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水商売の変貌

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  • 1:

    名無しさん

    1 名前:杏奈:05/09/09 06:58
    夜の世界ではでも耳にしたことがありますよね?突然の変貌や変身って言葉を。そしてその世界に入ってくる約七割が心に何らかの闇を抱えていることを。
    つかればつかる程変わっていく。これは本職ホストの彼氏の実話を元にした話。

    2006-09-07 14:29:00
  • 141:

    杏奈

    「そいつは親父と1番仲良かった奴やった。だから親父は唇かんで一粒だけ涙こぼしてん。あの姿だけが忘れられへん。家も差し押さえで競売にかけられてなくなった。それからは親父の兄貴の家に居候させてもらった。そしたらおかんは離婚届け置いて出て行ったんや。人の世話になるようなこんな生活は嫌ですって」

    2006-09-10 21:10:00
  • 142:

    杏奈

    「俺は理解できんかった。一緒に来いって言われたけど親父から離れたくなかった。だから行かんかった。親父は気付いたら二ヵ月で11キロも痩せてた。頬もこけてやつれて。俺の見て来てた親父とは別人やった。」

    2006-09-10 21:13:00
  • 143:

    杏奈

    光輝の深い闇を知っていくごとに少しずつ分かってくる。
    どうして光輝があんな目をするのか、どうして時々いなくなったかのように心をなくしてしまうのかが。
    閉ざしていた心の扉は開かれた。でもその闇は深く深く見えないものに包まれていた。

    2006-09-10 21:14:00
  • 144:

    杏奈

    「んでな、親父も野球好きやってん。全然知らんかってんけど。だからキャッチボールも初めてできた。俺は嬉しかったほんまに。そんな状況でも幸せやなぁと思えた。親父は相変わらず朝から晩まで色んなとこ毎日走り回ってたけど、夜はキャッチボールしてくれた。でな、ほんまに金もなかったんやろうけど誕生日には新しいグローブ買ってくれてん」
    そう話す光輝の目は楽しかった頃を思い出すかのようにキラキラしていた。

    2006-09-10 21:16:00
  • 145:

    杏奈

    「そんな時に親父が知り合いか何かに仕事頼みに行ったんやけど結局断られて。でも野球のチケットを二枚貰ってきたんや。それを俺に見せながら嬉しそうに笑ってた。見にいくぞって。その試合の日は電車に乗って行った。おばさんにおにぎり作ってもらって水筒持って。初めての野球場やったからドキドキしてた。それに親父と二人でどっか行くの初めてやったから」

    2006-09-10 21:18:00
  • 146:

    名無しさん

    しおり

    2006-09-11 02:49:00
  • 147:

    杏奈

    「でな、着いたから係員に見せて入ろうとしてん。そしたら待って下さいって言われて。窓口でお金払って下さいって。そのチケットは入場券やなかってん。優待券やった。まぁ安くなる券やってんけどな。二人で1600円はらわなあかんかった。1600円やで?笑うやろ。でも入られへんかった。親父は900円しか持ってなかったから。帰りの電車代もぎりぎりやった。でも親父は俺に一人で入れば800円やから入ってこいって言った」

    2006-09-11 07:31:00
  • 148:

    杏奈

    「俺は入らんかった。俺が見たかったのは野球じゃない、親父と見る野球やったから。だから俺は親父に言った。大きくなったら僕が連れて来たるからなって。そしたら親父は黙って俺の頭を撫でてくれた。」
    私は聞いてて涙が出た。光輝のお父さんはきっと素敵な人なんやろうなって。そう思った。

    2006-09-11 07:32:00
  • 149:

    杏奈

    「その日は結局電車で帰って近くの公園で親父とおにぎり食うたわ。でも楽しかったで。一日中二人で遊んでくれたの初めてやったから。ほんま嬉しかった」
    光輝はそう言うとそっと目を閉じた。何かを思い出しているかのように。そして悲しい淋しげな顔をした。初めて会ったあの日に見たあの顔を。

    2006-09-11 07:33:00
  • 150:

    杏奈

    「光輝…?大丈夫?」
    私は光輝が今にも壊れてしまいそうに見えた。
    「大丈夫やで。まだ話さなあかんことあるから」
    光輝は目を閉じたままそう言った。
    「でもな、それが親父と遊んだ…話した…最後の日やった」

    2006-09-11 07:35:00
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