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大阪心中24時50分
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1:
NN
携帯電話ってものが存在してるのに 人と人の距離は全く埋まりそうにない それどころか日々遠のいているような感覚にさえなる どうしてだろう どうして携帯電話ひとつでここまでひどく憂鬱な気持ちになるのだろう 寂しい夜は 電話で声が聞きたいんじゃない 抱きしめたいんだと 強く思った
2005-12-16 15:49:00 -
209:
NN
「あれカムイちゃう?」西野君がアーケードの入口を指差す。金髪に黒いジャケット..カムイだ。隣に歩いているのは..ピンクのファーのシュナだ。あたしは不意に西野君の腕を引っ張り逆方向を指差す。「ねぇあっちいこ。」カムイには会いたくなかった。「ジュリちゃんカムイ嫌いなん?あいつええ奴やで」ゆうちゃんがあたしの顔を覗きこむ。嫌いとかちゃうけど..苦手やねん、あたしは小さくつぶやく。
2006-01-01 21:12:00 -
210:
NN
夜の香りに誘惑されてこの街に流れ込んだ。夜には朝にはない何かあるんじゃないか、誰かあたしを必要だといってくれるんじゃないだろうか、そんなことを考えていたのだと思う。だけど朝の香りがこんなに愛しいものだとは知らなかった。夜には朝にはない「何か」が確かにあった。だけど、朝には夜にしかない「何か」があったのも、初めて知った気がしたよ。カムイもそれに気がついてた?あたしはゆうちゃんを愛した時初めて知ったことやったよ。
2006-01-01 21:13:00 -
211:
NN
「すごいこれいいと思わん?」ファッションビルの中で買い物をしていると、ゆうちゃんがショーケースの中で光るシルバーのネックレスを指差す。ロゴを見ると有名なアクセサリーブランドのものだ。「ほんまやなぁ可愛い!」あたしもショーケースに顔を近づける。すると、笑顔で店員さんがあたし達に近寄る。「よかったらお出ししましょうか」「あ、お願いします」あたしがうなずくと、店員さんはポケットから鍵を取り出しショーケースを開ける。「今日はいってきたばかりの新作なんですよ。一個一個職人の手作りで、大量生産もできなくて貴重なものなんですよ」
2006-01-01 21:14:00 -
212:
NN
店員さんが差し出したネックレスをあたしが受け取る。Silverのチェーンに大きめのクロス。確かにさすが職人芸のネックレス。繊細な感じがする。「カップルで付けてもすごくお似合いだと思いますよ」「へぇ」あたしがネックレスを見つめていると、ゆうちゃんも可愛いねとつぶやく。「ゆうちゃん一緒に買わへん?これ、一個いくらですか?」あたしがネックレスを片手に店員さんに声をかける。「15万8000円になりますね」「うわぁ安い」無意識にあたしは財布を取り出す。あ。一瞬心臓が凍る。恐る恐る振り返ると、案の定ゆうちゃんが驚いた顔をしている。
2006-01-01 21:15:00 -
213:
NN
冬の風が頬を通り抜ける帰り道、2人で手を繋いだ。この手があたしを照らしていてくれる。あたしを温めてくれてる。この世に生を受けて気がつけば18年経ってた。今、ようやく人間に生まれてきてよかったって心から思えた。犬の鳴き声、雪に埋もれてにごった色に変わる街、車のクラクション、冬の匂い、ゆうちゃんのぬくもり、キスした時の優しさ、全てこの体で感じていられることの喜びを知ったから。去年を過去に変えて、過去を空白で埋めて。
2006-01-01 21:17:00 -
214:
NN
その日あたしは家に帰るなりすぐにメイクを落としてベットに入った。今日は楽しかったね、そんなメールをゆうちゃんに送った。すると、隣の廊下からだろうか?ドン、ガン!!と鋭い音が響く。ヒールの音と、シルバーか何かがこすりあったような音も同時に響く。もしかして、シュナ酔っ払ってドアにぶつかってるんじゃ..あたしは駆け足で玄関まで走り、ドアを思いっきり開ける。「シュナ?」あたしが玄関のドアから顔をのぞかせると、「おージュリちゃん!」とカムイが苦笑いをする。横には酔っ払ったシュナが足元をフラフラさせながら、カムイに肩を抱かれている。
2006-01-01 21:18:00 -
215:
NN
「うわーじゅーりーたーん、おっはよーう!ってもう深夜アハハハ」シュナが大声で笑う。シュナ、声静かにしな。もう深夜だからみんなに迷惑やし..」あたしがそう言っても、シュナは「あへー」とか「くはは」とか奇声を放ったままだ。そういえばこの2人も今日デートしてたんやっけ..「ちょっち助けてくれへん?シュナ、今離すと廊下に顔つけて倒れ込むし」カムイがそう言うと、あたしは「わかった」とつぶやきシュナの右肩を持つ。そしてシュナのファーのポケットから鍵を取り出し、ドアを開ける。
2006-01-01 21:19:00 -
216:
NN
「じゃあな、シュナ、ちゃんと寝えや、おやすみ、な、寝や」「いやーキスしてくれないと眠れないっ」カムイの必死の『交渉』にシュナはいやいやいやっと首を振る。その姿はまるで小さい子供だ。「ええから、おやすみ」押し込むようにカムイはシュナをまら押し込む。玄関でしばらくシュナは何か言ってたけど、5分ぐらい経つと声が聞こえなくなった。酔って叫びすぎて疲れてしまい、玄関の前で寝てしまったようだ。あたしとカムイは同時にほっと胸をなでおろす。
2006-01-01 21:20:00 -
217:
NN
「ごめんなぁお世話かけて」カムイが笑う。そっか今日日曜なんだ。店外デートってやつか。「仕事やめるんやって?シュナから聞いた」カムイが白い壁にもたれかかる。本当に綺麗な目してる。この目に何人が地獄に落とされたのだろうか?「うんやめる。」「西野ちゃんのため?」「うん」他に理由もあるけど、と付け加えると、カムイは笑った。笑うと奥から見える八重歯が見える。「そうなんや。」「カムイはホスト続けるん?」「続けるで。死ぬまで」どこまで本気で答えてくれてるんだろう。カムイの言葉は何だか恐くなるときがある。「死んだって天国なんてないんちゃうかな」「だとしてもこの世にいるよりええよ」笑って軽く手を振り、カムイはあたしに背を向けた。
2006-01-01 21:21:00 -
218:
NN
どうしてそう生き急ぐ?どうして?大嫌いだったはずのあいつがあの日見せた一度の涙が忘れられないのはどうして?今でもそれがわからない。早く朝が来るといい。早くこの体に、この瞳の中に光を照らして。
2006-01-01 21:22:00