんでるお母ちゃんがおった。バサバサになった髪の毛で、お母ちゃんの顔がよう見えへん。うちは、目線をお母ちゃんの顔から首もとに落とした。その瞬間、目をまんまるくして口を手で覆った。

    2005-12-09 15:49:00
  • 13:

    ちぃ

    『ヒャッ!お母ちゃん…!』
    お母ちゃんのガクガクと震えた手には、キラキラ光るものの正体。銀色に光る大きな包丁が握られていて、刃の先を首に触れるか触れないかと所まで持ち上げられていた。ガクガクと震える手から伝わる刃の先の揺れ…、ウチにも、お母ちゃんが躊躇ってるのが分かった。ソッと近寄るととビクッと肩まで震わせたお母ちゃんがウチの顔を見上げた。

    2005-12-09 15:56:00
  • 14:

    ちぃ

    ほんまにお化けみたいやった。汗と涙で、ベットリと顔に長い栗色の髪の毛がへばりついてた。髪の毛の間から見える、涙で潤って包丁と同じくらいにキラキラ光る目が怖かった。けど、うちはニッコリ笑ってあげた。
    『お母ちゃん何してんの?こんなん危ないやろう?お怪我しちゃうよ?ほら、包丁離してお母ちゃん』うちは、お母ちゃんの背中にへばりついて頭を撫でてあげた。またお母ちゃんの肩がかすかに震え出す。『お母ちゃん…?死んだらアカンよ…』背中から抱きついてそう言うと、ガタンっと手に握り締めていた包丁を無気力さに任せて床に落とした。うちは包丁を取り、包丁を定位置に戻した。泣き崩れる母の姿。若干4・5歳で知ってしもた忘れられへん泥沼。その後も、お父ちゃんとお母ちゃんの争いは前にも増して続いた。争いが始まるのは、いつも夜。争う声で目が覚めるとウチは必ず、隣で寝息を立ててる小さい弟が起きひんように、弟の耳を塞いでいた。

    2005-12-09 16:12:00
  • 15:

    ちぃ

    (この子が何も気付きませんように……)
    (お父ちゃんとお母ちゃんが、早く仲良しになりますように)
    うちは、ベランダからお星さまにお祈りしてた。

    2005-12-09 16:14:00
  • 16:

    ちぃ

    (お星さまになったお爺ちゃんにもお願いしてみたけど、ウチのお願い事は聞いてくれへんみたい。ウチが悪い子やから?好き嫌いするから?嫌いなピーマン食べられるようになったよ。だから、お願い叶えてください。)寒い夜も、白い息を弾ませてお願いしてみたけど、うちのお願いは天の神様には届かんかったみたい。幼い夢を粉ごなに打ち砕かれたのは、ウチが小学3年生で弟が小学1年生の時やった。

    2005-12-09 16:23:00
  • 17:

    ちぃ

    弟と一緒にご飯を食べ終ると、何やらお父ちゃんとお母ちゃんは忙しく出かける準備をしていた。うちの目線に気付いたお母ちゃんが『ちょっとお母ちゃん達な行くとこあるから、アンタらお利口さんして待ってなさいよ』気遣ってはくれているけど心ここにあらずなお母ちゃん。目が泳いでいる。お父ちゃんは黙りこんだまま、皮のジャケットに袖を通している。異様な雰囲気が漂う。うちはテーブルの下に置かれていたお母ちゃんの鞄を覗きこんだ。

    2005-12-09 16:31:00
  • 18:

    ちぃ

    『あれ?』気が付いたのは、一枚の紙切れ。気付かれないように開くと、お母ちゃんとお父ちゃんの名前が書いてあった。一瞬、自分の目を疑ったけど、これが何なのか聞かんくても理解出来た。これと同じ紙をテレビで見たことがある。テレビでお姉さんがお兄さんに『アナタとは離婚よ!!』と叫びながら、この紙をテーブルに叩きつけているシーンを見たことがある。

    2005-12-09 16:40:00
  • 19:

    ちぃ

    紙をソッと鞄に戻して、目線をお父ちゃんとお母ちゃんに戻した。
    重たい空気が漂う2人に会話なんてない。
    弟が指を加えながら、そんな2人の事を不思議そうに見ている。それに気付いたウチは『カッちゃん、チィちゃんと遊ぼう(*^_^*)』と声をかけて、何とか2人への関心を引き離した。弟もニコニコしながらトランプを始めてくれた。そんな、純粋無垢な弟の笑顔を見たら、何だか胸がキュッと傷んだ。

    2005-12-09 16:49:00
  • 20:

    チィ

    (お父ちゃんとお母ちゃん……別れてしまうんやろか…。別れてしもぅたらウチラどないするんやろか…。)
    ウチの小さい胸は、ドキドキザワザワしていた。『そんじゃ…行ってくるからね。』無表情のまま2人はアパートを後にした。2人を見送った、ドアの向こうはシトシトと雨が降っていた。静かになった部屋は、外の雨音と時計の音だけで、会話をなくした私達姉弟も静まりかえる空間に耐えられなかった。ウチは、やっぱり、いてもたってもいられなくって玄関から長靴と子供用のレインコートを引っ張り出してきた。

    2005-12-09 16:59:00
  • 21:

