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ありがとう。
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1:
ゆき
もう2度と会えなくなってしまった、実のお母さんのようにあたしに接してくれた人にこの場をかりて手紙を書こうと思います。
2005-09-08 01:30:00 -
2:
ゆき
あたしゎ小学生のとき学童保育というのに入ってた。そこゎ親が片親だったり、共働きで家にいなかったりする家庭のために、学校が終わって集まる、言わば第2の家みたぃなトコロ。
2005-09-08 01:49:00 -
3:
ゆき
普通の家で、テレビもあるしピアノもあるし何でもあった。そこにゎ『先生』というのがいてたけど、その人ゎ自分のことを先生と呼ばなくていぃと言っていた。だからみんなその人のことを名字で呼んでた。ここでゎ“塚本”とします。
2005-09-08 01:50:00 -
4:
ゆき
あたしの親ゎ共働きで、お金ゎあったけど愛ゎなぃとゆう典型的な愛情が薄い家庭だった。そんなあたしに、塚本ゎ親なみの愛情をいっぱいくれた。甘えることがへたで、始めゎみんなの輪にも入れなくて1人で絵本を読んでたあたしに愛情を教えてくれた。
2005-09-08 01:52:00 -
5:
ゆき
当時ゎ小学生ながら冷めてたあたしゎなんなんこの人‥って思ってた。学童にゎ10人ぐらぃの子供がいてて、交替で皿洗いもしなあかんかったし、庭の草むしりもしたし、協調性ゎ育まれた。でもあたしにとってゎ、学童で教わった1番のことゎ愛情やった。
2005-09-08 01:53:00 -
6:
ゆき
始めゎその環境に慣れなくて、学童に行かずに友達と遊んだり家に帰ったりしてた。家に帰るって言っても部屋にゎ1人。ぼーっとして時間をつぶすだけ。
そんなことが続いてたある日、塚本が家にきた。知らない人ゎ家にあげるなと言われてたけど、知らない訳じゃなぃし何より優しい笑顔と声が嬉しくて何の迷いもなく家に入れた。
2005-09-08 02:11:00 -
7:
ゆき
塚本「なんでこーへんの?」ゆき『……』塚本「塚本ゎゆきちゃんいなかったら寂しいなぁ、みんな待ってるで。」
それだけの言葉がすごく嬉しくて、あたしゎ塚本の前で泣きじゃくってしまった。本当ゎ1人の家なんてイヤやった、ほんまゎ寂しかった。お母さんに「おかえり。」って言ってほしかった。塚本ゎただ何も言わずに泣いてるあたしの頭を優しくなでて、「お家いこっか。」って言った。
2005-09-08 02:15:00 -
8:
ゆき
それからあたしゎ毎日小学校が終わったら学童に行くようになった。そこでゎみんな、戸をあけたら「ただいま。」って言う。そしたら塚本や他の子達が「おかえり。」って言う。あたしゎ大人になった今でもこのクセが直りません。
2005-09-08 02:16:00 -
9:
ゆき
学童ゎやっぱりいぃことばっかりじゃなかった。怒られることもあるし、友達と殴りあいのケンカをすることもあった。だけどあたしゎそんな第2の家が大好きだった。友達がいて、何よりいっぱいの愛情で包んでくれる塚本がいた。学童の方が居心地がよかった。
2005-09-08 02:17:00 -
10:
ゆき
なぁ、塚本。あたしお母さんにすら話されへんかった、イジメや初潮のこと、1番に話したのゎ塚本やってんで。自分のことのように腹を立てたり、親のように優しく不安をのぞいてくれた。あたし塚本が大好きやってんで。本気で怒っても、帰る時間にゎ笑顔で「また明日な。」って言う塚本が大好きやった。
2005-09-08 02:18:00 -
11:
ゆき
そんなふうにしてあたしの小学校生活ゎ終わって、学童ゎ小学生までやから塚本ともばいばぃする時がきた。卒業して1週間後、塚本とあたしと同じ学童でおない年の子と、3人で旅行に行った。その時撮った写真ゎ、みんなほんまに楽しそうで見る度にほほえんでしまぃます。
2005-09-08 03:01:00 -
12:
ゆき
中学生になって、学童に行くこともなくなってあたしゎ悪くなった。学校にもあんまり行かんようになって、色んな悪いこともした。学童の方ゎあたしが中2になったときつぶれてしまった。
中3年の冬、当時の学童メンバーの親、子供、塚本とごはんを食べることになった。その頃のあたしゎもう親と会話をすることも少なくなって、親ゎあたしをいらなぃもののだと思ってると感じてた。
2005-09-08 03:03:00 -
13:
ゆき
話すこともなく時間ゎ経って、友達ゎみんな楽しそうに塚本を囲んでるのにあたしだけその輪の中に入れずに1人でもくもくとご飯を食べてた。学童に入った当初の頃みたぃやなぁ…って思いながら。
するとしばらくして、塚本がこっちにきた。あたしゎやっぱり目を見れなくて、でも塚本ゎ昔と変わらず優しい声で「ゆきちゃん、元気そうやなぁ。すっかりお姉さんになって。」と話しかけてきてくれた。
2005-09-08 03:05:00 -
14:
ゆき
あたしゎそこでやっと塚本と目を合わせた。3年ぶりに会う塚本ゎやっぱり3年分年をとっていた。体調がよくなぃせいか顔色も悪くて、白髪も増えていた。ころ頃の塚本ゎ50代半ばぐらぃだったと思う。あたしにゎそれが悲しかった。会わなかった3年を後悔した。
しばらく塚本と話していた。すると塚本が「ゆきちゃんゎ人見知り激しくてなぁ‥なかなか心開いてくれへんかったゎぁ。」と笑いながら話した。あたしも笑った。
2005-09-08 03:07:00 -
15:
ゆき
すると塚本が突然、「最近あの頃をふと思い出すんゃぁ。みんな可愛くて、塚本ゎみんなといるだけて幸せやったゎぁ。」と懐かしそうに言った。あたしゎそれを聞いて涙が出た。何言うてんの塚本‥幸せもらってたのゎあたしの方やんか…と思うと涙が止まらなかった。塚本も泣きだして、みんなが不思議そうにみてる中、2人で泣いていた。
2005-09-08 03:09:00 -
16:
ゆき
あたしゎ泣いたのなんて久しぶりだった。自分でゎ意識してなかったけど、その頃のあたしゎいつの間にかすっかりまた心を閉ざしてしまっていたのだと思う。それが塚本に会って開いた。3年間をうめるように2人で泣いて、あたしゎ昔のようにしょーもなぃことを話しまくって、塚本ゎ楽しそうにほほ笑みながら頷いていた。
楽しい時間ゎあっという間にすぎて、そろそろお開きになった。寂しかった。でも塚本ゎ顔色ゎ悪かったが元気そうだったし、安心した。
2005-09-08 03:12:00 -
17:
ゆき
帰り道、久しぶりに母親と会話をした。母「先生がこれ子供たちに渡しといてって。」と言って渡してきたメモにゎ、最近引っ越したとゆう塚本の新しい住所が書いてあった。あとで聞いた話でゎ、母親が「そんな、たかが昔関わった子供に住所なんて教えていぃんですか。」と言うと、塚本ゎ「子供たちが誰かに何か話したい、自分だけでゎどうしようもなぃっていう時に駆け込めるような、いわば駆け込み寺のような存在で私ゎありたいんです。」と言っていたらしい。
血の繋がった母よりも、たかが子供の頃関わった塚本の方があたしにゎ母親らしく感じた。母ゎ塚本にあたしの最近の生活を話したらしい。学校にもろくに行ってないことも、世間で言う不良になってしまったことも。でも塚本ゎそんなあたしを突き放すどころか、優しく包んでくれた。そんな大人ゎ、あたしの周りに塚本以外いなかった。
2005-09-08 03:13:00 -
18:
ゆき
あたしゎ家に帰って、さっそくケータィに塚本の番号と住所を登録した。これでいつでも塚本に会えるなぁと思ったら嬉しかった。3年という中で出来ていた塚本との距離ゎ、ほんの数十分で埋まった。塚本ゎあたしのなかで母以上に“お母さん”だった。
それからたまに塚本に電話をするようになった。塚本にゎ色んな話をした。恋の話も、友達の話も、学校の話も。塚本ゎ1度も「学校に行け。」とゎ言わなかった。ただ楽しそうに話を聞いて、いつも「ゆきちゃんゎいぃ子。」と言ってくれた。世間でゎあたしのような人間を“不良”と言うのに、塚本だけゎあたしのことを“いぃ子”と言った。そして最後に決まっていつも、「ゆきちゃんが正しいと思うことをしなさぃ。」と言った。
