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セブンスタ-。

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  • 1:

    トキ

    −‥クルクル回るレコ−ド。モクモク煙る箱の中。心地良いリズム。朝まで終わらない宴。
    ずっと隣りに居ると当たり前に思っていた愛する人や友達‥
    それは幼さかった私達の‥−。

    2006-10-09 08:24:00
  • 2:

    トキ

    『ママ-これ忘れてる!』
    『本間やわ。ありがと-。さぁ行こか!パパ達待っとるわ☆』
    愛娘が小さい手に握って満足気に渡してきたのは、星屑が並んだセブンスタ-の箱と、使い古して良い色味を出してる銀色のジッポ。それを確認した私は、娘の頭をクシャっと撫でてから鞄に仕舞った。

    2006-10-09 08:28:00
  • 3:

    トキ

    −‥家を出て、愛車を走らせ目的地へ向かう。早起きした娘は、隣りのチャイルドシ-トで、お気に入りのオモチャと1枚の写真を握りしめながら寝息をたてる。
    『昨日は寝たの少し遅かったから眠いんやろな‥』そんな事を思いながら窓を開ける信号待ち。
    今日もタバコを1本くわえる‥−。

    2006-10-09 08:32:00
  • 4:

    トキ

    娘の手に握られた写真をユックリ抜き取り、肺に入れた煙をユラユラと右側に吐き出す。
    『やっぱりまずいな、コレ‥ケホッ』
    −‥咳き込みながら写真を見て、切な気に笑う彼女の名前は、ユキ‥−。

    2006-10-09 08:35:00
  • 5:

    トキ

    −‥あれから2年。このジッポでセブンスタ-を吸わなかった日はないよ。あの頃の香りが愛しくて‥星屑がいっぱい詰まったこのセブンスタ-の箱と、銀色に光る掌のジッポを見る度に思い出す。火を点す度に思い出す‥切なく、でも今では少しだけ優しい気持ちになれる‥−。

    2006-10-09 08:38:00
  • 6:

    トキ

    あの頃の私達は、いろんな事に焦りすぎていたのかもしれない。大切なものを大切にする事が難しかった。
    そんな当たり前の事が、幼さ故に‥
    −‥星屑の数程に思い出が詰まっていた懐かしいあの頃‥−

    2006-10-09 08:42:00
  • 7:

    トキ

    信号が青に変わり、再び車は走り出す‥

    2006-10-09 08:45:00
  • 8:

    トキ

    時は遡ること5年前。
    −‥18歳の初夏の季節‥−
    幼なじみで親友のマチと2人で今日も夜の街へ向かう。週末は必ずと言って良い程会うユキとマチ。そして、重低音の響くクラブでマッタリ入り浸る。

    2006-10-09 08:50:00
  • 9:

    トキ

    『先、飯でも食べよか-』マチがカレ-屋の前で立ち止まりメニュ-を見出した。
    『あんた本間カレ-好きやな‥』『うん!酒飲む前はカレ-やわ。マチはカツカレ-☆』『じゃあ私は野菜カレ-で』即効で決まりカレ-臭い店内に入った。

    2006-10-09 08:54:00
  • 10:

    おもろそう?

    読むから頑張ツてね?

    2006-10-09 08:55:00
  • 11:

    トキ

    席に座り注文した品がくるのを待つ。2人でタバコをプカァっと吸いながら、いつもみたいに馬鹿話をしてる時マチの携帯が鳴った。
    メ-ルチェックが終わり、パタっと画面を閉じながら『今日さ、ユウマがユキに紹介したい人おるから連れてくるってさ-』と水を飲むマチ。
    『えぇ-ユウマの紹介とか気まずいから却下やわ(笑)』なんて軽くかわしながら、再びメンソ-ルのタバコを肺へ送り込む。
    『まぁそう言わんと!とりあえずユウマんとこ行ったろや-』とマチも煙をはく。

    2006-10-09 08:58:00
  • 12:

    トキ

    カレ-をたいらげ、彼の待つクラブへ足を向かわせた。
    ユウマはDJをしていて週末にクラブでレコ-ドを回すマチの彼氏。
    2人は小さい1DKのマンションで同棲していて、私もよく家に呼ばれたり一緒に飲んだりドライブに行ったりしていた。

    2006-10-09 09:04:00
  • 13:

    トキ

    −クラブ到着−

    2006-10-09 09:09:00
  • 14:

    トキ

    入口付近からは、もう既にド-プな音楽が聞こえてくる。体に染み付いた心地良いリズム‥
    『ジ-マ2つちょ-だい☆』
    入るやいなや、マチはバ-でお決まりの最初の1杯を頼み、私に1つ渡してきた。それを飲みながらフロアの方へ向かうと、ユウマはDJブ-スで音のピッチを合わせていて、私達に気付くと横に居た友達にイヤホンを渡してこちらに向かってきた。

    2006-10-09 09:14:00
  • 15:

    トキ

    『ユキ久しぶり-』『いやいや、4日前に会いましたやん』『マチとユキどっちが俺の女かわからんの-☆両手に華やな!』『アホちゃう(笑)』
    いつもみたく馬鹿な挨拶を3人で交わした。

    2006-10-09 09:19:00
  • 16:

    トキ

    そのままバ-に向かい3人で飲んでたら、ユウマに『ユキに紹介したい人おるねやん!俺の仕事の先輩に当たる人やねんけど、もうすぐ来るから』と言われ、私は『ふ-ん』と返事をしながら酒を飲みほし、そのままソファ-にもたれ目を閉じた。
    【どうせチャラチャラした奴やろ‥】

    2006-10-09 09:22:00
  • 17:

    トキ

    −‥どうでも良かった。男ではウンザリしてたから。男運の悪い私には、メンソ-ルとマチが居ればそれで良い。
    それで良かった‥この時はそう思っていた。
    サクに逢うまでは‥−。

    2006-10-09 09:26:00
  • 18:

    トキ

    元々お酒が弱く、しかもその日は何気に仕事で疲れていた私はソファ-でそのまま寝てしまっていた‥時間は30分程。
    マチに起こされ気が付き、『あ-寝てたな‥悪い悪い。』と寝ぼけ眼でボソボソ言う私。『ユキ今日しんどいんやったら帰る?無理しやんで良いで?』と心配そうに言うマチ。
    『ん-じゃあ今日は帰ろかなぁ。すまん‥』『良いで!ユウマおるから大丈夫やし☆』『了解。また連絡するわ!お疲れさん』
    私は鞄を手に取りノソノソと立ち上がって、ユウマにも一言声を掛けた後、クラブを出た。

    2006-10-09 09:34:00
  • 19:

    トキ

    遠ざかっていく重低音。外の世界に居ると気付かされる。行き交う人の波は昼間よりも少なく、けれど昼間よりも濃い。
    眠気のダルさとホロ酔い気分でフラフラ歩いていると、前方から声が聞こえた。
    『ユキちゃん!?』
    −‥意識は途絶えた‥−。

    2006-10-09 09:38:00
  • 20:

    トキ

    −‥夢を見た。カレ-の夢‥−
    目が覚め気が付くと、見覚えのない場所に居た。赤い地面にピンクの布団。
    ビックリして起き上がると、1人の男が上半身裸でテレビを見て笑っている。
    しかもドラゴンボ-ル‥

    2006-10-09 09:44:00
  • 21:

    トキ

    『あ、起きたん。おはよ-さん』男がこちらを見ながら笑顔で言う。
    私もつられて笑顔になりかけたが、それよりも聞かないといけない事が沢山ある。
    『とりあえず誰‥?んで、ココ何なん?』私は髪の毛を掻きむしりながら尋ねた。

    2006-10-09 09:47:00
  • 22:

    トキ

    男は『ラブホやけど‥』と一言。
    イラっとした私は『そんなん見たらわかるわ。何で知らん貴方と私がココに居てるんって聞いてるの!』と再び尋ねると、一瞬引き攣った顔をした男は『自分いきなり道で倒れかけたんやん‥しかもゲロまで吐いて!今日カレ-食べたやろ!俺の服ベタベタなってもてんで。だから1番近かったココに連れて来てん』と訴えてきた。

    2006-10-09 09:50:00
  • 23:

    トキ

    【あ-‥だからカレ-の夢見たんか。てゆぅか夢じゃなかったんや‥】なんて思いながら、自分が服を着ていて何もされてなく、目の前に居る男が嘘をついていない、むしろゲロまで吐いた私を助けてくれた人なんだと確信した。

    2006-10-09 09:53:00
  • 24:

    トキ

    『ごめん‥本間申し訳ない』
    咄嗟に出たぶっきらぼうな謝罪だったけど、男は笑顔で『良いよ。そんなに飲んだん?熱っぽいけど‥』と言ってきた。
    『ほとんど飲んでない。熱っぽいの全く自分で気付かんかったわ‥ちょっと体ダルくて眠いな-ってくらい』『そ-なんやぁ。とりあえずまだ夜中2時やし、しんどいならユックリしていき-。俺は服乾いたら帰るから』『うん、ありがとう‥』
    −‥眠る気はなかったけど、目を閉じたらいつの間にかそのまま寝てしまっていた‥−。

    2006-10-09 09:57:00
  • 25:

    トキ

    早朝に目覚め、重たい体を無理矢理起こすと、彼は消えていた。
    1枚のメモと引き替えに‥[お大事に!]言葉は短すぎだけど、ホテル代と思われる1万円札と、携帯の番号とメ-ルアドレスが残されていた。

    2006-10-09 10:01:00
  • 26:

    トキ

    【あ-名前聞いてなかったなぁ‥まぁえぇか】
    彼が殴り書いたであろう紙切れと1万円札を鞄に放り込んだ。

    2006-10-09 10:10:00
  • 27:

    トキ

    −‥早朝のミナミを歩く。仕事帰りのホスト達がチラホラ。お疲れ気味な顔達の中に混ざり、けだるい面持ちでトボトボ歩く‥−。
    【電車とかダルいしタクで帰ろ‥】

    2006-10-09 10:14:00
  • 28:

    トキ

    タクをつかまえ家路を急いだ。
    車内で鞄をガサゴソ漁り、先程放り込んだ紙切れと携帯、それとメンソ-ルを取り出した。
    タバコに火を点け考える。
    【寝てたら悪いしメ-ル‥でいっか。一応御礼言わないとな】

    2006-10-09 10:20:00
  • 29:

    トキ

    [さっきのゲロ女です。寝てたら悪いんでメ-ルにしました。今日は本間にどうもありがとう。お金まで置いてってくれはって何て御礼言ったら良いかわからんのやけど‥なんしか本間にありがとう]
    −送信−

    2006-10-09 10:23:00
  • 30:

    トキ

    家に着き、そのままの姿格好でベッドにバタンっと横たわる。
    【疲れた‥何かあの男ひっかかるなぁ‥何やろ‥わっからん。あ-何やろ-‥】
    そんな事を考えてるうちに深い眠りに落ちていった。

    2006-10-09 10:26:00
  • 31:

    トキ

    10のレスくれはった人ありがと-☆
    さっき書き始めたばっかやのに早速読んでくれたとか嬉しいです(´∀`)頑張って続き書いてくから気ィ向いたら、これからも読んでって下さい☆
    こ-ゆ-の初めて書くけど表現とか難しいもんですねf^_^;実感しました‥拙い文章ですが、出来るだけ解りやすく書いていきますm(__)m

    2006-10-09 10:41:00
  • 32:

    トキ

    ‥〜♪
    携帯の着信音で目覚める。
    −受信メ-ル2件−
    [昨日大丈夫やった?][起きたら連絡して-☆]2件ともマチだった。時計に目をやると、時間は夕方4時。リダイアルをマチに合わせ発信音を鳴らす。

    2006-10-09 11:36:00
  • 33:

    トキ

    『はいよ-』
    受話器の向こう側でマチの声が聞こえた。
    『あたしやけど‥おはよう。今起きたわ。』『寝過ぎ-』『うん‥頭痛い。風邪ひいたみたいで‥』『マジで-大丈夫?今から家行こか?』『ポカリと冷えピタ持参でよろしく頼むわ』『了解☆』
    マチとの電話を切り、重たい体を再びベッドに横たわらせた。