    チィ

    『ちぃたん。なんなぁん…こりぇ』と弟が首を傾げて訪ねてきた。うちはニッコリ笑って『お姉ちゃんと一緒に、お父ちゃんとお母ちゃん迎えに行こっ!』と言うた。弟は何の疑問を抱えることなく『うん』って頷いた。
    (もしかしたら、うちらの姿見たら少しは……!)そんな空回りする期待だけを抱いて、おぼつかない手付きで弟にレインコートを着せて長靴をはかせた。ウチは通学に使っている黄色い傘を弟と一緒に入って使った。多分行ったのは、お母ちゃんのお爺ちゃんの家、母の実家だろう。アパートから歩いて、大人の足で3分、子供の足で7分くらいかな?その距離を、寒気に負けないように道路に溜った水で水遊びしながら、歌いながら弟と歩いた。不安をかきけすみたいに。

    2005-12-09 17:12:00
  • 22:

    ちぃ

    トボトボと小さい歩幅で歩いて、目的地に着いたけれど。お爺ちゃんの家には入れない。静かに語り合う大人達の会話がかすかに聞こえる。時折誰かがわめいてた。ううん、他の誰でもないお父ちゃんの声だ。会話は何を話しているなんて子供すぎるうちには分からなかった。長い話し合いが終わって、ドアから出てきたお母ちゃん達に『迎えにきた!』と笑って駆け寄った時のこと。期待していたものはそこには無く、お母ちゃんに怒られたときに言われたことは今でも覚えてる『あんたら何しにきたん!?はよ帰りなさい。迷惑やわ』と。………お母ちゃん…何でそないなこと言うのん?うちの小さい胸の中に撒かれた幸せの種は、芽を出すこともなく飲み込まれていった。薄暗い闇の中に。

    2005-12-09 17:23:00
  • 23:

    ちぃ

    悲しくて悲しくて仕方がなかった。いくら泣いてもアカンかった。子供のダダもこんな時には厄介にしかならんことを覚えた。まだまだ家族でしたいことがあった、幸せやった時はどこにいったん?お母ちゃんはミシンが上手で編みもんが上手で、料理もお菓子作るんも上手で、お母ちゃんの手作りの洋服を身にまとったり、手作りのほっぺたが落ちそうなくらいに美味しいお菓子食べるんが好きで幸せやのに…。お父ちゃんも、トラックの助手席に嬉しそうにチィのこと乗せてくれてたやん!毎日毎日、朝早起きして手ぇ降って『いってらっしゃい』するんが好きやったのに。休みの日は、山とか川とか山菜取りとかバーベキューとか連れてってくれたやん…ドライブいった時には、みんな笑ってたやんね。でも、もうあの時間はないんでしょぉ?みんなバラバラになっちゃうのん?色々かけめぐった、色々思い出が押し寄せた。もう家族の輪っかはウチラを結んではくれへんのやね…。うちらしかおらん…家族やのに…なんか寂しいね。

    2005-12-09 17:48:00
  • 24:

    中断

    読んでくれてる人がいるか分からないですけど、ちょっと辛くなってきたので中断します…。1-23まで書きました。色々勉強したいのでご意見・感想ください。

    2005-12-09 18:11:00
  • 25:

    ちぃ

    混乱しちゃって名前に中断っていれちゃいました。すみません?上のレスはチィです。

    2005-12-09 18:13:00
  • 26:

    ちぃ

    …………………………
    結局、話し合いをした次の日にお父ちゃんは早々に荷物をまとめて出ていった。ドアの前に立つお父ちゃんの背中はどことなく寂しげやった…。ウチな、お父ちゃんが仕事で家を出ていく時はいつも笑顔で『いってらっしゃい』をしてたやんね。お父ちゃんが見えへんくなるまで、ずぅっとアパートのベランダから手を振り続けてたよね。お父ちゃんも、何度も振り返って笑顔で大きく手を振り返してくれてたよね。せやのに、今日のお見送りは『さようなら、元気で』って…お父ちゃんどこいくん??一生会われへん訳やないのに、心臓がトクトクって早くて痛いんよ。昨日から降り続いて見慣れた雨やのに、この部屋の景色に染まってたお父ちゃんは、もう居なくなるんやね。バイバイ、お父ちゃん。元気でね。『お父ちゃーーん!!お父ちゃーん!』泣き声やったけど、お父ちゃんに届いた?伝わった…?

    2005-12-10 14:48:00
  • 27:

    ちぃ

    ポッカリ開いた穴。
    穴の中を覗けば、溢れだしそうな涙がイッパイ。けど、ウチは泣かへん。泣いたらお父ちゃんが出ていったことを認めてしまうことになるから。『帰ってきてね…』見えなくなった父親の背中を思ってそう呟いた。

    2005-12-11 19:33:00
  • 28:

    ちぃ

    お父ちゃんは出ていったけど、離婚する訳じゃなかった。2人が、お爺ちゃんの家に話し合いに行った日。まだ幼い子供を思って『離婚届けは子供達が成人するまで預かる』と、お爺ちゃんに言われたらしかった。お父ちゃんは、月10万の養育費を払うことが義務づけられた。済んでいるアパートはお爺ちゃんが借りたものやったから、引き続きお母ちゃんとウチと弟が住むことになった。

