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  • 1:

    名無しさん


    通り抜けた風が
    肌を突き刺し…
    思わず目を閉じた。

    2005-11-29 10:03:00
  • 2:

    名無しさん

    足早に駅へと急ぐ、
    サラリーマン。
    見てるだけで痛そうな、細いヒールの靴で颯爽と歩くOL達。
    見慣れた朝の光景。

    白くなった息を一度吐き、私はバッグから携帯を取り出した。 メールBOXを開きその名前を見つけると、昨夜 受信したメールに、かじかむ指でメールを打つ。

    『ごめん。疲れて寝てた。仕事、行ってくるね。亮佑も頑張って。』

    それだけ打つと、携帯を閉じて、もう一度バッグの中にしまい込んだ。

    どうせ返信は来ない。

    2005-11-29 10:13:00
  • 3:

    名無しさん


    連絡が、いや、相手への感情がこんなにも淡泊になってしまったのは、一年半付き合っていれば、仕方ないといえば仕方ないのかもされない。

    だけど私は、忘れかけそうな感覚を…今年も一年が終わりかける中、思い出そうとするので 必死だった。

    2005-11-29 10:22:00
  • 4:

    名無しさん



    『何、食べたい?』
    運転席の亮佑が、ハンドル片手に私に尋ねる。
    『えっ、何でも…』
    出会ってから初めての二人きりでの食事で、私は緊張していた。
    『何でもか〜。俺、この辺知らへんからなぁ。』
    亮佑が困ったように、苦笑う。

    2005-11-29 10:29:00
  • 5:

    名無しさん


    『ん〜じゃあ、この辺にさっ雰囲気良くて軽く飲める店ある?』
    亮佑が、気を使うように尋ねる。
    飲める店かぁ…。飲めるって、やっぱ居酒屋系?
    どっかあったっけな…。

    『あ…【つぼ八】なら。』

    そういえば、近くに【とりどーる】もあったよな。
    『あと、とり…』
    思い出した事を言い掛ける前に、亮佑が言った。

    2005-11-29 10:33:00
  • 6:

    名無しさん

    「あははっ。いいやん、【つぼ八】!俺、イタリアンとかフレンチとか絶対そっち系言われると思ってたわぁ☆」

    げっ………

    飲める店って、そっちやったんや…。

    2005-11-29 10:35:00
  • 7:

    名無しさん

    『ご、ごめん…』
    なんとなく恥をかいた気分で、思わず謝ってしまった。
    「えっ、何で謝るん!?俺も、居酒屋のんが好きやで。女の子って、イタリアンとかそういうのん好きそう〜って勝手に思ってたからさ。俺、普段行かへんから、内心どうしよ〜ってヒヤヒヤやったわ。」
    こっちを向き、亮佑が笑顔で言う。

    2005-11-29 10:37:00
  • 8:

    名無しさん


    『そうなんや…。全く雰囲気ないやんなぁ。』
    初めてのデートで居酒屋って…
    しかも、【つぼ八】て……↓↓
    確実、女の子っぽくないって思われたやろな。
    自分の発想に、少し後悔した。

    2005-11-29 10:40:00
  • 9:

    名無しさん

    「いやいや、【つぼ八】やで?ありまくりっしょ☆」

    ニコニコしながらそう言って亮佑は、道を尋ねてきたので、とりあえず私発案の【つぼ八】に向かった。

    2005-11-29 10:42:00
  • 10:

    名無しさん


    〈お飲物、お先にお伺いしま〜す!〉

    威勢のいい店員さんが、伝票を片手に尋ねた。
    「俺は、とりあえず生やな。何飲む?」
    あたしも、とりあえず…
    『じゃあ、同じで…』
    居酒屋と言えば生中。

    「じゃ、生二つ。」
    亮佑の注文に、店員さんは〈かしこまりました〜!すぐにお持ち致します!〉
    と、またまた威勢良くテーブルを後にした。

    2005-11-29 10:51:00
  • 11:

    名無しさん


    「お疲れぇーっす!」
    カチャンッ 
    適当に料理の注文を済ました私達は、とりあえず乾杯をした。

    「はぁ〜!やっぱ働いた後のビールは格別やなっ」
    ジョッキの三分の一くらい飲み干した亮佑が、ご機嫌に言う。
    『確かにね〜!』
    私も、苦手な炭酸に苦戦しながら、冷えきったビールを喉に流し込む。

