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君だけは守る
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1:
NN
■あの時泣き叫んでよかった あの時少し道に迷ってみてよかった 全てはきみに会う為だったと思えば ずっと開いたままだった傷も昨日の涙も 全部 きみに会う為だったと思えば 全て愛しく感じられる 人間は、誰かに守ってもらわなければいけない程弱くはない だけど誰かを守れる程強くはない 難しい生き物だよ
2006-03-13 00:07:00 -
11:
時計は深夜1時半。満員御礼だったのは昔の話。今のカムプリンセスは週末金曜日の深夜1時半で、空席が目立つ。俺のやばい精神状態に気がついてか、アリスは「今日さぁがんばって昼に起きてスカウトいこうよー!付き合うからさ。新宿の駅とかの前でさぁ、かっこいい男の子とか探してホストしませんかーって」とアリスは俺の肩を叩いた。アリスの小さな手が俺の肩に触れた時、頑張ろうよって声が聞こえた気がした。「おお、そうするよ」俺は短くつぶやく。
2006-03-13 00:18:00 -
12:
数々の伝説が生まれたカムプリンセス、彩人やカオルが作り上げた華やかな歴史を散らせるわけにはいかない。カムプリンセスは昔まで正真正銘、美形専門店だったのだから。もう一度、歌舞伎町で花を咲かせるんだ。俺は空席の店内を見渡し、心の中で強くつぶやいた。諦めることは、まだ早すぎる。
2006-03-13 00:20:00 -
13:
■店が終わった朝7時、俺は店のソファで眠り、酔いつぶれて寝転んでいるホスト1人1人に声をかけ、洗顔フォームで顔を洗い終え、携帯を見た。時間は1時過ぎ。俺が新宿駅に走ると、金髪の髪の毛に黒い大きなサングラスをかけたアリスが立っていた。「遅いよオヤジ」「お前店長にオヤジはないだろが!」まったくこいつは新人時代から人のことをおっさんだとかオヤジだとか好きなように呼びやがって..24でオヤジなんていわれちゃたまらない、俺が無言になると、アリスは「ほらほらキャッチするんでしょー!」と俺の背中を強引に押す。そして自分はしゃがみこみ携帯電話を触っている。
2006-03-13 00:21:00 -
14:
本当についてきただけだな..アリスの『自己中過ぎる』姿に苛立ちを覚えながらも、俺は駅前を歩く人ゴミを目で追う。とりあえす、目につく派手な顔の男の子やらに声をかける。「あの、時間ありますか?」「ホストってやってみませんか?」「カムプリンセスって店なんですけど」次々に言葉を投げる、だけど一向にいい返事は帰ってこない。キャッチを始めて40分、気がつけば座り込んでいたアリスも立ちあがり、声をかけ始めていた。1時間40分が経過すると、夏の日差しと、慣れない昼の時間に俺とアリスはダブルパンチを食らい、座り込んでしまった。
2006-03-13 00:22:00 -
15:
アリスは自動販売機で買ってきたジュースを一気に飲み「全然ダメだね、みんな冷たいよね」とため息をついた。ホストを始めて6年になる。店長になって4年目。俺もまだまだ全然ダメじゃねぇか。無言で地面を見つめる俺を横目にアリスは「そういえば」とつぶやく。「オーナーの原田さんが、カオルちゃんをキャッチしたのって、この新宿駅前でしょ?」「ああ、そうだったっけなぁ、もう、4年か3年前の話になるんだよな」カムプリンセス黄金時代を支えた不動の美形No1ホスト・カオルは、大阪から東京に『家出』してきて、この新宿駅でデッカイバックかかえて呆然と立ち尽くしてるところを、カムプリンセスのオーナー・原田さんに声をかけられた、というのがホストになったきっかけだ。
2006-03-13 00:23:00 -
16:
「カオルはやっぱ最初っからオーラあったらしいよ。顔はもちろんだけど、声かけずにはいられないっていうオーラを出しててなぁ」「そうなんだぁ」うなずくアリスを横に、雷は顔を上げ、つぶやく。「そう、あんな感じの・・・」駅の改札口から歩いてくる男を指差した瞬間、雷は声を上げる。「ちょっとアリス!あれ、あれだ!」雷の突然のデカイ声に目を白黒させるアリスの腕を力いっぱいひっぱり、雷は改札口へと走りこむ。
2006-03-13 00:24:00 -
17:
「あのお兄さん、あの!」息をきらしながら雷は男に近寄る。「あ、俺、俺ですか?」いきなりの出来事に男は驚いた表情をする。明るい茶色の髪の毛に、薄い青色のTシャツにGパン、猫顔だ。目元がクッとつりあがっていて、口元もいい。すらっとした細身の体系、背丈は180前後だろうか。「ちょっと雷、今、完璧変質者じゃん。落ち着きなよっ逃げられちゃうよ」アリスが小さな声で警告する。ああ、そうだ。興奮しすぎてる。俺は深呼吸をすると、Gパンのポケットから名刺を取り出し男に手渡す。「俺、こういう者なんだけど、ホストとか興味ない?」男は、雷から名刺を受け取る。
2006-03-13 00:25:00 -
18:
「ホストクラブって寮とかありますよね?今日から寮とかって入れますか?」名刺を食い入るように見ると男は雷を見る。「あるある、もちろん寮あるよ!」アリスが雷の背後から顔をのぞかせる。その瞬間、男は名刺を片手に「よかったわー」と笑った。「あてもないのに東京きて、これからどうしよー思っててん!働かせてください!」男はアリスと雷に豪快に頭を下げる。「うわーよかったじゃーん!雷、よかったねー!!大物ゲットじゃん!」関西弁..雷の頭の中に一瞬、カオルが浮かぶ。
2006-03-13 00:26:00 -
19:
地面には男のものだと思われるでかいボストンバック。家出だろうか?そういえば、原田さんがカオルを新宿駅でキャッチした時も、カオルはでかいボストンバックを持っていたと言っていた。「お兄さん関西弁だけど、関西の人なの?家出?」アリスは相手の『事情』などおかまいなしに質問を投げつける。「大阪からでてきたんです。家出みたいなもんかもしれんけど、一応家出ちゃうねんけど、やっぱ家出になるんかな」男が笑うと奥歯から八重歯が見える。「何か顔、顔がすんごいカオルちゃんに似てる。喋りも関西弁だし。カオルちゃん若くした感じだよねーねっ聞いてる?雷!」
2006-03-13 00:27:00 -
20:
関西弁、家出、大阪、新宿駅、でかい荷物、そしてこのカオルそっくりの顔。気味の悪いくらい、この男は運命的な要素が全てカオルと同じだった。カオルや彩人の黄金時代が作り上げたどんな売り上げ記録より、伝説のNo1カオル似・男との出会いは、『カム・プリンセス』における、最大の衝撃の幕開けになることになる。
2006-03-13 00:28:00