    2006-10-09 11:40:00
  • 34:

    トキ

    『あ-頭痛い‥』
    棚から体温計を取り出し熱を計ると38度を越えていた。
    『お母さん‥』
    体が弱っている時は、母親の温かかった手のぬくもりを思い出してしまう‥

    2006-10-09 11:44:00
  • 35:

    トキ

    −‥私の家は父子家庭。
    母親は私が8歳の頃、病気で亡くなった。それからは父親が私を育ててくれたが、仕事で忙しく、家で1人で居る事が多かった幼少期。今なら父親の苦労も理解できる歳だし、逆に自由だから楽だけど、小さい頃は本当に寂しかった。

    2006-10-09 11:47:00
  • 36:

    トキ

    毎日1人で食べる事が多かった晩御飯は出前ばかり‥ガラっと変化した生活。熱が出ても看病してくれる家族なんて居ない。孤独だった。金銭的な苦労は特になかったけど、家族の愛には本当に飢えていた。
    そんな時に転校してきたマチの家は母子家庭。
    同じ様な環境で家も近所に引越してきたため、私達はすぐに仲良くなった。
    寂しい夜を共に過ごしてきた2人‥−。

    2006-10-09 12:12:00
  • 37:

    トキ

    そんな事を想いふけっているとマチが家に来た。
    『あら、本間にしんどそうやんか』マチがビックリした顔をして私を見てる。
    『だからしんどいんやってば。熱計ったら38度越え-‥明日仕事行けるかなぁ』『あんま無理したらあかんよ-』
    適当に会話をした後、マチはご飯を作ってくれるらしく台所に降りて行った。

    2006-10-09 12:16:00
  • 38:

    トキ

    −‥この日にマチが作ってくれたお粥は本当に美味しくて美味しくて‥熱さで火傷した舌の痛みは、今でもちゃんと記憶に残ってるよ。
    マチ‥−。

    2006-10-09 12:20:00
  • 39:

    トキ

    結局それから2日間寝込んだ。仕事も休みをもらえて、久しぶりに家でノンビリした気がする。
    【あの人、連絡ないなぁ‥1万円どないしよう】
    ゲロまみれにしてしまった男の事が気にかかっていた。
    マチには一通り話したが、『くれたもんは貰っとけ-、向こうも善意やろ』とタバコをプカプカ吸いながら笑っていた。

    2006-10-10 04:38:00
  • 40:

    トキ

    でも、私には気になる事があった。ずっと引っ掛かっていた事が記憶を遮った。
    【私が倒れたあの時、ハッキリとは覚えてないけど、あの人ユキちゃんって言った気がする‥気のせいかなぁ‥意識飛んだしやっぱり聞き間違い‥?知り合いなわけないし】
    −‥連絡がないまま日は過ぎ、風邪も直った週末の土曜日‥−。

    2006-10-10 04:42:00
  • 41:

    トキ

    仕事を終え、携帯の画面を開くとユウマからの不在着信が1件。
    職場の休憩室で膝を組み、お決まりのメンソ-ルを1本くわえながら、発信ボタンを押し耳に当てる。

    2006-10-10 04:47:00
  • 42:

    トキ

    『はいよ!』ユウマの声が耳を通った。
    『あんた本間声でかいな。お疲れさん、今終わった-不在あったけどどした?』『お-お疲れ!でかいのは声だけちゃうで☆』『じゃあマチは幸せもんやなぁ(笑)んで?どしたんってば』私は足を組み換えながら尋ねた。

    2006-10-10 04:59:00
  • 43:

    トキ

    ユウマは続けた。
    『先週に紹介したい人居るって言ってたん覚えてる?結局あの日ユキ体調悪くて帰ったけど、その人も何か用事あるとかで来なかったんよ-だから今日改めて紹介したいなと思って』
    【あ-何か紹介とか言ってたなぁ、そ-いえば‥】ユウマの話を聞いて思い出す。

    2006-10-10 05:06:00
  • 44:

    トキ

    『どっちでも良いよ-今日どうせマチから連絡あるやろうから、そっち行く事なると思うし』私は適当に答えた。
    『おっけ、了解☆ほな後で』『おん』
    ユウマとの電話を切ると同時に、吸っていたタバコを灰皿にグリグリ押し付け、立ち上がった。

    2006-10-10 05:09:00
  • 45:

    トキ

    −‥蒸し暑さが和らぎ、キラキラ街が光り出す頃。
    今日もマチと並んで歩く夜の雑踏。
    運命の糸が絡まりだす。この街で‥
    私達の未来は‥−。

    2006-10-10 05:12:00
  • 46:

    トキ

    定食屋で腹ごしらえを済ませ、ユウマの居るクラブへと足を運ばせる私達。

    2006-10-10 08:20:00
  • 47:

    トキ

    −‥中へ入ると、暗闇にチカチカ反射するライトと人込みを掻き分け、今日も最初の1杯を頼みマチと乾杯。
    体に響く重低音を、喉を流れていくアルコ−ルの冷たさと熱さが一層気持ち良く感じさせ、癒される‥−。

    2006-10-10 08:23:00
  • 48:

    トキ

    『お疲れ-』マチと談笑する中、声をかけてきたのはユウマ。
    2杯目を頼み、カウンタ-に座った。
    『ユキに紹介する人もうすぐ着くって-』『てゆぅか、何で紹介とかの話になったん?』私は、ふと疑問に思った事をユウマに尋ねた。

    2006-10-10 08:26:00
  • 49:

    トキ

    『仕事で配送の時とかに、よく一緒になる人やねんけど、マチとユキの事たまに話しててさ-。マチがユキんち行ってる時とかに2、3回だけ家にも来た事あって部屋にあった写真とか見てるから、それで気に入ったんちゃうかな-。物好きやんな☆』『黙って(笑)』ケラケラ笑うユウマとマチを横目に、再びアルコ-ルを一口だけ流し込み、カウンタ-のテ-ブルにグラスを置いた。

    2006-10-10 08:29:00
  • 50:

    トキ

    『そ-いえばユキ、もう1年くらい彼氏おらんよな。あいつ以来かぁ‥』マチが言った。
    そこにユウマが続ける。『もう嫌な事は忘れて新しい恋でもしてみたら?たまには出会いも大切かもよ☆』
    【余計なお世話‥】そう思いながらも、あえて何も言わずにいた。

    2006-10-10 08:32:00
  • 51:

    トキ

    マチとユウマに、フロアに行こうと誘われたが『後で行くから先に行ってて』と言い、2人が見えなくなってからメンソ-ルに火を点けた。

    2006-10-10 08:35:00
  • 52:

    トキ

    −‥深く深く吸い込む。アルコ-ルが入ってるのにニコチンを取り入れた体の奥は、血流がぐちゃぐちゃに感じた。
    そのまま瞼を閉じて思う事‥−。
    【もう裏切られるのはごめんやわ。懲り懲り‥】

    2006-10-10 08:39:00
  • 53:

    トキ

    −‥1年前、付き合っていた2歳年上の彼氏がいた。本当に大好きな人‥だった。
    それが突然姿を消した。私の貯金と共に‥−。

    2006-10-10 08:42:00
  • 54:

    トキ

    別にお金なんてど-でも良かった。彼がいきなり私の目の前から姿を消した事の方が、よっぽどショックだった。
    【お金が目当てやったん?】
    −そんなわけない−

    2006-10-10 08:45:00
  • 55:

    トキ

    でも、その2か月後。街で知らない女と笑いながら歩く彼の姿を目にした。
    追い掛けて問い質してやろうかとも思ったが、そんな考え一瞬で消え去った。
    −私達は終わったんや−
    すぐに目を背け、通り過ぎた。

    2006-10-10 08:51:00
  • 56:

    トキ

    別に今でも引きずってるわけじゃない。彼に未練もなければ憎しみの感情さえ、今はもう皆無。
    只それ以来、恋とか愛とかは正直ダルい。別に必要ない。そう思ってきた。
    【男なんて‥】

    2006-10-10 08:54:00
  • 57:

    トキ

    −‥重たい瞼をユックリ開け、たちこめるタバコの煙をボォ-っと眺めていた‥−。

    2006-10-10 08:57:00
  • 58:

    トキ

    【あ-あかん、今どっか違う世界行ってたやん私‥】
    気を取り直すために、残りのお酒を一気に飲みほし、その勢いで化粧室に向かった。

    2006-10-10 10:27:00
  • 59:

    トキ

    −‥化粧を直し、マチ達の居るフロアへ行く途中、暗闇でチカチカ光るライトの中で目に入った人物が1人‥−。
    【あれ‥この前の人ちゃうん‥】
    その人物にユックリ近づいてみる。思いきって声をかけてみる事にした。

    2006-10-10 11:03:00
  • 60:

    トキ

    『あの-‥すいません』と右肩に軽く手をやってみると、男は振り向いた。
    【あ-やっぱり‥】
    男は驚いた顔をして私を見ている。
    その時、男の向かう側のフロアから、マチ達が歩いてこっちにやって来た。

    2006-10-10 11:08:00
  • 61:

    トキ

    『あれ?何で2人が一緒に居るん‥?』今度はユウマが驚いた顔をして聞いてきた。
    【‥え?】
    私は意味がわからず、ユウマの問いに答えられなかった。

    2006-10-10 11:11:00
  • 62:

    トキ

    すると男は『あ-‥いや、この前の土曜日に用事って言ったのは、道で偶然ユキちゃんが倒れたのに鉢合わせてもて‥』とユウマを見ながら話し、次に私を見て『んでから、俺がユウマからユキちゃん紹介してもらうって言ってた奴やねん!何か、ややこしくてごめん』と続けた。

    2006-10-10 11:14:00
  • 63:

    トキ

    『ユウマから紹介される前にユキちゃんに偶然会ってしまったし、しかもあんな場面に出くわしたから言いづらかってん‥ユウマには、あえて言わなかったんよ(笑)ビックリさそうと思って』と彼は、はにかみながら話していた。

    2006-10-10 11:17:00
  • 64:

    トキ

    話の筋を軽く理解した私は『だから名前知ってたんや!記憶曖昧やったから不思議やってん‥』と彼に言うと、ユウマが『そ-やったんすかぁ!てか、かなり偶然ですね!しかもユキのゲロ場面に遭遇するとか‥(笑)』と興奮気味に、マチと一緒にかなり爆笑している。

    2006-10-10 11:20:00
  • 65:

    トキ

    【てゆぅか‥紹介される前にゲロ女っぷり発揮したのに、まだ紹介してもらうとか‥この人ある意味すごいな‥】なんて変な感心をしていると『なんしか変な出会いやけど、あっちで飲も-乾杯しよ乾杯☆』と、マチがソファ-を指差し仕切り直そうとした。

    2006-10-10 11:23:00
  • 66:

    トキ

    −‥午前0時を過ぎた頃の、この出会い。
    ユックリと、だけど確実に、絡まり始めた。
    彼の名前は、サク‥−。

    2006-10-10 11:26:00
  • 67:

    トキ

    −‥なぁユウマ‥あんたが言った通り、私にとってこの出会いは本間に大切で掛け替えのないものになったよ。
    ユウマもそう思うやろ?
    私はあんたに心底感謝してるで‥−。

    2006-10-10 11:29:00
  • 68:

    期待アゲ?