2005-09-08 03:54:00 -
19:
ゆき
久しぶりに塚本に会えると思うと嬉しくて、お見舞いゎ何をもっていこう‥と悩んだ末、渡していなかった小学校卒業したときに行った、旅行の写真をアルバムに貼ってあげることにした。きっと塚本ゎ何よりも喜んでくれる。それで懐かしい思い出話して、また塚本と行こうっと考えていた。それともう1つ、思えば今まで1度も言ってなぃかもしれなぃ、感謝の気持ちを込めた手紙をかいた。途中から感情が入りすぎて泣きながら書いていた。でもそれぐらぃ気持ちが込もった手紙が書けた。
約束ゎ日曜日で、お見舞いの品が出来たのゎ水曜日だった。早く日曜日になればいぃのに‥と思い日曜日が待ち遠しかった。
2005-09-08 03:58:00 -
20:
ゆき
金曜日の夜遅く、塚本の息子から電話があった。
塚本が昏睡状態になったと…。
今すぐにでも病院に行きたかったが、塚本のいる病院までゎ電車で2時間程かかる。電車ゎもうなかった。だから朝一で行くことにした。なかなか寝付けず、1時間程寝て朝病院へ向かった。
2005-09-08 04:00:00 -
21:
ゆき
病院につくと、病室の前で塚本の息子がいた。泣いていた。イヤな予感がした。
病室に入ると、塚本ゎもう帰らぬ人になっていた。息子が、私がくる1時間程前に息を引き取ったと言った…。
2005-09-08 04:01:00 -
22:
ゆき
塚本のお葬式ゎ、広いホールみたいな所であった。塚本のお葬式にゎたくさんの人がいた。懐かしい、学童の子達もきていた。たくさんの人が泣いていた。
あたしゎ思った程泣かなかった。塚本が死んだことが信じられなかった。いつもみたぃに、笑って起きるような気がして棺桶の中の塚本に話し掛けても当然のように何の反応もなかった。黒い額に入っている塚本の笑顔ゎ、あたしの知ってる笑顔じゃなかった。どこから探してきたのか、選挙ポスターのような笑顔の写真。あたしが作ったアルバムにある、旅行のときの笑顔が塚本の笑顔なのに。こんなに顔をぐしゃっとして笑うのに。
2005-09-08 04:24:00 -
23:
ゆき
火葬にゎ立ちあえなかったので、塚本に渡すはずだったアルバムと手紙を息子に渡した。一緒に燃やして、塚本に天国まで持っていってほしかった。
塚本ゎあたしの手紙を読んできっと泣いた。病室で、あたしも一緒に泣くはずだった。「ゆきちゃんゎいつまでたっても泣き虫やなぁ。」って塚本が言う。『塚本も泣いてるやんかっ。』とあたしが言い返す。
そんな幸せな時間を過ごすはずだったのに。。
2005-09-08 04:25:00 -
24:
ゆき
なぁ、塚本。せめてあと数日、待ってほしかったなぁ。約束してたのに。でもごめんゎいらんで、塚本のことやから最期までゆきちゃんとの約束があるのに‥って思ってたと思うから。
ゆきゎ、塚本に会えてほんまによかった。塚本に会われへんかったら、きっといつまでも部屋で1人でテレビみてた。塚本が愛情を教えてくれた。いっぱぃ、いっぱいくれた。『ありがとう』もまともに言えんくてごめんな。泣き虫で、わがままばっかりでごめん。どうしても、塚本の前でゎ昔のようなゆきになってしまうねん。それゎ塚本が大好きやからやろうなぁとゆきゎ思う。
2005-09-08 04:26:00 -
25:
ゆき
塚本ゎ、母親以上にゆきのお母さんやった。優しいだけじゃなくて、ちゃんと叱ってくれた。けどいつでも優しかった。
ゆきにゎ塚本が見えへんけど、塚本ゎちゃんと見ててくれてるって思うねん。ゆき、素晴らしい人じゃないけどちゃんと自分が正しいと思う道を歩いてるよ。それでいつか、塚本みたぃな人になりたぃ。それがゆきの目標かな。
塚本、ありがとう。いつでも、1人でいるゆきを救ってくれて。しょーもなぃ話に付き合ってくれて。一緒に泣いてくれて。
塚本、だいすき。ほんまに大好き。ほんまにほんまに、ありがとう。どうか、そこからゆきを見守っていて下さい。
ありがとう。2005-09-08 04:27:00