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一枚の写真

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  • 1:

    明日美

    捨てられない写真ありますか?ずっと忘れられない人はいませんか?
    自分が壊れてだめになりそうなくらい人を好きになったこと…ありますか?
    涙が出なくなったくらい泣いたことありますか?

    私は一枚の写真を見るたびにあの頃を思い出します。

    2005-09-15 02:47:00
  • 2:

    明日美

    二人並んで写った一枚の写真。私の隣には彼がいた。これがずっと捨てられない最後の写真。
    たくさんあった写真は、もう他には残ってない。
    残ってるのは…この一枚の写真だけ。

    2005-09-15 02:50:00
  • 3:

    明日美

    捨てた…。全部捨てた。ネクタイも服もハブラシも。映画の半券もヒゲ剃りも写真も…。
    でも捨てられなかった。最後に残ったのは彼があどけない顔をして写っている写真。
    これだけが何故か捨てられなかった。何で?…自分でも分からなかった。

    2005-09-15 02:57:00
  • 4:

    明日美

    別れてもう一年もたつ。時代は変わっていく。周りも変わっていく。みんな毎日前に進んで歩いてる。
    変わらないのは…私だけ。変われないのは…私だけ。ずっとあの時から立ち止まったまま。時間だけが静かに流れてた。

    2005-09-15 03:02:00
  • 5:

    明日美

    時々夢を見る。すごく心地いい夢。楽しかったあの頃の夢を。
    でも目が覚めて現実に引き戻された時、表しようがない悲壮感に襲われる。そして私は泣いてる。
    泣いたって何も変わらないのに。何も戻らないのに。何も…

    2005-09-15 03:06:00
  • 6:

    明日美

    捨てられない一枚の写真がある。私の隣には彼がいた。二人して笑ってる。
    まるでずっとその幸せがずっと続くかのように。
    分からなかった。まさか離れてしまうなんて思ってもみなかった。

    2005-09-15 03:09:00
  • 7:

    明日美

    写真に写る私と彼。
    橘 明日美と三嶋 圭。
    私達は一年前まで一緒にいた。五年間もずっと一緒に。一年前、付き合っていくのを諦めたのは私。
    別れを選んだのも私。先に離れたのは私の方だった。

    2005-09-15 03:18:00
  • 8:

    明日美

    電車の中でうたた寝してる人は何度か見たこともあった。でも本気でスースー寝息を立てながら寝てる人を見たのは初めてだった。
    肩にもたれてしまった圭は熟睡しきっていて、起きる気配すら感じず、私は降りなきゃいけない駅を通り過ぎてしまっていた。

    2005-09-15 03:26:00
  • 9:

    明日美

    何度も体を動かしたり肩をはずそうとしたりしたけど圭は起きなかった。私は正直ゆうと恥ずかしくてしょうがなかった。
    周りから見たらどう見られてるんだろうって。同世代っぽい圭はよっぽど疲れていたのか、ついには終点駅まで起きずに着いてしまい電車はまた来た駅を戻るために出発してしまった。

    2005-09-15 03:30:00
  • 10:

    明日美

    私は次は絶対おりる駅に着いたらコイツを振り飛ばしてでも降りようと決めていた。
    でも寝息をたてる圭は深く帽子を被ったままずっと眠ってた。
    「次は○○駅〜」
    アナウンスが流れた私は次の駅で降りるために少しずつ肩をずらして離れようとした。そして、駅に着いた瞬間勢いよく立って急いで降りた。

    2005-09-15 03:36:00
  • 11:

    明日美

    私が立った時に、びっくりしていた圭も何故か振り返ると降りて来ていた。そして私の方に歩いてきた。

    「すいません…僕ずっと寝てました?」

    まだ眠そうな顔で私に聞いてきた圭は申し訳なさそうな声で謝ってきた。

    2005-09-15 03:40:00
  • 12:

    明日美

    「かなり寝ちゃってたけど大丈夫ですよ。降りれたし気にしないで下さい」

    私はそう言って改札に向かって歩こうとした。でも、圭に呼び止められた。
    「おわびにジュースでもおごらせて下さい」って。

    2005-09-15 03:44:00
  • 13:

    明日美

    早く帰りたかった私は断ったけど、何故かカバンを引っ張られながら販売機まで連れて行かれて、ジュースを買われると近くにあったホームのベンチに座らされた。
    「本当にごめん」
    圭は何度もそう言った。私は謝ってくれるなら帰らせてくれよって本心ではずっと思ってた。

    2005-09-15 03:47:00
  • 14:

    明日美

    「あ゙ぁーっ!!」
    急に叫び声をあげた圭に私はびっくりして心の声が聞こえてしまったのかと思い焦ってしまった。
    「ボストン…忘れてる」
    ボソッっと言った言葉に私は思わず笑ってた。本当になかったからだ。
    あんなに大きな物を忘れてしまう人も珍しい。まぁ寝ぼけて焦ってたからなんだろうけど。

    2005-09-15 03:52:00
  • 15:

    明日美

    「この駅の駅員さんがいる場所ってどこ?」
    私がおりる駅は改札がいくつもあった。面倒なことに連れていくはめになり、さらにさっきの車両が戻ってくるまで一緒に待っててほしいと頼まれた。
    断っても良かった。でも…何でだろ?圭は初めて会ったのにそんな気がしなくて私に笑いかけてくる笑顔がすごく優しく見えた。

    2005-09-15 03:58:00
  • 16:

    明日美

    電車が戻ってくるまで40分、私達は駅のホームで待っていた。
    「名前なんてゆうの?」
    「橘…明日美」
    「あ、すみ?変わった名前だね。俺は圭。16」
    圭は私と同じ年だった。帽子をとると綺麗な顔をしてた。

    2005-09-15 04:02:00
  • 17:

    明日美

    「何が入ってたの?あんなに大きいカバンに」

    私はボストンの中身を心配していた圭に聞いた。

    「ダンスの練習靴とかスケジュール帳とか。色々とにかく失くなったらマズイもんなんだよね」

    2005-09-15 04:06:00
  • 18:

    明日美

    「へぇーダンスやってるんだぁ?なんかすごいねっ。大丈夫だよあんなに大きい重そうなカバン誰も持ってかないから」
    私が笑いながらそう言うと圭も一緒にハハハって笑ってた。
    「あっちゃんさー、俺のこと知らない?」

    2005-09-15 04:09:00
  • 19:

    明日美

    あっちゃん?男の子に初めてそう呼ばれた私は少し照れていた。
    ママや友達には呼ばれたりするけど…それとはまた違った感じがした。

    「え?分かんない。どこかで会ったことある?」

    2005-09-15 04:12:00
  • 20:

    明日美

    いくら記憶を辿っても圭のことは知らなかった。何をわけの分からないこと言ってるんだろって思った。

    「俺もまだまだってことかぁ。頑張らなきゃなっ」

    圭は私にそう言った。私はその時はその言葉の意味も分からなくて気にも止めなかった。圭が芸能人ってことも知らずに。

    2005-09-15 04:16:00
  • 21:

    明日美

    「携帯持ってる?」

    「持ってるけど…」

    「教えてよ。番組交換しよう。あっちゃんには迷惑かけちゃったし今度またお詫びっつーかお礼したいし」

    2005-09-15 04:18:00
  • 22:

    明日美

    そして私は圭と成り行きで番号を交換した。
    《ガタンゴトン…》
    やっと電車が来た。圭は乗ってた車両に乗るとボストンを見つけてピースしてきた。
    「遅くまでごめんね!また電話するよ。あっしても大丈夫?いいよね?」
    私が答えようとした時、ドアは閉まってしまった。だから指でオッケーマークを作り圭に見せると、圭はニコニコ笑いながら手を振ってきた。

    2005-09-15 04:23:00
  • 23:

    明日美

    そして電話は走り出し、行ってしまった。私は今日は一体なんだったんだろうと帰り道一人で考えてた。
    家に帰ると11時前で、ママにもパパにも帰りが遅いと怒られた。
    私のせいじゃないのに…でも言い訳しても信じてもらえるはずもなかったし、初めて会った男の子と一緒だったって知ったら余計に怒られちゃうもんね。

    2005-09-15 04:27:00
  • 24:

    明日美

    圭が言った「俺のこと知らない?」って言葉を私はその日帰ってからもずーっと考えた。
    一体なんだったんだろうって。圭は何が言いたかったんだろ?考えても答えは見つからなかった。

    その頃は携帯の着信音がまだ三和音や四和音しかなかった頃だった。
    だから音がすごくうるさく聞こえる。その日の夜中の2時過ぎに、そのうるさい音が枕の隣で鳴り響いた。

    2005-09-15 04:33:00
  • 25:

    明日美

    「ハ…イ」

    私が寝ぼけた声で電話に出ると受話器の向こうから聞こえてきたのは今日会ったばかりの圭の声だった。

    「寝てた!?ごめん!マジでごめんね。じゃあ明日またかけるよ」

    2005-09-15 04:36:00
  • 26:

    明日美

    「大丈夫!寝かけてただけだし。どーしたの?」

    私は何故だか嘘をついた。思いっきり寝てたのに。圭の声を聞いて目が覚めてしまってた。

    「いや…特に用はなかったんだけど何してるかなと思って。一時間くらいかけようか携帯とにらめっこだったからさ。ずっと考えてるぐらいならかけちゃおーと思って」

    2005-09-15 04:41:00
  • 27:

    明日美

    「そーなんだぁ」

    私は少し嬉しかった。圭は暇だったからかもしれないけど、圭の言葉にドキドキしてる自分がいた。会ったばかりなのに…。

    「ねぇ、今日ね、圭くん言ってたでしょ?俺のこと知らない?って。あれって何だったの?ずっと気になってて」

    2005-09-15 04:45:00
  • 28:

    明日美

    「えっ?いいよその話は。俺がカッコ悪いし」

    「どーゆう意味?教えてくれなきゃ分かんないよ」

    「…マジで聞くの?うーん俺さ、芸能関係の事務所に所属してるんだよね。最近テレビにも出たりしてるんだけど。これでも若い女の子には知られてるはずなんだけどさ」

    2005-09-15 04:50:00
  • 29:

    明日美

    「え?そうなの?じゃあ明日美かなり失礼だよね」

    「うん。でもあっちゃんは知らなかったでしょ?めちゃくちゃ普通に話してるしジュース買う時とか俺のことダルそうにしてたりさ。チョー新鮮!みたいな」

    「新鮮?」

    2005-09-15 04:54:00
  • 30:

    明日美

    「そう!チョー新鮮だったよ。人間って追われたら逃げたくなるけど逃げられたら追いたくなるって当たってるなぁと思った」

    圭は普通に話してた。私も圭が芸能界の人って分かっても何も思わなかったし、変わることもなかった。最初のイメージが普通だったからかな?
    電車で居眠りする普通の男の子。それが出会いだったから。

    2005-09-15 04:59:00
  • 31:

    名無しさん

    おもしろぃネ☆彡

    2005-09-15 05:01:00
  • 32:

    明日美

    圭と知り合って一ヶ月が経った頃、ふと立ち寄った本屋さんで圭を見た。

    本物の圭じゃなくて雑誌の中の圭を。

    初めて見た私は違和感を感じた。圭はスマイル顔。でも作ってる顔。本当に笑ってる時はもっと顔がクシャクシャになるのに…って。

    2005-09-15 05:10:00
  • 33:

    明日美

    すぐに帰るはずだったのに私は本屋に2時間近くいた。いろんな雑誌を見た。
    圭は本当に芸能人だった。私がただ知らなかっただけだった。
    こんなにすごいとは思ってなかった…。
    圭はいつも帽子を深くかぶってる。初めて会った時もそうだった。
    何故だか分かった気がした。圭は「芸能人」だから。