    2006-10-10 14:29:00
  • 69:

    トキ

    −‥その日、私達は朝まで飲んで盛り上がった。
    響く音楽、弾む会話、それ達をアルコ-ルが余計に気持ちの良いものにする。
    私の脳へ、信号を送る‥−。

    2006-10-11 10:39:00
  • 70:

    トキ

    −それから半年−
    サクとは一気に仲良くなった。こんなにも一緒に居て違和感のない異性は彼が初めてだと思った。サクと居ると不思議だった。まるで、昔から隣りに居た様な‥そんな感覚に陥る時がよくあった。

    2006-10-11 10:43:00
  • 71:

    トキ

    週末になると4人で集まるのが自然になっていた。
    クラブ以外にも、太陽がジリジリ照り付ける8月には、さすがに街のアスファルトにも耐え兼ね、日本海の方へと車を走らせた事もある。
    風の流れが気持ち良い秋には、川辺でバ-ベキュ-なんかも楽しみに行った。

    2006-10-11 10:46:00
  • 72:

    トキ

    もう本格的に肌も冷たく、息が白く染まる12月。

    2006-10-11 10:49:00
  • 73:

    トキ

    『何食べよ-』『何食べたい?』『サクが決めてよ』『じゃあ焼肉☆』
    仕事を終え、私とサクはミナミのとある焼肉屋に入った。
    マチ達が居ない時でも、サクと2人でご飯に行ったりする様になっていた。

    2006-10-11 10:52:00
  • 74:

    トキ

    席に通され、向かい合わせに座る。
    『とりあえず生2つ』
    店員が去ってから、サクとメニュ-を見ながら適当に決める。
    『失礼します』の店員の声と同時に、テ-ブルにビ-ルが2つ並べられた。それから注文を頼み、再び店員が去ってから乾杯をした。

    2006-10-11 10:56:00
  • 75:

    トキ

    『お疲れ-』とジョッキをガツンっとぶつけ合い、一口飲みテ-ブルに置いた。
    サクがタバコに火を点けるのを見て、私もメンソ-ルを1本くわえる。
    『そんなマズいタバコよぉ吸うな-』『そっちこそ(笑)』
    一服をしてジョッキが少し汗をかきだした頃から、次々に注文した品が運ばれてきた。

    2006-10-11 11:01:00
  • 76:

    トキ

    ジュ-ジュ-肉を焼く音と、立ち込める煙。
    『美味いな-』『うん美味い☆』会話を楽しみながら、焼肉も楽しむサクと私。
    『なぁユキ』『ん-?』私は網の上に乗せられた肉をひっくり返しながら返事をした。
    この後にくるサクのセリフなんて想像もしてなかった。

    2006-10-11 11:04:00
  • 77:

    トキ

    『俺ら付き合わん?』
    【は‥?】私は内心かなり驚いたけど、それを悟られない様に出来るだけ冷静に聞き返した。
    『何て何て?』『いや、だから俺ら付き合わんかな-思って』『‥‥‥』
    ざわつく店内で、時間が止まった気がした。

    2006-10-11 11:08:00
  • 78:

    トキ

    先に沈黙を破ったのはサク。
    『別に考える時間くらいあげたっても良いよ』
    この物言いで私は普通に戻った。‥フリをした。
    『何で上から目線な言い方やねんな』と笑いながら、焦げ付く網の上からサクの皿へと肉を移動させた。

    2006-10-11 11:11:00
  • 79:

    トキ

    その後は変わらず、いつもの様に会話をして食事を済ませた。

    2006-10-11 11:14:00
  • 80:

    トキ

    −帰り道、サクの愛車の中−

    2006-10-11 11:18:00
  • 81:

    トキ

    『‥にんにく臭い』『うん、お前もな‥』

    2006-10-11 11:23:00
  • 82:

    トキ

    −‥その日、私はサクにキスされた。
    外気温との差で白く濁る車の窓に、私にキスした時にサクが置いた右掌の大きい跡がクッキリと浮かび上がったのを今でも覚えている。
    色気なんて全く無いに等しいキスだったけど、一瞬だけ震えた唇の温もりは、私に愛しさを感じさせた‥
    セブンスタ-の味がした唇‥−。

    2006-10-11 11:28:00
  • 83:

    トキ

    68のレスくれた方、ありがと-ございます(O_

    2006-10-11 11:39:00
  • 84:

    トキ

    翌日、仕事を終えてからマチに電話をかけ、昨晩のサクとの事を事細かに話した。

    2006-10-12 09:16:00
  • 85:

    トキ

    『もう付き合っちゃえば?』『でもなぁ‥』私が答え、受話器の向こう側でタバコを吹き出す音が聞こえた一瞬の後、『で、今どんな気持ち?』
    『今‥?』

    2006-10-12 09:19:00
  • 86:

    トキ

    『うん。サクの気持ちに気付いた今はどんな心境?昨日と今日とじゃあ心境も違うやろ?マチに話してきたって事は何か思う事があるから話してきたんやろ?』
    『‥‥‥』私は無言になってしまったが、マチはそのまま続けた。

    2006-10-12 09:24:00
  • 87:

    トキ

    『じゃなかったら別に昨日の時点でハッキリしてるんじゃない?ユキの性格くらい把握してるつもりやけど?』と何故か勝ち誇った様に話すマチ。私はというと余計に黙り込んでしまった。
    私もメンソ-ルに火を点け考える。
    【‥‥‥】
    痺れを切らしたマチは私に言った。

    2006-10-12 09:27:00
  • 88:

    トキ

    『怖いん?』
    −正解−

    2006-10-12 09:30:00
  • 89:

    トキ

    正直怖いんだと思った。もう裏切られるのは嫌。心底惚れた自分の大切な存在に裏切られるのも、目の前から居なくなられるのも‥
    別に元彼との過去に執着したりしてるんじゃない。サクがそうなるだろうとも思ってない。ただ怖いだけ。弱い自分。
    −トラウマ?−
    『‥多分』私は一言そう答えた。

    2006-10-12 09:35:00
  • 90:

    トキ

    するとマチは、『過去にとらわれすぎてたら失うよ?[石橋を叩いて渡る]ってことわざあるけどさ、叩きすぎたら、なんぼ石橋だって壊れる事もあるやろ。あれ、例え間違ってる?(笑)』とケラケラ笑って言った。

    2006-10-12 09:40:00
  • 91:

    トキ

    私も笑いながら『うん、微妙(笑)』と返すと、『まぁアレやな、なんしか今の気持ち大事にしてみたら?要は好きか嫌いかやん。簡単簡単☆もし付き合ってさ、サクがユキに酷い事したりとかあったら、マチが許さんし。あんたにはちゃんと保険(マチ)が付いてるんやから、そろそろ自分の気持ちに正直になっても良いと思うで。後で気付いた時には遅いかもしらんよ』と、相変わらずな明るめ思考のマチが、元気づける様に私に言った。

    2006-10-12 09:46:00
  • 92:

    トキ

    『うん‥ちょっと考えるわ』『悩み過ぎ禁物やで☆脳ミソに悪いからな!酒でも飲むか?(笑)』『今日はやめとくわ(笑)ありがと-』『了解☆』
    マチとの電話を切り、タバコを消すと同時に出る溜め息。
    【はぁ‥】

    2006-10-12 09:57:00
  • 93:

    トキ

    ‥〜♪
    しばらくボォ-っとしていると、携帯の着信音が鳴り響いた。
    −受信メ-ル1件−
    [好きなら頑張れ!]差出人はマチだった。

    2006-10-12 10:00:00
  • 94:

    トキ

    それから数日たった今日は週末の土曜日。
    遅々からいつものクラブに集まっていた。
    サクに会うのは何気に微妙で緊張した。

    2006-10-12 10:04:00
  • 95:

    トキ

    『ユキ元気ないやん?』サクが話しかけてきた。
    『そんな事ないで-?飲もか☆』『おん』
    私はマチ達と離れ、サクとカウンタ-に向かった。たわいもない会話を続けたけど、どうも気が滅入ってしまう‥
    【あっかん。きまづいわ‥】どうしてもサクの事を意識してしまう。

    2006-10-12 10:07:00
  • 96:

    トキ

    『外。ちょっと出やん?』そんな私に気付いたのかサクが言った。
    クラブを出て、別に目的もなく歩く。
    『やっぱ寒いな-』『うん寒い‥でも冬好き。暑いのダルいもん』『俺は夏の方が好きやわ-』『気ィ合わんな(笑)』『せやな☆』
    さっきとは打って変わって自然と喋れた。

    2006-10-12 10:11:00
  • 97:

    トキ

    少しだけ前を歩くサクの後ろ踵を見ながら歩く私。
    自販機で立ち止まり、私は温かい紅茶、サクはおしるこを買った。
    横にあった小さい駐車場の石垣に並んで腰掛け、タバコを吸いながら紅茶とおしるこを啜る私とサク。

    2006-10-12 10:14:00
  • 98:

    トキ

    『サク甘いの好きなん?』『うん好き。ケ-キとかチョコ大好き』『私嫌い』『本間気ィ合わんな(笑)』
    喋る度に現れる白い息を見つめながらサクと笑っていた。

    2006-10-12 10:17:00
  • 99:

    トキ

    『‥真逆やから上手くいくと思わん?』
    瞬時に、何に対しての事かを私は理解した。

    2006-10-12 10:20:00
  • 100:

    トキ

    『この前は軽い感じで言ってもたけど‥あれ本気やで。ユキの事好きやねん』
    はにかんだ顔をしながらサクは私を見た。
    『‥‥‥うん。‥』
    サクを愛しいと感じた2回目の瞬間だった。

    2006-10-12 10:24:00
  • 101:

    トキ

    −‥この時のサクの斜め横顔をずっと見ていたいと思った。
    隣りでこれからもずっと歩いて行けると‥そう思っていた‥−。

    2006-10-12 10:28:00
  • 102:

    トキ

    人は、当たり前にそこに在る物には中々気付かないもの。
    日常と化した現実には、次々に欲望を剥き出しにしていく。
    在るだけとゆう大切さには見向きもせず、迷い込んだ妄想の世界に酔いしれながら、夢を描き抱く。

    2006-10-12 10:32:00
  • 103:

    トキ

    −‥交差する願いが入り乱れ、そこから抜け出せなくなっていく。
    自分達がその渦中に居る事なんて気付きもせずに。
    正当化して傷付け合う‥−。

    2006-10-12 10:35:00
  • 104:

    トキ

    ユキも、そんな中の1人に過ぎなかった。

    2006-10-12 10:38:00
  • 105:

    名無しさん

    頑張って?

    2006-10-12 11:11:00
  • 106:

    トキ

    105のレスくれた方、ありがと-ございますm(__)m今日の夜、また更新できそうならします。

    2006-10-12 19:48:00
  • 107:

    名無しさん

    書き方上手なので読みやすいです☆
    最近読んだ小説の中でいちばんおもしろい。
    続き楽しみにしています。
    主さん頑張れ!

    2006-10-13 02:12:00
  • 108:

    名無しさん

    スゴイ!!むっちゃ入り込んでしまったぐらいマジで文才あるよ!
    次の更新楽しみにしてます☆

    2006-10-13 02:37:00
  • 109:

    名無しさん

    ?v+〃

    2006-10-13 12:36:00
  • 110:

    トキ

    107、108、109のレスくれた方、ありがと-ございます☆
    昨日寝てしまったから、今少し時間あるんで更新します(゚∀゚*)

    2006-10-13 13:11:00
  • 111:

    トキ

    −‥久しぶりの彼氏とゆう存在。
    気恥ずかしい。
    だけど、サクと過ごす時間は幸せだった‥−。

    2006-10-13 13:14:00
  • 112:

    トキ

    クリスマス前とゆう事もあり、街がイルミネ-ションでキラキラする中、私とマチは梅田のマクドに居た。
    『マチはユウマにプレゼント何かあげるん?』『ん-考えてるけど何にしよっかなって思ってる-』テキヤキとポテトを頬張りながら話すマチと私。

    2006-10-13 13:17:00
  • 113:

    トキ

    『指輪とかのアクセ類は今までにいろいろあげた事あるしなぁ‥』『ん-‥じゃあジッポとかは?』
    『それ☆決めた』
    マチは決断が早い。私が何気に言った提案で決定してしまった。

    2006-10-13 13:20:00
  • 114:

    トキ

    マクドを出て、いろいろ店を回りプレゼントを物色した。
    とある店で気に入った物を見つけたマチは、それをユウマへのクリスマスプレゼントとして綺麗に包装してもらい購入した。

    2006-10-13 13:24:00
  • 115:

    トキ

    『ユキはサクに何かあげるん?』『いろいろ考えてんけど、まだ付き合って1か月もたってないし何が良いかわからんくて‥だからケ-キ作る事にした!サク甘い物好きやから☆』『そっかぁ-あんた料理上手やもんな!』『でもお菓子類は初めてやからなぁ』
    小さい頃に母親を亡くした私は、自然と自炊を覚えていき、自慢ではないが、料理だけは得意だった。
    でも、ケ-キは作った事がないため、初めての挑戦だけに上手く出来るか不安に感じていた。

