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……イノチ……
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1:
夏苅
市立病院…
その隣に今では誰もいなくなったマンションがある。来年には建て直しの為、取り壊されると言う。
2005年夏−
「拓海……。」一人の女性はそう呟き、手を合わせた。隣では男性が同じ様に屈んで手を合わせる。二人は暫くそうした後、立ち上がりその場を後にした。2006-06-03 20:22:00 -
2:
夏苅
二人が立ち去った場所に残された花束…
それは寂しそうに風に揺らいでいた。
「来年で無くなるねんな…。」「…ウン。」二人はそれ以上言葉を交わさなかった。2006-06-03 20:26:00 -
3:
夏苅
長い式が終わり、これから一年間通う教室へと移動する。
出席番号順に着席すると早速、第一回目のHRが始まった。
まず担任となる先生から…続いて生徒達の自己紹介が始まった。2006-06-03 20:45:00 -
4:
夏苅
一人づつ席を立ち、順調に進んで行く。そして彼女も同じ様と席を立った。
軽く深呼吸をして喋り出そうとした時、急に教室の扉が開いた。
ガラッ−
生徒達の目線は扉へと移動した。
不安そうな顔をした少年が教室の中を覗いている。2006-06-03 20:54:00 -
5:
夏苅
少年は大勢の視線を浴びながらゆっくりと教室へ入って来ると、「すみません…」と頭を下げた。
「ハァ…開いてる席に座りなさい。」先生は一つため息をついて言った。
少年は安堵の笑みを零し、言われた通りに席へ着いた。2006-06-03 21:01:00 -
6:
夏苅
彼女はその間ずっと立ち上がったままだった。「…続き行こかぁ!」先生の声で、自己紹介の途中だった事を思い出した。
「えっと…○×中学校から来ました、岡本夏苅です。宜しくお願いします。」彼女は、喋り出しにくい雰囲気の中なんとか自己紹介を終えた。2006-06-03 21:06:00 -
7:
夏苅
夏苅は「フゥ…」と息を吐き席に着くと、隣に座ったさっきの少年をチラッと見た。
夏苅は隣が空席だったのにも関わらず、さっきまで全く気にもしていなかった事に気が付く。
《入学式に遅刻…?》
成長期にしては小柄でまだまだ幼い顔をした少年は、そんな視線に気が付いたのかクルッと夏苅の方を見た。2006-06-03 21:16:00 -
8:
夏苅
目が合ってしまったが、何となく反らす事が出来ず夏苅はジッと少年を見た。
「ゴメンネ…」「エッ?」
急にそう言われ思わず聞き返した。すると少年は小声でもう一度「さっきはゴメンネ。」と言った。
夏苅が焦って「全然大丈夫やで…気にせんといて!」と答えると少年はニコッと微笑んだ。2006-06-03 21:22:00 -
9:
夏苅
夏苅はそんな少年を見て何故だか違和感を感じた。《…悲しそう。》
そう思った瞬間、チクンッと胸に痛んだ。
少年のさっきの顔が気になっていた夏苅は、クラスメイトの紹介をそっちのけでぼぉっとしていた。2006-06-03 21:31:00 -
10:
夏苅
「じゃ最後…遅れて来た奴!」その先生の声で夏苅はハッと我に帰った。「ハイ。」隣を見ると少年が返事をして立ち上がった。
「○×中学校から来た、岡田拓海です。宜しくお願いします。」
パチパチと静かに拍手をされると、少年は軽く頭を下げて席に着いた。
「ハァ…早々に遅刻か…岡田あとで職員室な。」先生はそう言うと淡々と話しを進めた。2006-06-03 21:38:00 -
11:
夏苅
先生の声だけが教室に響いていた。
《話し長いなぁ…》
夏苅は黒板の上に掛かってある時計を見て思った。時刻は午前11時を回った所だった。
先生は夏苅の気持ちを察知したかの様に腕時計にサッと目を向けると話しを切り上げ次の話題に移った。
「では、残った時間で委員を決めて行きます。」2006-06-03 22:17:00 -
12:
夏苅
その言葉に生徒達からは不満の声が出る。「チャイムまでに決めろよぉ。決まるまで帰えられんからな〜!」
先生はお構いなしに言うと、委員名を黒板に書きだした。
《委員長…風紀…絶対いややな。図書?!中学と変わらんやん…》夏苅は黒板の文字にイチイチ反応して、自分は当たらない事を願った。「まず委員長からやな…誰かやる奴おらんか?」先生はそう言うと生徒を見渡した。生徒の殆どが目を背けている。2006-06-03 22:35:00 -
13:
夏苅
そんな中一人の男子生徒が手を上げた。必ず一人はいるものだ…
「おっ!お前やるか?」「はい!」先生の問いに迷わず答える男子生徒。黒板の委員長の文字の下に名前が書き足された。
