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≪風俗≫あたしにも価値はあると言って。。。≪ホストクラブ≫

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  • 1:

    自分のサイトで公開している小説です。
    70%ぐらいはあたしの体験談です。
    あまり上手とは言えませんが、
    実際に風俗やホストの世界にいる方々に
    読んでもらいたくてここに書くことにしました。

    2005-05-27 12:22:00
  • 61:

     二件目のメールを見た。
     翔からだった。
    『そろそろ仕事終わったかなー? 俺はキャッチ中、今日もがんばるぜぃ! 昨日と同じところに立ってるから、よかったら顔見せてねー』
     やっぱり翔からのメールは絵文字だらけだ。
     最後にハートマークが付いているのは、彼の癖なのかもしれない。
     そうだ、昨日買わなかった乳液を今日こそ買わなくちゃ。
     あの交差点はどうせ通り道だから、翔に会って昨日のお礼を直接言おう。
     ぎらぎらとネオンの光る大通りを歩いた。

    2005-05-27 13:24:00
  • 62:

     翔に会ったら、まず何て声をかけようか。
     さっきまでの憂鬱な思いはどこかへ消えていた。
     交差点が近づいてきたけれど、それらしき人影は見つからない。
     黒いスーツの男は数人立っていたけれど、どれも彼ではなかった。
     似たような背格好の男がいたのでじっと見てみたのに、偶然こちらを振り向いたその顔はまったくの別人だった。
     翔はもう「Temptation」に戻ってしまったのかもしれない。

    2005-05-27 13:25:00
  • 63:

     がっかりしてそのまま横断歩道を渡り、深夜だというのに水商売風の女や酔っ払いの男たちで賑わっているコンビニで、乳液と脂取り紙、ついでに口臭予防のガムを手に取ってレジへ差し出した。
    「九百四十円になりまーす。千円お預かりしまーす」
     てきぱきと事務的に働く店員から釣銭を受け取っていると、横から一リットル紙パックのジュースが何本も入ったカゴが無造作に置かれた。
    「あれっ、ユウナちゃんだぁ」
     素っ頓狂な声。
     カゴが置かれた方を振り返ると、黒いスーツに身を包み、癖のない真っ直ぐな金髪を眼の辺りまで垂らしている男の子がいた。
     翔だった。

    2005-05-27 13:26:00
  • 64:

    「仕事終わったの? お疲れ様ー。俺のメール読んでくれた?」
     店員はまたてきぱきと翔の置いたカゴの中身を取り出し、バーコードを読み取り始める。
    「読んだよ、だから探したのに、外にいないんだもん」
     わざと、少しだけ責めるような言い方をしてみた。
     でも今日はもう会えないと思っていたのに、こんなところで偶然会えたことが何故か妙に嬉しくて、ついつい笑顔になってしまう。

    2005-05-27 13:27:00
  • 65:

    「ごめんね、買出しに来てたんだ。下っ端は大変なんだよー」
    「下っ端なの? ホストになってどれくらい?」
    「実はまだ十日目なんだ。ピチピチの新人だよ。だからこうしてパシリにさせられる……あっ、領収書下さい。名前はTemptationで」
     苦笑いしながら代金を払う翔の横顔を、改めてまじまじと見つめた。
     昨日は真宮に似ている目元ばかりが気になって気付かなかったけれど、翔の顔はとてもバランスよく整っていた。

    2005-05-27 13:28:00
  • 66:

     大きな目、濃くて長い睫毛、血管が透けて見えそうな白い肌。
     すっと通った鼻筋に、ふっくら厚めの唇、とがった顎。
     顔も体も線が細く、少し痩せすぎている気もするが、そこがまた陰のある雰囲気をかもし出していて魅力的だと思う。
     女の子のような顔。いや、女の子よりよほどきれいかもしれない。
     真宮もこんな中性的な顔立ちをしていたっけ。
     あたしは、彼らのようなきれいな顔の男の人が好きだ。
     今だってこうして翔の顔を見ているとそれだけで何だか幸せな気持ちになれる。

    2005-05-27 13:29:00
  • 67:

    「ありがとうございましたー」
     感情のこもっていない店員の声。
     翔がビニール袋に入れられたジュースを受け取って、二人で一緒にコンビニを出た。
    「ユウナちゃんはもう家に帰っちゃうの?」
    「うん、特に行くところもないから……」
    「そうなんだ。じゃあ、ここでもう少しだけ話そうよ」
     翔の言葉にあたしは嬉しくなった。
     もっと彼の顔を見ていたかったし、あどけなさの残る彼の声を聞いていたかった。

    2005-05-27 13:29:00
  • 68:

    「うん、いいよ。だけど買出しに来てるのに、早くTemptationに帰らなきゃいけないんじゃないの?」
    「うーん、店に怒られちゃうかな。でもせっかくユウナちゃんと会えたのに、もっと話したいなぁ」
     これはきっとリップサービスだ。
     ホストは、言葉で女を喜ばせるのが仕事なんだから、こんなセリフを真に受けちゃいけない。
     そう心の中で自分に警告しつつも、彼は新人だと言っていたから、何年も働いているプロのホストとは違ってまだリップサービスなんてできないかもしれない、これは全部本音で喋ってくれているのでは、と都合のいいことも考える。
     もしも本音なら、あたしもその好意に応えてあげたい。
     彼が喜ぶ応え方は明白だ。

    2005-05-27 13:30:00
  • 69:

    「それなら、あたしもこれから一緒にTemptationに行くよ。そうすればもっと話していられるでしょ?」
    「えっ、いいのっ?」
     あたしの提案に翔は目を輝かせ、とても嬉しそうな顔を見せてくれた。
     こちらの予想以上の眩しい笑顔、作りモノなんかじゃない、本当に心から喜んでいるとしか思えないその笑顔に、あたしの胸はみるみるうちに幸福感で満たされていく。
    「本当にいいの? うわ、マジ嬉しいよー、マジありがとー!」

    2005-05-27 13:31:00
  • 70:

     彼の笑顔の理由はあたしと話ができるからではなくて、自分の成績が上がるからだということくらいは薄々わかっていた。
     けれど、それでもよかった。
     たとえ金の為だとしてもいい。
    「ユウナちゃんありがとー! マジで俺嬉しいよー!」
     翔は今この街で、こんなにも、あたしが存在することを喜んでくれているのだから。

    2005-05-27 13:33:00
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