    2005-09-15 05:14:00
  • 34:

    明日美

    私は圭が写ってる雑誌を一冊買って家に帰った。圭へのインタビュー記事がのってあった。

    そして、妹がいる私は妹の部屋にそのページを開いて聞いてみた。

    「ねぇ琴美ぃ。この人知ってる?」

    2005-09-15 05:20:00
  • 35:

    明日美

    「知ってるよー。三嶋 圭超カッコイイよね。お姉ちゃんタイプなの?」

    「あ、あぁ…まぁね。ごめんね、それだけ」

    私はそれだけ聞いて琴美の部屋からすぐ出た。…琴美も知ってたんだ…。びっくりした。

    2005-09-15 05:24:00
  • 36:

    明日美

    私はその時初めて圭を遠く感じた。やっぱり違う世界の人なんだって。

    毎日電話で話す圭、会った時はしゃいでる圭、モノマネして笑わせてくれる三枚目キャラの圭。

    でも私が知らなかった圭はカッコイイ人気者な芸能人。そう考えれば考えるほど、どんどん怖くなった。

    2005-09-15 05:29:00
  • 37:

    明日美

    >>1-38

    今日は終わりです。お疲れ様でした。

    2005-09-15 05:31:00
  • 38:

    名無しさん

    ?

    2005-09-15 07:45:00
  • 39:

    名無しさん

     

    2005-09-15 22:23:00
  • 40:

    名無しさん

    ぉもしろぃ?実話ですか?

    2005-09-15 22:56:00
  • 41:

    名無しさん

    2005-09-17 19:27:00
  • 42:

    名無しさん

    名前なんで明日美なん? 昨日美ゎぁかんの?
    今日美ゎ?なぁ?なぁ?

    2005-09-17 19:29:00
  • 43:

    名無しさん

    昨日美ちゃん今読みました?かなりぉもろぃですッッ

    2005-09-17 19:30:00
  • 44:

    明日美

    こんばんわ?明日美って変なのかな?まぁ今更名前をかえるのもややこしいし、このままでいきます?
    今日も頑張って更新しています?

    2005-09-18 00:08:00
  • 45:

    明日美

    でも遅かった。気付かないうちにもう私の気持ちは動いてしまってた。
    圭のこと…好きになりかけてる自分がいた。

    住む世界も違うのに…馬鹿みたいだった。
    私は雑誌の中の圭を見れなくて圭が写っているページをそっと閉じた。

    2005-09-18 00:18:00
  • 46:

    明日美

    圭は「芸能人」。そう思えば思うほど圭との距離を感じた私は自分の気持ちを押し殺した。

    見えない距離がとても大きくて…見えない世界がとても怖かった。
    圭のこと知らないままならただテレビで見るだけの存在だったのに。何で出会ってしまったんだろう…。
    何の意味ももたないのに。

    2005-09-18 00:32:00
  • 47:

    明日美

    「明日美どうしたの?」

    ママに聞かれてハッとした。食事中だというのに圭のことで頭がいっぱいだった私は箸を持ったままボーっとしていたのだ。

    「なんでもない」

    2005-09-18 05:31:00
  • 48:

    明日美

    私はそう言うと焦りながら急いで食事して自分の部屋に戻った。

    ママは心配そうな顔をしてた。自分でも分からなかった。何でこんなに落ち着かないのか。何でこんなに頭の中がいっぱいなのか。

    2005-09-18 05:33:00
  • 49:

    明日美

    その時いつもの三和音の着メロが鳴った。発信元は…圭だった。

    「もしもし」

    「もしもし?圭だけど。あっちゃん何してるの?」

    2005-09-18 05:36:00
  • 50:

    明日美

    圭の声はいつもと変わらないまま。少しかすれたハスキーな声で私に話し掛けてくる。

    「家でボーっとしてたよ」

    「そーなんだ。じゃあさ、今から会えない?っつーかもう向かってるんだけど」

    2005-09-18 05:38:00
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