そして先生の指示でその男子先生は教卓前に立ち、次々に委員を決めていった。2006-06-03 22:42:00 -
14:
夏苅
「図書委員…誰かいませんかぁ?」委員長の問い掛けに答える生徒はおらず、後少しと言う所で行き詰まった。
困っている委員長を見兼ねたのか先生が立ち上がった。「後、図書委員だけか………。」言葉の後の沈黙が重い。
「よし!岡田…お前やれ!」先生達はその言葉に胸を撫で下ろし拓海を見た。「遅刻の罰や…」「ハイ。」
拓海は引き受けるしかなかった。2006-06-03 22:51:00 -
15:
夏苅
「もう一人は、そやなぁ。」言葉の続きを皆唾を飲み込み待った。「岡本!やってくれるか?」「エッ?私ですか?!」夏苅は驚きガタッと音を立て言った。
まさか自分に回って来るなんて思ってなかった。
「岡田と隣やし、出席番号も一緒やしな!」「そんなっ…「頼んだぞ。」有無を言わせず先生は言う。「分かりました…」夏苅は渋々了解した。2006-06-03 22:59:00 -
16:
夏苅
《あぁぁ…最悪!!!》
夏苅は机に顔を埋めた。調度その時チャイムが鳴り今日は帰る事になった。先生が教室から出て行くと、夏苅は配られたプリントを鞄にしまい込んだ。
「あの…岡本さん。」「?」パッと顔を上げると拓海が気まずそうな顔で立っている。
「ゴメン…俺のせいで。」「…いーよ。」責められないのは夏苅の性格だろう。2006-06-03 23:08:00 -
17:
夏苅
それでも拓海は必死で謝った。「本間にゴメン…仕事は俺するから。」「大丈夫やって!岡田くん謝り過ぎやから!」夏苅はそう言うと「マタネ」と帰って言った。
拓海は夏苅が教室から出て行くのを見送ると職員室へ向かった。2006-06-03 23:12:00 -
18:
夏苅
「夏苅〜!」
夏苅は手を上げ声の方へ走って行った。「彩!お疲れ〜!」違うクラスになってしまった友達の【池村 彩】は、夏苅が来るのを待っていた。
「クラスどうやった?」彩は少し興奮気味で喋る。夏苅は少し悩んで答えた「うーん…まだ分からん!彩は?」。
「分からん?私はまぁまぁやで!」「まぁまぁ?ってか図書委員とかなってもたし!」「マジで?最悪や〜ん!」二人はそんな話しをしながら帰路についた。2006-06-03 23:28:00 -
19:
夏苅
その頃拓海は…
呼び出されていた為、職員室へ来ていた。図書委員をすると言う事もあり、先生の話しはすぐに終わった。
「失礼しました。」職員室を出ると拓海は深いため息をついた。そして鞄を持ち直すとゆっくりと歩き出した。2006-06-03 23:37:00 -
20:
夏苅
「こういうの良いよなぁ…」彩が唐突に言った。「へっ?」「学校帰りにファーストフード!」
「そやなぁ…」夏苅はポテトを食べながら返事をした。「でもやっぱ彼氏と来たいよなぁ!」
彩は一人、目を輝かせ夏苅の返事は待たず話しを続けた。2006-06-04 00:07:00 -
21:
夏苅
「クラスにめっちゃ格好良い人がおってさぁ…」彩はウットリとして想像を膨らませているようだった。
「その人彼女おらんの?」夏苅の言葉に彩は現実に引き戻された。
「知らへん…」「ハハッ!頑張れ!」「それより夏苅はぁ?気になる様な人とかおらんの?!」彩は笑われ恥ずかくなったのか夏苅に話しを振った。2006-06-04 00:17:00 -
22:
夏苅
気になる人と言われ、一瞬【岡田拓海】が頭をよぎったが、直ぐに思い直した。
《イヤイヤ…気になるって、そういうんちゃうし。》
「……だからおらんって!」「その間は何なん?!」「そろそろ出よか!」彩は納得していない様子だったが、夏苅は無視し店を出た。2006-06-04 00:23:00 -
23:
夏苅
その後、最近新しく出来たと噂のカラオケへと向かうと2時間ほど歌い帰る事にした。
彩は用事があると言い店の前で別れた。携帯を開き時刻を確認するともう午後4時前になっていた。
夏苅は携帯を閉じ最寄の駅へ一人歩いた。2006-06-04 00:29:00 -
24:
夏苅
道の先に駅が見えて来た時、ふと駅前の広場に目が行った。
買い物帰りであろう奥様同士が井戸端会議をしている。その先のベンチに見覚えのある姿が見えた。
「岡田くん?」ポツリと呟いき、更に目を懲らして見る。
《やっぱりそうや…何してるんやろ?》夏苅はそう思いながらも、駅へ向かい電車に乗った。2006-06-04 00:36:00 -
25:
名無しさん
更新楽しみにしてます♪
2006-06-04 13:07:00 -
26:
夏苅
27サンありがとう☆ミ
誰も読んでくれてないと思ってたから、メッチャ嬉しいです!これからもヨロシクお願いします♪2006-06-04 18:42:00 -
