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大阪心中24時50分
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1:
NN
携帯電話ってものが存在してるのに 人と人の距離は全く埋まりそうにない それどころか日々遠のいているような感覚にさえなる どうしてだろう どうして携帯電話ひとつでここまでひどく憂鬱な気持ちになるのだろう 寂しい夜は 電話で声が聞きたいんじゃない 抱きしめたいんだと 強く思った
2005-12-16 15:49:00 -
41:
NN
男子が集まりいっせいにバスケを始める。今日の1限は体育。いつもなら少し張り切る俺だけど、今日は夢心地で顔がニヤけたままだ。「今日から安藤さんが西野ちゃんの彼女かーうらやましいわ。あんなキレーな子。」右手にボールを抱え田村が笑う。「あっほんま色々協力してくれてありがとう」「ええってことやん、俺ら友達やん」よいっしょ、と、軽くジャンプし投げたボールはゴールにスッポリ入った。
2005-12-19 00:50:00 -
42:
NN
田村は男から見てもすげぇカッコイイし、うちの学校の女子にも一番人気だ。毎日違う女を連れて歩いていて、女をとった!とかなんとか上級生とよくトラブルになってるのを校内でも見る。やけど、いい意味でも悪い意味でも、どんな時にでも自分のスタイルを貫く正直な田村の姿が、羨ましくもあった。だけど安藤さんの横の席っていうのが、一番の羨ましいところだったわけやけど。
2005-12-19 00:51:00 -
43:
NN
◆男子が体育をしている時、女子は保健だった。ボケっと黒板を眺めていると、最後に彼氏がいたのはいつだろう。ふとそんなことを考えた。そういえばあたし、「ちゃんと」男の子と付き合った記憶が最近ない。処女を捨てたのは13の時。なんとなく同じ学校の年上と流れるようにセックスした。そのセックスには「愛」も「理由」も存在しなかった。そんなセックスをその男と繰り返してたら1年経ってた。恋人関係なんかじゃなかったと思う。今思えばセフレっていうのだろうか。かろうじて男の名前と顔はうっすら覚えてるけど、セックスに関しては何ひとつ記憶にない。触れ合った体の体温も、重ねあった唇の感触も、何ひとつ覚えてない。
2005-12-19 00:52:00 -
44:
NN
「あっ、あっ安藤さん、バイバイ!!今日、絶対電話するから!!」9時、下校しようとしたあたしに、西野君が手を振る。隣には田村とそのツレのヤンキーがいる。本当に西野君と田村君って仲いいんやなぁと思いつつ、派手な外見に中身も派手なイケイケ田村と、派手な外見にシャイでへたれな中身を持つナヨナヨ西野君は、中身は全くアンバランスで友達としてはいいバランスなのかもしれないと冷静に思った。一生懸命手を振る姿が何だか愛しく思えた。
2005-12-19 00:54:00 -
45:
NN
あたしは細い道に入るとすぐにタクシーを捕まえた。「今日は深夜から雪が降るんだって」と、タクシーの運転手がミラー越しにあたしを見る。「ほんまに?いややな、雪なんて。寒いし。」あたしは小さくつぶやきタバコに火をつけた。
2005-12-19 00:55:00 -
46:
NN
◆店に着けばあたしの「影」が目を覚ます。今あたしは風俗嬢ジュリ。風俗嬢.ジュリ。西野君や田村が知ってるじゅりじゃない。店に着くと一本目から「なぁ本番やらしてや」を連呼する客にあたりイライラした。だけどあたしだってそんな客は毎日見てる。うまくかわす。「いいやん、こんな仕事してるんやし、エッチ好きなんやろ?」断ると客は笑いながらあたしにそう吐き捨てた。こんなことはよくある。こんなかえされ方もある。今、あたしは「影」だ。負けそうなればあたしは何度だってそう言い聞かす。仕事。あたしは今、じゅりでなく「ジュリ」なんだから。傷ついちゃ駄目。あたしは自分でこの仕事を選び、今、自分の意思でこの仕事を続けているのだから、、、。
2005-12-19 00:56:00 -
47:
NN
あたしは仕事を終えると、店長から日給をもらう。「今日も人気者やったねジュリ!」店長が微笑む。あたしもつられて笑う。笑った、つもりだったけど、鏡にうつった自分が苦笑いになってたことに気がつかなかった。ボケっとしたまま、ロッカールームへ戻る。何となく気が重かった。壁に貼られている女の子のパネルを横目で見る。この中の女の子のどれだけが、このパネルの中で本当の笑顔を見せてるんだろう?あたしはこれからも人に嘘をつき続けるのだろうか?風俗を辞める日が来たとき、「過去」を「空白」にすりかえて…。
2005-12-19 00:57:00 -
48:
NN
近頃あたしは作り笑いだけがうまくなってしまった気がする。あたしは風俗で働いていたのは寂しいからじゃない。理由なんてなかった。なんとなく足を踏み入れた世界に溺れ、抜け出す勇気さえなかった。いつから「あきらめた」が口癖になってしまったんだろう。死に物狂いで戦ったことなんて一度とさえなかったくせに。結局、「あきらめた」って言葉は自分へのいいわけだ。ロッカールームに入ると、携帯で大声で話してる金髪の女の子と目が合った。ユウナだ。あたしと同期で、ユウナとは店で一番よく話す。「お疲れー」ユウナが携帯片手に小声でつぶやく。「おつかれ」あたしも小声でつぶやく。
2005-12-19 00:58:00 -
49:
NN
バックから携帯を取り出す。着信2件。ん?珍しい。あたしは画面を開ける。22時01分、0時05分。同じ番号から2回。自慢じゃないけど、あたしは電話もメールも全然使わない。携帯は時計がわりに使ってる状態だ。頻繁に連絡を取り合うような仲のいい友達もいない。あ、たまにユウナから電話がくるぐらいだ。着信のほとんどが店という寂しい携帯だ。それにしても近くて見たことのある番号..あたしは携帯の画面を凝視した後、リダイヤルを押す。3コールで電話は繋がる。「もしもし?」あたしは低い声でつぶやく。「もしもし!」あ。あたしはハッとする。西野君だ!これ、西野君の番号だ。あたしってば番号もらったまま携帯にも登録してなかった..画面を見ると時間は2時。一般的に真夜中..という時間だ。
2005-12-19 00:59:00 -
50:
NN
「ごめんね!?遅くに連絡して!寝てたやんな?」あたしが必死に謝ると「ううん、ううん、ぜんっぜん大丈夫やで、起きてたから、俺こそ何度も連絡してごめん!」と、逆に謝り返された。と、いうか西野君は「ぜんっぜん」が口癖なんだと気がついた。今日も何度か言ってた。あたしは携帯を握り締める。「電話してくれたのにごめんな。あの、寝てて..」とっさにあたしの口から嘘が出る。何してたの?も聞かれてないのに、いきなりいいわけ。あたしって本当にうそつきオンナ体質だ。
2005-12-19 01:01:00