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夜のポチ。
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1:
名無しさん
ポチは、お日様をあまり浴びないので、真っ白だ。
そして、ポチの体はいつだって冷たい。
雪の様なポチ。
2006-09-22 21:27:00 -
541:
◆r11LF9gUco
しかし、そんな安堵の時も長くは続かない。
当時、あたしはまだ広島に住んでおり、彼とは市内で同棲していた。
実家に呼んだことが無いとはいえ、お互いの地元の話などはよくしていたし、その気になれば調べることなど簡単だったのだろう。
一週間ほどで薫はあたしの家を探し出した。2006-11-12 13:18:00 -
542:
◆r11LF9gUco
彼は、家に無理やりあがりこみ、両親に挨拶した。
[結婚も考えていて、僕の収入で養えるように、今市内で同棲させて頂いています][些細な喧嘩をしてしまってから家に帰らなくなり、とても心配して今まで必死に探していました][りょうさんの友人が帰省していると教えてくれたので、ご挨拶もかねて迎えに参りました]2006-11-12 13:34:00 -
543:
◆r11LF9gUco
冷静に、ぺらぺらと言葉を並べる薫。
しまいには涙を流しながら、あたしをどんなに愛しているかを家族に伝える。
事実。嘘。嘘。嘘。
内容はこんな感じ。
よくもこんなに頭が廻るものだと感心さえさせられる。素晴らしい[彼氏]を、彼は演じ続けた。2006-11-12 13:42:00 -
544:
◆r11LF9gUco
結果、両親は彼を男として認め、過剰に気に入り、あたしは翌日彼の元へと引き渡された。
薫のぞっとする様な笑い方は、この頃から見られるようになったように思う。2006-11-12 13:48:00 -
545:
◆r11LF9gUco
助手席に座らされ、最後まで彼は愛想良く、両親に深々と頭を下げてから車を走らせた。
あたしは冷静を装っていたけれど、内心は心臓が口から出そうなぐらい焦っていた。
彼が何を考えているのか、一切わからない不安。
平気な顔で嘘をこぼし、涙を自在に操る性根。2006-11-12 13:58:00 -
546:
◆r11LF9gUco
あたしはもうきっと、悟っていたんだ。
彼はあたしにも演技していたのだと。
優しい薫なんてものは、幻だったんだと。
その証拠に、薫は今こんなにも満足そうに笑っている。
怯えるあたしを、ひどく冷たい目で見つめながら。2006-11-12 14:03:00 -
547:
◆r11LF9gUco
――――――――――――――その晩、あたしは初めて意識が無くなるほど滅茶苦茶に殴られた。
逃げるとこうなるんだ、と言いながら。2006-11-12 14:11:00 -
548:
◆r11LF9gUco
彼は、泣きながら笑い、分かったんかと怒鳴る。
もう、あたしの思考は完全に麻痺していた。
目の前の鬼に、ごめんなさいごめんなさいと、とにかく謝った。
何が、そして誰がどう悪いのかという判断も、すでにできなくなっていた。2006-11-12 14:15:00 -
549:
◆r11LF9gUco
それからの私たちは、恋人では無くなった。
ただの犬と、ご主人様。2006-11-12 14:17:00 -
550:
◆r11LF9gUco
薫は、頭がいい。
殴るのも蹴るのも、いつも服で隠れるとこばかりを狙い、表面上は優しい彼氏でい続ける。
現に、常に周りには羨ましく思われていた。
格好良くて優しい彼氏だと。
それが快感なのだろうか?表と裏のギャップと、あたしを躾、バレぬ様計算していくスリルが、彼をいつまでもこのゲームにのめり込ませていた。2006-11-12 14:26:00