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水商売の変貌

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  • 1:

    名無しさん

    1 名前:杏奈:05/09/09 06:58
    夜の世界ではでも耳にしたことがありますよね?突然の変貌や変身って言葉を。そしてその世界に入ってくる約七割が心に何らかの闇を抱えていることを。
    つかればつかる程変わっていく。これは本職ホストの彼氏の実話を元にした話。

    2006-09-07 14:29:00
  • 401:

    杏奈

    ミナミに着くといつもどおり人がたくさんいて、いつもどおり賑やかで…。
    私は結構この街が好きだった。でもその日はいつもと少し違った。光輝を変えてしまったこの場所が嫌いになりそうだった。

    「杏奈どしたん?大丈夫?めっちゃぼーっとしてるやん」

    2006-09-18 12:50:00
  • 402:

    杏奈

    「あ…ごめん。大丈夫やでなんもないよ」

    私がそう言っても真美は少し心配そうな顔をしてた。それから美容院でセットが終わると、お店が違う真美は働いているラウンジに向かって行った。

    「店終わったら電話して☆今日もウチ来るやろ?一緒に帰ろうなぁ」

    2006-09-18 12:51:00
  • 403:

    杏奈

    真美は別れぎわにそう言って手を振ってた。いい友達がいて良かったなって思った。
    私は正直ゆうと光輝が全てやった。ずっと光輝とおったしずっとそれでいいとも思ってた。
    だから自分が夜の仕事をするまでは、家にいるのが当たり前で。友達ともたまに会うぐらい。

    2006-09-18 12:52:00
  • 404:

    杏奈

    友達って大事やなぁって。それと急に電話をかけた時でも、何も言わずに話聞いてくれる子、会ってくれる子、一緒にいてくれる子がいて良かったなって。
    私にそんな子が何人いてるんやろ?そう考えた時、自分の甘さを痛感した。光輝ばかりになってて、大好きやった友達と今は距離があるなぁと。

    2006-09-18 12:54:00
  • 405:

    杏奈

    そんなことを一人で黙々と考えながら私もお店に向かってた。今日もルイと顔合わすことになるんや…だるいなぁ…。
    一発殴ってやりたいぐらいの気分やった。人の気持ち逆なでばっかしてきて一体何がしたいんやろう。

    2006-09-18 12:57:00
  • 406:

    杏奈

    「おー杏奈おはよ」

    お店に入るとボーイの千場くんにまず声をかけられた。

    「あっおはよー。代表店いてる?」

    2006-09-18 13:06:00
  • 407:

    杏奈

    「うん来てるでー。どうしたん?あ!それより杏奈今日から出勤増えるんやろ?聞いたで代表から!頑張ってナンバー1なってな」

    えぇ?何で知ってるん…。とは思いながらも改めて思い出した。そっか、私ナンバーワン目指すんやったっけな…。

    2006-09-18 14:00:00
  • 408:

    杏奈

    「あんま大っきい声でゆわんとってな…。でもまぁ、とりあえず頑張る」

    私がそう言うと千場くんはニコッと笑ってうんってうなずいてた。

    それから着替えのために更衣室に入るといつものルイの取り巻きメンバーが雑談してた。

    2006-09-18 14:01:00
  • 409:

    杏奈

    私はその後ろを素通りしてロッカーの前まで行くと、とりあえずそのまま着替えてた。

    「おはよー」
    「あーおはっ♪」
    「ルイさんおはようございますぅ」

    2006-09-18 14:07:00
  • 410:

    杏奈

    ルイ…?そう、あのルイが出勤してきたのだ。私は聞こえないフリをしながら黙って着替えてた。

    「あーこれ誰ですかぁ?彼氏?めっちゃ恰好いいですねぇ」

    お店の女の子、サキがルイの携帯を見ながらそう言っているのが聞こえてきた。携帯に写ってるのは光輝だと分かってた。

    2006-09-18 14:08:00
  • 411:

    杏奈

    ルイは多分、私がそのことを知らないと思っていたと思う。

    「そやろー♪めっちゃカッコイーやんなぁ。ルイの好きなダーリンやねん♪」

    聞いててまた頭が痛くなった。ルイの声、言葉、顔、存在…全てがうっとうしくて。

    2006-09-18 14:12:00
  • 412:

    杏奈

    我慢の極限やった。

    (バンッ!)

