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東京、曇のち雨、晴れ

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  • 1:

    ■「ねぇ、リョウはさぁなんでホストになろうと思ったの?」「全部捨ててこの街にかけたんだ俺は。」あの頃 愛がほしかったんじゃなかった 地元で失ったもの全部取り返そうとして この街に身を捨てた。歌舞伎町には俺が欲しかったもの全部あるんだと思った。 だけどどうしてだろう。また、どんどん全てが消えていっている気がする。あの頃の友情も、思い出も、なにもかもが酒と金、嘘に色を染めていく。見えない明日なら、ないものと同じ。だけど、戻れない過去にすがり続けるなら、見えない明日を信じて、生きていくしかない。

    2006-03-26 22:22:00
  • 11:

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    悩んでる暇があったらさっさと告白しろとも思ったし、毎度のように「好きなんだよなぁ」と聞かされるのも飽きてきて(と、いうかうっとうしくて)、適当に聞き流してるだけだった。ある時ワタルは告白する!と意気込み、「おおがんばれ」と俺は本当に適当に答えた。まぁ告白すれば今のように何時間も恋愛相談を受けなくてすむ..俺は正直ほっとしていた。2時間後、「フラれた」という泣きそうな声の結果報告の電話がかかってきた。俺はその時ゲームをしていて、コントローラーを片手に「ああ、そう」と短くつぶやいた。

    2006-03-26 22:36:00
  • 12:

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    すると、ワタルは恋愛相談のときから適当な態度だった俺に対して、明るい声で、言った。「でも、ミズキが真剣に相談に乗ってくれてうれしかった。マジありがとうな!フラれたけど、お前が色々聞いてくれたりして、本当によかったよ。本当にありがとうな!後悔してないよ、俺。今まで聞いてくれたお前には申し訳ないけどな。」俺は驚いた。けしてワタルは嫌味でそう言ったのではない。真剣に俺が、ワタルの相談に乗っていたとワタルは思い込んでいたのだ。その瞬間、すごく強い罪悪感に包まれた。

    2006-03-26 22:38:00
  • 13:

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    「ありがとなミズキ、ずっと友達でいてな!美形でクールな少女漫画のヒーローみたいなお前と違って・・俺はあほでパっとしねーうるさい奴だけどさっ末永く仲良くしてな!」そういうと電話は切れた。ワタルっていう人間はなんてすごいんだろうと思った。適当に友情してた俺に対して、ワタルは全力で俺にぶつかってきて、俺を100%信頼して、俺にあんな長い恋愛相談をしてきたのだ。あいつは今失恋して辛いはずなのに俺に気を使って、聞いてくれてたお前に悪いな、とまで言ったのだ。

    2006-03-26 22:39:00
  • 14:

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    ひぃさんありがとうございます^^

    2006-03-26 22:41:00
  • 15:

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    「でも、ワタル、お前、昔小学校の先生になりたいっていってなかったっけ?」「あーお前よく覚えてたな!」確かワタルは中学の卒業アルバムか何かで、学校の先生になってサッカーを小さな子に教えたい!とかなんとか書いてた記憶があった。「でもさぁ俺バカだしセンセなんかにゃなれねぇなぁって最近思ってさぁ」ワタルは笑う。「んなことねぇよ。今から勉強したって遅くねぇだろ?お前頭いいんだけど集中力がねぇだけなんだから、落ち着いてやれば今からでも成績は大丈夫だよ」俺がつぶやくと、ワタルは驚いたような顔で俺を見る。「なんだよ」「いや、俺、ミズキに初めて励まされたなぁとおもって」

    2006-03-26 23:10:00
  • 16:

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    「励ましてねぇよ別に、本当に思ったこといったんだよ」俺の言葉に、また、ワタルは目を白黒させる。「そうだとしたら、もっと嬉しいじゃねぇかよ。お前ずっとクールボーイだから、俺、ミズキが俺のこと友達だと思ってくれてないのかなとかたまに心配でさ。でも、今ので、吹っ飛んだよ。すげぇ嬉しい!今からでも、勉強、頑張ってみるよ」ワタルはニコっと白い歯を見せて微笑んだ。嬉しいのはこっちだよ。俺は心の中でつぶやく。嬉しいだとか、友達だとか、そんな恥ずかしい言葉、堂々と伝えてくるワタルは、本当にすごいと思う。

    2006-03-26 23:12:00
  • 17:

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    卒業したって俺達の友情は続くよな。本当はそうワタルに伝えたかったけど、俺は口に出せなかった。「あの、ミズキくん!」その瞬間、女子生徒が俺の前にやってくる。「まぁまぁ可愛いじゃん」ワタルが小さくつぶやく。うるせーよお前は、俺がワタルを軽くドツくとワタルは笑う。「あの、私、1年の時からずっとミズキくんが気になってて・・」「それはありがとう」俺が微笑むと、女は顔を赤くした。「あの、これ、よかったら食べてくださいっ!」俺に小さな箱を押し付けると、女は逃げるように去っていた。

    2006-03-26 23:13:00
  • 18:

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    「すげぇ、ミズキ!あいつ、なんちゃらアユミって子だよ!鈴木・・田中・・あっ、田村だ、田村アユミ!テニス部!学年では3番目くらいに可愛い子!」「ワタル・・お前相変わらずそういうことは詳しいな」「中開けてみろよ!」ワタルは俺の背中を押す。「興味ねぇもん」「えっじゃあそれどうするんだよ」ワタルは女の置いていった、ピンク色の箱を手に持つ。甘い匂いがする。手作りのお菓子か何かだろう。

    2006-03-26 23:13:00
  • 19:

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    「捨てる」「はぁ!?お前モテるからってバチあたりだなー。さっきはありがとうなんて微笑んでたくせにさ。」「人にモノもらったらありがとうっていうのが普通だろ?その後どーするかは俺の勝手―」ミズキがそういうと、ワタルはうわぁひでぇと声を低くする。「そうだ、ミズキ、お前はイケメンだし、卒業したら売れっ子ホストだな!そしたら俺の世話、みてくれよな!女騙しまくれっ!」「ほめてねぇよ」「怒るなって、冗談だよ」笑い声が教室に響く

    2006-03-26 23:14:00
  • 20:

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    なぁ卒業から1年経った今でも俺は、この街でワタルの笑い声がたまに聞こえる時があるよ。あの頃いった「売れっ子ホストだな!」っていうお前の冗談が、まさか現実になるなんて、思いもしなかった。人は、何かを失うから何かを得るんだっていうよな。だけど、俺はお前との友情を失ったあの日から、お前以上に信じられる「何か」が見つけられないでいる。

    2006-03-26 23:15:00
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