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水商売の変貌

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  • 1:

    名無しさん

    1 名前:杏奈:05/09/09 06:58
    夜の世界ではでも耳にしたことがありますよね?突然の変貌や変身って言葉を。そしてその世界に入ってくる約七割が心に何らかの闇を抱えていることを。
    つかればつかる程変わっていく。これは本職ホストの彼氏の実話を元にした話。

    2006-09-07 14:29:00
  • 51:

    杏奈

    光輝のお客さんは若い女の子もたくさんいた。クラブのママさんクラスの人も。その日も光輝のお客さんは三組も来てた。
    視線に耐えられなくなり、私は帰ろうとしたけど終電もなくなりどうしようかと悩んでいた。
    『明日もショップのバイトあるし帰るわ』
    光輝にそう言うとそのまま一緒に席を立ち、お店を出てくれた。エレベーターをおりてもくっついたまま。

    2006-09-07 20:20:00
  • 52:

    杏奈

    『もういいよ?早く戻ってあげて。お客さんめっちゃ来てるんやし』
    私はそう言うと光輝に背を向けて歩いた。でも私の後をついてくる。
    『あの通りまで一緒に行くわ。タクシー乗るまでゆっくり歩こう』
    光輝はそう言うと私の隣にピタッとくっついた。
    そしてタクシーを拾ってくれると私に一万円渡して帰ったら電話しろよって笑ってバイバイしてきた。

    2006-09-07 20:26:00
  • 53:

    杏奈

    行き先を告げるとタクシーは走り出した。私は何度も後ろを振り返った。光輝は見えなくなるまでずっと見送ってくれていた。
    バイバイしたばかりなのに胸がしめつけられる。光輝のことが好き。はっきりとそう思った。
    もっともっと時間がほしい。でもあと少し我慢すれば毎日一緒にいれる。そう思うと耐えられた。

    2006-09-07 20:28:00
  • 54:

    杏奈

    家に着いて光輝に電話をした私は電話を手にしたまま寝てしまってた。
    次の日からは変わらないいつもの日々。日曜日が待ち遠しくて、それだけを楽しみに毎日頑張ってた。
    そして、一年記念を控えた日曜日、やっと待ちに待った物件探しの日が訪れた。その日は光輝は寝ないで夜の仕事をしている人を専門とした不動産屋の人と朝から二人で待ち合わせをした。
    『何件かリストアップしてるんで絞っていきましょうか』

    2006-09-07 20:31:00
  • 55:

    杏奈

    私は不思議に思った。普通は不動産屋ってお店に行って色々調べるもんだと思ってたから。こんなこともできるんやって少し感心してしまった。
    喫茶店で物件資料を広げ、十件近くあるマンションから設備や場所、環境を考えて三件まで絞った。
    そしてお昼前には物件めぐり。まるで新婚さんにでもなったかのように私達ははしゃいでた。

    2006-09-07 20:33:00
  • 56:

    杏奈

    一件、二件、三件と見たけど私は絶対に二件目が良かった。光輝はどうなんだろうなぁ?そう思ってるとニコニコした光輝が私に話してきた。
    『杏奈の気に入ったとこでいいで☆杏奈が選んでくれや』
    『えー?光輝はどこが良かったん?杏奈もゆうから教えてや。どこも良かったしなぁ…』
    『うーん俺は二番目に見たとこが良かったかなぁ。キッチンも広かったしベランダも日当たり良かったし』

    2006-09-07 20:35:00
  • 57:

    杏奈

    『ビンゴ!杏奈も二件目が良かったぁ!じゃあ決まりい☆』
    『ほんまに二件目か?俺に合わしてない?まぁいっか。じゃあ決めよか』
    そしてその日のうちに仮契約をすませた。ずっと待ち続けた夢が叶った。私は飛び上がりそうになるぐらい嬉しかった。

    2006-09-07 22:05:00
  • 58:

    名無しさん

    見てます?

    2006-09-07 23:31:00
  • 59:

    杏奈

    審査にも無事通過し、一週間後の日曜日に本契約した。その日にカギをもらうと私達は喜んですぐスペアキーを作りに行った。
    なんだかくすぐったい気分だった。とりあえず何もない部屋に二人で行った。
    電気やガスの契約をし、明日からでも住める用意を整えた。
    『なぁ杏奈の荷物取りに行こか。今日しかないやろ。ついでに何か挨拶しとかなあかんやろし。同棲すんねんから』

    2006-09-07 23:51:00
  • 60:

    杏奈

    『うん☆どうせ服とかそんなもんしかないけど』
    私は嬉しくて声が弾んでた。『ついでに帰りに家具とか電化製品見よか。俺かなり金貯めてたから保証金とか払ってもめっちゃ残ってるし』
    そして、お店の店長にハイエースを借りた私達は、とりあえず私の実家に向かった。日曜日ってこともあったし、家に着くとお父さんの車が止まったままだった。
    うちの家は普通の家庭だ。平凡な楽観主義な両親と、もう結婚している歳の離れたお姉ちゃん、年子の弟の五人家族。

    2006-09-07 23:53:00
  • 61:

    杏奈

    光輝と付き合っていることは家族みんな知っていた。お父さんもお母さんも光輝がホストだと知っても何も言わなかった。
    一度家に遊びに来た時の挨拶の声の大きさや礼儀正しい印象が良かったらしい。だから私が最近同棲する話をした時も、軽く流してくれた。

    2006-09-07 23:57:00
  • 62:

    杏奈

    『ただいまぁー』『おじゃまします!』
    私と光輝が家に入るとリビングにはお父さんとお母さんが待ってくれていた。
    『座って座って』
    お父さんは少し嬉しそうだった。普通、娘が彼氏連れて来たら怒ったりするのが普通やのになぁ…私は笑いそうになった。
    『契約大丈夫やったんか?』
    お父さんがそう言うと私達は二人でカギを見せ合った。

    2006-09-08 00:00:00
  • 63:

    杏奈

    部屋に行って荷物をまとめてる間、光輝はお父さんの釣りの話に付き合わされていた。まぁ幸い光輝も釣りが好きだったから話も合ってて一安心だった。
    玄関に荷物もまとめ終わりリビングに戻ると、お父さんが今度みんなで釣にいこうとゆう話にまでふくれあがってた。
    意外と光輝も乗り気でお父さんは上機嫌だった。

    2006-09-08 00:11:00
  • 64:

    杏奈

    そしてもう夕方になってしまったから帰ることにした。また今度遊びに来てねと言って実家をあとにすると私達はハイエースに荷物を積み、電化製品を買いに向かった。
    コンポは私の部屋から持ってきたけど、それ意外全部揃えなきゃならなかった。テレビに冷蔵庫、洗濯機に炊飯器。一通り揃えて明日配達してもらうことになり私達は家へと帰るために車に乗り込んだ。

    2006-09-08 00:22:00
  • 65:

    杏奈

    『あっ!!』
    光輝が急に大声を出した。『なんなん?びっくりするやん…』
    『肝心なこと…ベッド…ってゆーか布団のこと忘れてた。どうしよ?今なら間に合うかな?』
    時計を見ると8時前。ぎりぎり開いてるだろうってことで急いでお店を探した。そしてやっと見つけたホームセンターで布団を買うことができた。ダブルサイズで枕が二つ。
    ベッドを買うまで布団でいいやん☆そんな会話をしながらも幸せいっぱいやった。

    2006-09-08 00:25:00
  • 66:

    杏奈

    付き合って一年目は二人で迎えることができた。もう日曜日じゃない普通の日でも記念日は一緒にいられる。
    私はバイトを週三日に減らし、なるべく光輝と生活リズムを合わせるようにした。一日二回は家でご飯を食べるように毎日料理も頑張ったし光輝も仕事が終わったらすぐに帰ってきてくれた。

    2006-09-08 00:36:00
  • 67:

    杏奈

    その頃の光輝はナンバー2をキープしてた。ナンバー1は、もちろんアースさん。代表だけあってやっぱりアースさんは凄かった。
    『いつかアースさん抜くのが夢やねん』
    光輝はこれが口癖やった。でもそんな夢もそれから二ヵ月後、すぐに叶ってしまった。
    光輝がホストを始めて1年4ヵ月目のことやった。その頃私とは付き合って1年2ヵ月がたっていた。

    2006-09-08 00:38:00
  • 68:

    杏奈

    ガチャ…バタバタ
    帰ってくるなり急いで私に駆け寄った光輝は嬉しそうな顔で『俺今月のナンバーワンなれてん!!』って。
    私は一緒に喜んだ。そしてアースさんも喜んでくれていた。でもこれを機にアースさんは現役を引退し、裏の経営者になることになった。
    常日頃からアースさんはよく言っていたとゆう。
    『ナンバーワンじゃなくなった時が俺の引き際や』って。

    2006-09-08 00:40:00
  • 69:

    杏奈

    寂しい気がした。でもそれがアースさんにとっての、ホストのプライドだった。そして、光輝に抜かれるなら本望だと。
    それからアースさんは表舞台からは引退した。光輝は有名になった。アース代表を引退まで追いやったやり手ホストって。
    そしてチーフから店長に、その一ヶ月後には常務になった。全てが順調に進んでいった。

