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≪風俗≫あたしにも価値はあると言って。。。≪ホストクラブ≫

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  • 1:

    自分のサイトで公開している小説です。
    70%ぐらいはあたしの体験談です。
    あまり上手とは言えませんが、
    実際に風俗やホストの世界にいる方々に
    読んでもらいたくてここに書くことにしました。

    2005-05-27 12:22:00
  • 112:

    『仕事、終わったよ。今から行っても大丈夫かな?』
    『お疲れ様ー! 待ってるよ、ユウナちゃんの席用意してるから、早くおいでねー』
     やっぱり翔からのメールの最後はハートマークだった。
     笑顔マークのときや音符マークのときもあるけれど、ハートのときが一番嬉しい。
     最後の初老の客がダブルで入ったうえにチップまでくれたので、今日の稼ぎは六万を越えた。
     Temptationに入り、まずシャンパンを頼んだ。
     本当はフランスのシャンパーニュ地方で作られた物以外はスパークリングワインと呼ぶらしいけれど、翔もあたしも炭酸の入った酒は全部シャンパンと呼んでいる。

    2005-05-27 14:12:00
  • 113:

     ついでに、今日は肌寒く体が冷えていたので新メニューのビーフシチューも頼んだ。
     翔がお腹が空いていると言ったので、パスタも頼んだ。
     フルーツも頼んだ。
     狭いテーブルはあっという間にびっしりになった。
    「あのね、俺、今月ナンバー5に入れるかもしれないんだ」

    2005-05-27 14:12:00
  • 114:

    「本当? よかったねー!」
    「うん、俺、すげー嬉しい。代表にもね、昨日の営業終了してから、翔はがんばってるな、って褒められたんだー。ユウナちゃんのおかげだよー」
    「そんなことないよ、翔が一生懸命がんばったから、結果が出てきたんだよ」
    「ううん」
     翔があたしの顔を覗き込み、真剣な顔つきをした。
    「ぶっちゃけ、俺の売り上げの大半はユウナちゃんの分だよ……。マジ、感謝してる。ありがとう」
     端正で華奢な顔。
     ぱっちりとした大きな瞳。
     翔の言葉を聞いて湧き上がってくる幸福感、満足感。

    2005-05-27 14:14:00
  • 115:

    「感謝するのはあたしの方だよ。翔がありがとうって言ってくれるたびに、あたし、幸せな気分になれる」
     シャンパンを飲み干して、目を伏せた。
     気付かないうちにだいぶ酔ってきたのかもしれない、頭がくらくらする。
     ふいに、ミサトの言葉を思い出す。
    『そんなふうにお金払い続けてなきゃ、美人でも若くもないうちのことなんか、簡単に忘れられちゃいそーな気がしてね』
     あのとき言い出さなかったけれど、あたしだって、ミサトとまったく同じように不安なのだった。
     整った外見、素直で無邪気な性格で魅力的な翔。
     不細工で内気でつまらないあたし。

    2005-05-27 14:15:00
  • 116:

    「翔、今日はナンバー5入り前祝いってことで、ドンペリ飲んじゃおーか?」
     さっきのカフェドパリが一本一万円。
     ドンペリの白が五万円。
     今日はフードも頼んだし、これでだいぶ翔の売り上げに協力できるはずだ。
     ここではお金さえ使えば、自分にも価値はあるんだと実感できる。
    「ユウナちゃん、……あの、大丈夫?」
    「大丈夫だよー」
    「ねぇ、こんなこと聞いたらホスト失格かもしれないんだけど」
     そう前置きしてから、翔は切り出した。

    2005-05-27 14:16:00
  • 117:

    「ユウナちゃんは、どうして風俗で働いているの? 確かもう借金はないって言っていたよね? あのね、もし俺に会いに来るためだけに仕事してるんだとしたら、それは何だか嫌なんだ……。ごめんね、俺自惚れすぎだね」
     いつになく真顔の翔に戸惑いながら、あたしは「自惚れじゃないよ」とだけ答えた。
     借金はとっくになくなっている。
     けれど、今風俗の仕事を辞めてしまったら、あたしにはまた何もなくなってしまう。
     あたしの体や心を欲しがるあの客たちとの関係も、頼りにしてる、と言ってくれる「ピンキードール」の店長や他の従業員との関係も、ホストクラブで夜な夜なあたしが支払う代金の上に成立している、翔との関係も。

    2005-05-27 14:16:00
  • 118:

     あたしのこの街での存在意義が、何もかもなくなってしまう。
     やっと見つけたささやかな生きる意味、生きる価値のある自分。
     心の空洞を埋めてくれるものたち。
     絶対に失いたくない。

    2005-05-27 14:17:00
  • 119:

    「ごめん、俺、何だか気分壊すようなこと言っちゃったかな。酔ってるのかも。ごめん」
     無言になったあたしに気を使い、翔が一生懸命に謝ってきてくれた。
     結局、その日ドンペリは頼まないままあたしはアパートへ帰った。
     帰り道、タクシーの運転手が「今日は星が見えるね」と話しかけてきたので空を見上げたけれど、あの田舎町では数え切れないほどに輝いていた星が、東京の空にはほんの数個、申し訳なさそうに光っているだけだった。

    2005-05-27 14:18:00
  • 120:

     次の日の午後三時、起きようとしたあたしは全身が重いことに気付いた。
     体中がひどく汗ばんでいて、立ち上がるとフラフラする。
     体温を測ると、三十八度七分あった。
     昨日は少し寒かったから、風邪を引いてしまったのかもしれない。
     喉が痛い。
     頭がぼんやりして、この状態ではろくな接客はできないだろうと思ったので、店長に電話をかけて休みをもらった。
     風邪薬を飲んだけれど熱が下がらない。
     部屋にあった中で一番効き目のありそうな解熱剤を飲んで、しばらく経って体温を測ると三十九度を超えていた。

    2005-05-27 14:19:00
  • 121:

    『ユウナちゃんおはよー! もう仕事中かなー?』
     翔からいつものようにメールが届いた。
    『風邪引いたみたいで仕事休んじゃった。今夜はお店行ってあげられないよ、ごめんね』
     メールの返事を打つのもだるい。
    『風邪引いちゃったの? 大丈夫? 心配だよ、ゆっくり休んで早く治してねー』
    『ありがとう、これから寝るね』
     子供の頃から体は丈夫だった。
     東京に来てから一度も病院にかかったことはない。
     風邪ぐらい寝ていれば治る、そう思っていたけれど、一晩経っても熱は上がる一方だった。

    2005-05-27 14:20:00
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