    2005-12-11 19:40:00
  • 29:

    ちぃ

    お父ちゃんとお母ちゃんは元々、一緒になることを反対されていたらしい。反対していたのはお母ちゃんの家族。お母ちゃんはお金持ちで一人娘、箱入り娘のお嬢様。美人で有名で狙う男も多く、お嬢様とゆう肩書き通り、なに不自由なく、苦労も知らずに育った。一方のお父ちゃんは、両親は幼い頃に離婚して、片親で育てられた。学歴もほとんどなく3人兄弟の長男とゆう運命柄、中学を出てからは大工さんをして家計を助けていたらしい。でも、女遊びが激しく素行も悪かったために近所の評判は悪かった。でも、弟を大学にまで出して、教師にさせるほど兄弟思いな人。2人の出会いは、お母ちゃんの兄が父ちゃんと仲が良く、家に遊びにつれてきたのがキッカケやった。その時、うちの母ちゃんが父ちゃんに一目惚れした。2人はすぐに恋仲になった。当時何人も彼女が居た父ちゃんも、よっぽど母ちゃんに惚れたのか、他の女の子達をキッた。交際が1年になった時には、お互い結婚することを誓いあったという。

    2005-12-11 20:00:00
  • 30:

    ちぃ

    けれど、2人の甘い誓いは、そう簡単には世間には受け入れてもらえなかった。
    激しく反対された2人、でもその度に燃え上がる思い。火に油を注ぐようなもので、長い間反対され、滅入ることなく奮闘した結果、やっと結婚することが許された。けれど、許された理由は、和解が成立したとか、祝福されたからとゆう訳やなかった。母の家族の思惑はこう、【すぐ別れるだろう】……と。

    2005-12-11 20:09:00
  • 31:

    ちぃ

    そんな理由であったにしても、結婚できた2人。けれど、幸せはつかの間。経済力が殆んど無いに等しかった、お父ちゃん。そこに付け入るかのように、家族からの圧力はかけられた。結婚式の費用も、アパートも全部、母のお爺ちゃんが用意した。その為に圧力をかけられたのだ。それが最初からの計算やったんかは分からない。圧力によって父ちゃんは日に日に荒んで、母ちゃんが言うには、結婚式から2ヶ月したころには、もう終わりが見えたらしい。

    2005-12-11 20:17:00
  • 32:

    ちぃ

    そんな時。母の体に異変が起こった。生理がこない、吐気………。そう、私が母のお腹に宿ったのだ。検査で2ヶ月とゆうことがわかった。けど、母はお腹が大きくなるまで、その事実を隠した。(お腹の子、私とあの人の赤ちゃん。いま家族にいえば堕せと言われてしまう。堕せなくなる時期まで隠そう。この子が産まれれば、みんな変わってくれる筈…)と、決意を固めたらしい。早速、父に報告した母。『このごろ体調が悪くて、今日美容にいってきてんよ。そしたらね、2ヶ月やって言われてん!』父は母ちゃんを抱き締めて偉く喜んだ。『お〜!俺等の子供か!やったな!俺、女の子がええなぁ』なんて、会話がポンポン弾んだ。久しぶりに明るい家庭が戻った。私はお腹で何事もなく順調に育ったという。『今日の検査で女の子やって分かってんよ〜』『ほんまか!?お前に似た可愛い子がいいなぁ』この時だけは、本当に幸せだったと母ちゃんは言っていた。順調に育ってお腹も目立ち始めたころ…。

    2005-12-11 20:33:00
  • 33:

    ちぃ

    『今日な、実家に言って、うちのお父さんや家族に、この子のこと告白しようと思ってんねん。不安やけど、、きっと分かってくれると思う、もし堕ろせと言われたら、私は自分の家族と縁切る覚悟や』と母は強い目で語ったらしい。

    2005-12-11 20:39:00
  • 34:

    ちぃ

    期待をしていた。この子の事を告げれば両親は理解してくれる。母ちゃんはそう期待していた。けど、話し合いは話し合いにならず、母の意見などお構いなしに口々に覆された。『あかん!絶対に許さんぞ!あんな男との子供やなんて!お前に幸せになってほしいんや!こんなことになるんなら見合いを強行しとけば良かったわ!』母を罵るお爺ちゃん。『お父さん!私は、確かにみんなが望んでいない結婚をしました!みんながそないに簡単に許した裏の魂胆くらいは私にも分かってます!けど、私は愛している人と結婚できて、苦労しても幸せです!ですから、私のお腹にいるこの子は生むからね!愛した人との間に出来た子供は、お父さんが何を言おうと生みますから!』今まで、か弱くおしとやかだった自分の娘、それがいま、目の前で強い目で訴えかけている。お爺ちゃんは、娘の強い意思にたじろいだらしい。娘さんだった母ちゃんの背中を、【母となった強さ】が背中を押していた。

    2005-12-11 21:25:00
  • 35:

    ちぃ

    『お父さん、万里の望むようにしたりましょう。頑固に何言うたって聞きませんよ。万里ちゃん、行く末に何があっても後悔しなさんなや。アンタが望んだ道なんやからね』そう和解の進むように話を運んでくれたのはお婆ちゃんやった。母ちゃんはお婆ちゃんに涙ながらに『ありがとう』を何度も繰り返した。

