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≪風俗≫あたしにも価値はあると言って。。。≪ホストクラブ≫

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  • 1:

    自分のサイトで公開している小説です。
    70%ぐらいはあたしの体験談です。
    あまり上手とは言えませんが、
    実際に風俗やホストの世界にいる方々に
    読んでもらいたくてここに書くことにしました。

    2005-05-27 12:22:00
  • 72:

    「このお店には、ホストは何人いるの?」
    「バイトの人も合わせたら十五人ぐらいかな。俺みたいに、営業日は毎日出勤してるレギュラーは九人なんだ。ほら、あの左端の席にいる、グレーのスーツ着てる人が代表だよ」
     酒を作る手を止め翔がマドラーでこっそりと指差した席では、ショッキングピンクのワンピースを着た小太りの女が隣に座るホストの肩にもたれかかりながら両手でマイクを握ってドリカムを歌っていた。
     テーブルの上はそれぞれ形の違う何本ものクリスタルのボトルやつまみの皿がびっしりと並んでいる。

    2005-05-27 13:35:00
  • 73:

    「代表はね、この店ができてからずっとナンバー1を維持してるんだって。すごいよねー。俺も代表みたいなカッコいいホストになりたいんだ」
     あまりじろじろと見ては失礼な気がしたので、向こうに気付かれないように横目で代表と呼ばれたホストを観察してみた。
     彫りの深い顔立ち、がっしりした体格に日焼けした肌。
     肩にかかるギリギリの長さの髪は茶色に染められ、ところどころにメッシュが入っている。
     いかにも「昔、遊んでいました」風の外見だ。

    2005-05-27 13:36:00
  • 74:

    「カッコいいかなぁ? あたしは翔のほうがカッコいいっていうか、きれいだと思うけど?」
    「えっ、マジで言ってくれてるの? そんなこと言われたことないから照れちゃうよー、でもすげー嬉しい!」
     満面の笑みのまま翔からグラスを手渡され、乾杯をした。
     それからしばらく昨日と同じようなたわいもない話をしながら、あたしは今日Temptationに来てよかった、と改めて思った。
     翔は瞳をきらきらと輝かせて、無垢な少年のような顔で「ありがとう」や「嬉しい」の言葉をいくつもあたしにくれる。

    2005-05-27 13:36:00
  • 75:

     ホストクラブというところは、キザな男たちに囲まれ、その場限りの上辺だけの愛を囁かれ、お姫様のようにちやほやされる、どこかインチキ臭いところを想像していた。
     けれど、このきれいなきれいな笑顔とまっすぐな感謝の言葉は、インチキ臭いどころか日頃あたしを取り巻く他の何よりも汚れなく純粋に思えたのだった。
    「そうだ、ユウナちゃんは今日はお仕事どうだったの?」
     翔がつまみのポッキーを二本取って一本を自分の口に運び、もう一本をあたしの口に入れてくれた。

    2005-05-27 13:37:00
  • 76:

    「ん、いつも通り、普通だったよ」
    「嫌なこととかされなかった?」
     あたしの顔を覗き込むようにして心配してくれた。
    「大丈夫。慣れてるもん」
     嫌なことなんか毎日されている。
     というか、毎日嫌なことしかされない。
     けれども、あたしは自分から風俗という仕事を選んだのだ。

    2005-05-27 13:38:00
  • 77:

     婚約者と別れるとき、彼は初めのうちこそ「金なんかいらない、お前と別れたくない」と言っていたけれど、最終的にはあたしの差し出す通帳を受け取った。
     彼は男としての見栄やプライドより、金を優先したのだった。
     その後あたしは勤めていた会社を退職し、スナックで働き始めた。
     実家に帰ったら? とか東京や大阪へ出たら? とアドバイスを受けたけれど、あたしは真宮の住んでいるその小さな町から離れたくなかった。
     その頃には、真宮に同じ職場で働く若く美人で有能な恋人がいるということは、あたしの耳にも届いていた。

    2005-05-27 13:39:00
  • 78:

     それでも、彼はたまに電話をくれて、ときどきは会ってくれたりもしたから、恋人がいるならなおのことあたしが離れるわけにはいかないと思った。
     離れてしまったら、きっと、真宮とあたしのこのささやかな関係は何もかも終わってしまう。
     もう二度と会えなくなる。
     彼が恋人や多くの友人遠に囲まれて充実した毎日を送り、そうして遠くのあたしのことをあっけなく忘れていってしまう、それはどうしても嫌だったから、意地でもあたしは田舎町へしがみつこうとした。

    2005-05-27 13:40:00
  • 79:

     ホステスとして見栄えがするように服や靴を買い揃えたら、会社を辞めたときの退職金はきれいになくなった。
     酒に酔っても帰りが辛くないように、とスナックのママに店の近くのアパートを紹介してもらったので、敷金やら何やらの費用を会社員時代に作ったカードのキャッシングで用意して支払って引っ越した。
     返せない額ではないと思った。
     半年ほどかけてホステスの給料からゆっくり返済していくつもりだった。
     けれど、話下手で人見知りで器量もよくないあたしにホステスなど勤まるはずもない。
     結局、たったの二ヶ月であたしは逃げるように店を辞めてしまった。

    2005-05-27 13:41:00
  • 80:

     ママから紹介されたアパートに住み続けるわけにもいかなくて、また引っ越さなければならなくなった。
     寿退社するはずが直前で破談になり、そのままOLを辞めて水商売を始め、二ヶ月で店を逃げ出した女。
     毎日平和で退屈で、話題に飢えている田舎町の人々の間で噂が広まるのはあっという間だ。
     もう、真宮が住む町に、あたしの居場所はなかった。
     負け組のあたしに残されていたのは、連日のストレスによる過食と買い物のために最初よりもさらに膨らんだ借金だけ。
     失うモノは何もないって、こういう状況をいうんだろうか、とぼんやり思いながらATMへ行き、引っ越し費用を作るため限度枠ギリギリまで最後のキャッシングをした。

    2005-05-27 13:42:00
  • 81:

     賃貸情報誌を買い、大きく広告を載せていた東京の不動産屋へ電話をかけて保証人も敷金もいらない物件を紹介してもらい、そのまま入居を申し込んだ。
     ついでに引っ越し業者にも電話をかけた。
     真宮にも電話をかけた。
    「そうか、うん、清美はそうした方がいいと思う」
    「寂しいから行くなよ、とか言ってよ、そんなにあっさりされたら悲しいじゃない」

    2005-05-27 13:43:00
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