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大阪心中24時50分

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  • 1:

    NN

    携帯電話ってものが存在してるのに 人と人の距離は全く埋まりそうにない それどころか日々遠のいているような感覚にさえなる どうしてだろう どうして携帯電話ひとつでここまでひどく憂鬱な気持ちになるのだろう 寂しい夜は 電話で声が聞きたいんじゃない 抱きしめたいんだと 強く思った

    2005-12-16 15:49:00
  • 69:

    NN

    ぎこちない仕草で手を繋いできたゆうちゃんにあたしが微笑む。あたしはずるい。わかってる。自分の影を隠して、まるで自分の影を雪みたいに溶かしてる。明日からはまた風俗嬢に戻らなくちゃいけない。この手を離しこの手を離れこの人に嘘をつきこの人の感触を忘れあたしは風俗嬢なのだからー..「ほんまに夢みたいやわ、ジュリちゃんと一緒にいることが」その日、ファミレス2人で語り合った。美容師になる夢を語るユウちゃんの目は輝いていた。「ジュリちゃんの夢は?」って聞かれてあたしは口ごもる。「考え中」と笑った。

    2005-12-20 01:15:00
  • 70:

    NN

    時計は22時過ぎていた。23時になるとあたしはゆうちゃんと手をつなぎ、ファミレスを出た。1人暮らししてるから家寄ってく?と聞くといいと断られた。何か誘ったように見えたかな、と、自己嫌悪に浸りながら静かに雪が降る道を歩いた。好きな気持ちが溢れてきてる。こんな気持ちになったことなかった。ゆうちゃんのことが好きだ。本当に好きみたいだ。「えーいいとこやなぁ」ゆうちゃんがマンションを見上げる。「いや、外観だけやから!中身はけっこう狭いねん」真っ白な8階建てのオートロックつきのマンション。18歳の1人暮らしには分不相応。だけどこのマンションが風俗店が用意してくれた寮です、とはいえるはずがない。

    2005-12-20 01:15:00
  • 71:

    NN

    「あっジュリ!」背後から声をかけらるれる。シュナ..あたしは顔が青ざめる。うちの店のNO1の女の子だ。先月東京からやってきた子。ワケありって店長から聞いたけど、詳しいことは本当に店長も知らないようだ。家出少女っぽい感じもする。だけど見た目は完全にコテコテ「キャバ嬢」。派手な巻き髪にでかいファーのついた白いコート。「えー彼氏?彼氏?」シュナがゆうちゃんの周りをチョロチョロ動く。「あ、初めまして。シュナです!ジュリちゃんの友達です!」「あ、初めまして。優介です」2人が自己紹介をしあってる間、あたしは気が気じゃなかった。こんな言い方よくないけど、はっきりいってシュナは「場の空気」を完全によめない子だ。風俗嬢だということがバレかねない。

    2005-12-20 01:16:00
  • 72:

    NN

    「もう寒いしいいやん、ほらっシュナ、家はいろ。ゆうちゃんありがとね、バイバイ!」シュナの背中を押しあたしはユウちゃんに手を振る。これ以上シュナとゆうちゃんを喋らせたら危険だ。「あ、ジュリちゃん、バイバイ、また明日!」ゆうちゃんが手を振る。また、明日。なんかいい言葉だ。ゆうちゃんが好きで、ゆうちゃんもあたしを好き。そう、ゆうちゃんとあたしに、明日がある。それだけで嬉しかった。

    2005-12-20 01:18:00
  • 73:

    NN

    ねぇゆうちゃん。今思えばゆうちゃんを愛しく思えば思うほど、苦しくなったのは、真っ直ぐで嘘のないゆうちゃんが眩しすぎたのかもしれへん。あたしはいったやんな。あきらめたが口癖になってしまったって。死に物狂いで戦ったことなんて一度さえないのに、いいわけばかりしてたと。だけど、あたし、最後に1つだけ死に物狂いになって戦ったことがあってん。それが、あの冬の日。最後の雪が降ったあの日の夜。

    2005-12-20 01:19:00
  • 74:

    NN

    ◆「ねぇジュリちゃん、私の部屋で飲もうよー今日ムカつく客いてさっ」シュナとあたしの部屋は横で、会ったら会話をする、あいさつする程度の付き合いだ。正直あんまりシュナのキャラクターは好きじゃない。無鉄砲というか何というか。店でも女の子の中でシュナは浮いていて、店長も心配してた。ジュリ、仲良くしてやってなぁと言われたけど、あたしは特に何もしてない。シュナに引きずられるようにしてシュナの部屋に入る。予想通りの部屋だった。カーテンがピンク色、ベッドもピンク、ディズニーのプリンセスのグッツとシャネルが散乱している。薄ピンクのテーブルにはビールのあき缶が散乱してる。シュナは確か19かそこらだったと思う。この年でもうアル中..。

    2005-12-20 01:20:00
  • 75:

    NN

    「もう疲れちゃってさぁ」冷蔵庫からビールを3,4個取り出し、ドン、とテーブルに置く。その姿は19歳の女の子っていうより、オヤジに近かった。「ねぇさっきの人彼氏なの?」プシュっと缶を開けると、シュナは笑う。「うん、そうやけど。」「かっこよかったねっ!」「ありがとう」シュナと話す会話が思いつかない。しばらく沈黙になる。「シュナはなんで大阪来たん?」ビールを一口、口にする。「うーん失恋したからかなぁ」−本当かどうかわからないけど意外な答え。あたしは少し驚いた。「ホストの子が好きだったんだーカムプリって店の彩人って子。だけど、何か、気まずくなっちゃって。」それって失恋なのか?とあたしは心の中で思った。

    2005-12-20 01:20:00
  • 76:

    名無しさん

    2005-12-20 01:21:00
  • 77:

    NN

    「でも大阪のホストかっこいいね。昨日行った店の子すごいかっこよくて。またはまりそうだなぁ。関西弁って可愛いよね。」あたしはとりあえずふむふむうなずいておいた。シュナは床に落ちていた雑誌を取り出す。「この雑誌、あたしもジュリちゃんも載ってるよねっ」シュナは嬉しそうに雑誌をめくる。あたしは雑誌をのぞきこむ。ああ、確かに。あたしのページの横にシュナが載ってる。

    2005-12-20 01:22:00
  • 78:

    NN

    「この雑誌の、ほら、見て!クラブ・ヘブンのカムイ!!もーめっちゃかっこいいでしょ??」シュナが雑誌を指差す。嬉しそうに写真を指差すシュナを横目に、雑誌を見たあたしは硬直した。田村だ..。胸まではだけた白いシャツ、シルバーのダイヤが入ったクロスネックレス。金髪の髪の毛。写真で微笑むカムイは、あたしが知ってる田村カムイと同じ人間なのに、学校のカムイの笑い顔も、雑誌で笑うカムイの笑顔も、なんだかどっちの笑顔もうそ臭く見えた。あたしとカムイが同じ雑誌に載ってる。カムイはあたしが風俗をしてること、知ってるんだろう。

    2005-12-20 01:23:00
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