27:
夏苅
電車に揺られる事10分…自宅の最寄駅に着いた。
夏苅は改札を抜けると再び鞄から携帯を取り出し彩にメールを送った。
−地元着いたでぇ☆また明日ぃっしょに行こなっ!−
PM4:15 メール送信2006-06-04 19:25:00 -
28:
夏苅
陽が西へと傾き、街はオレンジ色に染まっていた。
拓海は夕日を横顔に浴びながら駅前広場のベンチに座っていた。
お腹がグゥ〜っと鳴り空腹を知らす…拓海は右手をお腹に当てると、鞄からお茶を取り出し喉へ流し込んだ。
色素の薄い髪の毛は、夕日によって明るさを増していた。2006-06-04 19:32:00 -
29:
夏苅
翌日−
夏苅はまだ慣れない新しい制服に身を包み、彩と登校していた。
途中「また放課後なっ!」と会話し、下駄箱で靴を履き変えると二人は別々の教室へ向かった。
夏苅は扉が開きっぱなしになった『1−7』の札が刺さった教室へ入った。2006-06-04 19:40:00 -
30:
夏苅
もう既に登校していた拓海をチラッと見ると、直ぐに目線を変え席へ着いた。
まだ生徒は数人しか登校しておらず、ガランとした教室は静まり返っていた。
なんとなく気まずく思った夏苅は隣に座る拓海を見て言った。
「おはよう。」2006-06-04 19:45:00 -
31:
夏苅
「おはよう…」拓海はニコッとして返した。
「静ずかやなぁ?」「ウン。」「………」拓海の物静かな雰囲気に、夏苅は次の会話が思い浮かばない。
その時、昨日の事を思い出しなんの気なしに聞いた。2006-06-04 19:50:00 -
32:
夏苅
「そぉ言えば、昨日△駅の広場に居なかった?」
夏苅の問い掛けに一瞬驚いた拓海は、「なんで?」と聞き返した。
「エッ?昨日見掛けた気がしたんやけど?」「そっか…俺アソコ地元やから。」
拓海は少し頬を染めて言った。2006-06-04 19:56:00 -
33:
夏苅
《見られたくなかったんかな…?》
夏苅は少し疑問に思ったが生徒達も登校して来たので「そうなんや〜!」と話しを終わらせた。
少しするとチャイムが鳴り担任がやって来た。今日はゴールデンウィーク明けにある林間学校のグループ分けや説明がある。2006-06-04 20:06:00 -
34:
夏苅
林間学校とは2泊3日に渡る行事で自然の中で、食事や睡眠以外は文字通り一日中勉強をしようといったスバラシイ行事だ…
2006-06-04 20:10:00 -
35:
☆チャァ$
更新楽∪みに∪てるお?+゚
2006-06-04 21:09:00 -
36:
27→ひろみ
頑張ってね(^0^)/
2006-06-04 21:19:00 -
37:
名無しさん
小説スレで名前被る方が居るようなので変えます。
ひろみ⇒ひろりん
これからも頑張ってね!2006-06-05 03:14:00 -
38:
夏苅
チャァサン☆ひろみサン
ありがとうございます!!これからも応援お願いしますo(^-^)o2006-06-07 09:07:00 -
39:
夏苅
何故そんな行事があるのだろう。目的は分からないまま何組かのグループに別けられた。
出席番号で決められたグループは四人で一組、夏苅は拓海の他に【江川 咲】と【岡 俊介】という二人の生徒同じグループになった。
入学して間もない彼等は、もちろん仲良しではなく話しすらろくにした事はない。2006-06-07 09:16:00 -
40:
ひろりん
主さん頑張って?
2006-06-10 18:40:00 -
41:
名無しさん
タイトルがトイチ‥って見えるワラ思わず借金の話かとワラ
2006-06-11 02:32:00 -
42:
夏苅
ひろりんサン応援ありがとぅ!最近忙しいくて全然更新出来ません(>_
2006-06-11 15:45:00 -
43:
夏苅
夏苅たち4人は、顔を見合わせ「ヨロシク」と微笑み合った。グループのリーダーを決めると、行事の日程表が配られた。
夏苅は日程表を見てギョッっとした。どこを見ても勉強勉強・・・・。
ため息をつきながら班長の文字の横に「江川咲」と書き足した。
その日から何かと一緒になる夏苅と拓海、咲、俊介たち4人は急激に仲良くなって行った。2006-06-14 16:04:00 -
44:
夏苅
入学して3週間がたった頃。
昼休みと言うこともあって教室内は賑わっていた。「GWどっか行かへん?」そんな咲の提案に
夏苅はご飯を口に運びながら聞いた。「どっかって?」俊介が眉間を寄せながら言う。
「どっかはどっか!」「何やそれ。」俊介の突っ込みに咲は少し膨れ拓海に助けを求めたが、
拓海は「何処でもいいよ。」とおとなしく答えた。2006-06-14 16:13:00