    2006-09-08 00:41:00
  • 70:

    杏奈

    でも毎日ベロンベロンになって帰ってくる光輝を見ていると心配やった。同棲を始めて三ヵ月がたつ頃には食事を作って待ってても、お酒飲んで帰ってきて気分が悪くなって吐いてる光輝は
    『ごめん明日くうわ』
    って言うようになってた。そんな日々が続くと食事を作って待ってることがアホらしくなっていった。

    2006-09-08 00:42:00
  • 71:

    杏奈

    私の悪いクセ。自分のことばっかり考えるようになっていった。ナンバーワンになった光輝は毎月の給料も半端じゃないぐらい持って帰ってきてくれたけど、その分少しずつ変わっていくのが分かる。
    このままで大丈夫なんかな?私は毎日そう思うようになっていった。

    2006-09-08 00:43:00
  • 72:

    杏奈

    でもそのたびに信じること、アースさんに言われた言葉を思い出してた。あかん、私が光輝の一番の味方で理解者でおらな…そう思うようにした。
    その頃、私は光輝に言われて服屋のバイトもやめることになり、毎日家にいる日々。光輝のいない夜はたまに暇を見つけては友達と遊んだりしてた。

    2006-09-08 00:45:00
  • 73:

    杏奈

    『いいなぁ杏奈は。仕事せんでも遊ぶお金もらえて。めっちゃ羨ましいわ』
    友達はみんな私にそう言ってた。でも充実なんてしてなかった。なにかが違う、そう思ってた。
    心のどっかにポッカリ穴があいてるみたいに足りない何かを考えるようになっていった。
    光輝は酔い潰れて店で寝てしまう日もあるようになってたし、家で一人でおる時間がすごく苦痛やった。

    2006-09-08 00:46:00
  • 74:

    杏奈

    ナンバーワンになってからの光輝はキープするために前以上に必死で頑張ってた。家におる時もお客さんと電話したりするようになってて。
    私はいい気はせんかったけど何も言わんようにしてた。そんなある日、光輝はたまにいつもより早く用意をして出勤しようとする。
    『何で今日は早いん?』
    私は最近不思議やなぁと思ってたから聞いてみた。

    2006-09-08 00:47:00
  • 75:

    杏奈

    『あぁ、同伴やねん客と』
    よく分からなかった。
    『同伴ってなになん?なんかするん?』
    『客と店入る前に飯食ったりちょっと店の近くで会ったりしてから一緒に出勤するってこと』

    2006-09-08 00:48:00
  • 76:

    杏奈

    『ふーん』
    そっかそっか…って?え?なにそれ?私は始めて知った“同伴”の意味に少し疑問をもった。
    『大丈夫やって。心配せんでも客やねんから』
    光輝はそう言うといつものように出勤していった。私は分からなかった。仕事とはいえそんなことする必要があんのかって。
    水商売を分かってなかった私には理解できないことが多すぎた。

    2006-09-08 00:50:00
  • 77:

    杏奈

    だから光輝が出掛けてからも不安やった。今なにしてんねやろ?どこなんやろ?って。同伴のことを知らんかっただけで、今までも同伴してたんかな?って。
    心配になりすぎて私は電話をかけてしまってた。
    光輝はちゃんと電話に出た。でもいつもとは話し方も違う。『もうすぐ店やし後でかけるから待ってて』って。律義な話し方。

    2006-09-08 00:51:00
  • 78:

    杏奈

    ホストってゆう仮面をかぶった光輝になってた。ホストの彼女ってみんなこんなん思うんかな?もしかして私だけ?
    毎日心配して不安になって一人で空回りして…。安心できるのは光輝の寝顔を見てる時だけ。

    2006-09-08 00:52:00
  • 79:

    杏奈

    光輝と同じ生活、環境になれば私にも何かが分かるかもしれん。私はいつからかそう思うようになっていった。
    『なぁ杏奈も夜の仕事したいなぁと思ってんねん』
    私が話をした時、光輝はびっくりした顔をした。
    『なにゆってんねん!?ちゃんと生活費だってあるしやる必要ないやん。やらんでいいって』

    2006-09-08 17:30:00
  • 80:

    杏奈

    ソッコー却下。私も光輝に言われるがままに毎回そう言いくるめられた。
    でも付き合って一年半が過ぎたある日、光輝のシャツの胸ポケットから名刺を見つけてしまった。
    三枚ある名刺は全部違うお店。そしてそれは全部女の子の名前が書かれていた名刺やった。

    2006-09-08 17:32:00
  • 81:

    杏奈

    携帯番号が書かれてある名刺にはClubやLoungeと書かれてあった。飲み屋さん?そう光輝は今でゆうキャバクラに行っていた。
    『この名刺なに?』
    『あ、違う店やけど仲いいホストの代表さんと付き合いで飲みに行っただけ。あと営業がてらな』
    光輝は平然と私にそう言った。前なら少し焦ってあたふたしながら言い訳も考えたりしてくれたのに。

    2006-09-08 17:33:00
  • 82:

    杏奈

    私ばっかり一人で必死になってた。ただでさえ光輝の周りには女の子がいっぱいやのに飲みにまで行ってるなんて…。
    『光輝おかしいわ。なんで平気なん?こんな名刺見て嫌な気なんの分からん?持って帰ってこんといてよ』
    私はまた光輝に強く言ってしまった。

    2006-09-08 17:34:00
  • 83:

    杏奈

    『あーうるさいなぁもう。しゃーないやん仕事やねんから。いいやんけ。こうやってお前と付き合って一緒に住んでんねんぞ?』
    光輝はだるそうに私にそう言うとベッドに入り、背中を向けて寝てしまった。
    な、なんなん…一緒に住んでんねんから文句ゆうなみたいなこと言って。私は光輝の考えてることが、だんだん分からくなっていった。

    2006-09-08 17:36:00
  • 84:

    杏奈

    水商売に慣れ、味をしめ、そこにつかりつつある光輝は少しずつ嫌な男に変貌をとげていく。
    そして私と光輝の間には見えない溝ができてしまった。二日帰って来ない日ができたり、帰ってきても一言も話さない日があったり。
    私と一緒にいる意味があるのかと疑問を抱くようになっていく。

    2006-09-08 17:37:00
  • 85:

    杏奈

    何か話せばケンカになり、まともに話すことすらなくなっていった。それでも私は嫌いにはなれなかった。優しかった頃の光輝の面影だけをずっと支えに我慢できた。
    その頃もずっと光輝はナンバーワンやった。雑誌に出るようにもなった。光輝の飛躍とは裏腹に私達の距離は少しずつあいていく。
    そして付き合って二年目の日は光輝は家に帰ってこなかった。

    2006-09-08 17:38:00
  • 86:

    杏奈

    二年目の記念日。一人ぼっちで待ってた。去年の同じ日はあんなに幸せに満ち溢れてたのに…。
    苦しかった。寂しかった。こんなにも変わってしまうものなんだと思うとはがゆかった。
    二年目を迎えて私はちゃんと話をしようと思ってた。話すことも一生懸命考えた。今なら間に合うって。まだ光輝を元の光輝に戻せるかもって。

    2006-09-08 17:39:00
  • 87:

    杏奈

    そんな私の気持ちや期待すらあっけなく終わった。もうあかんなぁ…私も疲れてしまってた。
    こんな思いしながら一緒におる意味なんてない。もう疲れた…。
    二年目の記念日の翌日、私は家を出た。一年で増えた物は多すぎて、軽くいる物だけを袋につめて実家に戻った。
    期待してたから。すぐ迎えに来てくれるって。だから大丈夫やろうって。

    2006-09-08 17:40:00
  • 88:

    杏奈

    でもそんな私の期待もまたはずれてしまった。一週間たっても連絡がなかった。私はお父さんやお母さんにも何かあったんか?って聞かれるようになった。
    そりゃそうだ。同棲してるはずの娘が一週間も家に帰ってきてるんだから。でも何もないって話を流してた。
    私は家にもいずらくなり、八日目の朝、しかたなくマンションに帰ることにした。

    2006-09-08 17:42:00
  • 89:

    杏奈

    帰るのは悔しかったけど…かっこわるいけど…でも帰るしかなかった。
    家に帰るとあまり変わらないままの部屋だったけど、光輝は帰ってきてた。でも私はベッドで見つけてしまった。
    長いつけマツゲ。私は嫌な予感がした。ごみ箱を見た。あんな脱力感を味わったのは初めてだった。

    2006-09-08 17:43:00
  • 90:

    杏奈

    実家に帰る前に空にしておいたごみ箱の中に、ゴムとティッシュが入ってたのだ。
    紛れも無い事実。私は信じたくない現実と向き合うしかなかった。信じてたのに…アースさんの嘘つき…信じてたって何もいいことなかったやんか…。
    どうしようもできない気持ちを誰かのせいにすることで私は逃げ道がほしかった。

    2006-09-08 17:44:00
  • 91:

    杏奈

    その時だった。ガチャっとドアが開く音がした。光輝が帰ってきたのだ。誰かと話してる。そして女の子の声も聞こえた。
    そして廊下につながる扉が開いた。私はリビングに座ってた。光輝は顔が真っ赤でいつものようにベロベロに酔っていた。
    『お前なにしてんねん帰ったんちゃうんか。勝手に自分から出て行ったくせに帰ってくんなや』
    『光ちゃん誰なん?前の彼女?』

    2006-09-08 17:45:00
  • 92:

    杏奈

    光輝が連れて帰って来た女は私を見ながらそう言った。キツイ香水の匂いで息がつまりそうだった。
    『いちいちうるさいねん!しゃしゃんな腐れホステスが!お前も帰れ!』
    光輝はその女にも大声で怒鳴ると突き飛ばして倒れさせた。びっくりしたその女は
    『もう知らんわ!』
    と言ってバタバタと帰って行った。

    2006-09-08 17:46:00
  • 93:

    杏奈

    光輝は目が死んでた。酔っていたからとかじゃない。目に光がなくなってしまってた。心を持たない人形のように。
    そして私を見ると何も言わずにベッドに入り、何も言わずに寝てしまった。
    光輝は少しやつれた気がした。痩せてしまったようなそんな気が。
    寝てしまった光輝の寝顔を見ながらそう思った。寝顔さえも前みたいな穏やかな顔をしてない。疲れきった顔…。

    2006-09-08 17:47:00
  • 94:

    杏奈

    可哀相…こんな顔して…。でも私は信じてた光輝の裏切りに心を傷付けられた。それだけは変わらない事実。本当に腹立たしかった。嫌いになった。でも…それでも私は光輝をほっとけなかった。
    せめてちゃんとご飯食べさせないと倒れてしまう。光輝の周りの人は誰も気付かんの?こんなにボロボロになってまでナンバーワン続けて…そんな“1番”に何の意味があるんやろう。

    2006-09-08 17:48:00
  • 95:

    杏奈

    私はその日、久しぶりに家中を掃除した。綺麗にすることで気持ちを晴らそうとするかのように。光輝のために久々に食事も作った。二日酔いでも食べれるようにあっさりとしたものを考えて。
    もう我慢とか感情とかの問題じゃなかった。多分、ただ必死やっただけ。ヒドイ男に変わってしまっても、光輝をほおっておかれへん。
    私しかおらんから…。

    2006-09-08 17:49:00
  • 96:

    杏奈

    周りの同僚ホストや仕事の関係者、お客さん達はみんな光輝の表面しか見てない。ホストの仮面をかぶった光輝しか見てない。
    だから分かんねんや…。私は一人でずっとそんなこと考えながら食事の用意をしてた。
    その日夕方6時過ぎ、光輝は起きてきた。キッチンに立つ私を見ても何も言わない。キッチンも素通りしてお風呂に入っていった。

    2006-09-09 00:39:00
  • 97:

    杏奈

    ちょうど食事の用意も終わり、お皿をテーブルに並べると私はひとつ深呼吸をした。
    多分光輝は食べないかもしれん。いらんって言う。でも体のため光輝のためにちゃんと食べさせなあかん。そう思いながら。

    2006-09-09 00:40:00
  • 98:

    杏奈

    光輝がお風呂から上がると私は何もなかったかのように普通のテンションで言った。
    『ちょうどご飯できたから食べよう』って。
    でも光輝はこっちも見ずに何も言わずベッドに向かうとリビングとつながってるドアを絞めてしまった。
    私はイライラした。何も言わない光輝が逆にむかついた。でも、黙って目をつぶり自分に言い聞かせた。
    “私は頑張れる。私が頑張らな光輝はどんどん変わってしまうんや”って。

    2006-09-09 00:42:00
  • 99:

    杏奈

    その時、スーツに着替えた光輝が部屋から出てきた。
    『ちゃんとご飯食べて行ってよ。光輝めっちゃやつれてるやん…』
    私がそう言うと光輝は黙って座ってる私をジッと見た。一分…二分もずっと。
    少し怖かった。光輝の目は色がなく、冷却な感じがしたから。

    2006-09-09 00:42:00
  • 100:

    杏奈

    『お前あほやろ?何やねん何がしたいねん?こんなことして楽しいか?俺に振り回されて。昨日の女と俺、やったで。お前と寝てたあのベッドで俺は違う女と寝たんや』
    『分かってるわ!』
    私は大声で叫んだ。分かってた。知ってた。でも光輝の口から聞きたくなかった。もし違うって言ってくれたら私は事実と異なってもそれを信じれたかもしれんのに…。

    2006-09-09 00:44:00
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