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≪風俗≫あたしにも価値はあると言って。。。≪ホストクラブ≫

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  • 1:

    自分のサイトで公開している小説です。
    70%ぐらいはあたしの体験談です。
    あまり上手とは言えませんが、
    実際に風俗やホストの世界にいる方々に
    読んでもらいたくてここに書くことにしました。

    2005-05-27 12:22:00
  • 81:

     賃貸情報誌を買い、大きく広告を載せていた東京の不動産屋へ電話をかけて保証人も敷金もいらない物件を紹介してもらい、そのまま入居を申し込んだ。
     ついでに引っ越し業者にも電話をかけた。
     真宮にも電話をかけた。
    「そうか、うん、清美はそうした方がいいと思う」
    「寂しいから行くなよ、とか言ってよ、そんなにあっさりされたら悲しいじゃない」

    2005-05-27 13:43:00
  • 82:

     冗談めかして言うと、真宮は落ち着いた声でゆっくり、はっきりとそれに答えた。
    「寂しいよ。でもね、俺は、清美に幸せになってもらいたい。清美は、俺の大事な大事な妹だから」
     たくさんの思いが溢れて涙声になりそうなのを必死に隠し、あたしは精一杯明るく聞いた。
    「妹なら、また会えるよね?」
    「会えるよ。だから、東京行ってもがんばるんだよ」
     それが、最後の真宮との会話だった。

    2005-05-27 13:43:00
  • 83:

    「ユウナちゃんってさ、辛いこととかあってもあまり口にしないで自分の中で片付けちゃうタイプじゃない?」
     ポッキーを食べる手を休め、翔はじっとあたしの目を見つめてくる。
    「どうして?」
    「俺、ホストになって、風俗で働いてる女の人もたくさん接客したけど、みんなすごくストレスを溜めてる人ばかりなんだ。その人によって度合いは違うけど、こっちから聞かなくても、みんな俺たちに仕事の愚痴とか不満とかぶつけてくるのが普通だよ。そりゃ、俺とユウナちゃんはまだ会うの二回目だから、気を使ってくれてるのかも知れないけどさー」

    2005-05-27 13:45:00
  • 84:

    「だって、それは」
     言っても仕方のないことだから、と言おうとしたけれど、それでは何だかあまりにも翔のことを冷たく突き放すようだったのであたしは続きを飲み込んだ。
     楽して稼げる――そんな仕事があるわけがない。
     働いてお金を得るためには、ある程度の嫌なこと、憂鬱なことに耐えるのは当然だと思う。
     そんなつまらないことでむやみに関係のない翔に愚痴を言ってせっかくの楽しく幸せなムードを壊したくない。
    「ユウナちゃんはしっかりしてるんだね。偉いね」
     あたしが黙っていると、ぽんぽん、と翔が頭を軽く撫でてくれた。

    2005-05-27 13:46:00
  • 85:

     彼は、もしあたしが愚痴を言っても嫌がらずに聞いてくれるのだろう。
     辛い、苦しいと泣き言を言っても、それを受け止めてくれるのだろう。
     ここにはあたしの居場所があるのだ、と気付いて思わず涙が出そうになる。
     翔に気付かれないように手元のグラスへ視線を落とし、強くまばたきをした。
     その日から、毎日のようにあたしはTemptationへ通った。
     翔から誘われる日もあれば、あたしから行く日もあった。
     話題はやっぱりゲームのことだったりドラマのことだったり、ごく普通のことばかりだったけれど、何度も会ううちに話の幅も広がってきた。

    2005-05-27 13:47:00
  • 86:

     いつも翔の顔はどこまでもきれいで、見ているだけであたしは幸せになってしまい、酒が回るにつれ何度も「カッコいいね」「きれいだね」と言っては彼に照れくさそうな顔をされた。
     眞露を飲むのに飽きたら、たまにシャンパンを頼んだりもした。
     そのたびに「すげー嬉しいよー、マジありがとー!」とその整った顔で眩しい笑顔を見せてくれる翔に、あたしは徐々に好意を持っていった。
     真宮に対するような激しく切実な感情ではなかったけれど、ふんわりと淡く温かい思いがあたしの胸を占めるようになっていた。

    2005-05-27 13:48:00
  • 87:

     翔と出会って二ヶ月が経ったある日、「ピンキードール」へ出勤すると店長が苦笑いを浮かべて小声であたしに囁いてきた。
    「待合室、見てみろよ」
     言われた通りにマジックミラーをのぞくと、軽く見積もっても百キロはありそうな太った男が大きなバラの花束をかかえて座っていた。
     ここ一ヶ月、週に一回、多いときは二回通ってきている客だ。
    「あんなデカい花束なんか持ってきてどうしたんだろうな? ユウナちゃん、誕生日だっけ?」
     あたしは首を横に振って、私物カゴを脇に抱えて個室に向かい、手早く部屋をセットした。

    2005-05-27 13:49:00
  • 88:

     カーテンの裏に立ち、店長に目で合図する。
    「お待たせしましたー! ご案内です、ユウナちゃんでーす!」
     のそり、と重たそうな体を持ち上げて、客が目の前に現れた。
     咄嗟に顔には満面の愛想笑いが浮かび、口からは心でこれっぽっちも思ってもいないような女らしく可愛げのある言葉がするすると出てくる。
    「マーくん、来てくれるの待ってたんだよー。今週会えないのかと思っちゃった」
     公務員だと言っていた、三十九歳の独身男。
     マサノブと言う名前らしいのだが、自分から「マーくんって呼んでね」と言ってきたので仕方なくそう呼んでいる。

    2005-05-27 13:49:00
  • 89:

    「寂しい思いさせてごめんなー、ちょっと仕事が忙しかったんだよ。でもユウナちゃんに会うために、今日は仕事途中で切り上げてきたんだ。ほら、これプレゼントだよ」
     ベッドに腰掛けてその巨大な花束を渡された。
     花の値段はわからないけれど、これだけの大きさの花束なら一万円近くはしたはずだ。
    「ありがとう、でもこんなのもらっちゃっていいの?」
     気を使う素振りをすると、男は脂肪だらけの見苦しい顔をにやりと歪め、歯垢のこびりついたままの歯を見せてきた。
    「今日はね、二人の記念日にするつもりだから」

    2005-05-27 13:50:00
  • 90:

    「記念日?」
    「そうだよ。ねぇユウナちゃん、俺達今日で出会って丸一ヶ月がたったじゃない? だから、そろそろ男と女として、ちゃんとお付き合いしようよ」
     マサノブがその巨大なハムのような汗ばんだ腕をあたしの肩にまわし、強引に自分の方へと引き寄せた。
     酸っぱい臭いが鼻をつく。
     瞬間、強烈な嫌悪感が胸に湧き上がり、心臓は急にどくんどくんと嫌な動悸を始める。

    2005-05-27 13:51:00
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