    2006-10-13 13:27:00
  • 116:

    トキ

    『マチが毒味したるから大丈夫や☆任して!』『あんた基本的に食べるの専門やもんな』と笑い合うマチと私は、その後も梅田をウロウロして、日が暮れた頃に家路についた。

    2006-10-13 13:30:00
  • 117:

    トキ

    −クリスマスイヴ−

    2006-10-13 13:33:00
  • 118:

    トキ

    私達は4人で前夜祭とゆう名目で飲み会をした。
    たまにはシットリ4人で飲もうとゆう成り行きになり、マチとユウマの家で集まり朝まで飲み明かした。
    料理は私が担当して、マチにも少し手伝ってもらい豪勢に出来上がった物を、サクとユウマは『美味い美味い!』と言いながら、喜んでたいらげてくれた。

    2006-10-13 13:36:00
  • 119:

    トキ

    わいわい騒ぎ、−シットリ−とは掛け離れたイヴだったけど、『来年もこんな風に集まれたら良いなぁ』なんて話しながら、私達はお酒に酔いしれた。
    そんな『来年』なんて来るはずもないのに‥

    2006-10-13 13:39:00
  • 120:

    トキ

    −‥4人で過ごした、最初で最後のクリスマスイヴだった‥−。

    2006-10-13 13:42:00
  • 121:

    トキ

    その日は、そのまま4人で雑魚寝をして、昼前に私とマチだけ起きた。
    私達は寝起きの一服をしながら、隣りで寝ているサクとユウマを見て『‥すごい不細工な寝顔やなぁ2人共‥』と笑っていた。
    すると突然、マチが思い出したかの様に『そ-や。ユキにプレゼントあんね-ん☆』と、タバコをくわえたまま立ち上げり、棚の上に置いていた小さい黒い袋包みを私に渡してきた。

    2006-10-13 13:45:00
  • 122:

    トキ

    『クリスマスプレゼント☆』マチが言った。
    『えッ何でなん!?今までそんな事クリスマスにお互いした事ないやん!』
    私は焦った。今まで誕生日以外でプレゼントなんて、わざわざお互い渡した事なかったから。

    2006-10-13 13:48:00
  • 123:

    トキ

    【マチに用意してないのに‥】
    私が少し困った顔をしていたら『たまには良いやん☆別にそんなんで気ィ使う仲でもないやん!』と笑って言うマチ。
    『‥じゃあ今度何かお返しするわな!ありがと-☆』と私は言って、包装を開けた。

    2006-10-13 13:51:00
  • 124:

    トキ

    −『それな、お揃いやねん!マチと☆』−

    2006-10-13 13:54:00
  • 125:

    トキ

    −‥窓際でニカっと笑いながら、マチが左手に持って自慢気に見せてきた銀色のジッポは、正午が近づいたクリスマスの太陽に照らされて、キラキラと光っていた‥−。

    2006-10-13 13:57:00
  • 126:

    名無しさん

    サゲ

    2006-10-13 15:34:00
  • 127:

    名無しさん

    オモシロイ!!

    2006-10-13 18:06:00
  • 128:

    名無しさん

    サゲ

    2006-10-13 20:06:00
  • 129:

    トキ

    127のレスくれた方、ありがと-ございます☆
    126、128のレスの方、同じ人かな‥『サゲ』って書いてるけど、上げてくれてて(?)ありがと-ございますm(__)m

    2006-10-14 00:57:00
  • 130:

    トキ

    『見て!今朝マチに貰ってん☆』
    ミナミのダイニングバ-でご飯を食べながら、マチからのプレゼントをサクに見せた。

    2006-10-14 01:02:00
  • 131:

    トキ

    『良いやん☆マチとお揃い?』『うん!この前マチがユウマにあげるプレゼント選びに一緒に梅田行ってんけど、その時にコッソリ私にも買っててくれたみたい』
    私がフォ-クでパスタをくるくる巻き付けながら答えると、サクは『そ-なんやぁ!マチ男らしいな(笑)俺もユキにプレゼントあるねんけどマチに先越されたな-』と言いながらテ-ブルに、リボンの付いた可愛い箱を置いた。

    2006-10-14 01:06:00
  • 132:

    トキ

    『はい☆初プレゼント』サクが私の方へと差し出してくれた。
    『まじで-?ありがと-!』サクからのプレゼントを受け取り、中を開いてみた。

    2006-10-14 01:09:00
  • 133:

    トキ

    −ホワイトゴ-ルドの綺麗なリング−

    2006-10-14 01:13:00
  • 134:

    トキ

    『女の趣味とか微妙にわからんから‥気に入らんかったならごめんな』サクは気弱に言った。
    『そんな事ないって!まじで可愛いし!本間ありがと-☆』
    私はそう言いながら、サクに貰ったリングを直ぐさま左手の薬指にはめた。

    2006-10-14 01:16:00
  • 135:

    トキ

    『大事にするわな!』『おん、大事にせぇ』
    サクは気恥ずかしそうに、だけど嬉しそうに、そう返事をしてくれた。

    2006-10-14 01:19:00
  • 136:

    トキ

    その後、食事を終えた私達はクリスマスの街をブラブラ歩き、私の自宅の隣り町にあるサクの家へと車を走らせた。

    2006-10-14 01:22:00
  • 137:

    トキ

    『おじゃま-』『ど-ぞ』
    1LDKのサクの部屋。
    私は昼間に頑張って作ったクリスマスケ-キをサクに渡した。

    2006-10-14 01:25:00
  • 138:

    トキ

    『頑張って作ったよ-マチに試食してもらってんけど、普通に美味いって言ってたから味は大丈夫と思う』『まじで-ありがと-☆』『うん!はい、食べて食べて-』
    切り分けたケ-キを皿に乗せ、サクの方へ寄せた。

    2006-10-14 01:29:00
  • 139:

    トキ

    『美味いやん!』『良かった-』『ユキは将来良い奥さんになるわ-俺のな(笑)』『うん、しゃ-なしでな(笑)』
    そんな事を話しながら、サクはその後もケ-キを2つ食べ、『明日の分に置いとく』と言い、残りのケ-キを冷蔵庫に仕舞った。

    2006-10-14 01:32:00
  • 140:

    トキ

    −‥夜も更けた頃、先に眠りに着いたサクの横で、私は幸せだった。サクに貰ったリングを眺めながら、彼を一層愛しく感じたクリスマスの夜。
    サクに初めて抱かれた夜‥−。

    2006-10-14 01:35:00
  • 141:

    トキ

    せわしなく過ぎていった年末年始。
    クリスマスが終わると同時に、直ぐさま正月に向けて動き出す世間。
    キリストまがいで騒いだ後に、次は仏教事で正月を祝う日本人は、単なる祭好きだと思った。

    2006-10-14 11:10:00
  • 142:

    トキ

    元旦は4人で近所の神社へ初詣でに行き、出店で買い食いをしてオミクジを引き、おさい銭をして手を合わせた。

    2006-10-14 11:13:00
  • 143:

    トキ

    −‥私達は、あの時何を願ったのだろう。
    あんたは何をお祈りしてた?
    マチ‥−。

    2006-10-14 11:16:00
  • 144:

    トキ

    正月ム-ドも一段落した1月中旬のある日。
    仕事を終え家路を急いでいた。
    昨晩マチから電話があり『話したい事あるんやん。明日家来やん?』と言われていた私は、コンビニで缶ビ-ルとアテを買い、マチの家へと向かった。

    2006-10-14 11:20:00
  • 145:

    トキ

    『おじゃま-マチにもビ-ル買ってきたで。飲も-』『ありがと-』
    マチはそう言いながらも、オレンジジュ-スの入ったコップを持ってきた。
    『どしたん?体調悪いん?マチがオレンジとか珍しいやん』不思議に思った私は尋ねた。

    2006-10-14 11:23:00
  • 146:

    トキ

    『うん。ちょっと体調悪いねん‥ごめんな』
    よく見ると少し顔色の悪いマチが申し訳なさそうに答えた。
    私は『全然良いよ-じゃあユウマにコレ置いといたり-』と持ってきた缶ビ-ルをマチに差し出して、自分のビ-ルを開けた。

    2006-10-14 11:26:00
  • 147:

    トキ

    『話って何なん?どしたん?』
    私は開けたビ-ルを飲みながら尋ねると、マチは一言答えた。
    『妊娠してん』

    2006-10-14 11:29:00
  • 148:

    トキ

    『‥え!まじで?』私は左手に持っていたビ-ルをテ-ブルに置いた。
    『ユウマの子供?』『当たり前』少し失礼な質問をしてしまった。
    『ど-するん?てか何か月なん?病院は行ったん?ユウマはもう知ってるん?』
    私は興奮して一気にいろいろ聞いてしまったが、マチは冷静に答えてくれた。

    2006-10-14 11:32:00
  • 149:

    トキ

    『ユウマにはまだ言えてない。ユキに話せたから今日の夜話すつもり。今は4か月で、予定日は6月下旬』
    現実的な数字に唖然としてしまった。が、私はもう一度聞いてみた。
    『産むの?』

    2006-10-14 11:36:00
  • 150:

    トキ

    『妊娠気付いてからも全然実感なくて‥正直ど-しよって思ってた』
    マチは、私とお揃いのジッポをいじりながら、だけどタバコには手を出そうとせずに話を続けた。

    2006-10-14 11:39:00
  • 151:

    トキ

    『でも、ツワリみたいなん始まってから病院行ってさ-お腹の赤ちゃん見たら可愛いって思ってもた。だからマチ産むわ!』
    嬉しそうな笑顔でそう言ったマチは、とても可愛かった。

    2006-10-14 11:42:00
  • 152:

    トキ

    −‥大好きな酒とタバコを辞め、病院で貰った胎児のエコ-写真をアテに、オレンジジュ-スを啜る彼女が本当に可愛かった。
    マチに、母親の強さを感じた‥−。

    2006-10-14 11:45:00
  • 153:

    くろ

    セブンスタ-てのがいいわ?楽しみに読ませて頂いてます?

    2006-10-14 16:41:00
  • 154:

    トキ

    153のレスの方、ありがと-ございます(>_

    2006-10-14 17:54:00
  • 155:

    名無しさん

    上げ?