    私は気付いたらロッカーを蹴ってた。少しへこんだロッカーを見ながらもう一発ドンっと蹴った。

    2006-09-18 14:15:00
  • 413:

    杏奈

    「なに!?」
    「えっ!?何の音!?」

    女の子達は少しざわついてた。びっくりした顔で。

    「ハハッ、どうせ杏奈やろ?頭おかしいから」

    2006-09-18 14:19:00
  • 414:

    杏奈

    まっとう…ってゆったら変かもしれんけど、その先輩のお葬式や家に線香をあげに行った時に、先輩のお母さんに言われたことがあって。

    「お願いやからレディースとか暴走族はやめて」って。「あの子みたいになってほしくない」って。「親孝行しなあかん」って。

    でも一番引っ掛かった言葉があった。

    2006-09-18 15:14:00
  • 415:

    杏奈

    「私があの子を殺したようなもんや」って。「バイク乗るのやめさせてれば」って。
    泣きながらそう言ってた。私はそん時に思った。ヤンキーをやめようって。大好きやった先輩は、多分亡くなってからもずっと苦しんでるって思ったから。

    親や友達、後輩、それから彼氏も…。いろんな人を悲しませてるから。だから苦しんでるんじゃないかなって

    2006-09-18 15:15:00
  • 416:

    杏奈

    やっぱり言いたいことはいっぱいあったと思う。親には親孝行したかったやろうし、友達や仲間とはずっとつるんでたかったはずやし。
    好きな…付き合ってた彼氏にも好きやでって、ありがとうって言い残したこといっぱいあったと思う。
    でも、死んでしまってからじゃいくら後悔しても遅いから…。だから先輩のためにも私だけでも変わりたかった。

    2006-09-18 15:16:00
  • 417:

    杏奈

    だからそれから喧嘩なんて一回もしなかった。バイクにも手つけんかったし、人にも手あげんかった。
    悪いことからは一切遠ざかってた。
    だから私が本気で怒ったのは、その時以来…まさか相手がルイになるなんて思ってもみんかった。

    「誰が頭おかしいって?」

    2006-09-18 15:17:00
  • 418:

    杏奈

    「え?」

    「だから誰が頭おかしいかって聞いてんねん!」

    私が大声を張り上げると、ルイの周りにいた女の子達はびっくりして口があいたままだった。それからルイも…。

    2006-09-18 15:18:00
  • 419:

    杏奈

    シーンとしてた。私は黙ったままのルイのそばまでいって耳元で大声を出して聞いた。

    「なぁ?お前耳ついてんのか?ちゃんと声聞こえてるか?」

    「きっ聞こえてるわ!」

    2006-09-18 15:20:00
  • 420:

    杏奈

    ルイは慌てながらそう言ってきた。私は思った。我慢をすることは大事やけど、爆発させることも必要なんやって。

    「で?誰が頭おかしいって?はよゆえや?なぁ」

    「べ、別にあたしそんなんゆってないし」

    2006-09-18 15:20:00
  • 421:

    杏奈

    手を出すつもりは初めっからなかった。でも、ルイに我慢し続けてきていた分、あまりにもふざけた答えに私の手はルイのアゴをつかんでた。

    「はぁ?お前のこの口がさっきゆうとったんちゃうんか?」

    「ちょっ、やめてよ」

    2006-09-18 15:21:00
  • 422:

    杏奈

    「あんまいちびっとったらいってまうで?お前の家ごといったろか?人が何もゆわんかったから機嫌よー好き勝手やってきたみたいやけど人おちょくんのもええ加減にせーよ!」

    更衣室は静まり返ってた。やばっ…やってもーた…。そう思った時には時すでに遅し。

    2006-09-18 15:23:00
  • 423:

    名無しさん

    リアルタイムやぁ?まぢぃおもろぃ?続きはよ読みたい?

    2006-09-18 15:23:00
  • 424:

    杏奈

    ルイは何も言い返してこなかった。もっと面白いことになるかと思ってたのに無反応で空回りやった。

    宣戦布告。その言葉そのもの。ルイも少しはおとなしくなるやろう…。
    それから更衣室を出たら、代表が立ってた。

    2006-09-18 15:24:00
  • 425:

    杏奈

    「おはよ。アンどーしてん?びっくりした顔して」

    勇二君は私の顔を見てそう言った。びっくりした顔?あ、もしかして聞いてたんかな?

