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君だけは守る
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1:
NN
■あの時泣き叫んでよかった あの時少し道に迷ってみてよかった 全てはきみに会う為だったと思えば ずっと開いたままだった傷も昨日の涙も 全部 きみに会う為だったと思えば 全て愛しく感じられる 人間は、誰かに守ってもらわなければいけない程弱くはない だけど誰かを守れる程強くはない 難しい生き物だよ
2006-03-13 00:07:00 -
2:
■「ブサイクだけど酒が強い。飲みキャラ」「顔・酒飲み共に普通、しゃべりがダメ」面接にやってきたホストが持参してくる履歴書に、店長の雷はひとつひとつ特徴を赤ペンで書き加える。「こうしてみるとビビビってくるような男ってなっかなかいないもんだな」十数枚の履歴書を黒のファイルに押し込むと、雷は小さくため息をつく。
『カム・プリンセス』は東京・歌舞伎町では有数のホストクラブとされる『超有名店』だ。在籍人数は40名近く店の規模もとにかくデカい。雷は18の時、この店で働き始め、落ち着いた接客で人気を得て、20歳で店長に就任した。現在24歳。いわいる『スピード出世型』のホストで、店長になった今も毎月ナンバー入りをし安定した人気を保っている。面倒見がいい、時にはおせっかいな雷の下、後輩ホストは日々育っている。
2006-03-13 00:08:00 -
3:
「おいお前、友達でホストやりたがってる奴とかいないか?できれば男前」雷は、ロッカールームのソファに寝転ぶアリスを見る。「いないないーいるわけなーい」めんどくさそうにアリスは手を横に振る。長い金髪の前髪が、揺れる。アリスは19歳。この店で働き始めて1年目だ。身長は小さめだが、アイドル顔負けの『可愛い』顔にファンは多い。ホスト雑誌の美少年特集では常にアリスが巻頭を飾るのも納得できる。アリスは新人時代から先輩に敬語が使えない、挨拶ができない、無断で遅刻に当日欠勤、キャッチするふりしてサボリ、など問題行動があまりに多く、何度もクビの文字が点滅していたが、アリスも1年目にしてようやくプロとしての意識が芽生えたようで、最近は真面目に仕事をしている。
2006-03-13 00:09:00 -
4:
が、相変わらず先輩には敬語を使わない。いや、こいつは多分、敬語の意味も知らない。最近そんな気がしてきた。アリスは携帯電話をいじりながらつぶやく。「最近、店の売り上げ落ちてるんだってねー」アリスの言葉に雷は振り返る。「わかってんなら努力しろ!」俺がアリスを睨むと、アリスはふふんと鼻で笑う。「カオルちゃんや彩人さんみたいに、あーんな美形なホストが同時に二人抜けたらね」痛いとこつくな。俺は自分の心臓を手で押さえる。半年前まで、カムプリンセスにはNo1の『カオル』とNo2の『彩人』という超がつく人気ホストが2人在籍していた。
2006-03-13 00:10:00 -
5:
しかしとある事情があり、二人は同時に店を去ってしまうことになった。浴びるほど飲んでいた酒のせいで『死刑宣告』をされたNo2の彩人に、「夢をかなえる時期にきた」、とホストを引退してしまいカメラマンを夢見て歩き出したNo1のカオル。不動のNo1のカオルと、店きっての美形ホストのNo2彩人が辞めると同時に、店は傾き出した。
2006-03-13 00:11:00 -
6:
今までは、「あの歌舞伎町No1のカオルがいる店だから」「彩人さんを雑誌で見てすごいかっこよくて憧れて」と面接にやってくる子が多く、採用基準は「量より質」だった。だから特上クラスの美形を採用し、ブサイクは相手にもせず、「カムプリは本当に美形だらけですごい。美形専門店。ホストはこうじゃなくちゃね」と夜の街で評判を呼んだ。しかし、カオル・彩人不在の今では面接に来る人数もガクっと減った。採用基準も「質より量」になり、とにかく何でもいいから採用するようになった。
2006-03-13 00:12:00 -
7:
結果「カムプリはレベルが格段に落ちた」「ヘルプでつくのがブサイクホストばっかり!」「在籍60の中で美形は、雷ちゃん、リョウ、アリス、東吾、ゴローくらいじゃね。どんだけの確率よコレ。」など、携帯の掲示板では連日『ブサイク専門店になったカムプリンセス』と日々話題になってしまった。しかもほとんどナンバーの変動がない。No1リョウ、No2ゴロー、No3雷、続いてNo4アリス、No5東吾といった感じだ。それ以下が争うレベルに達していないのだ。
2006-03-13 00:14:00 -
8:
「このままじゃ確実につぶれる」雷は煙草を1本取り出し、口にくわえる。「大ピンチだよねー普通に考えて」アリスが他人事のようにつぶやく。すると、ロッカールームのドアが開く。雷が振り返ると、GパンにTシャツ姿のゴローが立っていた。ゴローはこの店のNo2で数少ない美形の1人だ。短髪に、引き締まった筋肉は、どこかホストらしくなく爽やかなにおいさえしてきそうだ。いつの時代もスポーツマンタイプは女心をとりこにする。ゴローを見ているとそんな事を思い出させる。「お、早いな」雷が笑うのとは対照的にゴローは深刻な顔をしてつぶやいた。
2006-03-13 00:15:00 -
9:
「雷さん、申し訳ないんですけど、2ヶ月くらい休みもらえませんか?」「はぁ!?」雷は飛び上がるように、ディスクを立つ。「大学のオーストラリア研修、採用されると思わなくって..今日採用届けきたんっすよ。それが明後日から、オーストラリアで..2ヶ月間あっちで研修で..。」ゴローはポケットから白い紙を出し、ディスクにおく。『オーストラリア研修』と書かれている。見た瞬間に、雷は失神しそうになった。どうか悪夢であってほしいと願ったのだが、どうやら間違いなくこれは現実らしい。ゴローは何度もすみません、すみません、すみません、と頭を下げた。ゴローはこの店の危機を知っている。だから罪悪感でいっぱいなのだろう。「仕方のないことだ。学生ホストは学業優先、当たり前だ。」
2006-03-13 00:15:00 -
10:
そうは言いながらも、俺の頭の中では去年死んだばあちゃんが三途の川で手招きしてる姿が思い浮かんだ。No2のゴローが2ヶ月の休職..一体どうなるんだこの店は。古い話タイタニックがかたむいて、いや、もう海に沈みかけている状態だ。「気にするなゴロー、気にするなハハ」俺はもう笑うしかなかった。
2006-03-13 00:16:00