    2006-10-15 15:03:00
  • 156:

    トキ

    その翌日、マチからの電話で、ユウマはとても喜んでくれたとゆう話を聞いた。
    受話器越しに届いたマチの嬉しそうに話す声が、2人の幸せな未来を物語っているかの様で、私の心にシッカリと焼き付いた気がする。

    2006-10-15 15:03:00
  • 157:

    トキ

    その後、マチとユウマは結婚が決まった。
    お互いの親に正式に挨拶に行き、お腹に赤ちゃんが居るとゆう事で挙式はせず、バレンタインデ-の2月14日に入籍する事になった。

    2006-10-15 15:06:00
  • 158:

    トキ

    まだ年齢的にも若い2人。しかも、出来婚とゆう理由で親からも最初は反対されていた。
    『世間は冷たい』やら『うまくやっていけない』やらと散々言われ、揉めるに揉め話し合いが続いた後、ユウマの誠意と、マチの母親としての決意が伝わり、双方の親からは、なかば諦めに近い承諾が成された。

    2006-10-15 15:09:00
  • 159:

    トキ

    −2月某日−

    2006-10-15 15:12:00
  • 160:

    トキ

    『これ可愛くない?』『可愛いなぁ☆てゆぅか赤ちゃんの服って全部可愛いから本間悩むな-』
    私とサクは、挙式をしないマチとユウマの為に、何かお祝いをしてあげよう、そして産まれてくる2人の赤ちゃんにもプレゼントをとゆう事になり、買い物に来ていた。

    2006-10-15 15:15:00
  • 161:

    トキ

    マチとユウマにはベビ-リングを選んだ。
    2人の赤ちゃんが大きくなったら、皆から祝福され『生まれるべくして生まれてきた』その証として将来渡してほしいとゆう想いを込めて。

    2006-10-15 15:18:00
  • 162:

    トキ

    赤ちゃんには、衣類と玩具類をいろいろ選んだ。
    可愛いベビ-用品を目の前に選びきれなかった私とサクは、結局気に入った物を全て購入した。
    『うちら親バカやな-』『かなりな(笑)』
    そんな事を話しながら、2人仲良く歩いた帰り道。

    2006-10-15 15:25:00
  • 163:

    トキ

    −‥まだまだ寒さの厳しい如月の季節。
    マチとユウマの間に産まれてくる赤ちゃんの事を想うと、春が近付いた気がした。
    それくらい心が暖かい気持ちになった‥−。

    2006-10-15 15:31:00
  • 164:

    トキ

    −私はマチに母親を、そして自分自身を重ねていたのかもしれない−。

    2006-10-15 15:34:00
  • 165:

    トキ

    155のレスの方、上げててくれてありがと-ございます☆

    2006-10-15 16:04:00
  • 166:

    トキ

    それから数日後の2月14日、マチとユウマは無事入籍をした。
    家族が増えるとゆう事で2LDKのマンションに引越しもした。
    それから週末のクラブ通いをお預け。
    マチが『あんなタバコ臭い所行かれへん』と言ったから。確かに妊婦には環境が悪い。

    2006-10-16 11:55:00
  • 167:

    トキ

    ユウマも『夜にマチ1人置いて俺だけ遊びに行かれへん』と、DJを辞めた。
    それまでは契約社員だった仕事も正社員に切り替わり、産まれてくる我が子と、その我が子をお腹の中で育ててくれている愛する奥さんの為に一生懸命に働いた。
    慌ただしく過ぎた約1か月。

    2006-10-16 11:58:00
  • 168:

    トキ

    『赤ちゃん順調?』『うん!今5か月目☆』
    私達は、マチとユウマの新居で引越し祝いをしていた。
    マチは相変わらずオレンジジュ-スで乾杯。私もマチに付き合い禁煙禁酒をしていた為、コ-ラで乾杯。
    サクとユウマは『お前ら神経質なりすぎ-。マチはともかくユキまで付き合わんでも(笑)』と言っていたけど、私とマチは、そんな2人を換気扇の下へ追いやり喫煙させていた。

    2006-10-16 12:01:00
  • 169:

    トキ

    『今日はマチとユウマにプレゼントあんねん!』『マジで-?』『マジ☆この前サクと2人で買い物行っていろいろ選んできたんよ-』
    そんな会話をしながら、プレゼントを渡した。
    『こっちがマチとユウマに』黄色の小さい袋をマチに渡した後、『で、こっちが赤ちゃんにプレゼント』私は大きい方の赤ちゃん用品がいろいろ詰まった袋をユウマに渡した。

    2006-10-16 12:04:00
  • 170:

    トキ

    『ありがと-!』『てゆぅか自分ら買いすぎ(笑)』『いろいろ選んでたら楽しくてさ-結局全部買ってもたわ』『本間楽しかったな-』
    私とサクがそんな風に話すと、マチとユウマは『ありがとう』を何回も繰り返してプレゼントを開けた。

    2006-10-16 12:08:00
  • 171:

    トキ

    私とサクが選んだ、新生児用の小さい服や可愛い玩具をいろいろ見ながら笑い合う2人は、本当に楽しそうで、そんなマチとユウマを両親に持って産まれてくる赤ちゃんの未来に確かなものを感じた。
    −この2人の先行きには、幸せな未来しか在るはずがない−
    そう思っていた。

    2006-10-16 12:11:00
  • 172:

    トキ

    −‥あの時2人へプレゼントしたベビ-リングは、マチの決心を少しでも鈍らせない手助けをした。
    ただ、マチの手から手渡される事はもうないけれど‥−。

    2006-10-16 12:15:00
  • 173:

    トキ

    寒い冬が終わり、風の暖かい春がやってきた。
    ー4月ー

    2006-10-22 02:24:00
  • 174:

    トキ

    『ハックシュンッ!』鼻水を啜るマチ。
    『大丈夫-?』『うん‥きついわ』花粉症のマチにとっては厳しい季節。しかも、妊娠中とゆう事で薬は飲めないから、点鼻薬でアレルギ-を抑えるしか出来ないでいた。
    だけど、マチは穏やかだった。

    2006-10-22 02:27:00
  • 175:

    トキ

    妊娠7か月にもなれば、お腹もかなり出てきて胎動も感じる。
    『早く会いたいな-』『本間やな-』
    私達は、この会話がお決まりになっていた。
    我が子との対面を待ち侘びるマチはその時、既に母親の顔をしていた。

    2006-10-22 02:30:00
  • 176:

    トキ

    −後4か月で会える−
    私達は、ただ漠然とそう思っていた。
    新しい生命の誕生に、期待で胸を膨らませていた。

    2006-10-22 02:34:00
  • 177:

    トキ

    ある日の午後。ユウマが休日出勤で居ないから暇だとゆうマチに呼ばれ、私はマチ達の家に居た。
    『サクも仕事?』『うん、だから私も暇やった-。そ-いえば赤ちゃんの性別わかったん?この前検診やったんやろ?』私はマチが昼ご飯に作ってくれたナポリタンを食べながら話す。
    『うん!男の子☆チンチン見えた-ユウマ喜んでたわ。どっちかってゆうたら男の子が良かったみたいやから(笑)』定着してしまったオレンジジュ-スを飲みながらマチが言う。私もつられてコ-ラを飲み、話を続けた。

    2006-10-22 02:37:00
  • 178:

    トキ

    『そ-なんやぁ!女の子やったら、ユウマかなり親バカなりそうやもんな(笑)男の子で良かったやん☆まぁ元気に産まれてくれたら、どっちでも良いけどな』
    『本間それ(笑)この前は血液検査で採血されたから痛かったけど、毎回エコ-見るのが楽しみやねん☆』
    笑顔でそう話すマチを見て、私も笑顔になる。

    2006-10-22 02:40:00
  • 179:

    トキ

    『そ-や、今度の検診ユキも一緒に来る?』
    マチは思い立ったかの様に私を見てそう言った。
    『マジで?行っても良いなら行きたい!』『うん、行こ-☆』
    ナポリタンを食べ終えた頃には、そんな約束をしていた。

    2006-10-22 02:43:00
  • 180:

    トキ

    −それから数日後−

    2006-10-22 02:47:00
  • 181:

    トキ

    【マジで‥】
    自宅のトイレにて。手に持つ物は。
    −妊娠検査薬−。

    2006-10-22 02:50:00
  • 182:

    トキ

    今朝からずっと体が怠く、吐き気がしてた。仕事中もフラフラしてた。考えてみれば生理も遅れていた。そう思う材料は完璧。思考回路が行き着く先は、答えに繋がる。
    【だから気分悪かったんや‥】
    自分の身に突然やってきた『自然の摂理』とゆうものに、妙に納得した。
    −妊娠−。

    2006-10-22 02:53:00
  • 183:

    トキ

    自分の部屋に戻り、ベットに倒れ込む。
    【赤ちゃん‥】
    何かを考えようとしたのか、どうなのか。私はそのまま眠っていた。

    2006-10-22 02:56:00
  • 184:

    トキ

    翌日。体が怠くて起きられない。上半身を起こそうとするだけで血流がグルグルする。
    【あかん‥仕事無理や】携帯を手に取り、直ぐさま職場に電話をして休みを貰った。
    【ツワリってこんなにいきなり始まるもんなんや‥気持ち悪いし眠たいし‥マチもこんなんやったんかなぁ】そんな事を考えながら、電話を切って手に持ったままの携帯は、リダイアルをマチに合わせていた。
    −マチに聞いてほしい−私はそう思ったんだろうか。

    2006-10-22 03:01:00
  • 185:

    トキ

    『はいよ-』呼び出し音が途切れ、受話器からマチの声がした。
    『もしもし‥』ベットの中から一言そう言う私。
    『どないしたん?あんた仕事は?』『休んだ。しんどい‥』
    『風邪か-?本間にしんどそうやんか』きっと携帯を耳と肩に挟みながら、せわしなく家事をしているであろうマチがそう言った。

    2006-10-22 03:05:00
  • 186:

    トキ

    私はそんなマチを想像しながら、次に私が言うセリフで驚くマチの姿を思い描いた。
    私がマチに最初に打ち明けられた時の様に。
    『妊娠したみたい‥』

    2006-10-22 03:10:00
  • 187:

    トキ

    『‥え!マジ!?何で!?』マチは想像通りビックリして聞いてきた。
    『何でって‥普通にサクとの赤ちゃん。サク以外ありえへんし‥てゆぅか昨日から気持ち悪すぎてさ-』
    想像通りのマチのリアクションに、ほんの少しだけ気分が軽くなった。
    当のマチは、『大丈夫なん?サクには話したん?ど-すんの?病院は?』と、これまた想像通りの反応を示してくれた。私はその問いに『昨日気付いたばっかり』とだけ答えると、マチは何かを察知したのか『今から家行くわ』とだけ言った。

    2006-10-22 03:13:00
  • 188:

    トキ

    電話を切り、ベットに寝転がったまま天井を眺め考える。
    【ど-したら良いんやろ‥】
    昨日と今日。何も違わない様だけれど、確実に違う日常。自分の中の新しい命に気付いた瞬間、運命は変化する。それと同時に、もう一つの運命も‥

    2006-10-22 03:21:00
  • 189:

    トキ

    −私とサクの赤ちゃん−
    歯車が噛み合い母性が生まれるのか、またはその逆なのか。もしくは、女として産まれてきた故のサガなのかもしれない。
    −産みたい−。
    とにかく私の頭の片隅には、その4文字が浮かんだ。

    2006-10-22 03:24:00
  • 190:

    名無しさん

    『おはよ-どない?』マチが部屋のドアを開け入って来た。
    『吐き気つらいし体起こされへん』私がふて腐れて答えると『私もそんな感じやった』と、笑うマチ。
    マチが買って来てくれた林檎ジュ-スを飲みながら、私は言った。
    『産むわ』決心の一言。

    2006-10-25 02:12:00
  • 191:

    名無しさん

    『今マチが来る10分の間で決めた』『そっか』『もしサクが無理って言ってもシングルでも頑張って産むし』『うん』
    単語しか言わないマチ。私がそう言うと分かっていたかの様に、何も言わないし聞かない。
    ただ、嬉しそうに笑っていた。
    『チビ達も同級生になるねんな-』と言いながら。

    2006-10-25 02:15:00
  • 192:

    トキ

    −‥あんたの夢、一個はちゃんと叶ったよな‥−。

    2006-10-25 02:18:00
  • 193:

    トキ

    『話したい事あるねやん』その夜、サクに電話した。
    『別れ話やったら聞かんぞ-』『アホか(笑)でもマジ話。やから家来られへん?』『ん-何かよくわからんけど行くわ!』
    サクが家に着くまでの時間約30分。待ち時間はドキドキする。産むと決めたものの、相手に打ち明けるのはやっぱり緊張するんだなと思った。
    【何から話そ‥普通に妊娠したって言うしかないよな‥】いろいろ考えてるうちにサクは来た。

    2006-10-25 02:21:00
  • 194:

    トキ

    『お疲れ-』手土産にコンビニの袋を持って入って来たサク。
    『風邪か?しんどそ-やん』『ううん、ちょっとしんどいだけ』何かをごまかす様に私は答えた。
    【いつ言ったら良いんやろ‥】そんな事を考えていた瞬間、サクが聞いてきた。

    2006-10-25 02:25:00
  • 195:

    トキ

    『んで話って何なん?』缶ビ-ルを開けながら、私を見るサク。
    『‥‥‥』私は不意をつかれて一瞬黙ってしまった。
    『あ-話な‥ちょっと待って』瞬時に頭の中を整理する。だけど単刀直入に伝えるしか術は無いと直ぐに悟った。
    サクに焦点を合わせる。

    2006-10-25 02:29:00
  • 196:

    トキ

    『赤ちゃん出来たんよ』
    一瞬サクの瞳孔が開いた気がする。その直後。2回瞬きをしながら横目に反らした。
    【あ-やっぱり‥】
    −困ってる−そう思った。