    「今ってもしかして声聞こえてた?」

    2006-09-18 15:25:00
  • 426:

    杏奈

    「えっ!?何も聞こえてないで」

    良かったぁ…。ほっとしたのもつかの間やった。

    「人おちょくんのもええ加減にせーよ!とか全然聞こえてないで(笑)」

    2006-09-18 15:27:00
  • 427:

    杏奈

    笑いながら勇二君はそう言った。げっ…ってかめっちゃ聞こえてたんやん…。

    「ちょっとスッキリしたんちゃう?頑張ろな。次はナンバーワンなってとことんやったれ」

    「うん…頑張る」

    2006-09-18 15:27:00
  • 428:

    杏奈

    「つーかアンって元ヤン?びっくりするわぁ」

    「もう!それは忘れてな。めっちゃ恥ずかしいわ…。仕事頑張ろーっと」

    そんな話をしながら仕事を開始した…。変な日の始まりやった。

    2006-09-18 15:28:00
  • 429:

    杏奈

    その日は始まりがあんなんやったせいもあって、めっちゃパワフルに頑張った。指名客もうまい具合に来てくれてたし、場内もかなり取った。
    今思えば、ほんま…何やろ?ただ必死やった。意地になってた。
    水商売の変貌…そのものやった。光輝が変わったって思ってた。でもそれだけじゃなかった。私も…変わっていってた。

    2006-09-18 15:29:00
  • 430:

    杏奈

    光輝を好きになって、いろんな感情を知った。
    楽しい気持ち、悲しい気持ち。むかついたり悩んだりもした。嬉しくて幸せだったり…やきもちやいて悔しい思いもした。

    つまらない一言や、ちょっとした行動で喧嘩になったり、たいしたことないことに跳びはねたくなるぐらい幸せを感じたり。
    人を好きになってよく分かった。感情だけはどうにも理解しがたいもんだなって。

    2006-09-18 15:30:00
  • 431:

    杏奈

    感情をコントロールできるなら苦労しないのに。喜怒哀楽が同じだけ順番に出てくればいいのに。
    私だけかもしれないけど、いいことや悪いことが続けてくる気がして。まとめてどっとくるような感じ。
    特にこのころはそう思ってた。何でこんなに嫌なことばっかり続くんやろうって。

    2006-09-18 15:31:00
  • 432:

    杏奈

    光輝は多分いつもの喧嘩や…ぐらいにしか思ってなかったと思う。まさか本気で別れようと思ってたなんて気付きもしてなかった。

    私が同棲していたマンションから飛び出してからも変わらずに鳴る光輝からの電話やメール。
    私は最初は戸惑ってた。電話に出ようかメールを返信しようかって。

    2006-09-18 15:35:00
  • 433:

    杏奈

    でも折れるわけにはいかなかった。また同じことの繰り返しになるような気がしたから。
    ルイのことが一番の理由やったけど、仕事に溺れていく光輝を見るのが嫌やった。
    仕事のためなら私の嫌いな女だって客にできるし、私の気持ちなんて二の次で。

    2006-09-18 15:36:00
  • 434:

    名無しさん

    おもろい???

    2006-09-19 04:17:00
  • 435:

    杏奈

    よくゆうやん。ホストの彼女は忍耐力がいるって。
    ふざけんなって思わん?なんで彼女が耐える必要があるんかな?なんで彼女が我慢しなあかんのかな?

    間違ってるよね。
    付き合うってことは、お互い対等なわけでしょ。どっちかが我慢してどっちかが楽して。そんなんっておかしいなってその時ようやく分かった気がしてた。

    2006-09-20 06:41:00
  • 436:

    杏奈

    それに初めて自分から何かをしたいって思えたから。それがNo.1になることやった。
    最初はルイに対するライバル心、対抗意識、報復みたいに考えてた。やっぱりルイはNo.1やったしそこからとりあえず変えたいって。

    2006-09-20 06:42:00
  • 437:

    杏奈

    だから変わっていった。私は相変わらず真美のマンションに居候しながら、新居が見つかるまで生活してた。
    仕事は毎日…でてた。人間って何かに本気で没頭した時ってびっくりするくらい力発揮できるもんやねんなぁって思ったよ。
    必死やっただけやけど、光輝と付き合ってた間一回もしたことがなかった同伴やアフターにも行くようになったし。

    2006-09-20 06:43:00
  • 438:

    杏奈

    それに評価がすぐに出るし目に見えて分かる。グラフや指名の張り出し、もちろん給料も変わった。
    嬉しかった。仕事もやることやってれば結果は必ずついてくる、それが分かったから。
    私はNo.5だった先月の順位から、その月はNo.3まで上がってた。光輝から離れて一ヶ月半くらいの頃やったかなぁ…。

    2006-09-20 06:44:00
  • 439:

    杏奈

    光輝も変わってた。相変わらずNo.1やったのは知ってたけど、すごい売り上げをあげてるってとあるサイトで見たり。
    その時は光輝からの連絡もあまりなくなってた。私が出ていって3週間くらいは毎日毎日電話もあったけど、それからは減っていってて…。

    2006-09-20 06:45:00
  • 440:

    杏奈

    人って不思議なもんで連絡ずっとしてきた人があんまりしてこなくなったらなんか変な気分になるよね。
    何してんねやろ、何で連絡減ってきたんやろって。
    結局自分勝手やねん。連絡きてもほっといたんは自分やのに。いざ光輝が変わってきたら焦ったりして。
    ほんまアホやなぁって思った。

    2006-09-20 06:46:00
  • 441:

    杏奈

    ルイのことも気になってた。まだ光輝の店行ってんのかなぁって。今どうなってんねやろって。
    毎日ルイはキャバクラで会うけど、更衣室でもめたあの時以来、私とは一言も話さないままやったし。
    それに私が仕事を頑張ってるのを見て焦ってたのかは知らんけど、ルイまで必死になってるように見えた。

    2006-09-20 06:47:00
  • 442:

    杏奈

    勇二君は相変わらず私のよき相談相手で飲み友達やった。仕事中もかなり応援してくれてたし。
    光輝と喧嘩したあの日以来、勇二君は何も言ってこないけど、光輝とは喧嘩したままやったやろうし。これからどうするんやろ…
    私がそんなことを考えてる間にも、複雑なそれぞれの想いが交錯していってた。
    私、光輝、ルイ、勇二君。四人の糸は、からまり始めていた。でも、一度もつれてしまった糸は簡単にはほどけなくなって…。

    2006-09-20 06:48:00
  • 443:

    杏奈

    そんな時、新たな出来事が起きた。
    ちょうどまだ肌寒い三月の終わりだった。私は仕事が終わると、真美に電話をかけた。
    「もう仕事終わったよー。真美は?」

    「ごめん!アフター中やねんやん。先帰っててくれるー?ごめんなぁ」

    2006-09-20 06:49:00
  • 444:

    杏奈

    「分かったぁじゃあ先に帰っとくね」

    そう言って電話を切った…その時、離れた前のほうに見覚えのある後ろ姿を見つけた。
    光…輝?光輝かな?私は何故か久しぶりにドキドキしてた。私が家を飛び出して二ヶ月目の頃だった。
    でも、唖然とさせられた。光輝の隣を歩いてたのは、ルイやったから。私は少し離れて歩きながら見てた。二人は光輝の働いている店のビルに入って行ってた。

    2006-09-20 06:50:00
  • 445:

    杏奈

    私なにやってんねやろ…こんなとこまで来て…。

    「杏奈さん?」

    えっ?と思い振り返るとそこには光輝の店のヒロがいた。

    2006-09-20 06:51:00
  • 446:

    杏奈

    「何してるんすか?つーかめっちゃお久しぶりっすよね。光輝さん待ってるんすか?」

    「あ、ちがうねん…たまたま…通っただけやから。ここで会ったこと光輝には言わんといて」

    ヒロは不思議そうに私を見ていた。

    2006-09-20 06:51:00
  • 447:

    杏奈

    「ヒロ無理せんと頑張りや。またね」

    私はとりあえずその場から急いで離れた。っていうか…ルイ…まだ来てるし。
    どういうことよ…光輝。もういいんかなぁ…ほんまに。私なんて必要ないんかな?だからまだ平気でルイのこと店呼んだりできるんや…。

    2006-09-20 06:52:00
  • 448:

    杏奈

    なんか久々にオチた。私この二ヶ月何してたんやろうって。仕事に必死になって…ルイへのライバル意識だけで。
    光輝のことよりルイへの嫉妬や仕返しでNo.1を目指したりして。
    でもそんなことで必死になってた間も何も変わってなかった。むしろ私だけが空回りしてた。

    2006-09-20 06:53:00
  • 449:

    杏奈

    なんかどうしようもない気持ちが苦しかった。ぶつけようもない気持ち、気持ちをぶつける相手もおらん…。
    涙が出そうやった。目いっぱいに涙がたまってた。あかん…涙こぼしたら…そう思って歩いてた。
    早く帰ろう。帰ってお風呂入ってスッキリしよう。それからビール飲んで寝よう。そうすれば…明日になれば…忘れられる。今日のことも。

    2006-09-21 01:33:00
  • 450:

    杏奈

    「大丈夫?」

    歩いていた私の前に立って突然話しかけてきたのはスーツに身を包んだホストだった。

    「どいて」

    2006-09-21 01:34:00
  • 451:

    杏奈

    「何で泣いてんの?」

    ホストは私の前からどかずに突っ立ったままだった。邪魔やし…早く家に帰りたい…どいてよ…。
    私は我慢してた涙が止まらんくなってた。光輝のことやルイのことでもううんざりやったのに街中のホストまで私のこと馬鹿にして…。
    私はホストを押しのけて歩いた。ふざけんな!って思いながら。