    2005-12-11 21:31:00
  • 36:

    ちぃ

    それから、数ヶ月経った。みんなが見守る中、寒い1月に小さな小さな命の産声が病院に響き渡った。父29歳、母23歳の時のこと。望まれていない命だったかもしれない、、私がこの世に誕生した。

    2005-12-11 21:36:00
  • 37:

    ちぃ

    反対していたお爺ちゃんも、孫の誕生を陰で涙を流し喜んだ。
    成長の過程を見守ってくれた。みんな笑顔だ……娘の誕生と一時の家族の結束、そして愛すり人の笑顔に、母ちゃんは、流しても流しきれないほどの喜びの涙を流したとゆう…。平穏な日々はずっと流れていく筈だった。しかし、私が誕生してから3年後。母のお腹に弟が宿った日、その日を境にお父ちゃんとお母ちゃんの間に埋まらない溝が生まれた。

    2005-12-11 21:43:00
  • 38:

    ちぃ

    『なぁ…なんかまた生理きてないわ…もしかしたら子供出来たんかなぁ?』お母ちゃんが、お父ちゃんに告げた。なんて言ってくれるだろう?もちろん喜んでくれるよね?愛する人から出る言葉に期待を寄せた母。『産むなら勝手に産みや。2人も育てていく金がどこにあんねんな』……父が母に放った言葉…。ガラガラと幸せの音が崩れていくとゆうのは、こんな感じなんかな…。母は一人悩んだ…(今回は見送らなくては…産めない)病院にいくのが怖い。一人目の時に両親に担架をきった上に相談などできる筈もなかった。トボトボと病院に行った、『おめでとうございます。3ヶ月ですよ』お医者さんは言いながらエコー写真を手渡した。震える手。目を丸く見開く。小さな命が誕生している。母になる身として産めない訳がない。揺らいでいた不安はすぐに消え去った。『先生、今回も元気な子供が産まれるように、お願いします』と深々と頭をさげた。何かが形になろうとしていた時、その傍らで何かが壊れはじめていることも変わらない事実だった。お母ちゃんはソレに気付きながらも根強く耐えていたんだろう…

    2005-12-11 21:58:00
  • 39:

    削除

    削除されますた

    あぼ~ん
  • 40:

    ちぃ

    弟が誕生した辺りから、お父ちゃんはまともに家に帰ってこなくなった。母は毎晩泣いていた。小さかった私も何となく覚えている。『金ちょうだい』と言い出ていくお父ちゃんのこと。少ない収入にも関わらず、ギャンブルや飲みにアッとゆうまに消えていく金。でも、不思議と食卓にはいつも貧しい食事は出てこなかった。苦労知らずなお嬢様で、包丁も持ったことのなかったお母ちゃんが、そう感じさせないように陰ながら料理の勉強をして努力の形があったからだ。洋裁も、子供に着せる服でみじめな思いをさせないように、必死にミシンを勉強したのだ。お菓子作りだって、子供の沈んだ顔を明るく変えてくれる為に覚えた、幸せだぁって思えるくらいの美味しい、食べると笑顔になる魔法のお菓子。そんなお母ちゃんの苦労は報われずに、借金と夜遊びに明け暮れる形でお母ちゃんを裏切っていくお父ちゃん。けれども小さかったウチには、そんな事が分かる筈もなく『お父ちゃんどこいったん?』と毎日のように聞いていたらしい。お母ちゃんいわく、その言葉が1番辛かったらしい。そんな日々がずっと続いて、同じ毎日が何年もの月日が流れてた。お母ちゃん…そ

    2005-12-11 22:42:00
  • 41:

    削除

    削除されますた

    あぼ~ん
  • 42:

    ちい

    悲しいけど、お爺ちゃんとお婆ちゃんは、そうなること分かってたんかもしれんね。
    苦労してきた人は、誰よりも先に、裏切る人が分かるような気がする。けどお母ちゃん、お父ちゃんと一緒になったこと、出来るなら後悔せんといてください。

    2005-12-11 22:48:00
  • 43:

    ちぃ

    ウチは小さいころは人見知りで、人と喋ったり笑いあった記憶がない。それ故、気付かんうちに、人の顔色ばっか伺う子になっちゃったみたい。良いことやなって思う時もあったけど、嫌やなって思う時もあった。初めて、それを嫌やなって思ったんは、お父ちゃんが出ていってすぐの時に、お母ちゃんに特別な人ができて、夜中にその人に会いにいくんやろなって、分かった時やったな。人の心って良く分からん…な。

    2005-12-11 22:55:00
  • 44:

    ちぃ

    『お母ちゃん一体こんな夜中にどこいくん?』ピョコピョコと歩いて玄関に行った。『え…ぁあ…ちょっと買い出し(^_^;)』……。『こんな時間にスーパーあいてへんよ…?』…お母ちゃんが苦笑いを浮かべだした。『早く帰ってきてね』やっぱり男出来たんやって思ったら悲しい気持ちになって、布団に入って泣いてしもた。そんな時は、駆け寄ってくる弟と手を繋いで眠る。小さいながらに大人の事情を感じる頭を呪った。

    2005-12-11 23:31:00
  • 45:

    しぃ?