    2006-10-25 02:32:00
  • 197:

    トキ

    『何か月?』『まだ病院行ってないからわからんけど‥多分まだ2、3か月』『そっか』
    −堕ろせ−その言葉が頭をよぎる。
    【多分言われる‥】
    だけど、サクは直ぐさま私を見て言った。

    2006-10-25 02:37:00
  • 198:

    トキ

    『頑張っていこや』
    『‥は?』サクの一瞬の表情を垣間見た私は、想像していたセリフとのギャップに驚いた。
    『今うざそうな顔したやん‥?』
    私がそう言うと、サクはビ-ルを一口飲み明るい口調で答えた。

    2006-10-25 02:43:00
  • 199:

    トキ

    『いきなり妊娠とか聞いたらビックリもするわ。一瞬戸惑った。お前はどないしたいねん?産みたいなら、一緒に頑張っていこ-や。俺らの子供なんやろ』
    言葉が出なかった。サクの決心に心が詰まって、一杯になった。ただただ、涙が零れて止まらなかった。
    笑いながら頭を撫でて抱きしめてくれたサクの温もりに比例するかの様に涙は溢れ出た。

    2006-10-25 02:48:00
  • 200:

    トキ

    −その翌日−
    マチが通っている病院に付き添ってもらって行く事になった。
    『マチ、これど-したん?』並んで歩いていると、七分袖から覗くマチの細い腕に小さい痣がいくつか出来ているのが見えた。
    『本間や。何やろ-わからん。いつ出来たんやろ。ぶつけたんかな-?』特に気にする事もないマチを見て、私も何も気にしなかった。

    2006-10-25 02:53:00
  • 201:

    トキ

    『私もついでに検診してもらお。エコ-見たいし☆』楽しそうに言うマチ。私は初めてのエコ-に緊張しながらも、楽しみだった。まさか自分も妊娠して病院に行く事になるなんて思ってもなかった。
    病院に着き問診票と尿検査をしてから、名前を呼ばれ診察室に入る。
    いざ内診。

    2006-10-25 02:58:00
  • 202:

    トキ

    『おめでとうございます。正常妊娠ですね。今はまだ7週目やから2か月の終わり辺りね』
    先生の説明と、画面に写された赤ちゃんで自分の妊娠を実感した。せざるを得ない状況。感動が込み上げてくる。数cmの2等身に。自分の分身に‥
    −何があっても産みたい−
    そう思った。

    2006-10-25 03:05:00
  • 203:

    トキ

    先生と話を終え、次はマチの番だったので、そのまま部屋に居ようとしたけれど、先生に『少し話があるので』と柔らかく言われ、私は退室する事にした。
    待合室で椅子に腰掛け、マチが診察を終え出て来るのを待つ。
    −自分のお腹に今、サクとの赤ちゃんが居る−
    私は幸せだった。それ故に、自分の事しか見えていなかったのかもしれない。

    2006-10-25 03:12:00
  • 204:

    トキ

    何分かして診察室からマチが出てきた。だけど、微妙に浮かない顔をしている。
    『ど-したん?』私は気になったから聞いてみた。
    『何もないで-』私を見て笑顔になるマチ。
    『赤ちゃん順調やった?』『うん!元気に動いてた』マチは直ぐにいつも通りにそう言った。

    2006-10-25 03:30:00
  • 205:

    トキ

    病院の帰り道、赤ちゃんの事を話す私とマチ。
    『お揃いの服とか着せたりしたいよな-』なんて気の早い事を笑いながら言っていた。

    2006-10-25 03:37:00
  • 206:

    トキ

    それから話はとんとん拍子に進んだ。
    初めて病院に行った日の夜、サクにエコ-写真を見せると、マジマジとそれを見つめ『可愛いなぁ』と言っていた。
    それから『結婚しよう』と‥
    真っ直ぐなサクの言葉に私は驚き、少しだけ照れた。

    2006-10-25 03:40:00
  • 207:

    トキ

    数日後、お互いの親に挨拶に行き、結婚の意思を伝えた。
    意外と両親共々穏やかに話が出来た気がする。サクの家も父子家庭だったからかもしれない。
    緊張して話す私の事を、快く受け入れてくれたサクのお父さんは、優しそうな人だった。
    【サクめちゃお父さん似やな】そんな事を思った気がする。

    2006-10-25 05:23:00
  • 208:

    トキ

    −5月26日−
    私とサクは無事入籍。
    マチ達と同じく式は挙げない。出産を終えて、育児に慣れて、それでもその時にまだ式を挙げたいと思うならしようとゆう事に話はまとまった。
    マチの出産が近い事や自分の妊娠もあり、そこまで結婚式にこだわってはいなかった。けれど、充分と言って良いくらいに私は嬉しかった。

    2006-10-25 05:26:00
  • 209:

    トキ

    −サクとの結婚−それは本当に幸せに満ち溢れたものに感じていた。
    赤ちゃん、祝福、結婚‥私は我が身の幸せに浸り過ぎていたのかもしれない。
    彼女の異変には何一つとして気付いてあげられていなかった。

    2006-10-25 05:30:00
  • 210:

    トキ

    −それは、確実にマチを蝕んでいた−。

    2006-10-25 05:33:00
  • 211:

    トキ

    『最近マチ何しとんやろ‥』妊娠がわかってから結婚が決まり、ツワリがある中で仕事を続けながら、親への挨拶とかなんだかんだと忙しかった為、ここ1か月の間にマチに会ったのは1回だけ。初めての内診で病院に連れて行ってもらった時が最後。別にそれから全く時間がなかった訳じゃない。ただ、マチに連絡しても『腰が痛い』とか『お腹が張ってる』とか、そんな事ばかりをマチは言っていた。
    【もう出産も近いしお腹も大きいから体つらいんやな】と考え、毎回『ユックリしときよ-』と言って電話を切っていた。
    −事態は一気に急変した−。

    2006-10-25 16:38:00
  • 212:

    トキ

    ‥〜♪
    今でもハッキリと覚えている。
    6月2日。
    ユウマからの着信。

    2006-10-25 16:41:00
  • 213:

    トキ

    『もしもし?』『ユキ!今何してる!?すぐ〇〇(病院の名前)来れるか!?マチがヤバイねん‥!』かなり動揺しているユウマ。そんなユウマの声を聞いて、私もただ事ではないと思った。
    『マチ!?マチがどないしたん?赤ちゃん産まれそうなん!?』『違う!説明したら長いから、なんしか早く来てくれ!』テンパるユウマは、その後も意味のわからない事を言っていた。

    2006-10-25 16:44:00
  • 214:

    トキ

    とにかくマチの身に何かがある。調度一緒に居たサクにも事情を話し、車を出してもらい2人で直ぐに病院へ駆け付けた。
    【赤ちゃん産まれるんじゃないん‥?マチに何があったん‥】
    病院に着くまでの間、何回か引っ掛かった赤信号が、やけに長く感じた。
    嫌な予感。悪い事しか無い気がする、そんな予感だった。

    2006-10-25 16:47:00
  • 215:

    トキ

    −病院到着−

    2006-10-25 16:50:00
  • 216:

    トキ

    『ユウマ!』私とサクは、ユウマの元へ駆け寄った。泣いた直後の顔をしているユウマを初めて見た。そんなユウマの腫れた目を見て、何が何だかわからない私も泣きそうになった。
    『マチは‥?』『‥‥‥』何も言ってくれないユウマ。
    『ユウマ。落ち着け。何があってん?』子供を宥める様に優しく柔らかく問い掛けたのはサク。
    一瞬の無言の後に、ユウマは口を開いた。

    2006-10-25 16:53:00
  • 217:

    トキ

    『‥今は寝てる』
    『だから何でなん!?何があったんかって聞いてるん!』私は、勿体振るかの様に核心に触れないユウマに、少しイラついた。そんな私を征しながら、サクはユウマに尋ねた。『マチがどないしてん?』
    だけど、無言のユウマ。
    その直後に、ユウマの目からは大粒の涙がボロボロと零れ落ち出した。

    2006-10-25 16:57:00
  • 218:

    名無しさん

    めっちゃ気にナル!!!

    2006-10-26 00:08:00
  • 219:

    トキ

    そして、鳴咽しながらユウマの口から発せられた言葉に、私は頭が真っ白になる。

    2006-10-26 08:26:00
  • 220:

    トキ

    −『あいつ‥白血病やねん』−

    2006-10-26 08:29:00
  • 221:

    トキ

    これも神様の仕業?だとしたら、何て残酷な悪戯なんだろう。
    これから母親になろうとしている人間に。何とゆう仕打ちなんだろう。

    2006-10-26 08:32:00
  • 222:

    トキ

    『‥何言ってるん。白血病って‥マチ赤ちゃん産むんやろ?ありえへんやんか‥』私は呆然と立ち尽くして言った。
    『嘘ちゃうし‥1か月前にわかってん‥血液検査で‥急性白血病』
    【あの時の‥】私は初めてマチと病院に行った時の事を思い出した。−少し話があるので−先生にそう言われて退室した事を。
    私達はマチが居る部屋へ向かった。

    2006-10-26 08:38:00
  • 223:

    トキ

    1か月振りに目にしたマチの姿に、涙が溢れた。
    『あんた‥何なんよコレ‥』あまりの衝撃に、ベッドで眠るマチに声をかけた私。
    −彼女の細い腕は変わり果てていた−。
    小さい痣がいくつもある。それまでのマチとは何かが確実に違う事は明らかだった。現実を目の当たりにしてしまった瞬間。私は胸が張り裂けそうで、サクに抱き着いた。

    2006-10-26 17:22:00
  • 224:

    トキ

    少し落ち着きを取り戻したユウマが話し始めた。
    『マチな、子供諦めたくないねんって‥でも、それは治療が出来ひんって事やねん。お腹に赤ちゃんが居るから‥このままやったら、マチ死んでしまうかもしれん‥この腕の痣な、体にもいっぱいあるねん。白血病で出てくる症状の一つやねんって‥』マチの左手の薬指にある2人の結婚指輪を触りながらユウマは話を続ける。

    2006-10-26 17:25:00
  • 225:

    トキ

    『俺、マチがおらんくなるの耐えられへん‥だから赤ちゃん諦めようって言っててん。マチには絶対嫌って言われたけど。諦めるなら死んだ方がいいわって‥でも、このままやったら結局手遅れになってしまう‥』そう言いながらポロポロと泣くユウマと共に、私とサクは涙を流さずにはいられなかった。
    マチが目を覚ますまでの約1時間。ほぼ放心したまま時間は過ぎた。
    ベッドに横たわるマチが、もうこのまま目を覚まさないんじゃないか。そんな感覚さえ生まれた。

    2006-10-26 17:28:00
  • 226:

    チコ

    >>221鳥肌たった

    2006-10-26 19:10:00
  • 227:

    トキ

    彼女は何を想い、何を望んでいたのだろうか。
    きっと神様に失望し、未来に絶望しただろう。喪失感にも襲われたに違いない。
    そして、それに気付いてあげられなかった無力な私にも‥

    2006-10-26 19:37:00
  • 228:

    トキ

    だけど彼女は笑っていた。
    哀しみに涙する私を見据えて『黙って見てて』と強い眼差しで。
    −マチは、幸せだったのだろうか−。

    2006-10-26 19:43:00
  • 229:

    トキ

    −急性骨髄性白血病−
    マチはこの病に侵されていた。
    『急性白血病とは、白血球や赤血球、血小板になる前の細胞が、白血球に分化(未熟細胞が成熟細胞になる事)する時に癌化する病気−。』
    本にはそう書いていた。症状には、痣が出来やすい、血が止まりにくい等、耳にした事もある様な内容も載っていた。だけど、あまりにも身近ではない出来事だけに、理解しがたかった。

    2006-10-26 22:52:00
  • 230:

    トキ

    それから2日。調べに調べて解った事。それは、マチを蝕んでいる病が不幸を運ぶものだとゆう事。治療せずに放っておけば2、3か月で死に至る場合もあるとゆう事‥
    治療には、抗がん剤をはじめ、他にもいろいろな薬品投与が必要。
    骨髄移植も適合するドナ-が見つかれば良いが、その確率は血の濃い親族でも何割かしかない。

