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水商売の変貌
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1:
名無しさん
1 名前:杏奈:05/09/09 06:58
夜の世界ではでも耳にしたことがありますよね?突然の変貌や変身って言葉を。そしてその世界に入ってくる約七割が心に何らかの闇を抱えていることを。
つかればつかる程変わっていく。これは本職ホストの彼氏の実話を元にした話。
2006-09-07 14:29:00 -
101:
杏奈
『分かってるんやったらこんなことすんなや』
私はそれでも我慢した。光輝のためやねんから…。
『もうそんなんいーからさご飯だけ食べて行ってよ。せっかく作ってんから』
私がそう言うと光輝はテーブルに並べてた料理を全部手で払いのけた。ガチャーンガチャンとお皿の割れる音が部屋中に響いた。2006-09-09 00:45:00 -
102:
杏奈
私はもう無気力やった。心なんてなくなってしまえばいいのにって。なかったら何も考えんで済むのに…。悔しさも苦しさも苛立ちも全部とおり越してた。
ただ悲しかった。
悲しくてどうしようもなかった。ずっとずっと我慢してたのにもう止まらんかった。
涙が出た。もう限界やった。いくら頑張っても、もう光輝は前の光輝には戻らない。2006-09-09 00:46:00 -
103:
杏奈
『あ、杏奈…ごめ…』
光輝は泣いてる私の肩に手を触れようとしてきた。
『触らんといて!』
発作的にでた言葉だった。狂ってしまった歯車はもう元には戻らなかった。
『か、勝手にしろや!』2006-09-09 00:47:00 -
104:
杏奈
光輝はまた怒鳴り声をあげるとバンっとドアを閉めて出て行った。
(杏奈…ごめ…)
光輝の言葉が頭に何度も繰り返された。…さっき一瞬つながりかけた光輝との隙間を、私は自分から断ち切ってしまったんや。
自分が楽な道を選んだんや。逃げたんや光輝から…。頑張るって決めたのに…私が助けなあかんって思ってたのに…2006-09-09 00:48:00 -
105:
杏奈
でももう何もできんかった。私には強さがなくなってしまった。心の中の色んなところに穴を開けられて色んな物を突き刺されて。
割れたお皿や料理を見ながら“これで良かったんや”って何度も自分に言い聞かせた。2006-09-09 00:49:00 -
106:
杏奈
割れた食器を片付けると、お母さんに電話をかけた。
『はい工藤です』
お母さんの声を聞くと少しホッとした。
『お母さん?杏奈やけど迎えに来てくれへん?もう光輝とは別れたから』
『えっ!?急にどうしたんよ。ケンカでもした?』2006-09-09 00:51:00 -
107:
杏奈
『違う。もういいねん。荷物も手伝ってほしいから2時間後ぐらいに来て』
私はお母さんの話も聞かずに電話を切った。
別れた…わけじゃない。ちゃんと別れたわけじゃ。でももう終わったも同然。このままサヨナラするほうがラク…。
私は荷造りしながらそう思ってた。でも片付ければ片付けていくほど辛かった。どんどん出てくる懐かしい物たち。2006-09-09 00:52:00 -
108:
杏奈
そのひとつ一つに光輝との思い出があった。たくさんの楽しかった日々が。
そんな思い出も断ち切らなきゃならない。そうしないと自分が壊れてつぶれてしまうから。
お母さんは迎えに来てくれた。お父さんもいた。私はびっくりした。
『ほんまお前がようもったわ一年も。飯食ったか?』
お父さんはケロッとした顔で私にそう言った。2006-09-09 00:53:00 -
109:
杏奈
『二年やろ?光輝君と付き合ってたのは』
お母さんがお父さんにそう言った。私はそんなことは聞こえないフリをして聞き流した。
『ご飯食べてないわーおなかすいた』
『じゃあ帰りにどっかで食べて帰ろうか』
お父さんはそう言って荷物を持つと先に玄関から出て行った。残りの荷物を私とお母さんは持ち、最後に鍵を閉めた。2006-09-09 00:54:00 -
110:
杏奈
置き手紙も何もない。鍵はポストに落とした。
“バイバイ…光輝”私は心の中で言うと振り返ることなくエレベーターに乗り、下で待っていたお父さんの車に乗り込んだ。
帰りはイタリアンレストランに寄り、普通に食事した。私は笑ってた。何もかも忘れたくて。笑うことで自分の気持ちを殺した。
空元気でもいい、笑ってたら大丈夫だや。2006-09-09 00:56:00