    始めから読みました??文章うまいし読みやすいです??ちぃサンに完結までついて行くので無理せず更新頑張って下さい??

    2005-12-12 11:07:00
  • 46:

    ちぃ

    しぃ?ちゃん、ありがとう。見てくれてる人いるかなぁ〜と思ってたんで嬉しいです?読み返すと、病院を美容と書いていたり、新郎と書く筈が新婦と書いていたり誤字が多くて本当に申し訳ないです?気を付けながら、伝わるように思いを詰めて書くので、見守っていてください?感想いれていただいて大丈夫なので、たまにレスくださいね??

    2005-12-12 12:55:00
  • 47:

    ちぃ

    その頃から、夜な夜な出ていくようになったお母ちゃんとどう付き合えばいいのか分からんくて、先々の不安がストレスになってしまっていた。人を信じる事が出来なくなってしまったせいか、元々の人嫌いが悪化してしまっていた。ストレスがウチの精神状態を蝕む。ストレスはやがて胃に負担をかけ、学校も登校拒否をするようになってしまう。けれど…登校拒否をした、もう1つの理由は、距離があいてしまったお母ちゃんの関心を自分に向けたかったのかもしれない。いま思えば子供らしい興味の引きかた。でも、それはお母ちゃんを苦しめてしまうだけだとは気付かへんかった。

    2005-12-12 13:05:00
  • 48:

    ちぃ

    ウチは、学校に行く時間になると必ずトイレに逃げた。アパートじゃ鍵をかけて逃げられる場所っていうと、トイレくらいしかなかったから。ドンっ!ドンっ!ドンっ!ガチャガチャガチャガチャ!『あんた早く出てきなさい!いつまでも、こんなんしてお母ちゃんのこと悩ませんといて!』『嫌やぁ!行かへんもん!絶対いかへん!』毎朝毎朝、ご近所さんに迷惑なくらいの大声で争った。『お母ちゃん今からパート行って夜もお店出やなアカンのに、しんどい思いさせんといてよ』ドア越しにチカラのない、お母ちゃんの声が聞こえた。(そんなん言われたかって……………やもん)声を出さずに返事した。(家にも学校にも居場所がなくて寂しいんやもん…)学校では、5年生に上がったと同時に新しい先生になった。男の先生で、体育会系、スパルタ。宿題が出来ていないとすぐ殴る。体育に出なかったり、出来ない生徒をアホ呼ばわれする。ウチもそう言われた1人。ウチは運動も勉強も、並以下で出来る子供じゃなかった。うちは先生とは真逆で、音楽や美術に才能があったから。そうゆう事もあり、学校でもだんだん枯れた花みたいに頭を下に向けるようになった。

    2005-12-12 13:33:00
  • 49:

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    削除されますた

    あぼ~ん
  • 50:

    ちぃ

    うちは、先生に目をつけられるようになった。端から、いらない子扱いをされるようになった。体育は出なかった。体育嫌いの他に、他の女の子達よりも、早く体に訪れた変化に戸惑って体育着や水着を着ることが嫌やった。それと、初潮を向かえた為に、今までなった事のない貧血でフラフラして体調が不安定やったから。だんだん、それさえも嘘だと罵る周囲に、耐えられなくなっていた。3学期になるとウチに対する、ある噂が回っていた。それは小さかったウチの心に収まりきらないほどのショックを与えた、と同時に、ウチの外に対する時間を止めてしまった。

    2005-12-12 13:46:00
  • 51:

    ちぃ

    『先生〜、なんで戸口(偽名)さんは学校に来ぇへんかったり、体育の時間に出へぇんのですか〜?』ある日、ウチが欠席した日、ホームルームで、ウチの話題が持ちかけられたらしい。『そうだそうだ』と生徒達がザワつくなか先生が、一言返した。

    2005-12-12 13:55:00
  • 52:

    ちぃ

    『ん…?あぁ、戸口は障害者だからしかたないんやで、ハハハ』って。

    2005-12-12 13:56:00
  • 53:

    ちぃ

    【障害児】
    これを聞いた生徒達は、面白半分に【ガイジ】と笑いながらウチを指さした。ウチは泣いた、外の世界を疎外した。それからとゆうもの自分が作り出したバリケードの殻に閉じ籠ってしまった。その意味を分からんかった生徒は、自分の親にこう訪ねた。『こないだホームルームでな、戸口さんのこと質問した子がおったんやけど、障害児やからけえへんのやって先生が言うてん。障害児って何なん?』。これを聞いたのがお母ちゃんの友達やった為に、すぐにお母ちゃんの耳に入った。

    2005-12-12 14:05:00
  • 54:

    ちぃ

    うちは、引きこもりになった。
    ある日、ブツブツと独り言を唱えてるウチの前にお母ちゃんが座った。お母ちゃんはウチの顔を覗きこんできた。『チィちゃん、お母ちゃんと久しぶりにお話しよか?』ウチは『え?』とビックリしてお母ちゃんの顔を見上げた。『学校で何があったんか、お母ちゃんに全部言うてくれへんかな?』お母ちゃんがウチと向き合ってくれてる。嬉しかったけど、なかなか表に自分を出すことが出来ひんなったウチには容易いことではなかった。けれど『ゆっくりでいいから』と後押ししてくれたお母ちゃんの言葉で少しづつ口を開いた。

