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水商売の変貌

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  • 1:

    名無しさん

    1 名前:杏奈:05/09/09 06:58
    夜の世界ではでも耳にしたことがありますよね?突然の変貌や変身って言葉を。そしてその世界に入ってくる約七割が心に何らかの闇を抱えていることを。
    つかればつかる程変わっていく。これは本職ホストの彼氏の実話を元にした話。

    2006-09-07 14:29:00
  • 201:

    杏奈

    「えっ?なんで?」

    光輝は意味が分かってなかった。

    「なんでじゃないやろ。新しい布団買いに行くねん。あんなサイテーな布団で寝たくないし」

    2006-09-11 14:32:00
  • 202:

    杏奈

    「あっ…そっかごめん。じゃあ買いに行こか」

    状況を理解した光輝は苦笑いをしながら運転してた。布団…光輝があの香水くさい女とやった布団。そんな布団早く捨てたかった。

    無事新しい布団を買った私達は、家に帰るとバタバタと動き回りながらなんとか終了。買ったばかりのふかふかの布団は今の自分の気持ちのように暖かい空気に包まれてた。

    2006-09-11 14:34:00
  • 203:

    杏奈

    「なーあの女って客なん?聞きたくなかったけど気になるから教えて」

    「えっ…客…やで。クラブのホステスやけど。てゆうか俺ほんまあんなん浮気やと思ってないから。なんつーか…間違い…やし何の感情もなかったし。お前がおらんくなってやけくそやってん」

    「ふーん、あっそ」

    2006-09-11 14:36:00
  • 204:

    杏奈

    私はちゃんと分かってた。光輝の過ちを。光輝はきっと後悔してるって。だからもう忘れてあげよう。

    「俺…ちゃんと幸せにするからお前のこと。もう全部過去のことも整理できたし自分を見つめ直せたから。今度は俺が杏奈のために頑張っていくからな。そばにおってくれよ」

    2006-09-11 14:36:00
  • 205:

    杏奈

    「なに真面目な顔してるん変なのー。おなかすかん?なんか作ろっか」

    「あ…うん。っつーかお前俺が真面目に話してんのにちゃんと聞けよ(笑)ほんじゃスーパーでも行こか」

    「もうお皿とか割らんといてや。あんなん昭和の親父がちゃぶ台ひっくり返すのと同じやで」

    2006-09-11 14:38:00
  • 206:

    杏奈

    「分かってるって。ごめんってゆうたやん」

    私と光輝は、あの日のことが笑い話になった。その日は二人でスーパーで買い物して一緒に晩御飯作って…久しぶりに二人でゆっくりテレビ見たりして。

    何もすることなくただ手をつないでた。長く付き合ってると体を求めるよりも心を求めるようになる。繋がってるのは体じゃなくて心。きっとそれが本当の幸せなんやろなって思った。

    2006-09-11 14:40:00
  • 207:

    杏奈

    次の日からは、またあの慌ただしい生活が始まった。光輝はホストの仕事に復活。私は相変わらず何もすることなく家事するのみ。

    朝帰って来る光輝のためにご飯作って、一緒に寝て夕方起きて朝ご飯作って…。私まで夜行性になってた。アースさんは光輝が無事に帰って来たことを本当に喜んでくれてた。

    2006-09-11 14:45:00
  • 208:

    杏奈

    時々アースさんの自宅にお呼ばれされて、一緒に鍋をしたりそんな仲の良い付き合いをしながら季節は12月を迎えた。

    ━12月━

    12月といえば、水商売が一番忙しくなる時だった。世間一般みんなが忙しいとは思うけど、一番お金の動く季節やから。

    2006-09-11 14:46:00
  • 209:

    杏奈

    “世の中の景気の良し悪しは水商売が一番分かる“とアースさんは言っていた。世間が良い景気だと、お金がよく動くって。それが一番分かりやすいのが飲食業や風俗業って。

    そんな冬のある日、私は日曜日に光輝と久しぶりにデートしようとミナミに出掛けた。

    2006-09-11 14:50:00
  • 210:

    杏奈

    街はクリスマスモード一色。綺麗なイルミネーションでそこら中がキラキラ彩られてた。
    光輝と過ごす三度目の冬も私は変わらず光輝の隣にいて…。

    「めっちゃキレーやなぁ。やっぱ冬っていいよなぁ…一年で一番キラキラしてるし。でも今年も…光輝仕事やんな?」

    2006-09-11 14:51:00
  • 211:

    杏奈

    「それゆうなって。ごめんってば。まぁ今年も仕事やからしゃあないなぁ…。けどクリスマス前の日曜でも俺らのクリスマスしよ」

    光輝はそう言うと舌を出して変顔をしてきた。おちゃらけた顔…。あほみたいな顔。でも憎まれへん顔。

    2006-09-11 14:53:00
  • 212:

    杏奈

    でも、思えば一年のうちイベントごとなんて一緒に過ごせることなんてない。
    お互いの誕生日もクリスマスも光輝はいつも当日は仕事で。結局別の日になる。イベントなんてあってもないようなもんだ。

    ホストを仕事にしてる光輝と付き合ってるからしかたないんやけど。半分諦めモード。

    2006-09-11 14:55:00
  • 213:

    杏奈

    ゆっくりできるのは日曜日か年末年始、GW、盆ぐらい。それ以外は光輝はみんなのものやから…。
    三度目のクリスマスも結局一緒にはいれないんや…。やっぱり寂しかった。同世代の友達を見てると羨ましかった。

    普通に記念日過ごしたり、イベントごとにどこか遊びに行ったり。街中を堂々と手を繋いで歩いたり…。

    2006-09-11 14:57:00
  • 214:

    杏奈

    “当たり前”のことが当たり前じゃなくて…“普通”にできることが普通にできんくて…。
    本音を言えば不満はあった。でもそれは口にするべきじゃないこと。だってそれは付き合っていく上では否めないことやったから。

    2006-09-11 14:58:00
  • 215:

    杏奈

    そんなことを考えながら私はミナミの街を光輝と歩いてた。

    「あ、客や。杏奈ちょっとごめん。先歩いてて」

    視線の先には金髪のヤンキーみたいな女の子がいた。私は言われるままに光輝から離れて先に歩いた。こんなことは初めてじゃない。前にも何度かあったから。光輝にとってお客さんに見られては“困る”私。私はいつからかミナミを二人で歩くことも嫌になるようになった。

    2006-09-11 15:01:00
  • 216:

    杏奈

    すれ違う人はみんな楽しそうに笑ってる。前を歩くカップルは仲良さそうに手を繋いで歩いたり。
    でも私は…デート中に一人で歩いて…。わけわからんなんて呟きそうになる。

    「ゴメン!びっくりしたわぁマジで。ゴメンな」

    2006-09-11 15:02:00
  • 217:

    杏奈

    やっと光輝が来た。ぶすっとした私を見て平謝り。機嫌を直そうと必死で喋ったり。結局いつもそれで私も折れてた。

    「ミナミもあれやし今日梅田でも行く?そのほーが客にも会わんやろし」

    光輝にそう言われて私達は梅田に向かった。着いてからは何食べる?なんて言いながら東通商店街を歩いてた。

    2006-09-11 15:09:00
  • 218:

    杏奈

    でも…場所を変えても同じやった。一緒に入ったお店でお客さんを見つけてしまい結局急いでお店を出たりして。

    仕方なくまた商店街を歩きながらご飯食べる場所探してたらまたお客さんに会ったりして離れて歩いたりしてた。
    ナンバーワンやから仕方ないけど…だんだんむかついてた。

    2006-09-11 16:21:00
  • 219:

    名無しさん

    しおり?

    2006-09-11 21:28:00
  • 220:

    杏奈

    「もう帰ろおもんない」

    言いたくない言葉が出た。週に一回しかない休みの日やのに、そんな言葉言いたくなかった。せっかくの休みやのに…楽しく過ごしたいはずやのに。

    「ごめん…」

    2006-09-11 22:52:00
  • 221:

    杏奈

    光輝を責めたって仕方ないのに…自分が嫌になった。何でこんなことでイライラしたり光輝の仕事のこと、分かってあげられへんねやろうって。

    「ごめん…」

    私も謝った。光輝は少し悲しそうな顔をしてた。多分気持ちは同じやった。相手のこと思ってんのにその想いが空回りしてて…。

    2006-09-11 22:54:00
  • 222:

    杏奈

    「まぁ…もういっか!杏奈行くぞ」

    光輝はそう言って私の手をつかんで商店街を歩きだした。またお客さんに会うかもしれんって分かってんのに…。

    「光輝、いいよ。ごめんな。こんなんしてくれんでいい。こんなんさせてゴメン。もう大丈夫やから…」

    2006-09-11 22:55:00
  • 223:

    杏奈

    そう言った時、急に涙が出た。自分がカッコ悪くて。光輝にこんなことさせた自分が情けなかった。
    ナンバーワンの光輝が手を繋いで歩いてる姿をお客さんが見れば、それは仕事にも差し支えることになる。光輝はそれを分かってたのに手を握ってくれた。

    そんな光輝の気持ちを考えたら涙が止まらなかった。私めっちゃあほやわって。

    2006-09-11 22:56:00
  • 224:

    杏奈

    一番の理解者であるべきはずの私が、一番光輝の仕事のこと分かってなかった。水商売ってゆう自分を売る仕事のこと…何も分かってなかった。

    「泣くなって(笑)とりあえずここ入ろっ。焼肉でいいやろ?ほらっ」

    光輝は私の肩に手を置くと、そのままお店の中に入った。

    2006-09-11 22:58:00
  • 225:

    杏奈

    「泣き虫やなぁお前は。そんなに泣いてたら徳光さん並やで(笑)」

    光輝は笑いながら言った。…そん時思った。もっと大人にならなあかんって。もっと光輝に近づきたいって。もっともっと知りたいって。

    「あ…杏奈も…光輝と同じ仕事したい…。ってゆうかする」

    2006-09-11 22:59:00
  • 226:

    杏奈

    「もうええって。やらんでええから。お前はそんなんせんと家におってくれたらいいねん」

    光輝は絶対に首を縦にはふってくれなかった。

    「だって…光輝のこと分かりたいねんもん。立場とか仕事とか。同じ仕事したら気持ちとかも分かるやん。いいやろ?」

    2006-09-11 23:01:00
  • 227:

    杏奈

    結局、その時は話を流されてしまい返事は後でまた考えておくと言われた。
    私はそれから家に帰ってからも、光輝に何度も念を押してオッケーしてもらえるようにお願いしながら頑張ってみた。

    「じゃあオッケーするにしても絶対約束してもらうことが三つある」

    2006-09-11 23:05:00
  • 228:

    杏奈

    光輝は面倒くさそうに頭をかきながら私を見てそう言った。
    「約束?三つって何?守るから言って!」
    「…お前本気なん?」
    「めっちゃ本気やし」
    「マジかよ…。分かった分かった。一つめは週三日だけ。それ以上はシフト入れたらあかんってこと。できるな?」

    2006-09-11 23:06:00
  • 229:

    杏奈

    「うん、できる!」
    私は元からレギュラーで入るつもりなんてさらさらなかった。
    「二つめは同伴とアフターは絶対せんこと。要するに店以外では客と会うな」
    自分は同伴ってゆうやつしてるのに…でも私はしたいとも思わなかったし、ちゃんと光輝の言葉にうなずいた。

    2006-09-11 23:07:00
  • 230:

    杏奈

    「三つ目はお父さんとお母さんに、ちゃんと自分で夜やることを話して、許してもらったら俺もオッケーしたるわ」
    一瞬自分の顔が引きつった気がした。
    「え…マジで?それセコいわぁ。絶対あかんって言われるに決まってるやん」

    2006-09-11 23:09:00
  • 231:

    杏奈

    光輝は最初から三つ目の約束ができないと分かっていたんだと思った。ムキになってた私は、やれるならやってやろうと思って言ってしまった。
    「分かった。じゃその三つ守ったらやっていいんやんな?杏奈約束できるで」

    光輝は目を丸くして驚いていた。

    2006-09-11 23:10:00
  • 232:

    杏奈

    「えっ…う…ん」
    「やったぁ☆これで杏奈も光輝に近くなれる☆」
    そんな安易な考えで始まった“水商売の世界”。始めはお父さんもお母さんも反対してきたけど、昔から頑固な性格だった私は何度も話をして最後は渋々許してもらった。

    2006-09-11 23:12:00
  • 233:

    杏奈

    そして、お店を決めることになった。候補は三店舗あった。以前スカウトをされていたミナミのキャバ、新地のクラブ、もう一つは光輝の知り合いが経営してるキャバだった。
    光輝は自分がミナミで働いてるせいか、新地に行くことは反対してきた。スカウトのキャバもダメ。

    2006-09-12 00:17:00
  • 234:

    杏奈

    結局、光輝の知り合いが経営していた大箱のキャバに行くことになって…。
    その当時は今から二年半前。まだミナミも活気づいていたほうだった。
    入店する前に、時給の交渉などは全部光輝がやってくれていて、私は適当にドレスを買っておいた程度。

    2006-09-12 00:29:00
  • 235:

    杏奈

    入店初日。華やかな街へと足を踏み入れた。お店は綺麗な内装でたくさんのホステスさんがいた。
    光輝のお店とは少し違う感じ。まぁホストとは違うもんなのかもしれんけど。
    「名前なににする?」
    「えっ?変えたほうがいいんですか」
    「いや、それは杏奈ちゃんの自由やで。変えたかったから変えていいしそのままでいいならいいし」

    2006-09-12 00:32:00
  • 236:

    杏奈

    どうしよう…結局私は名前を変えることなくそのままで入店した。
    「名前呼ばれたらチェンジってことやから…etc」
    私の担当になってくれた千場くんは、入店初日のドシロウトの私にとりあえずたくさんの説明をしてくれた。

    2006-09-12 00:44:00
  • 237:

    杏奈

    「あっ、杏奈さんお願いします。とりあえず着いてみよか。分からんことあったらすぐ手上げて呼んで」

    千場くんに呼ばれた私は、初めての接客に着いた。

    「失礼します初めまして」

    2006-09-12 00:48:00
  • 238:

    杏奈

    お客さんは二人組のサラリーマンだった。雰囲気は良くて意外に普通。
    なんやこんなもんなんやってゆうのが印象的やった。もっとこう…なんてゆうかイメージが悪かったから。普通に会話したり少しお酒飲んだりする程度なんやぁみたいな。

    2006-09-12 00:49:00
  • 239:

    杏奈

    「もう指名された?」
    急にお客さんは私にそう聞いてきた。
    「いえ、全然まだです」
    「よっしゃ、じゃあ俺が初指名したるわ。君けっこう面白いし気に入ったし」
    そう言うとその人は、ボーイを呼んで指名すると言ってくれた。初めての指名。よく分からなかったけど、少し嬉しかった。

    2006-09-12 00:50:00
  • 240:

    杏奈

    結局その人は三時間もいた。帰りぎわ、私に携帯番号を聞いてきたからどうしていいか分からず、向かいに座っていた女の子の真似をして名刺に番号を書いて渡した。
    「また電話するわ」
    その人はそう言って帰って行った。私の初めてのお客さん。その人は二年半たった今も飲みに来ている。

    2006-09-12 00:51:00
  • 241:

    名無しさん

    気になる??

    2006-09-12 13:09:00
  • 242:

    名無しさん

    ゥチも気になる??

    2006-09-13 18:30:00
  • 243:

    杏奈

    初日は何事もなくスムーズに席を回れた。指名も場内指名が五本。多分新人だったから気を使ってくれたのかもしれないけど。
    とりあえずはそんな感じで営業時間が終わり、更衣室で着替えていると一人の女の子に声をかけられた。

    2006-09-13 23:33:00
  • 244:

    杏奈

    「名前なんてゆうん?今日からやんなぁ?」

    私をジッと見たその子は私にそう言った。

    「あ、今日からです…杏奈って言います」

    2006-09-13 23:35:00
  • 245:

    杏奈

    「杏奈ちゃんかぁ。あたしルイってゆうねん。よろしくね」

    「ルイさん?いくつなんですか?」

    そんな会話をした記憶がある。ルイは同じ歳だった。初めて会ったその頃は仲も良かった。当時、ルイは店のナンバーワンやったけど威張ったりもしてなかったしめちゃくちゃ感じのいい子やったから。

    2006-09-13 23:36:00
  • 246:

    杏奈

    その日は着替え終わって帰ろうとした時、代表の勇二君に呼び止められた。

    「飯食いに行かん?俺、光輝の友達やし光輝に電話して聞いてみ。仕事のことも話しときたいし」

    「あ、はい…」

    2006-09-13 23:37:00
  • 247:

    杏奈

    光輝の友達やしまぁ大丈夫か。そう思って電話をしたら光輝もすんなりオッケーしてくれた。

    「勇二どこ行くん?」
    「ご飯行くならうちらも連れてってーやー」
    私と代表が店を出ようとした時、二人組の女の子が後ろからそう言って来た。

    2006-09-13 23:38:00
  • 248:

    杏奈

    「お前らはまた次連れてったるわ。今日はこの子初日やったし仕事のことも話しておきたいことあるし」

    「うちらん時は初日でも連れてってくれんかったくせにー。勇二なんか知らんわアホ!」

    その女の子達はそう言うと少し怒った顔で帰って行った。

    2006-09-13 23:39:00
  • 249:

    杏奈

    一番気まずいのは私だった。別におなかが空いていたわけでもなく、ご飯食べに行きたかったわけでもないのに。
    あの女の子達を連れてけばいいのに…内心そう思ってた。
    「ごめんなーあいつらいつもあーやねん。行こか」

    代表はそう言うと先に歩き始めた。

    2006-09-13 23:39:00
  • 250:

    杏奈

    着いた先は居酒屋。夜の4時が過ぎてたのに人はたくさんいた。こんなに人おるもんなんやぁって思ってた。
    「ビールでいい?」
    「あ、いいですよ」
    私はお酒が強いほうではなかったけど、少し気も使ってしまってたし苦手なビールを飲むことにした。

    2006-09-13 23:40:00
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