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東京、曇のち雨、晴れ

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  • 1:

    ■「ねぇ、リョウはさぁなんでホストになろうと思ったの?」「全部捨ててこの街にかけたんだ俺は。」あの頃 愛がほしかったんじゃなかった 地元で失ったもの全部取り返そうとして この街に身を捨てた。歌舞伎町には俺が欲しかったもの全部あるんだと思った。 だけどどうしてだろう。また、どんどん全てが消えていっている気がする。あの頃の友情も、思い出も、なにもかもが酒と金、嘘に色を染めていく。見えない明日なら、ないものと同じ。だけど、戻れない過去にすがり続けるなら、見えない明日を信じて、生きていくしかない。

    2006-03-26 22:22:00
  • 44:

    ■俺はその足で、ワタルの家へと走った。家に行ってどうするとか全く考えていなかったけど、とにかくワタルの様子が心配だった。息を切らしてチャイムを鳴らした俺を出迎えたワタルの表情は、いつもと全く変わらず「風邪ひいてると思った?俺が風邪ひくわけねぇじゃんーなんかだるくてさぁやすんじまっただけ!入れよ!」と笑いながら俺を部屋に招きいれた。

    2006-03-28 23:26:00
  • 45:

    久しぶりに入ったワタルの部屋は、前と変わって「受験部屋」と化していた。参考書が積まれた机は消しゴムのカスがたまっていた。そういえばワタルは髪の毛の色も、派手なメッシュから薄い茶色に変わっているし、耳にピアスもなくなっている。大学合格する、という、ワタルの気持ちからなのだろうか。

    2006-03-28 23:27:00
  • 46:

    「お前いきなり休むから受験疲れかって田中も心配してて」なんだか気まずかった。俺はうつむいたままつぶやいた。俺はまだ、藤堂とのことを知らないってことになってるんだ。変にする必要はないんだ。何度も言い聞かせる。「そっかそっか、心配してくれてありがとなぁ」ワタルは微笑む。少し沈黙が流れると、ワタルは口を開ける。「俺さ、すげぇミズキに憧れてた。お前顔も小さいしすげぇ男前だし、中学の時声かけたのだって、かっこいいしこいつといれば女のおこぼれくるかもーなんて考えててさぁ」ワタルは笑う。

    2006-03-28 23:28:00
  • 47:

    「でも、俺とお前は違う人間だし、どう願ったってどう意識したって俺はお前にはなれないし。聞いたんだろ?誰かに。藤堂にフラれたこと。めんどくさがりのお前がこーして何も考えずに息切らして俺んちまで来たってことはさ」さすがワタルだ。全部隠しても全部お見通し。こいつに嘘はつけない。

    2006-03-28 23:29:00
  • 48:

    「ああ・・偶然聞いた」「ミズキ、もーやだなお前、変な気つかうなよー!」ガハハといつものようにワタルは笑うと、低い声でつぶやく。「あのなぁ・・中学2年のときのこと。お前覚えてる?俺がいつも相談してたじゃん。電話で告ってさ。まぁふられたんだけど。」「ああ」あの時のことなら明確に覚えてる。俺はあの出来事を忘れないだろうから。

    2006-03-28 23:30:00
  • 49:

    「中2のとき、ふられた理由さ、話したっけ?」「いや、聞いてない。あの時お前が一方的に切ったから」「ああ、そうだっけな。」またしばらく沈黙すると、ワタルはつぶやく。「あいつも、お前のこと好きだったんだよ」ワタルの言葉に一瞬耳を疑う。固まる俺を見て、ワタルは続ける。「ミズキくんのことが好きだからって、あの時もそういわれたんだよ」

    2006-03-28 23:31:00
  • 50:

    ・・・知らなかった。中学の時の女も、俺が原因・・。「いっつもミズキは俺の大事なもの、横からとってく。女にしろ、成績にしろ、スポーツにしろ。お前がいる限り俺はずーっとお前の、影みたいな存在だ。お前は俺の欲しいもの全部もってる」ワタルは、どんどん強い口調になる。

    2006-03-28 23:32:00
  • 51:

    俺は顔をあげ「俺はお前のこと友達だと思ってる」とつぶやくと、俺の言葉をさえぎるように、「俺はずっと、お前が憎くてしかたなかった。俺はずっとお前になりたかった」とワタルはつぶやいた。「もう帰れよ!!人の気持ちもわかんねぇような王子様にはもううんざりだよ!!」ワタルの声に背中を押されるまま、俺はワタルの部屋を出る。

    2006-03-28 23:32:00
  • 52:

    足が震える。頭の中がグチャグチャになる。俺達の歴史が、音をたてて崩れていく。あんなに月日をかけて積み上げてきたもの全てが、今、たった一瞬で..壊れていく。

    2006-03-28 23:33:00
  • 53:

    「願ったって 祈ったって どれだけ憧れたって 自分が誰かになるのは無理 だから 俺は 俺を大事にしたいんだ」 いつかお前そういったよな。じゃあなんだよ俺になりたいって。俺だって願ってた。お前みたいになりたいって願ってたのにー・・・・・。

    2006-03-28 23:34:00
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