    2005-12-12 14:12:00
  • 55:

    ちぃ

    『うちな、5年生になってから学校でイジメられててん、戸口んちはお父さんがいない、いないから何も出来ひんヤツなんやとか、いっぱい言われてん。体育は……嫌いなんもあるけど、胸が大きくなってきて、毛とかはえてきて、血も出るようになったし、みんなと違う風になってきたから、恥ずかしかった。またみんなに指さされて何か言われると思ったら嫌やってん…それにそんな恥ずかしい事、あの先生に言えんかったもん…。そんな時に………』ウチは口を閉じた。

    2005-12-12 14:21:00
  • 56:

    チィ

    『そんな時にどないしんや…?』
    お母ちゃんは優しい声で、何かを悟ってるみたいに聞いてきた。ウチには言えんかった。『あんた…学校で先生があんたの事を障害児って言うたの聞いた子達から障害児やて言われてるんホンマか?』お母ちゃんは聞いてきた。うちは声をださずに、ただ静かに頷く事しか出来ひんかった。

    2005-12-12 14:28:00
  • 57:

    ちぃ

    次の瞬間、ガバッと温かいものに包まれた。ウチは、フカフカのお母ちゃんの胸ん中におった。
    お母ちゃんは泣きながら『あんたもう学校いかんでええから。今まで気付いてやれんくてごめんなぁ』といつまでもウチを抱き締めてくれた。そしたらプツッとうちの中で何かが切れたみたいに『うわーん!!』と声を上げて泣いた。あの時、愛情に乏しくなってたウチは、お母ちゃんが自分から抱き締めてくれたんが嬉しかった、嬉しすぎて泣いた。救われた気がした。物心がついてから、最初で最後のお母ちゃんの温もり。フワフワと優しいお母ちゃんの温もり。あの温もりを、ずっと探してた。

    2005-12-12 14:36:00
  • 58:

    ちぃ

    それから、お母ちゃんは学校に怒鳴りつけにいった。そやけど、『あの先生がそんな事を言う訳がないじゃないですか』と、問題が起こるのを恐れた校長の一転張りにされて、和解にならないまま帰ってきた。でもお母ちゃんが、ウチのために動いてくれたんが嬉しかった。

    2005-12-12 14:45:00
  • 59:

    ちぃ

    あの頃、あんな甘え方しか出来んくてごめん。
    あんなに弱くてごめん。感情表現が下手でごめん。
    お母ちゃんの幸せを願えんくてごめんなさい。

    2005-12-12 14:54:00
  • 60:

    ちぃ

    学校を行かなくて良いことになってから、家に引き込もるようになった。その中で、うちが見い出したのは音楽と絵の世界。小さいキーボードと、スケッチブックと色鉛筆と音楽番組が心の友達だった。

    2005-12-12 14:56:00
  • 61:

    ちぃ

    言葉が少なくなったウチは、感情を絵に書くようになった。
    誰にも伝わったりしないけど、そうすることで自分が楽になれた。そんな、ある日何となくテレビを見ていた時の事。2曲だけ、フルでアーティストのPVが流れる番組を見ていた。その時、あるバンドのPVを見てテレビに釘付けになった…。ケバケバしく化粧をしている男の人達、流れる歌の歌詞にずっと耳を傾けてた。そのバンドはLUNA SEA。【トゥルーブルー】聞いて、一気にビジュアル系といわれる音楽に依存した。理由は分からんけど、なんか癒されたんかな。気持ちが少し重なった気がしたから…。ちなみに、今はビジュアル系にピンっとこなくなったけど、当時癒されてた曲を聴いたら、今でも気持ちが落ち着いたりする。LUNA SEAに出会ってから、お年玉でCDラジカセを買った。【トゥルーブルー】と【ロージア】を買った。毎日毎日、何回も何回も聴いた。眠るときもずっとヘッドホンから流れてた。少し居場所を見付けた気がして嬉しかった。

    2005-12-12 16:24:00
  • 62:

    ちぃ

    お母ちゃんは結局、相変わらずやった。
    スナックの仕事が終る時間が過ぎても朝帰り、けど兄弟で仲が良かったのは幸いだった。誰とも喋らないウチやったけど、弟のカッちゃんとは話せた。カッちゃんも、お母ちゃんが居らんことを寂しがってたけど、何とか受けとめようとしてた。けど、ウチはなんか受け入れられんかった。

    2005-12-12 16:34:00
  • 63:

    ちぃ

    そう否定的になってしまう理由はイッパイあったけど、母親から女に変わっていくお母ちゃんが許せんかった。上手やった料理も、いつしか家では作らへんようになった。テーブルに置かれてるのは【自分等で買って食え】と言わんばかりの2千円札。それか、スーパーで買ってきた惣菜。いつかお母ちゃんの彼氏んちに連れていかれた事がある。そこには真新しいキッチン道具が並んでた、チラッと見えた冷蔵庫には野菜とか肉とか、いかにもここで料理してますと言わんばかりの食材が並んでた。キッチンには洗ったばかりのお茶碗とお皿とお箸が2人分置いてあった。うちは唇をキュッと噛み締めた。

    2005-12-12 16:43:00
  • 64:

    ちぃ

    こんなもん見せて平気なんやろか……。
    ウチらはアンタのお荷物かい……?けど言葉に出さんかった。お母ちゃんは、よう彼氏が変わった。恋多き女。うちは、そんな女になるまいと強く思った。でも、血を引いているから…そう考えると、不安でやった。そんな時、お母ちゃんは、ウチに恥ずかしそうな笑顔で見事なストレート球を投げてきた。『お母ちゃんは母親である以前に女やから、いつでも男の人の傍で寄り添ってたいねん』と。大好きやったお母ちゃんの事を、いつしか大嫌いになった。そしてお母ちゃんをお母ちゃんと思わんようになった。反抗期が混じった中学生になり、あの言葉を聞いて、うちの中で風船みたいに膨らんだ不満がパンっと勢いよく割れたような気がしたよ。

    2005-12-12 16:56:00
  • 65:

    ちぃ

    それからというもの、うちは、今までの自分を封印するように生まれ変わった。もう弱さだけじゃアカンねやと気付いたから。相変わらず人嫌いやけど、反抗期も手伝って殻を脱ぎ捨てるのは難しいことではなかった。中学に上がっても学校には、たまにしか行かんかった。【イジメられるから】なんて理由は完全にウチの中から消えていた。周りはそんなウチに驚きを隠せないでいたけど。お母ちゃんは、家族の事は見てみぬ振りで、気にせんなってたから、ウチがどうなろうが知った事じゃないって感じやった。けど、お母ちゃんがそうなればなるほど、ウチの反抗は増していった。寂しい反抗やな…。

    2005-12-12 17:08:00
  • 66:

    ちぃ

    学校の不良と呼ばれる悪いやつも、新しいもの見たさに、殻から這い出たウチを見に家に来た。ゾロゾロと無駄人数をかき集めて。でもウチには何も感じなかった。集団で絡むのは好きじゃない。弱い人間になりたくなかった。まるで一匹狼みたいな感じ、誰も信じないし、誰にも期待なんてしない。顔色を伺ってばかりきたウチには、相手がなに考えてんのか分かる。みんな後から言うてた、目に孤独や、飢えや、憎しみ悲しみ寂しさを宿らせたウチの目は、向けられただけで寒気がしたって。みんな戸惑って帰っていく。学校に行っても、指をさされなくなった変わりに、誰も近寄らなくなってた。(これでいいんだ…これで。) これが私の望んだ道、だから後悔なんてしない。

    2005-12-12 17:20:00
  • 67:

    ちぃ

    けど、こんなウチにも温かいものに恵まれた。神様からプレゼントかな…。親友とゆうプレゼント。下校していた途中、声をかけてきた、一見パッとしない身なりのその娘は、結子と名乗った。そんな結子の目をみて、(この子も人を信じられない寂しい目をしているな)と感じた。うち等は何かを深く語らずとも、仲良くなった。

    2005-12-12 17:27:00
  • 68:

    ちぃ

    結子とはいつも一緒にいるようになった。何をするにも一緒。そしたら私、自然と笑えるようになっていた。周りが少し温かく見えた。初めて人に気を許した瞬間。結子が笑っていると、ウチも幸せ。そう思わせてくれる大切な親友。うちは家庭内の話を一切しないけど、結子は聞いてほしかったのか良く話すようになった。聞けば、ウチと似たような家庭環境だった。おとなしい結子とは性格も持っているものも全部違ったけど、同じ心と寂しさを持っている。だから惹かれあったのかな?

    2005-12-12 17:34:00
  • 69:

    ちぃ

    結子といる時間は癒された。でも帰れば地獄。お母ちゃんとは毎日毎日声を張り上げ罵りあった。『こんな粗末に扱うんなら、生まんかったら良かったんやろーが!反対された時に素直に堕ろしときゃあ良かったんちゃうんけ!生んでくれとも頼んでないけどな、こんなんなら生んでもらいたくなかったわ!うちの人生返せ!』お母ちゃんを黙らせるトドメの言葉。お母ちゃんはうちを殴るだけ殴って泣く、泣いてヒステリーを起こして、どこかに消えて行く。お母ちゃんも、どうやって生きて行こうか、ホンマはどないしようもないほど不安やったんやろ?

    2005-12-12 17:43:00
  • 70:

    ちぃ

    お母ちゃんとの長い長い戦争は、ずっと続いた。中学卒業してもずっと。アパートを派手に穴だらけにしたりもした。散々殴られたっけ?けどウチはお母ちゃんを殴りかえしたりはしやんかった。お母ちゃんの体があるからウチラは生きて行ける。ほんのささやかな優しさが自分に残ってんのも事実やったから。

    2005-12-12 17:48:00
  • 71:

    ちぃ

    うちは適当にバイトしながら気付いたら16才になってた。変わらず家庭内は最悪。そんなある日、珍しい人からお呼びがかかった。お父ちゃんやった。何年ぶりやろ?嬉しさと複雑さが交差する。でも、こん時会わんかったら良かったな…。

    2005-12-12 17:53:00
  • 72:

    ちぃ

    『まぁ、ちょっと飲みにいこや』と、すこし息詰まる空気を解いたのはお父ちゃん。
    お父ちゃんの行き着けの店らしい飲み屋にいった。お父ちゃんの隣で女が私に話をふってきた。『私、マコって言います。千里ちゃんよろしくね』とニッコリ笑う。ウチは一瞬だけお父ちゃんをチラっと見て、マコさんに頭を下げた。なんだか急すぎて、意味が分からない。あんまり何を話したのか分からんから、ごまかすように自慢の喉で歌を歌う。歌は昔から得意、一時は歌手を夢見たこともあったくらい。『へぇ〜千里ちゃん歌が上手やね〜』と感心するマコさん。そんな時間が3時間ほど続いて、店をあとにした。別れ際、『また行こうな』というお父ちゃん。『うん』と軽く微笑んだ。背中合わせに別々の方向へ帰る。振り替えると、お父ちゃんとマコさんが寄り添ってあるいてた。また居場所をなくした気がする。

    2005-12-12 18:30:00
  • 73:

    ちぃ

    帰りは少し憂鬱やった。わざわざ聞かずとも、見ればお父ちゃんとマコさんは恋人同士やと分かる。けど、それをお父ちゃんの言葉で言い聞かせられる時が来たとしたら…?なんか全部壊れてしまいそうで、怖かった。砂で作った城のように、まだどこかで夢見ている家族の再生の夢。自分が作り上げた大切な夢を、一瞬の波に拐われてしまう気がして…怖かった。

    2005-12-12 18:40:00
  • 74:

    ちぃ

    それからも何度か誘われて、一緒に飲みにいった。もちろんマコさんも一緒。飲みにいった日の話題に、お父ちゃんがウチにラジカセをくれるという話になった。ウチはワクワクして『今日お父ちゃんちまでとりにいきたい!』とせがんだ。一瞬、お父ちゃんとマコさんが、互いの顔を見合わせたのが分かった。少し悩んだそぶりを見せたあと『わかった、ほんなら飲んだら家にいこか』と苦笑いを浮かべた。いつか…いつかこんなような顔をお母ちゃんもしていたな…と記憶を回想させた。

    2005-12-12 20:10:00
  • 75:

    ちぃ

    お父ちゃんは、その当時、誰もいなくなった自分の実家にすんでいた。うちが懐かしさに胸を弾ませる傍らで、『まぁ…散らかってるけど…』と小さくお父ちゃんがドアをあけた。ウチはニコやかな表情を曇らせる。見渡すと長年誰もすんでいなくて荒んでいた、玄関からずっと広がってる部屋は、いかにも女の人が手を加えたであろう飾りつけがされてあった。奥に進むと、ベッドルーム、ペアのもので揃えた寝具や、衣類など、まるで新婚さんみたいだった。唖然と立ち尽くしていると、『こっちにおいで』とリビングに通された。マコさんは何故か遠慮して隣の部屋で待機していた。ウチはお父ちゃんの顔を不思議と見ながら、渡されたラジカセを喜んで受け取った。『もぅ、千里も大きいから何となくは理解しとると思うねんけど…お父ちゃんな、マコちゃんと付きおうてるんや』煙草に火を付けながらそう言った。『お父ちゃん、ウチはそれに対して何て言うたらええの?』思わず黙りこむお父ちゃん。やっぱり大人はセコいわ…。都合悪けりゃ黙りこむ。大人が子供を裏切るんは勝手やけども、それでも子供は信じてるんやで。偽りを嘘と違う言うんなら、アンタらとん

    2005-12-12 20:33:00
  • 76:

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    あぼ~ん
  • 77:

    ちぃ

    ひたすら走り続けていたんだろう、気付いたらアパートのドアの前に居た。
    『どないしよ…帰ってきてもぉた……』こんな姿をお母ちゃんに見られたら全て悟られてしまう。必死で涙を止めようとしてもシャクリが止まらない。ウチ知ってんねん、お互いに彼氏×彼女出来ても、まだ惹かれあってること。嫌いで別れたんとちゃうことも。でも、やっぱり大人ってセコいわ…。その寂しさを埋められる人さえ見付けたら、ソレで何かは埋まるんやもん。けど、うちら子供は何で埋めればいいの?親の愛情も、『私、良い母親なんです』『これ俺の子供達』って誰かに良く写ったらいいだけの、都合のいいものに見えてしまう。そんなんで、今更…人なんて信じられないよ。…恋愛するのも怖くなっちゃった…。強くなりたいな…。悪い夢なら早く覚めてほしい。ずっと冷えきった体を震わせながら、こんなことを考えてた。

    2005-12-12 23:31:00
  • 78:

    ちぃ

    なかなか泣きやまない中でドアがガタンと背中を直撃した。
    ビックリして振り返るとお母ちゃんもビックリしたような顔をしている。『アンタこんな雨ん中で何やってんの!?』すぐさまタオルを持ってきた。泣いてるのを気付かれたくなくて、下を向いているのが不自然に見えたのか顔を覗きこんできた。『アンタ泣いてんの?』と問掛けてくるお母ちゃん。その声が『反則やわ』と嘆きたくなるくらいの、あんまりに優しい声やったから……もう止まらんなっちゃったやん。この日泣いたこと、どれほど後悔したやろう。消えちゃいたいくらい後悔した。

    2005-12-12 23:45:00
  • 79:

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    あぼ~ん
  • 80:

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    あぼ~ん
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