    2005-11-29 10:59:00
  • 12:

    名無しさん


    「ところでさ…」 
    つきだしの冷奴に箸を運ばせながら、亮佑が改まって言う。
    「ミナ、彼氏とは、うまくいってんの?」

    そう聞かれて、私は少し戸惑った。
    その頃、私には仕事先で知り合い…四か月ほど付き合っていた彼氏がいた。

    2005-11-29 11:12:00
  • 13:

    名無しさん

    だけど、はっきり言って彼氏とはうまくいってなかった。
    というより…私が勝手に冷め切っていた。
    社会人暦の長い私に、学生の彼氏は、色々な面で無理があった。

    2005-11-29 11:15:00
  • 14:

    名無しさん


    『いや、微妙やで。ってか別れたい。』
    冷奴に醤油をかけながら思わず、本音が出る。

    「そっか〜。まぁ、マキからちらっとは聞いてたんやけどな。」
    亮佑が軽くフォローするように言う。

    【マキ】というのは、私の親友。もう、付き合って6年くらいになる。亮佑と知り合ったのも、お互いが仲の良かった【マキ】を通じてだった。

    2005-11-29 11:21:00
  • 15:

    名無しさん

    親友のマキには、何から何まで話していたので、私と彼氏との今の状況も、悩んでいる事も、細かに知っていた。 
    だから、亮佑を紹介してくれたのかも知れない…。

    2005-11-29 11:24:00
  • 16:

    名無しさん

    『そういう亮佑クンは、うまくいってるん?』

    話をすり替えるように亮佑に問い掛ける。

    「あー…」
    私の質問に、困ったような顔で苦笑う。
    「俺も、微妙やで。」
    それだけ言って、亮佑はジョッキの残りの三分の二を飲み干した。

    マキから聞いていた。この頃、亮佑にも彼女がいた。写真も見してもらったが、肌が白く、小柄で可愛らしい女の子だった。

    2005-11-29 11:32:00
  • 17:

    名無しさん

    「まぁ、俺は今、気になってる子がおるから。その子をもっと知ってから、自分の気持ちに整理つけたいと思ってるけどな。」

    そう言った亮佑は、こっちを見て少し笑った。

    『そっか。』
    私も、つられて笑顔になってしまったが、それは亮佑の《気になってる子》がたぶん【私】なんだと、心のどこかで気付いてたからなんだろう。

    2005-11-29 11:38:00
  • 18:

    名無しさん

    その後、たわいもない話をしながら飲んで、亮佑の「二次会二次会〜♪」という妙なノリで何時間かカラオケに行ってから、帰った。

    2005-11-29 11:40:00
  • 19:

    名無しさん


    その日を境に、メール、電話のやり取りも前以上に増えて、見た目とギャップのあるマメな亮佑に、だんだん魅かれていく自分がいた。

    2005-11-29 11:44:00
  • 20:

    名無しさん

    何度か、二人きりで遊んで出会ってから、二ヵ月くらい経ったある日、亮佑からメールが来た。

    「彼女と別れた。本気でミナの事、好きやから、俺と付き合ってくれへん?」

    突然だったので、驚いたけど、素直に嬉しかった。
    私も、彼氏とは別れてしまっていて、気になっていた亮佑からの告白に、断る理由なんて無くもちろんOKした。

    2005-11-29 11:54:00
  • 21:

    名無しさん

    『あたしで良かったら。』


    晴れて【恋人同士】になった私達。マキも祝福してくれて、大人数で遊んだり、二人きりで遠出したり本当に楽しかった。

    2005-11-29 11:58:00
  • 22:

    名無しさん


    付き合ってから数週間が経ち、明日はバレンタインデーだった。
    付き合いたての彼氏との、初めてのイベント♪という事で、私は朝から気合いが入っていた。
    今日の夜から、亮佑に会う予定だったので一日早いプレゼントにしようと思い、慣れない手つきで一生懸命ケーキを作った。

    2005-11-29 12:03:00
  • 23:

    名無しさん

    「ちょっと、焦げたけど…まぁいっか。気持ちやん。気持ち!」
    ガトーショコラにしては、ちょっと色が木炭に近い気がしたが、変な一人納得で包装だけは、思いっきり可愛くした。

