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大阪心中24時50分

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  • 1:

    NN

    携帯電話ってものが存在してるのに 人と人の距離は全く埋まりそうにない それどころか日々遠のいているような感覚にさえなる どうしてだろう どうして携帯電話ひとつでここまでひどく憂鬱な気持ちになるのだろう 寂しい夜は 電話で声が聞きたいんじゃない 抱きしめたいんだと 強く思った

    2005-12-16 15:49:00
  • 111:

    NN

    ◆シュナの電話から1時間経った頃、玄関のチャイムが鳴る。少しウトウトしている最中だった。あたしは、ドアを開ける。「大丈夫!?ごめん起こした!?」血相を変えたゆうちゃんがチェーン越しに見える。本当に来てくれたんだ..あたしはチェーンをはずす。来ないって疑ってたわけじゃないけど、何だか驚きだ。「何か風邪に何がいいかってわからなくって適当に買ったんだけど」急いで走ってきたのだろうか、白いゆうちゃんの肌がほのかに赤くなっている。あたしにスーパーの袋を渡す。ヨーグルト、りんご、バナナ、風邪薬、カイロ。無造作に詰め込まれた『風邪に効くもの』用品にあたしは少し笑う。ゆうちゃんなりに何を買っていいかわからないのかわからなくって、とにかく何でも詰め込んだのだろう。

    2005-12-22 00:16:00
  • 112:

    NN

    「ジュリちゃんて、昼間何してるん?」ゆうちゃんが寝転ぶあたしを見てつぶやく。心臓が音を立てる。何も怪しまずに聞いているの?あたしが風俗嬢とここで言ったらあなたはどうするの?どうするの?あたしはまた嘘をつくの?ねぇいいの?言ってもいいの?「昼間は..事務してるわ。ちっさい会社で..」あたしはそう言うだけで精一杯だった。声が震える。「大丈夫?」ゆうちゃんがあたしの手を握る。

    2005-12-22 00:19:00
  • 113:

    NN

    大丈夫..そうつぶやいた瞬間、あたしの唇にゆうちゃんの唇が重なる。やわらかい、あたたかい。甘い感触に骨までとろけそうになる。たった数秒のキスが胸を焦がす。ゆうちゃんのキスはかすかに昼間の太陽の匂いがした。「ごめん、いきなり」顔を赤らめるゆうちゃんにあたしが笑う。「一緒に寝えへん。風邪うつさんようにするから」あたしはゆうちゃんをベットに入れる。「なんか照れるわ」とゆうちゃんが笑うと、2人で体を抱きしめあう。セックスのないベット。ただ抱きしめられるだけで、こんなに、体中があったかくなる..。

    2005-12-22 00:20:00
  • 114:

    NN

    「そういえば今日田村から電話あってん」何気ないゆうちゃんの一言で一気に夢心地から覚める。一番聞きたくない名前だ。「何て?」「いや今日学校こんのーって」本当にカムイはゆうちゃんがスキやな、と、心の中でつぶやく。男と一緒に寝てセックスがなかったのは初めてだった。今が続くように。今がずっと続きますように..何度も重ねるキスにそんな願いを一緒に重ねた。もう何も捨ててもいい。この人がくれる愛を、それだけを守って生きたい。

    2005-12-22 00:21:00
  • 115:

    NN

    ◆朝起きたらゆうちゃんの姿はなかった。あたしが起きないようにと静かに玄関を出ていったゆうちゃんの気持ちが嬉しかった。早く元気になってな。テーブルの上に残されたメモを見て、また少し微笑んだ。カーテンを開けると冬の朝の日差しが眩しい。9時。こんなに早起きしたのは初めてだ。あたしは買ったばかりの靴を箱から出し、玄関を出る。気持ちいい。今日は朝10時、夕方5時までの出勤。あたしは珍しくタクシーを使わず、店まで歩く。鳥が鳴いてたり、遅刻して急いで走ってる中学生の姿、店の前を掃除するおじいちゃん、片手に携帯を持って歩くサラリーマン。

    2005-12-22 00:22:00
  • 116:

    NN

    何だかあたしの知らない世界。すごく心地いい世界。優しい匂いがする。ゆうちゃんのぬくもりと同じ。早くあたしもこんな匂いが似合うような人間になるんだ。夜の匂いを残したままの繁華街に足早に足を入れる。酔っ払ったホストが道端に座り込んでる。日常茶飯事だ。あたしは大きなサングラスをかけたまま、コソコソ店に入る。入ろうとした瞬間、後ろから聞きなれた声が響く。

    2005-12-22 00:23:00
  • 117:

    NN

    「やから、ちょっと待てってば!」「離してぇやっ!!もーカムイなんか信じられんわっ!!」振り返ると金髪と茶髪メッシュ混ざり合った派手な髪型をした少しぽっちゃりした女の子の腕をカムイが引っ張っていた。あたしの存在に気がついてか、カムイは女の子の腕を離す。同時に女の子は繁華街の出口へと走り去ってしまった。「ごめん修羅場見ちゃった」あたしがつぶやく。「見物料もらおかなー」カムイは笑う。シャツのボタンがはだけまくって、足元がフラフラしている。お酒の匂いが鼻につく。

    2005-12-22 00:24:00
  • 118:

    NN

    「ジュリちゃん、今日早出なんや」カムイが路地に座り込む。朝の日差しの下で見るカムイは、いつもより少し幼く見えた。カムイはポケットからタバコを取り出す。「そうやで。朝から気分悪いもん見せてくれてありがとう。」あたしはカムイに背中を向け店へと続く階段を登る。「昨日さぁ西野ちゃんもジュリちゃんも休みやったけどデートしてたん?」あたしは振り返る。「そうやけど。」口から煙を吐き出し、カムイは笑う。そして腰を上げ階段をゆっくり登りあたしに視線を合わせると、また少し笑う。一瞬寒気がした。カムイの今気がついた笑顔って笑ってないんだ。目が全然、笑ってない。

    2005-12-22 00:25:00
  • 119:

    NN

    「俺も、結構、ジュリちゃんのこと、気になるんやけどな」は?あたしが驚いた表情をする。そのスキにカムイの酒にまみれたキスが唇を襲う。あたしは階段から力いっぱいカムイを跳ね飛ばす。「もう二度とあたしに触れんといて!!」あたしは声を上げる。何なんあいつ、一度といわずニ度も..あたしは力いっぱい店の扉を開ける。もう顔も見たくない。シュナが言ってた枕色恋ホストっていうの、間違いなさそうだ。仕事中も怒りがおさまらなくって、モチベーションが崩れる。イライラする。

    2005-12-22 00:26:00
  • 120:

    NN

    前にシュナの話にでてきた東京No1ホスト氷咲カオルは、約半年程前に店を飛んでいた。半年前発売された雑誌の中で微笑む氷咲カオルは、驚くほどカムイによく似ていた。ネット掲示板や、ホストの間でにわかに、氷咲カオルと田村カムイの兄弟説がささやかれていることを、あたしが知っているはずもなかった。いや、知るのはもう少し先の話だった。その中に隠されたカムイのやるせなさやセツナさも、全部。

    2005-12-22 00:28:00
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