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君だけは守る
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1:
NN
■あの時泣き叫んでよかった あの時少し道に迷ってみてよかった 全てはきみに会う為だったと思えば ずっと開いたままだった傷も昨日の涙も 全部 きみに会う為だったと思えば 全て愛しく感じられる 人間は、誰かに守ってもらわなければいけない程弱くはない だけど誰かを守れる程強くはない 難しい生き物だよ
2006-03-13 00:07:00 -
29:
黒髪にスーツのボタンを開けシルバーのネックレスを光らせた男が、従業員に5000円札を手渡す。「いつもの」無表情でつぶやくと、従業員は「はいはい」と微笑む。そして5000円を持ちレジまで小走りする。「あのコ!?」「そうそう」「うわー本当ねーきれいな子!」男は花束を受け取るとさっそうと店を後にしていった。
2006-03-13 03:05:00 -
30:
■「あれー東吾くん!なーにしてるのー!?どしたのその花!」歌舞伎町の入り口で、東吾はアリスに会った。もう真昼間だというのに、アフター帰りか、酒の匂いがプンプンした。「別に」東吾は花束を隠すようにして、アリスから視線をそらす。キャンキャンわめくアリスを背中に、東吾は歌舞伎町を出た。
2006-03-13 03:06:00 -
31:
■タクシーに乗り込み、15分。病院を前に東吾は精算を済ませタクシーを降りる。病院の中を歩けば手を引かれ歩く老人、車椅子に乗る少年、忙しそうに駆け回る看護婦。昼のにおいがする。気崩したスーツを着る自分とは全く別世界な気分がして、自分の姿に最初は違和感を覚えた。
2006-03-13 03:07:00 -
32:
花束を片手にエレベーターを待っていると、「おにいちゃん、それ、すごくきれいなお花ね」と横に立っていたピンク色のパジャマを着た小さな少女が微笑む。この病院に入院しているコなのだろうか。「ありがとう」東吾は少し笑い、花束からユリの花を一本取り出し、腰を下ろしながら少女に目線を合わせ手渡す。「あげる」「えーっありがとう、ありがとうおにいちゃん。おにいちゃんも入院してる人なの?」少女はユリを片手に微笑む。
2006-03-13 03:09:00 -
33:
「違うよ。彼女が入院してるんだ」「そうなの、じゃあ、彼女が早くよくなるように、恵美、これからお祈りしてあげるね!」ニコっと少女は微笑むと、「おにいちゃん、お花ありがとう。恵美っていうの!これからまたあったら声かけてね!」と3階で降りていった。「ありがとう、恵美ちゃん」東吾は小さく手を振りエレベーターのドアを閉める。5階で止まると、すぐ正面の病室の扉を開ける。
2006-03-13 03:10:00 -
34:
「おはよう」東吾はベットで眠る女に小さく声をかけ、ユリの花をカビンに添える。「直子、いつになったらおきてくれるのか」東吾は女の手を強く握る。彼女は、返事をしない。直子は今、どんな夢を見てる?今なにを想ってる..?
2006-03-13 03:12:00 -
35:
植物状態。いつ目を覚ますかわからない彼女にこうして毎日花を持ち病院へ向かう。俺はこれくらいしか君にできない、なにもできない..手を握り締めれば握り締めるほど、直子との思い出が浮かび上がる。「お前はやくおきろよ」東吾は震える声でつぶやく。2時間ほど経っただろか。俺は病室のドアを閉める。また明日..そう小さくつぶやいて。帰るか。
2006-03-13 03:13:00 -
36:
エレベーターに乗ろうとした瞬間、背後から大きな声が聞こえ振り返る。「そうです、3階の恵美ちゃんの様態が悪化して・・・勝手にあのコ、病室出たみたいなんです!」看護婦の声が聞こえた。 3階の恵美ちゃん?俺は振り返る。とっさに緊急避難用の階段で3階まで走る。恵美ってまさかさっきの女の子..3階につくと、階段の斜め前の病室で医師と看護婦の声が聞こえた。
2006-03-13 03:14:00 -
37:
3階の恵美ちゃん?俺は振り返る。とっさに緊急避難用の階段で3階まで走る。恵美ってまさかさっきの女の子..3階につくと、階段の斜め前の病室で医師と看護婦の声が聞こえた。「しっかり恵美ちゃん、しっかり!ね!」俺は病室のドアを力いっぱい開ける。「あなた..親族の方ですか!?」看護婦が東吾に気がつき声をあげる。恵美ちゃんだった。片手にユリの花を持ち、真っ青な顔でベットに横たわっている。
2006-03-13 03:16:00 -
38:
「さっきのおにいちゃん、きてくれたのね・・」恵美の手を東吾は握り締める。直子の手の感覚と、全く一緒だった。生きたい..その手からそんな声が聞こえたきた気がした。「恵美、頑張れ、直子も頑張ってるんだ、お前も頑張るんだ」東吾は強く手を握り締める。恵美はほとんど力のない手で、東吾の手を弱く握り返し「・・・おにいちゃん、ごめんね、お祈りできなかった・・」と小さくつぶやき、そしてまた小さく微笑み、ユリの花を片手にゆっくり目を閉じた。
2006-03-13 03:20:00