    夜に二時間かけて亮佑が迎えに来てくれて、またまた二時間かけて…渋滞に巻き込まれながらも、亮佑の家に向かった。

    2005-11-29 12:09:00
  • 24:

    名無しさん

    家の近くで食事を済ませてから、家に着くと二人でテレビを見ながら、たわいもない話をしていた。
    『なぁなぁ、外、雪積もらへんの〜?』
    雪が見れると思って期待していた私は、いじけるように言った。
    「雪な〜。もう2月やからな。ピークは12月末〜1月やで。車動かんくらいめっちゃ積もってたわ。」
    亮佑は、長めのタバコに火を点けながら言い、部屋の隅にあったヒーターのスイッチを入れた。

    2005-11-29 12:17:00
  • 25:

    名無しさん

    『なぁ〜んや。ざぁ〜んねんっ。』
    膨れっ面で言う私を見て、
    「来年は、ホワイトクリスマス一緒に過ごそうな。」
    と、亮佑は私の頭をポンポンと撫でて優しく言った。
    『うん…』
    ドキっとした。

    2005-11-29 12:22:00
  • 26:

    名無しさん



    ヒーターで体が暖まってきた頃、ふとガトーショコラの存在を思い出して、『あ!』と叫んだ私は、急いで紙袋の中から中身とは似つかわない可愛い箱を取り出した。

    2005-11-29 12:26:00
  • 27:

    名無しさん

    『これなぁ、作ってん!』
    キョトンとする亮佑に、私は変に自信満々に言う。
    「え、マジで?…俺に?」
    亮佑は、やっと状況を飲み込んで、驚きを隠せない表情で聞いた。
    『うん、バレンタインやから。ケーキやねん。食べてくれる?』
    私が言うと、亮佑は「もちろんやん!」と言って箱を丁寧に開けた。

    2005-11-29 12:30:00
  • 28:

    名無しさん

    中から、木炭の固まりが。いやいや、美味しそうなガトーショコラが見えた。

    『ちょっと、焦げてんけど…』
    私がそう言うと、
    「めっちゃ旨そうやん!食べていい?」
    と、亮佑はフォークを走って取りに行き、三口分くらい一気に口に入れた。

    2005-11-29 12:34:00
  • 29:

    名無しさん

    口を動かす間、私が不安そうに眺めていると…
    「コレマジうまい!!ミナって、パティシェ!?」
    亮佑は、目をキラキラさせて言った。
    『え、マジで?』
    パティシェは、明らかに言い過ぎだろ、と思ったけど、私も一口食べてみると、見た目よりも焦げ臭い味はなく、初めて作ったにしたらガトーショコラっぽくなっていった。

    2005-11-29 12:38:00
  • 30:

    名無しさん

    喜ぶ亮佑の姿を見て、私も嬉しかった。
    「真剣、嬉しいわ。ほんまに、ありがとうな!」
    と言う亮佑に、私が笑顔で『どういたしまして』と言うと、亮佑は、私の目を見て優しく微笑んだ。


    「ミナ、好きやわ。」

    2005-11-29 12:42:00
  • 31:

    名無しさん

    「お前の事、ほんまに好きや。」


    突然、そんな事を言われて私は、照れる間もなくポカンとしていた。

    『…ぇ!急にどうしたんよ〜!』
    照れ隠しのようにそう言うと、亮佑は座っていたベッドから降りて、ゆっくり私を抱き締めた。

    2005-11-29 12:47:00
  • 32:

    名無しさん

    『りょ…すけ?』

    ヒーターの熱のせいか、今この状況のせいか、私の体は熱をしっかり帯びていた。
    「ミナ、ずっと俺の傍におってや。」
    そう言う亮佑の声は、少し震えていた 気がした。

    2005-11-29 12:50:00
  • 33:

    名無しさん

    亮佑の顔が近づく。

    私達は、初めてのキスをした。

    初めは、軽くお互い遠慮がちに…。
    二回目は、少し長めに。
    三回目は、お互い何かを振り払うように…
    激しくキスをした。

    2005-11-29 12:55:00
  • 34:

    名無しさん

    『んっ…』

    亮佑の腕が腰に巻き付き、私も腕を亮佑の首に回す。
    私達は、そのままベッドに倒れこんだ。

    2005-11-29 12:59:00
  • 35:

    なんか、略ばっかりでほんと読みにくくてすみません。

    2005-11-29 13:06:00
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