    2006-09-21 01:35:00
  • 452:

    杏奈

    「なぁー何で泣いてんの?何かあったんなら話聞くでー。なぁーお願いやからちょっとだけ話聞いてーやー。なぁー」

    でも、ホストはそう言いながらずっと後をついて来た。

    「ついてこんといてよ、ホストなんて行かんし。ついてきても時間のムダやで。だいたい杏奈ホスト嫌いやから」

    2006-09-21 01:36:00
  • 453:

    杏奈

    「ふーん、杏奈ってゆうんや?」

    あっ…最悪や…。焦ってた私を見てそのホストはちょっとクスっと笑ってた。

    「なぁ、杏奈ってどこの店?キャバクラ?」

    2006-09-21 01:38:00
  • 454:

    杏奈

    馴れ馴れしい。その言葉がピッタリな奴やった。

    「関係ないやん、ていうかもうついてこんといて」

    「まぁ関係ないけど(笑)自分めっちゃ気強いな。怖いわ。でも何かあったから泣いてたんやろ?俺ヒーローやからそうゆうのほっとかれへんたちやねん」

    2006-09-21 06:38:00
  • 455:

    杏奈

    ヒーロー?あほちゃうコイツ…。あほらし…そう思って無視して歩いた。
    やっと静かになった。よかった…もう大丈夫や。でもしばらく歩いて後ろを振り返ってびっくりした。

    自称ヒーローはまだついてきてた。

    2006-09-21 06:39:00
  • 456:

    杏奈

    「何でおるん、ついてこんとってってゆったやん!」

    「何でもいいやんこっちに来たかったから来ただけやで。悪い?」

    …。何よコイツ。でもちょっとおかしかった。初対面の人にキレたり怒ったりして。

    2006-09-21 06:40:00
  • 457:

    杏奈

    降参…やった。イライラしてたしストレスも発散したかった。

    「もういいわ分かった。飲みに行けばいいんやろ」

    「別に来たくないならこんでいーで。キャッチじゃないし。ゆったやんさっき。俺はヒーローやって。泣いてたから助けたろうと思ってん」

    2006-09-21 06:41:00
  • 458:

    杏奈

    「ハハッ(笑)やっぱり頭おかしいみたいやな。まぁいーや、店どこ?」

    「マジで来るん?」

    つくづく変な奴やった。マジで来るん?って普通ゆわんやろ…って。それから私は誘導されるがままにとあるビルへと足を踏み入れた。

    2006-09-21 06:41:00
  • 459:

    杏奈

    「いらっしゃいませー」

    一歩足を踏み入れたその店は、暗い中にいくつもの照明がキラキラ光ってた。

    「なに飲む?何でも飲み放題やけど。説明してなかったけど初回やしフリータイムで3000円やねん。好きな酒ある?」

    2006-09-21 06:42:00
  • 460:

    杏奈

    「何でもいい、あっビールでいいや」

    一分後、テーブルにはビールが運ばれてきた。

    「自分で払うから俺もビール頼んでいい?あっコレ、名刺やからもらって」

    2006-09-21 06:43:00
  • 461:

    杏奈

    私は名刺を見て驚いた。ただのチャラホストかと思ってたのに、名刺には代表って書かれてたから。

    「ほい、カンパーイ」

    グラスを持ってとりあえず乾杯をしたものの、イメージが違いすぎて話しにくくなってしまった。

    2006-09-21 06:45:00
  • 462:

    杏奈

    「ほんまに代表さん?」

    「そーやけど何で?みえへん?」

    「いや…そんなんちゃうけど代表クラスとかって外出たりせえへんのちゃうかなぁと思って」

    2006-09-21 06:46:00
  • 463:

    杏奈

    「だから俺はヒーローやからやって(笑)さっき助けてって思ってたやろ?っていうか陽介でいいで呼び方」

    そう言って笑ったホスト、陽介は第一印象がめちゃくちゃやった。でも面白かった。

    「なぁー杏奈って店どこなん?ミナミ?」

    2006-09-21 06:46:00
  • 464:

    杏奈

    「ミナミやで。近くやけど(某店)知ってる?」

    「えっ?○○?嘘やろ?マジかよ…」

    ホスト陽介は店の名前を聞いたとたん顔つきが変わってた。何か嫌なことでもあったんかな?うちの店で。

    2006-09-21 06:47:00
  • 465:

    杏奈

    「なぁ、その店にルイってやつまだおる?」

    ル…イ?聞きたくない名前やった。またルイ?ルイが私にまとわりついてるんかって思うくらいやった。

    「おるけど…何で?知り合いなん?」

    2006-09-21 06:48:00
  • 466:

    杏奈

    「あぁ…前の女やねん」

    「えっ?マジで?」

    陽介はルイの元カレやった。不思議な巡り会わせやなぁと神様を怨んだ。別にストレス発散で飲みに来ただけやったけど、そんな場所にまでルイをつなげるなんて…。

    2006-09-21 06:49:00
  • 467:

    杏奈

    「あいつちょっとおかしいやろ?散々やったで。客ともめたり暴れたり。情緒不安定なんやろけど」

    ホスト陽介はルイとのことを話し始めた。ルイは陽介の前も別のホストと付き合ってたらしい。ホスト好きとゆうかそんな感じやって言ってた。

    「なぁ、別に杏奈そんな話聞きに飲みに来たわけちゃうねんけど」

    2006-09-21 06:50:00
  • 468:

    杏奈

    「あ、ごめん。つーか何でさっきはマジで泣いてたん?何かあったんやろ?」

    ホスト陽介の言葉はあったかく聞こえた。最近誰かに話を聞いてもらえただろうか。
    真美とは毎日一緒にいるけどやっぱり真美は仕事で疲れてたり帰ってきても寝てたりするからそんなに話せないままだった。勇二君とも光輝の話題はあえてしなかったし仕事の話ばかりで。

    2006-09-21 06:53:00
  • 469:

    杏奈

    だから誰かに何かあったのかって聞かれたことが嬉しかった。多分陽介じゃなくても誰でもよかった。
    優しい言葉で埋められたかった。

    「悔し泣き…かな。自分が格好悪くて。なんかよく分からんようなってさ。なぁホストって楽しい?みんな変わってしまうんかなぁ」

    2006-09-21 07:13:00
  • 470:

    杏奈

    「わ…からん」

    「酔うたままならケガするっちゅうこと。俺がそうやったから。うぬぼれていちびって、落とされてどん底見て。だから自分で目覚まして落ちとくべきやねん。上に立つと見下すやろ?人を。そうじゃなくて上に立っても目線はいつも上を見とくってこと」

    2006-09-21 13:31:00
  • 471:

    杏奈

    その時はその言葉の意味がいまいちよく分からんかった。でも今はよくやく少し分かる気もする。

    「もしかして彼氏ホストなん?」

    「えっ…あ、彼氏っていうか元ってゆうか…好きやねんなぁって今日思わされた。離れても変わらんねんなぁって」

    2006-09-21 13:34:00
  • 472:

    杏奈

    「No.1なん?もしかして代表とか役職?店どこ?」

    「店はゆわれへんけどNo.1で代表やで。けどホスト始めた頃とめっちゃ変わってしまった。なんかやっぱり寂しいなぁって思う。どんどん変わってくの見てて怖いなぁって」

    「水商売の変貌…か。俺もそんなんゆわれたことあるわ昔」

    2006-09-21 13:35:00
  • 473:

    杏奈

    ホスト陽介もかつてミナミを騒がせたほどの有名ホストだったらしい。その頃もも変わらず有名は有名やったけど。

    「そんなに好きなんや?いいよなぁ人をそんな好きになれて」

    ホスト陽介はそう言うと、少し寂しげな顔をした。それがとても綺麗な顔で。

    2006-09-21 13:37:00
  • 474:

    杏奈

    「何で?彼女とか好きな女の子いてないの?」

    私は気付けばそう聞いていた。陽介の不思議さに興味をもって。

    「俺?おれなぁ…おらん。っちゅうか無理やな。ほしいとも思わんし。昔は…ほんまに好きやった女一人だけおったけど。もう結婚してもうたし」

    2006-09-21 13:38:00
  • 475:

    杏奈

    「そっか…」

    嫌なことを思い出させてしまったようで何も言えなかった。しばらく黙って飲んでるとホスト陽介は静かにその忘れられない一人の女の話をしてくれた。

    「客やってん。っていうか店に引っ張るために色で繋いでてんな。そいつ俺の店来るために風俗で必死で仕事したりして。その頃の俺はテングになってたNo.1やってん。」

    2006-09-21 13:40:00
  • 476:

    杏奈

    「俺はめっちゃラッキーと思って色使いまくって金使わせてたんやけど。そいつめっちゃ純粋に俺のこと好きやってんやん。だから文句もゆわんといつも飲みに来たらニコニコしとった。顔見れてよかった、これで明日も頑張れるって。」

    「うん」

    私は黙ってあいづちをうちながら話をきいていた。

    2006-09-21 13:44:00
  • 477:

    杏奈

    「風邪ひいたとかちょっとしんどいとかメール入ってても俺は仕事頑張れよしか返さんかったりしたのに、いつも来たらニコニコしてあほみたいに笑って。ガキやなぁこいつって思ってた。ええ鴨やって。半年ぐらいずーっと店きてたわ。店以外で会ったのは二回だけやし営業ついでに手繋いでチューしただけ。これ聞いてどう思う?」

    2006-09-21 13:46:00
  • 478:

    杏奈

    「最悪…やけど色ホストならそれも普通なんかもしれんね。でもその子めっちゃ真っ直ぐな子やん、いつも笑ってニコニコしてるなんて。何も文句言わずに色にのまれてたんやろ?」

    「うん…。でも急に連絡とれんようになってんな。店にもこんようなって。しばらくしたら携帯も解約されてた。」

    2006-09-21 13:47:00
  • 479:

    杏奈

    「俺、なんかよう分からんけどめっちゃ探してた。客減るとか金とか自分ではそうゆうことで必死になってると思ってた。でも…ちゃうかってん。いつも当たり前におったのに…ニコニコしとったのに…急におらんようになってもうて焦っててん。気付いたらあいつが俺の中で大きい存在になっとってん」

    2006-09-21 13:49:00
  • 480:

    杏奈

    人って本当に愚かなもの。失って初めて気付いたり、離れて初めて分かったり。すぐ目の前にあるものだからこそ一番見えなくて。

    いつもそばにいる人ほど大切さに気付けない。だっているのが“当たり前”になってるのだから。

    2006-09-21 13:50:00
  • 481:

    杏奈

    でも気付いた時には遅い時もある。間に合わない時もある。だからこそ自分をうらみたくなる。
    何で気付かんかったんやって。何で分からんかったんやって。後悔先に立たず。昔の人は何か意味を込めてことわざを作ったのだろうか。
    出会いと別れは背中合わせ。好きと嫌いも背中合わせ。昨日までそばにいた人がいなくなったり、好きでいてくれた人に嫌いになられたりもする。

    2006-09-21 13:51:00
  • 482:

    杏奈

    深い深い恋愛とゆう迷路に入りこんでしまった時、ゴールに相手がいるのといないのとでは全く違う。
    ゴールに大好きな人がいればどんなに難しい長い迷路でも、絶対に会えると分かってるなら急いでゴールを目指せるよね。
    でもゴールに誰もいなかったら?入り込んだ迷路の中を最後までゴールを目指して進める?

    2006-09-21 13:52:00
  • 483:

    杏奈

    ホスト陽介は迷路に入り込んでたのにスタートするのが遅かった。
    ゴールにその子がいた時にスタートしておけば、きっといい結末のゴールを迎えていたはずなのに。

    今は行き場のない迷路をぐるぐる回ってるだけ。ゴールが見付からずに迷ってる。
    そして、苦しんでる。だからいまだに新しい恋もできずに立ち止まったまま。

    2006-09-21 13:54:00
  • 484:

    杏奈

    「結局そのままなん?その子とは」

    「え?うん。けどそれから店のやつが男とおるの見たって言ってて。そっからは全然知らんかってんけど去年やから一年前ぐらいかな?偶然見てん。ベビーカー押してたわ。男と二人で。結婚したんやろうな」

    そう言うとホスト陽介は少し悔しそうな顔をした。

    2006-09-21 13:55:00
  • 485:

    杏奈

    「あいつ俺のこと好きちゃうかったんかなぁ…」

    弱気な声でそう言った。ホスト陽介は今でも気付いていなかった。彼女がなぜ自分の元からいなくなったのか。

    「好きやったに決まってるやん。好きで好きでどうしようもないくらい好きやってんで多分。だから離れてんやん。自分が崩れてしまうから。いつも笑ってたのも寂しさの裏返しやったんじゃないん?」

    2006-09-21 13:56:00
  • 486:

    杏奈

    その子はきっと離れることより好きでいることのほうが辛かったんじゃないかな…。
    自分がいくら想っいても変わらないままの恋。好きでいるために、会いたいために自分の体を盾に頑張ったり。色だと分かる営業の仕方や態度にも疲れてしまったのだと感じた。
    だって好きな人から離れてしまうのってほんまに辛いやん。それをしたぐらいやから。

    2006-09-21 13:57:00
  • 487:

    杏奈

    「俺が…幸せにしたかったわ。去年見た時な、あいつめっちゃ幸せそうな顔しててん。にこーっと笑ってめっちゃええ顔してた。あんなん見たら声かけれんかったわ…」

    「そっか。でもよかったやん幸せで。幸せでいてくれただけでよかったやん。だから陽介も新しい恋して幸せ見つけてみ。多分思ってるよ、幸せになってほしいってその子が一番。」