    2006-10-26 22:55:00
  • 231:

    トキ

    【今のマチには、とてもじゃないけど移植や治療なんて無理や‥お腹の赤ちゃん‥】途方も無い脱力感に襲われた。
    【マチはそれで良いの?もし赤ちゃん産んだとしても、その時に手遅れやったら‥】私は、マチから貰ったお揃いのジッポを握りしめ、眠りに就いた。
    何故か虚しさの残る1人の夜だった。

    2006-10-26 22:58:00
  • 232:

    トキ

    翌日。私はマチが居る病院に向かった。
    『マチ-見舞い来た☆体調どない?』私は明るく振る舞った。
    『今は大丈夫!でも入院決まってしもたわ』ちょっと落ち込みがちに言うマチ。
    『そっか‥でも体調治ったら退院出来るよ!いっぱいお見舞い来るから元気出してな』『うん。赤ちゃんは元気みたいやから大丈夫!』『‥‥‥』笑顔でそう答えたマチに、私は何も言えなかった。

    2006-10-26 23:01:00
  • 233:

    トキ

    『なぁマチ。本間に赤ちゃん産むん?』私は話を切り出した。
    『産むよ-何があっても、この子は産むねん』お腹を優しく触りながら、自分に言い聞かす様に話すマチを見て、胸が痛む。
    『何があってもって‥実際無理があるやろ?先生にも言われたやろ!?産んだとしてマチが死んだら、残されたその子はど-なんの!?ユウマだって‥!』私は必死に訴えた。マチの顔色が、みるみるうちに変わっていくのを目の当たりにしながらも。

    2006-10-26 23:04:00
  • 234:

    トキ

    『ユキ‥あんたも同じ母親やったら気持ちわからん?死産しろって言ってんの?もう9か月やで?頑張って生きてる子に死ねって言ってんの!?‥』泣き出すマチは、それでも話を続けた。
    『先生にもユウマにもいろいろ言われたし、私自身悩んだよ‥でもやっぱり産みたいねん!治療が出来なくても良いんよ。それで死ぬ事になったとしても私は幸せやねん!こんなに死と背中合わせでも、お腹の子に会いたいねん!抱っこしたいねんよ‥解って-や‥』
    鼻を啜り、涙でグシャグシャな顔をするマチに冷たい事を言ってしまった。マチの事を想い、言ったつもりだった。

    2006-10-26 23:08:00
  • 235:

    トキ

    『‥こんなん言いたくないけど、マチが死んだら子供はど-なる?それは、あんたのエゴじゃないん?』
    マチは間をあける事なく迷わず答える。涙を溜め、はにかみながら。

    2006-10-26 23:11:00
  • 236:

    トキ

    −『エゴでも良いよ。ユウマが居るから。あいつは、きっと良い子に育て上げてくれる。立派なパパになるで』−

    2006-10-26 23:16:00
  • 237:

    トキ

    私はそれ以上、何も言えなかった。マチの決心の強さを思い知ったから。それと同時に、ユウマの存在価値は絶大なんだと感じた。

    2006-10-26 23:21:00
  • 238:

    名無しさん

    ぁけ゛

    2006-10-27 01:40:00
  • 239:

    トキ

    239のレスの方、上げてくれてありがと-ございます☆

    2006-10-27 03:01:00
  • 240:

    トキ

    本当に本当に神様が居るのなら、マチが無事元気な赤ちゃんを産めます様に‥元気だったマチに戻して‥マチを連れて逝かないで‥
    私は毎日そう願い、祈っていた。

    2006-10-27 03:04:00
  • 241:

    トキ

    病と背中合わせの毎日。生と死の紙一重をマチはどんな想いで過ごしたのだろう。考えただけで気が遠くなる。きっとマチには、何にも変えられない揺るぎない想いがあったんだと思う。それがマチの生きる糧になったんだろう。私達は、そんな彼女を支える事しか出来なかった。それが精一杯だった。

    2006-10-27 03:07:00
  • 242:

    トキ

    時が過ぎていく中で、私の中にも葛藤が生まれる。
    【私だけ何事もない様に赤ちゃん産むの‥?】
    【マチはあんなに苦しんでるのに‥私だけ‥】
    そんな事を考えては、毎夜毎夜眠れる夜を過ごし、時には涙を流した。−不眠症−。

    2006-10-27 03:13:00
  • 243:

    トキ

    ↑訂正です。
    『眠れる夜を過ごした』の部分、『眠れぬ夜を過ごした』ですm(__)m

    2006-10-27 03:18:00
  • 244:

    トキ

    −マチが居なくなる−そんな事も考えていた。サクには『縁起でもない事考えるな。お前がシッカリしなどないすんねん』と、いつも言われていた。抱きしめられ頭を撫でてもらうと安心する。
    −私がシッカリしないと−そう思えていた。だけど、夜になると不安で仕方なかった。妊娠中とゆう事もあり、情緒不安定だったんだろう。

    2006-10-27 03:21:00
  • 245:

    トキ

    それでも、マチのお見舞いに行く時は元気に振る舞った。とゆうよりは、マチの前だとそんな事は考えず普通で居れた。
    『早く赤ちゃんに会いたいな-』と笑い合いながら、2人母親になる喜びを分かち合う。
    【こんな風にいつまでも、子供の事を笑って話していけたら良いのに‥】
    それは私の、ささやかな願いだった。

    2006-10-27 03:24:00
  • 246:

    トキ

    白血病は出血すると止まらない。自然分娩だと、出血した時に相応の処置が施せないとゆう事で、マチは帝王切開での出産が決まっていた。
    『私も普通に自然分娩出来たら良かったのに-』マチはいつも言っていた。
    『同じ出産には変わりないんやから良いやんか』『だって痛い思いした方が、可愛さもそれ相応っぽくない?』『産まれてきたら、そんな事ど-でも良いくらい可愛いはずやってば!』私がそう言うと納得するマチ。

    2006-10-27 03:27:00
  • 247:

    トキ

    病院で暇を持て余すマチは、入院してから男の子の名前を紙にいろいろ書き綴り考えていた。
    ある日の日曜日、サクとユウマと一緒に病院に行った時の事。
    『名前決めた!』『マジで?教えて-や☆』
    するとマチは、考えに考えぬいたであろう、いろんな名前が書いてある1枚の紙を私達に見せてきた。

    2006-10-27 03:32:00
  • 248:

    トキ

    『これ☆』マチが指差す先を見る。
    『‥?何て読んだら良いん?』
    『結人って書いてユイト。マチとユウマを《結んでくれた人》やから』嬉しそうに話すマチ。達成感のある声色だった。
    『良いやん!良い名前や。それで決定やな☆』ユウマも誇らしい顔をしていた。

    2006-10-27 03:36:00
  • 249:

    トキ

    −‥2人を結んだ《結人》。これからもずっと結んでいく。ユイト‥−。

    2006-10-27 03:39:00
  • 250:

    名無しさん

    たくさん更新されていて嬉しいです?頑張って下さい?

    2006-10-27 16:30:00
  • 251:

    トキ

    251のレスの方、ありがと-ございます(>_

    2006-10-27 21:13:00
  • 252:

    トキ

    −6月20日−
    私はサクと、朝から病院に向かった。

    2006-10-27 21:23:00
  • 253:

    トキ

    『頑張ってな!』『うん大丈夫』
    マチの出産の日。症状も落ち着き、比較的安定しているとゆう事で、この日に帝王切開での出産が決まった。
    ユウマはかなり緊張している。ずっと険しい顔。その横では、ユウマにソックリな顔をした、ユウマのお父さんも険しい顔をしていた。

    2006-10-27 21:28:00
  • 254:

    トキ

    何年か振りにマチのお母さんにも会った。
    娘の病気、出産、孫の誕生‥だけど、いろんな葛藤があったに違いない。
    『出来る事なら代わってあげたい‥』この日に、マチのお母さんは泣きながら、娘の病気の事を私にそう言っていた。
    −たった1人のマチのお母さん−。

    2006-10-27 21:31:00
  • 255:

    トキ

    正午が過ぎた頃。皆に見守られ、手術室に入っていくマチ。少し顔を強張らせながらも『早くユイトに会いたい』と笑っていた。
    【本間にちゃんと産まれてくるん‥?マチ死んだりしやんかな‥大丈夫かな‥】
    手術が終わるまでの約40分。私はずっとそんな事を考えていた。何回も時計を見る。なかなか進まない秒針にイラつく。
    −【お願い‥無事産まれてきて‥】−

    2006-10-27 21:34:00
  • 256:

    トキ

    ふと微かに聞こえてきた赤ちゃんの泣き声に反応した私は、大きい声で言った。
    『産まれたんちゃう!?マチの赤ちゃんかな!』
    するとユウマが目を見開き動揺しながら言う。
    『本間や!俺の子供の声か!?産まれたんかな!』

    2006-10-27 21:42:00
  • 257:

    トキ

    ユウマの両親と、マチのお母さんもソワソワしている。
    すると、手術室から看護婦さんが出て来た。一目散に駆け寄ったのはユウマ。
    『うちの子産まれましたか!?マチは元気ですか!?』

    2006-10-27 21:45:00
  • 258:

    トキ

    そんなユウマの勢いに驚く看護婦さんは、優しい声で言った。
    『産まれましたよ-!今は処置してるんで、もう少し待ってて下さいね☆すぐに抱っこ出来るんで。奥さんも大丈夫ですよ』
    それを聞いたユウマは、気が抜けた様に後ろの椅子に腰掛けた。
    【産まれたんや‥良かった‥】

    2006-10-27 21:48:00
  • 259:

    トキ

    私は、そんなユウマの隣りで人目も気にせずに泣いてしまった。マチが母親になれた事が、自分の事の様に嬉しくて嬉しくて‥
    心の奥底に溜まっていた何かが一気に溢れ出す。私の頭を、何も言わず、ただサクは撫でてくれていた。

    2006-10-27 21:57:00
  • 260:

    トキ

    −もう少しだけ。もう少し‥待ってよ‥神様−。

    2006-10-27 22:03:00
  • 261:

    名無しさん

    あかん。涙止まらんー。(;艸;)

    2006-10-28 14:37:00
  • 262:

    名無しさん

    気になるぅ?頑張ってください?

