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大阪心中24時50分

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  • 1:

    NN

    携帯電話ってものが存在してるのに 人と人の距離は全く埋まりそうにない それどころか日々遠のいているような感覚にさえなる どうしてだろう どうして携帯電話ひとつでここまでひどく憂鬱な気持ちになるのだろう 寂しい夜は 電話で声が聞きたいんじゃない 抱きしめたいんだと 強く思った

    2005-12-16 15:49:00
  • 59:

    NN

    嘘をつき続ける自分に嫌気がさしてるはずなのに、一向に嘘をやめられない自分は、結局嘘にまみれて動けなくなってるだけなのかな。5時を過ぎて学校の門近くにタクシーを止める。門の前に見覚えのあるシルエットを見つける。田村だ。あたしに気がついていないのか、門の前で茶色の派手な巻き髪の女の子とキスしてる。何だかすんごく気まずい。あたしは下を向いて足早に校門をくぐる。「ジュリちゃんおはよー」あたしに気がついた田村は満面の笑みであたしに声をかける。「あ、おはよ..」どっちが当事者かわかんない。あたしが何でこんな気まずい思いをしなくちゃいけないんだろう。あいさつをすませると、あたしは教室に急ぐ。

    2005-12-20 01:02:00
  • 60:

    NN

    授業開始を知らせるチャイムが鳴り響く。教室を見渡すとゆうちゃんはまだ来ていないようだ。「さっきはのぞき見してくれたなー」田村が笑いながらあたしの顔を覗き込む。「のぞき見じゃないわ。あんなとこでキスしてれば嫌でも見えるやん」あたしが顔を上げると、田村はそかそか、と笑う。きれいな八重歯。金髪の髪の毛にクッキリ大きい目。こりゃあ『モテ顔』だ。教室にはやる気のない顔した先生がやってくる。小さな声でボソボソと出欠を取る。「西野ちゃんまだ来てんのかーまた遅刻やなーあいつ。」「さっきの女の子彼女?」「気になるん?」何やねんほんっまコイツは..あたしは小さくため息をつく。

    2005-12-20 01:03:00
  • 61:

    NN

    「ホストみたいやね、田村くんて」「わかる?」は?配られたプリントが手から落ちる。「俺、ホストしとんねんーやっぱわかるー?」−ゲッ。ヤバイ。血の気が引く。ホストってことは風俗雑誌とか見てるのかもしれない。そこには毎週のように堂々と、あたしは顔出ししてる。「クラブヘブンって店やねんけど」コイツもしかしてあたしの正体を知ってる?心臓が音を立てる。「そうなんや」平然を装おうってことの難しさを知った。

    2005-12-20 01:05:00
  • 62:

    NN

    「よかったら来てや」そういってグッチの財布から、黒色をした名刺を出す。クラブ・へブン、田村カムイ。「本名でやってるん?」「そやで。」カムイ..そんな変な名前してたんだ。「何であたしに営業すんの?」言葉を裏返せばあたしの正体を知っているの?と言った。「何か同じ匂いがするから」そう言って田村は黒板に目を向ける。答えになってない。

    2005-12-20 01:06:00
  • 63:

    NN

    「田村っていうのよそうや。カムイでええよ。」「うん」短く返事をする。あたしは黒の名刺を裏向けにして、乱暴に財布の中に詰め込む。「名刺、大事にしてや。その名詞は天国行きの切符やで」田村は笑った。あたしには、どうしてもこの名詞が天国行きの切符には思えなかった。名刺。カムイの笑顔。全部胡散臭くってたまらなかった。

    2005-12-20 01:08:00
  • 64:

    NN

    その日、ゆうちゃんは2限に現れた。授業中の教室に隠れるようにコソっと入ってきて、あたしに小さく頭を下げる。あたしはうつむいて小さく笑う。今日は仕事が休み。一緒に帰れる。そう思った瞬間、携帯電話が振動する。あたしは画面を見る。メール受信一件。「また遅刻や」同じ教室にいるゆうちゃんからメール。不意に笑いが小さくもれる。メール受信。些細なことで幸せになれる。2限が終わると、ゆうちゃんが何気なくあたしの席に近付いてくる。「にっしのちゃーん!」その様子を見てか田村が割り込む。邪魔者..正直にそう思った。

    2005-12-20 01:09:00
  • 65:

    NN

    「お前ら付き合ってるの秘密にしときや。」「えっなんでなん?」田村のむちゃくちゃな提案にゆうちゃんが驚きの表情を浮かべる。「クラスの奴らに茶化されたりしたらめんどいやーん!な、秘密にしとけ!3人の秘密な!」どうしてあんたが入って3人なんねん..そう思った。だけど確かに学校中に知れわたったらめんどくさいこともある、っていうのには納得した。「さすがホストやんな」あたしが小さくつぶやく。「何で?」田村がニッコリ笑う。「人を丸め込むのがすごく上手い。」そういうと、それは職業病ちゃうくって俺の性格やって、と、また笑う。何だかこの笑顔が全部作り物に見える。あの頃はカイムがいい奴なんだか悪い奴なんだか全然わからなくて、たまにうっとおしく感じてた。

    2005-12-20 01:10:00
  • 66:

    NN

    ↑すみませんカムイがカイムになってます訂正です↑

    2005-12-20 01:11:00
  • 67:

    NN

    だけど今考えればカムイもきっとあたしに似た気持ちを持ってホストって仕事に染まったんだと思う。カムイがあたしにつぶやいた言葉が今も脳裏に張り付く。「感情持って生まれてきたことに後悔してばかりして生きてきた。」と。クラブ・ヘブン。英語で天国。「絶望の中で必死に息をして至福の世界を求めて辿り着いたのがあの店、ヘブン。天国って意味やろ。単純な理由やねんけど。もしかしてここなら、って思った」ってカムイはあたしにいった。あの日カムイは天国を見たん?あたしはカムイがくれた天国行き切符、今も財布の中に入ったままだよ。

    2005-12-20 01:12:00
  • 68:

    NN

    その日学校が終わった後、別々に正門を出て、門裏で待ち合わせ。気持ち悪いぐらい胸がはずんでる自分に気がついた。今年2回目の雪が窓をうつ。地面に溶け込んで消えていく。かけ足で歩いてくるゆうちゃんが目に映る。黒いトレーナーに細身のGパン。明るい髪の毛に黒い色がとてもよく映える。「ごめん待たせて」「ええよ」そう微笑んで、抱きしめてくれる。寒さなんか吹っ飛ぶ。微笑んだ瞬間、ゆうちゃんの顔が近付く。あ、キス。そう思った瞬間、ゆうちゃんがあたしにつぶやく。「髪に雪ついてる」そういってあたしの髪から雪を落とす。優しい手で。何だキスがくるんだと思った。勝手にドキドキしてからまわりした自分が恥ずかしかった。

    2005-12-20 01:13:00
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