    2006-09-21 13:58:00
  • 488:

    杏奈

    「そやな。つーか俺なに喋ってんねん!みたいな。こんな話あんましたことないのに。杏奈も彼氏?元カレか知らんけど手に届くとこにおるなら気持ちちゃんと言うとけよ。俺みたいになんで(笑)なっ?」

    陽介はまた笑ってた。ほんまに不思議な子やなぁって思った。なんかあんなに悩んでたのにスーッと楽になってた。

    2006-09-21 13:59:00
  • 489:

    杏奈

    「なぁ、番号教えてや。別に営業なんかせんから。でもまた話聞いてほしいかも。杏奈の話も聞くし。休みの日飯でも行こや」

    そんなこんなで帰りぎわにメモリー交換をした。あんなに第一印象よくなかったのに、何故か“いいヤツ”と思うぐらいになっていた。
    チェックはちょうど6000円だったけど私に3000円だけちょーだいと言って残りはポケマネで出していた。つくづくおかしな子やなぁと思った。

    2006-09-21 14:00:00
  • 490:

    杏奈

    帰り道、ふと考えてた。
    私は何を強がって光輝にまで壁を作ってしまってたんやろうって。

    一番大事なものが一番遠くにいってしまう。あかん…このままじゃ。私は携帯を手にしてた。メモリー登録000はいつも光輝の指定番号だった。

    2006-09-21 14:03:00
  • 491:

    杏奈

    プップップッ…
    発信ボタンを押してた。プルルルル…受話器から聞こえる音を目を閉じて聞いてた。

    「ハイ」
    久しぶりに聞いた光輝の声やった。変わらないいつもの声、なぜか少しほっとした自分がおった。

    2006-09-21 14:04:00
  • 492:

    杏奈

    「ごめん…仕事中?」

    私は少し戸惑いながらもそう言った。

    「そうやけど。別に大丈夫やで。どうしたん?」

    2006-09-21 14:05:00
  • 493:

    杏奈

    「えっ…あ、ちょっと話したくなってん。っていうかちゃんと光輝と話したくて。ごめんなずっと電話でんかって」

    「そうなんや…話ってなんの話?杏奈お前勇二と付き合ってんねやろ?いまさら何の話があるん」

    …えっ?一瞬耳を疑った。勇二君と付き合ってる?

    2006-09-21 14:07:00
  • 494:

    杏奈

    「何のこと?意味わからんねんけど」

    「は?こっちが意味分からんし聞きたいわ」

    すぐに分かった。ルイの策略にはめられてるって。きっとルイは光輝にデマを話して光輝はそれを聞いたんやって。

    2006-09-21 14:08:00
  • 495:

    杏奈

    「ちょっ待ってよ。そんなんありえると思ってんの?ありえるわけないやん」

    私は光輝に言った。

    「えっ?違うんか?」

    2006-09-21 14:47:00
  • 496:

    杏奈

    「どーせルイにでも吹き込まれたんやろ?」
    「そーやけど…だってお前ずっと連絡とられへんし勇二も電話もしてこんかったから」

    やっぱりルイか…。光輝はアホや。何でルイの言葉を鵜呑みにできたんやろ。

    2006-09-21 14:48:00
  • 497:

    杏奈

    「杏奈が違うってゆっても信じられへん?」
    「いや…信じるけど。てかお前今どこ?」
    「ん?今は御堂筋の橋のとこやけど」
    「ちょっと待ってて!今から行くから!すぐ行くから待っててな」
    光輝はそう言って電話を切ってしまった…。

    2006-09-21 14:50:00
  • 498:

    杏奈

    私は朝の御堂筋で一人ぼんやりと川を眺めてた。
    「杏奈っ!!」
    光輝が走りながら私の名前を呼んだ。息切れしながら私の目の前に立った光輝は私を見ると何も言わずにそっと抱きしめてきた。

    「ちょっ…光輝!?」

    2006-09-21 14:51:00
  • 499:

    名無しさん

    もっと読みたい?

    2006-09-21 15:12:00
  • 500:

    杏奈

    行き交う人達の目線や朝っぱらからこんな場所で…って感じで車の中からジッと見る人もいた。
    「光輝?」
    「あ…ごめん。痛かった?ちゅーかお前ほんま…もう…俺よう分からんけど…やたら走ってたし(笑)もうなにがなにか分からんわ」

    私も同じだった。よく分からんけど言葉では表せないような感情で。

    2006-09-21 21:03:00
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