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≪風俗≫あたしにも価値はあると言って。。。≪ホストクラブ≫

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  • 1:

    自分のサイトで公開している小説です。
    70%ぐらいはあたしの体験談です。
    あまり上手とは言えませんが、
    実際に風俗やホストの世界にいる方々に
    読んでもらいたくてここに書くことにしました。

    2005-05-27 12:22:00
  • 22:

     間違いない。
     この人しかいない。
     あたしの目に狂いはない。
     回りくどい告白の台詞も演出も考え付かなかった。
     思いつくままの言葉をひたすら並べていく。
    「真宮、あのね、あたし婚約してるって言ったでしょ? でね、別れちゃった。好きな人できたんだよね、その人といると、すごく楽なの。何でも話せるの。こんな人初めてなんだ。真宮、あのね、真宮――」

    2005-05-27 12:46:00
  • 23:

     その日。
     真宮の返事は遠まわしな表現だったけれど、あたしに対して友人以上の感情は持っていない、と言う事は何とか伝わってきた。
     少し泣いたり、早口でまくしたてたりしながら「好きな人がいるの?」とか「あたしには何が足りないの?」とか聞いたけれど、彼はやっぱり穏やかな口調ではぐらかすだけ。
    「清美は、どこか俺に似てる。俺にとって清美は、本当に大事な大事な妹みたいなんだよ」
     真宮はどこまでも大人で、精一杯幼いあたしが傷付けないよう言葉を選んでくれた。
     あたしは真宮に受け入れられなかった、その事実は変わらなかったけれども。
     そうして、あっという間にあたしは一人になったのだ。

    2005-05-27 12:47:00
  • 24:

     あたしは、真宮以上の男なんてこの世界にはいないと確信していたから、今さらあのつまらない元婚約者のところに帰る気になどちっともならなかった。
    「最後に一つだけ聞くけれど。今、清美は、結婚の話がなくなって後悔していない?」
     真宮の言葉に、あたしは自信を持って笑顔でうなずいた。
     今誰かに同じことを聞かれても、やっぱり答えは変わらないだろう。

    2005-05-27 12:48:00
  • 25:

     会社には、しばらく破談になったことは伝えなかった。
     もうあたしの後任も決まっていたし、寿退社を予定していたけれど破談になったのでやっぱりまだ働かせて下さい、なんてみっともない真似はとてもできない。
     けれどもさすがに上司や同僚に嘘をついたままで退職するわけにもいかないので、退職まで一ヶ月を切ってからあたしは初めて周囲に結婚はしない、と明かした。
    「もっと早くに言ってくれたら人事だって俺が上に頼んで何とかしたのに。めでたい話だから反対するわけにもいかなかったけど、お前がいなくなったら俺はすごく困るんだぞ?」

    2005-05-27 12:49:00
  • 26:

     斜め向かいの席の、毎日あたし指名でコピー取りとお茶汲み、資料整理を頼んできた課長が言ってくれた言葉が嬉しかった。
     つまらない会社だったけれど、最後の最後で自分の働いていたことにも一応意味はあったのだと知ることができた。
     それでじゅうぶんだ。

    2005-05-27 12:50:00
  • 27:

    「こちらにどうぞ」と翔が案内してくれた席に座った。
     ソファーは柔らかくて、ゆっくりと体が沈み込む。
     手にしていたバッグを横に置こうとしたら、翔に「隣に座ってもいい?」と聞かれ、うなずきながらバッグは足元に置いた。
     周囲をキョロキョロしていると、どこからか黒いスーツの大柄な男がやってきてあたしの席の前で窮屈そうに腰を屈め、焼酎のボトルやグラス、アイスペール、コースター、灰皿などを並べ始めた。
    「いらっしゃいませ。初回の方にはこちらのボトルをサービスさせていただいております。割り物は何になさいますか?」

    2005-05-27 12:51:00
  • 28:

     大柄な男の言葉に合わせて翔がすかさず横からメニューを差し出してくれる。
     焼酎といえば水割りかウーロン茶割りぐらいしか知らなかったのだけれど、オレンジジュースやカルピスなども割り物として用意されているらしく、あたしはとりあえずオレンジジュースを頼む。
     翔が二つのグラスに氷を入れている間に、さっきの男がガラス製のピッチャーに入れられたオレンジジュースを持ってきて、一礼して、またどこかへ行った。
    「お酒、飲めるよね? あ、でも最初だからちょびっと薄めにしておくねー」
     そう言いながら翔は手早くグラスにそれぞれ焼酎とオレンジジュースを注ぎ、マドラーでくるくるとかき混ぜてから片方をあたしの前に置いた。

    2005-05-27 12:51:00
  • 29:

     それに、彼の指なら、ごついデザインのプラチナの指輪をはめたらきっと似合いそう。
     あたしがそのことを言うと、翔はグラスを持ったままで笑った。
    「ブランド物持ってるのなんて、一部の売れてるホストだけだよー。ホストみんながお金持ちなわけじゃないんだ、俺なんか新人だからマジ貧乏だよ。今月の携帯代もヤバいくらい」
     そう笑う彼は、どこにでもいそうな普通の男の子だった。
     年齢を聞くと、「今年で21歳だよー」と答えた。
     あたしの2歳年下だ。
     それから二人でドラマや好きな食べ物、翔が最近買ったゲームなどの話をした。
     黒いスーツを着ているしあたしのお酒が減ったら作り足してくれるけれど、やっぱり話しているときの翔は無邪気で純粋な普通の男の子だと思った。

    2005-05-27 12:53:00
  • 30:

    「お嬢さん、お美しいですね……なーんて言われたりすると思ってた?」
     言いながら翔は上目遣いで笑みを浮かべながらあたしの顔に自分の顔を近づけ、肩に手を回す。
     彼が演じたそれは、まさにあたしの想像していた「ホスト」そのものだったので、あたしはひどくおかしかった。
     彼はすぐにあたしから体を離し、今度は毎週読んでいる漫画の話を始める。
     新連載のサッカー漫画のことは何も知らなかったので「それ、知らないや」と言った。
    するとすぐに翔はあたしでも知っている、ずいぶん前から連載されている冒険物の漫画の話題に変えてくれた。

    2005-05-27 12:54:00
  • 31:

     あたしはここでは「お客様」なのだ。
     無理にあたしから話しかけなくてもいいし、興味のない話題を楽しそうなふりをして聞く必要もない。
     目の前の相手にどうすれば好かれるか、どうすれば嫌われないかいちいち気にしなくてもいいのだ。
     なぜなら、あたしは代金を払っているから。
     酔いも手伝って、その夜あたしは翔との話に頬の筋肉が痛くなるほど笑い、最後に電話番号とメールアドレスを交換してタクシーで家へ帰った。
     久しぶりに何かから解放された、そんな気分だった。

    2005-05-27 12:55:00
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