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大阪心中24時50分

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  • 1:

    NN

    携帯電話ってものが存在してるのに 人と人の距離は全く埋まりそうにない それどころか日々遠のいているような感覚にさえなる どうしてだろう どうして携帯電話ひとつでここまでひどく憂鬱な気持ちになるのだろう 寂しい夜は 電話で声が聞きたいんじゃない 抱きしめたいんだと 強く思った

    2005-12-16 15:49:00
  • 269:

    NN

    「カムイもこんな時間にブラっとしてていいん?」あたしは時計を見る。深夜1時半。ホストにとっては『営業時間』のど真ん中。「店おったら苦しくなって黙って出てきてしまったわ」まるで他人事のようにカムイはニコっと笑った。「苦しくなった?」あたしが聞き返すとカムイはまた、笑った。ただ少し悲しそうな顔でつぶやく。「ジュリちゃん時間ある?」あたしは小さく、うなずいた。

    2006-01-10 00:16:00
  • 270:

    NN

    ◆空は星屑さえ見えない。冬だからか、街の人々の足の早さは、いつにも増して早い。きっと誰も他人のことなんて気にもとめていないだろう。ゴミだらけの街のランプが点滅していた。「ここ。」カムイに腕を惹かれて辿り着いたのは、繁華街を少し抜けて北に歩いた場所にあった。廃棄工場だ。鍵は無防備に開けっ放しのままで、薄暗くなったビルの中に灰色がかった汚いエレベーターの中は真っ暗。「階段使うで」カムイはあたしに背を向ける。無言で階段を登り続けると、屋上に出た。「すごい!」あたしは息を呑む。屋上から見るとこんなに空が近い。

    2006-01-10 00:18:00
  • 271:

    NN

    見渡せば繁華街がすぐ傍に見える。だけど街の汚いゴミは光ったままだった。あんなに街が点滅してれば、空に光る星の色も見えなくなるよ。見たくなくなるよ。「今日みたいにこんな大都会がずっと寒かったとして―・・・そんな冬が続けば俺らが死んでいても誰も気がつかないやろうな」カムイは軽く笑った。「そーやね。あたしだって、自分が死んだこと気がつかないかもしれへんし」あたしもまた笑った。

    2006-01-10 00:18:00
  • 272:

    NN

    「結局、カムイはカムイ、カオルはカオル、みたいな、こう、諦めみたいなんがみんなから聞こえるねん。それがすごく嫌で、絶対勝ち上がるって思った。それで一回客に枕をもちかけたら…これが大ヒット、枕営業すればするほど成績あがって」いつかシュナがいってた。カムイは枕ホストって。あたしは無言でうなずく。「でも客とやればやるほど、客に対して、愛情っていうか、そういうものがどんどんなくなる。」カムイはフェンスに手を置く。「ジュリちゃん、人を愛するっていうんは、人間の一生の課題なんかもしれんね」

    2006-01-10 00:24:00
  • 273:

    NN

    風が頬にすれて寒い。吐息が白く染まる。真っ黒な空の下で、あたしとカムイの息だけが白く染まる。「雪だ」あたしは空を見上げる。いつかゆうちゃんと見た雪が、今カムイが目の前に居て。あの時ピンクに見えた雪が、今、曇って見えるのはなんで?「やけど最近、神様がくれた課題の答えがわかったんや。『何度重ねるセックスより、今一瞬だけ触れることでいい』ってことを」カムイはあたしを抱きしめる。あたしの心臓が音をたてる。

    2006-01-10 00:26:00
  • 274:

    NN

    「あたし、あたし」あたしは顔を上げる。カムイにずっと言わなくちゃいけなかった言葉があるの。伝えたい言葉があったの。今までずっと隠してた。「あたし」その瞬間、携帯電話の着信音が鳴り響く。一瞬で現実に引き戻された気がする。画面を見ると『ゆうちゃん』の文字。あたしの表情を見てカムイは笑う。「戻ろか。西野ちゃんに怒られちゃうわな」カムイがあたしに背を向ける。あたしはカムイの背中を追うように歩く。電話は鳴ったまま。あたしは携帯をコートのポケットに押し込み、カムイの腕をそっとつかむ。カムイはそれに気がつき、「どうしたん」と振り返る。

    2006-01-10 00:27:00
  • 275:

    NN

    「あたし、カムイが、カムイがす」「それ以上言ったあかん」カムイはあたしの口を両手で押さえた。「あかんから」手は震えていた。恋愛より大事なモノが男には存在するんだって 誰かいつかいってた気がする。友情を守る。そんな決意がカムイの両手から伝わってきた。

    2006-01-10 00:27:00
  • 276:

    NN

    家に帰ると涙が溢れてきた。よく「恋愛はひとりでするものじゃなくふたりでするもの」っていう言葉がある。だけど時にそれが三人になってたり、一人になってたりする時だって、きっと、ある。カーテンを開ければ、太陽が浮かび上がっていた。ベランダをあけて、小さく深呼吸する。あたしはずるい。これからもゆうちゃんと付き合って行くのだと思う。過去を空白に変えて。消えない鎖を足にまとい。また歩けなくなって足元がふらついたらカムイを求めるの?違う。前を見るんだ。今度は、自分の足で歩いて、前を見るんだ。いつか、過去を嘘で埋め尽くさず、過去をありのまま話せる日が来ることを思って、生きるんだ。

    2006-01-10 00:29:00
  • 277:

    名無しさん

    2006-01-10 13:04:00
  • 278:

    名無しさん

    2006-01-10 18:25:00
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