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『一番大切なこと』

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  • 1:

    ?りんご?

    久しぶりに行った地元のバーで私は偶然にも久しぶりに颯太(そうた)と再会した。颯太は隣中学の同級生。私達は今24歳。10年前に出会った私達の苦しい切ないすれ違いがまた始まろうとしていた。
    「久しぶりやなぁ。全然変わってないやん」
    私に気付いた颯太はすぐに話し掛けてきた。颯太と話すのは6年ぶりだった。成人式の日、久しぶりに見かけたけど話すことのないままで。

    2005-08-27 04:00:00
  • 61:

    ?りんご?

    それからも何も変わらず颯太とは付き合ってた。でも肌寒さが増してきた頃、颯太から電話があって突然話があるって言われた。
    颯太の家に行ったら、深刻な顔で私に謝ってきた。何なん?どうしたんやろ…。私はとりあえず話を聞くことにした。

    2005-08-30 02:58:00
  • 62:

    ?りんご?

    「妊娠した話聞かされてからこの三週間な、嫌な男かもしれんけどあいつの家行って頭下げて学生やし責任取れませんっておろしてもらえるように何回も行っててん。でもな、何回行っても無理で。俺の親父も一緒に行ったりしてくれてんけど、やっぱり向こうの親は責任取って結婚しろって言うねん。むちゃくちゃやろ…でもな、ちゃんと考えたらもう命が宿ってんねん。俺の子が。そう考えたら俺めっちゃ怖くなったっちゅーか最悪なことしてんのかなって思って」

    2005-08-30 03:06:00
  • 63:

    ?りんご?

    「うん…」
    それしか言えんかった。
    「でもな俺が好きなんはお前や。だからお前を傷つけることになるって思ったら答えが出されへんかってんずっと。踏ん切りがつかんねん。
    お前とどっか二人で遠くに逃げようかとかカケオチみたいなんも考えたけどお前の親とか将来のこと考えたらできひんかった。
    最低やな俺…ごめんな美樹。」

    2005-08-30 03:11:00
  • 64:

    ?りんご?

    颯太は苦しんでたんや…ずっとずっと。優しいから、どうにもできんくて辛かったんや…。
    ずっと謝り続ける姿を見てたら、もう自分のことはどうでもよくなった。もう、そんなんから開放してあげたかった。
    「颯太、いいパパなったりな。美樹は大丈夫やから。もう何も考えんでいいよ。大丈夫。これでも強いねんから。平気やし」

    2005-08-30 03:16:00
  • 65:

    ?りんご?

    私は泣きそうになるのを必死でこらえて、最後まで笑ってた。最後の強がり。最後の優しさ。颯太が好きやから。ほんまに好きやったから…。
    もう泣くのをガマンできんくなって、急いで颯太の家から飛び出した。バイバイ…颯太。ガマンしてたからか一気に涙が出た。
    声まで出るぐらい泣いてしまった。でもすれ違う人に見られててももうどうでも良かった。

    2005-08-30 03:21:00
  • 66:

    ?りんご?

    「美樹ちゃん?」
    その時後ろから声が聞こえた。振り返ったらそこにおったんは颯太のお姉ちゃんやった。
    「ごめんな。美樹ちゃんにこんな思いさせてしまって。私も納得なんかできひんかった。向こうの親も頭おかしいわ愛情がない二人に子供なんて育てられへんの何で分からんのやろ?ごめんなほんまに。うちのパパもママもみんな美樹ちゃんのこと好きやったのに…。」
    もう充分やった。
    颯太に想われてることは、ちゃんと分かってたから。

    2005-08-30 03:29:00
  • 67:

    ?りんご?

    「ありがとうござ…。もう大丈夫やか…」
    泣き声が混じってうまく喋られへんかった。それから颯太のお姉ちゃんは結局家まで送ってくれて、私は家に帰った。帰り道はずっと泣きやむことができんくてずっと何も話せんかった。お姉ちゃんは黙って私の手を握っててくれた。

    2005-08-30 03:43:00
  • 68:

    ?りんご?

    泣き腫らした目で家に帰ると、お母さんにすぐに気付かれた。でも颯太のことは話さへんかった。私の家族もみんな颯太と仲良かったから…。
    もし話したら颯太のこと嫌な風に思われるかもしれんし…。だからずっと黙ってた。
    もういい大丈夫や。私は強い。もう絶対に泣かん。絶対に。そう心に決めた。頑張って卒業して大学行って就職して…それから…それから…。先のことを考えれば考えるほど苦しくなった。

    2005-08-30 03:52:00
  • 69:

    ?りんご?

    幸せになろう。絶対に自分から逃げたらあかん。私はそれからしばらく毎日そんなことを考えてた。頑張って自分の生き方探そうって。
    でも颯太との別れは想像してた以上にラクなもんじゃなかった。由紀や沙織達も毎日そばにおってくれたけど、そんな簡単に整理つけれる問題じゃなくて…。
    日を追うごとに自分が壊れていってた。何もかもどうでもよくなって、全てのことから逃げてた。

    2005-08-30 03:58:00
  • 70:

    ?りんご?

    そんなある日、バイトの帰りに電車からおりて駅のホームに着くと、反対側のホームから私を見て手を降りながら何か叫んでる奴がいた。
    は!?気持ちわる。誰やねん…無視して改札口まで歩いて行くとバタバタと後ろから走ってくる音が聞こえた。もしかしてさっきの変人!?一瞬ビクッとして見てみると意外なやつがそこに立っていた。

    2005-08-30 04:11:00
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