    2006-10-29 19:37:00
  • 263:

    トキ

    ↑のレスくれた2人の方、ありがと-です(O_

    2006-10-29 21:02:00
  • 264:

    トキ

    待望の瞬間。その瞬間は何と表現したら良いかわからない。とにかく可愛いかった。そして、温かみがあった。
    『可愛い!猿みたいや!可愛い‥ありがとう‥マチ』そう言い、涙ながらに我が子を抱くユウマ。その姿を優しい目をして見つめるマチは綺麗だった。
    そんな2人の間に産まれたユイト‥

    2006-10-29 21:07:00
  • 265:

    トキ

    −強く握りしめている小さい掌には、どんな未来を掴み産まれてきたんだろう。
    一生懸命に開かれたその瞳には、何が映っているんだろう。
    繋がれた母と子には‥何かが見えていたのだろうか−。

    2006-10-29 21:11:00
  • 266:

    トキ

    その夜は、久しぶりに深く眠れた。
    無事出産を終え、これからは治療に専念出来る。そして病気に勝ち、マチ達は幸せに暮らしていける。そう思っていた。
    【マチ、よく耐えたな‥】

    2006-10-29 21:17:00
  • 267:

    トキ

    −翌日−
    ‥〜♪
    ユウマのけたたましい着信音で目が覚めた。

    2006-10-29 21:21:00
  • 268:

    トキ

    『ユキ!マチから連絡なかったか!?』不自然なユウマの声色に眠気が覚める。
    『?ないけど‥どしたん?』嫌な予感がした。
    『マチがおらんくなってん!病院から電話あって‥!』心臓が止まるかと思った。
    『!?何でなん!どこ行ったん!?』『わからん‥とりあえず今から仕事早退して捜す!サクちゃんも一緒に早退するって言ってるから!』

    2006-10-29 21:25:00
  • 269:

    トキ

    電話を切り、携帯と財布だけを握りしめて私は外に飛び出した。タクシ-を捕まえ、とりあえず病院に向かう。
    【マチどこ行ったん‥】
    車内で何度もマチに電話をかけたが、発信音だけが鳴り響く。何とも言えない不安に駆られながら、運転手を急かした。

    2006-10-29 21:30:00
  • 270:

    トキ

    −‥あんたは本間に勝手やな。いつから決めてたん?
    でも‥今やったら、そんなあんたの気持ち。ほんの少しは理解出来るよ。
    マチ‥−。

    2006-10-29 21:33:00
  • 271:

    トキ

    病院に着き、マチの病室へ急いだ。
    【何か手掛かりあるかも‥】そんな思いだった。
    マチの部屋に着いた私は、荷物類を漁りまくる。これでもかとゆうくらいに。すると、鞄の1番下に4つ折りにされた1枚の紙が出てきた。
    それは、私に宛てられたマチからの手紙だった。

    2006-10-29 21:37:00
  • 272:

    トキ

    私は手紙を読み終え、すぐに走って病院を出た。総合病院のエレベ-タ-なんて待ってられない。3階から階段を駆け降りる。自分が妊婦なんて事は忘れていた。
    【マチ‥待ってて‥お願い‥!】

    2006-10-29 21:40:00
  • 273:

    トキ

    病院を出ると同時にサクからの電話があった。
    『もしもし!?今病院来てんけどマチから手紙で‥!』『ユキ。すぐユウマんち来れるか?』私の声を遮る様にサクは静かに言った。
    『うんわかった!』とりあえずサクとユウマに合流しようと思い、返事をした。

    2006-10-29 21:53:00
  • 274:

    トキ

    タクシ-を捕まえ急いでもらう。再び車内で何回もマチに電話をするが鳴り響く発信音は、一向に止まらない。それが私の不安を余計に掻き立てる。嫌な予感が脳裏を横切るばかり。そんな想いと隣り合わせに、マチの無事を心の底から祈った。
    【マチ、変な事考えんといて‥】

    2006-10-29 21:56:00
  • 275:

    名無しさん

    うわっ気になるわ!待ってんで?

    2006-10-30 01:40:00
  • 276:

    名無しさん

    文章うますぎ?今一番ハマってる?

    2006-10-30 03:21:00
  • 277:

    トキ

    ↑のレスの方2人☆ありがと-ございます(^-^)
    文章うまいですか!?(>_

    2006-10-30 04:43:00
  • 278:

    トキ

    留守電になる度に切ってはかけ直し、それでもマチに繋がる事はない。
    ユウマ達の家に着き、携帯を耳に当てたまま急いで部屋に走る。思いきりドアを開け入っていった。
    リビングに近付くに連れて聞こえてきたのは、マチの携帯の着信音だった。

    2006-10-30 04:51:00
  • 279:

    トキ

    だけどマチは居ない。ユウマも居ない。
    リビングのソファ-に腰掛け沈み込んでいたのは、マチでもなくユウマでもなく、サクだった。
    私の携帯の発信音と、マチの携帯の着信音は共鳴しながら止まらない。
    −私とサクの間には、大きな大きな赤いものが広がっていた−。

    2006-10-30 04:54:00
  • 280:

    トキ

    着信音が鳴り止む。
    『‥マチは?‥ユウマは?』やっとの思いで発信を切った私は、目の前で放心しているサクに尋ねた。何も言わず、ただ哀しみの眼差しで私を見つめるサク。

    2006-10-30 04:58:00
  • 281:

    トキ

    私はしゃがみ込み、足元の"それ"に手に近付ける。
    真っ赤に染まった掌。
    もう一度サクを見る。
    『サク‥マチは?』

    2006-10-30 05:01:00
  • 282:

    トキ

    −わかってた。もうマチは居ないって事。
    ただ、その不自然な空間を誰かに説明してもらわないと理解出来なかった。あまりにも可笑しな光景を目の当たりにしすぎて。
    受け止められなかった。
    目の前で主張する"それ"を、私の脳が否定していた−。

    2006-10-30 05:04:00
  • 283:

    トキ

    サクはユックリと立ち上がる。そして私の方へ近付く。何も言わずに抱きしめられたその腕は、全てを物語っていた。
    『ユキ‥ごめん』
    微かに囁いたサクの奮えた声が、私の脳に信号を送る。そして、胸の奥から込み上げてくる何かを抑える事は出来なかった。

    2006-10-30 05:07:00
  • 284:

    トキ

    『嫌やぁぁぁ!!マチィィ!嫌ぁぁ‥!』
    私は泣き崩れた。神様を怨み、そして自分自身を憎んだ。何もしてあげられなかった無力な私を‥
    何を怨み、憎しみを抱いたとしても、マチが還ってくる事なんて有り得ないのに。
    −真っ赤に彩られた鮮やかな床は、冷たい色だった−。

    2006-10-30 05:12:00
  • 285:

    トキ

    −マチに再会出来たのは、病院の霊安室だった−。
    冷たいマチ。少し痩せた細い腕には、病魔のせいで出来た無数の痣と、その中でも一際目立つ線が1本。手首には一筋の太い切り傷があった。
    マチは左手首を動脈が切れるくらいにスッパリ1回。自殺だった。
    −出血多量死−。

    2006-10-30 20:38:00
  • 286:

    トキ

    永遠の眠りに就いたマチを目の前にして、不思議と涙は出なかった。
    『マチ‥あんた死ぬくらいやったら、手紙で[体調どない?]とか聞くの無しやわ。死んだら返事のしようが無いやん‥』独り言の様に話す私。
    こんな事を言ったって返事をしてくれるマチは、もう此処には居ない。虚しさだけが込み上げてくる。やり場の無い何とも言えない想いを胸の奥底に無理矢理押し込み、私は霊安室を後にした。

    2006-10-30 20:42:00
  • 287:

    トキ

    享年18歳。
    −マチは、早過ぎる生涯を遂げた。
    愛する伴侶と我が子を残し、独り旅立つ−。

    2006-10-30 20:45:00
  • 288:

    トキ

    胸に穴がポカンと空く。まさに、そんな気分だった。時間が過ぎていく感覚がわからない。放心したまま病院の長椅子に座っていた。
    ただ、隣りでサクと手を繋いで‥

    2006-10-30 20:49:00
  • 289:

    トキ

    何時間たっただろう。ユウマが霊安室から出てきて、私達の所に来た。
    何も言わず1枚の紙を差し出された。それは、私と同じく、ユウマへ宛てられたマチからの手紙だった。
    『俺らが部屋着いた時に、リビングのテ-ブルに置いてあってん』サクが代弁する。
    私はそれを無言で受け取ると、私へ宛てられたマチからの手紙をユウマに渡した。

    2006-10-30 21:08:00
  • 290:

    トキ

    −[ユウマへ。
    この手紙読む頃にはマチはもうユウマの横には居ないね‥最後にこんな姿見せてもてごめん。今までマチのワガママいっぱい聞いてくれてありがとう。ユイト産ませてくれてありがとう。マチの事好きでいてくれてありがとう。結婚してくれてありがとう。良い奥さん、良いお母さんになりたかったけど、こんなマチで本間にごめんな‥でも、ユウマに出逢えて良かった。ユイトがマチとユウマの子供で良かった。これから男手ひとつで苦労する時あるかもしれへんけど、あんたらが幸せになる事ちゃんと祈ってるよ。ユイトの事、頼んだで。今度また生まれ変わっても、マチの事お嫁さんにしてくれたら嬉しいな‥愛してるで、ユウマ。
    マチより。]−

    2006-10-30 21:11:00
  • 291:

    トキ

    無言の私達。
    マチは一体どんな想いでこの手紙を書いたのだろうか。死を決意した人間に、どんな葛藤があったのだろうか。
    未熟な私には、理解の域を越えていた。
    『ちょっと外出やん?』ふとサクがそう言ったので、3人で外のベンチに出た。

    2006-10-30 21:14:00
  • 292:

    トキ

    もうすっかり暗くなり夜風が気持ち良い。梅雨入りしたての雨の匂いがした。
    【そ-いえば、あと4日でマチの誕生日や‥】
    19歳の誕生日を目前に逝ってしまったマチ。いつも隣りに居たマチ。お酒と煙草をこよなく愛したマチ。クラブが大好きだったマチ。家族を愛したマチ。命を懸けて我が子を産んだマチ‥
    −此処に居るはずだった−。

    2006-10-30 21:17:00
  • 293:

    トキ

    鼻の奥がツンとしたのと同時に、涙が少し溢れた。
    サクがセブンスタ-に火を点ける。そして、ユラユラと空に模様を描き出す煙。
    懐かしい香りがした。マチが愛煙していた煙草とは銘柄が違うが、無性に懐かしい気分になった。

    2006-10-30 21:20:00
  • 294:

    トキ

    『家で血ぃ流して倒れてるあいつ見つけた時な、ユイト産まれた後にみんなで撮った写真‥握りしめてた』長い沈黙の後、ユウマが口を開いた。そして続ける。
    『さっき霊安室でその写真改めて見ててんけどさ、マチ本間に幸せそうな顔して写ってたわ』私とサクは、黙って聞いていた。
    『マチらしいよな。こ-ゆ-の‥あいつなりの決心やったんやろな。何か信じられへんけど‥でも、もうマチはおらんねんな。』そう言いながら、ユウマも煙草に火を点ける。

    2006-10-30 21:23:00
  • 295:

    トキ

    『俺、ユイトと頑張って生きていくわ。ええ男に育てるわ。大きくなったらマチの話いっぱい聞かせたる』
    私達に言ったのか、マチに言ったのか。ユウマはそう語っていた。
    それは父親としての大きな決意だったに違いない。
    −私達は、マチの冥福を祈った−。

    2006-10-30 21:29:00
  • 296:

    トキ

    それからは慌ただしかった。
    この世から人1人の命の灯が消えたとゆうのに、こんなにも事は業務的に行われるのかと思うと、何だか切なかった。
    お通夜が静かに終わり、葬儀がされる。

    2006-10-30 21:34:00
  • 297:

    トキ

    それからは慌ただしかった。
    この世から人1人の命の灯が消えたとゆうのに、こんなにも事は業務的に行われるのかと思うと、何だか切なかった。
    お通夜が静かに終わり、葬儀がされる。

    2006-10-30 21:37:00
  • 298:

    トキ

    ↑のレス、投稿されてないと思って連続でレスしたら、同じの2つになってしまいましたm(__)m

    2006-10-30 21:41:00
  • 299:

    トキ

    棺桶に入れられたマチは、綺麗に薄化粧をされ、私が知っている彼女とは別人の様に見えた。
    マチが自ら命を絶った時に握りしめていた写真、ユウマとの結婚指輪、そしてマチとユイトを繋いでいた臍の緒を一緒に入れ、棺桶には蓋がされる。

    2006-10-30 21:44:00
  • 300:

    トキ

    火葬場に着き、−今からマチが焼かれてしまう−。そう思うと、いたたまれない気持ちでいっぱいになった。
    私がこれから歩んで行かなければならない何十年かの人生の中で、マチと笑い並んで歩ける事は、もう無い。
    火葬されている短い時間の間、マチと過ごした数々の思い出が脳裏を横切っていく。

    2006-10-30 21:47:00
  • 301:

    トキ

    −ユウマに抱かれたユイトは、何かをわかっていたのだろうか−。
    白い粉に姿を変えたマチは、あまりにも儚かった。

    2006-10-30 21:51:00
  • 302:

    トキ

    『ユキちゃん‥!』葬儀が終わり、マチのお母さんが近付いてきた。
    『ありがとう‥ずっとマチの側に居てあげてくれて‥私は母親やのに、あの子に何もしてやれてなかったかもしれない‥』たった1人の娘を亡くしたマチのお母さんは、泣き腫らした目をして私にそう言った。
    『おばちゃん‥マチはおばちゃんに感謝してるよ。産んでくれてありがとうって思ってるはず。母親の愛情知らん子が、あんな風に笑われへん。命懸けで子供産んだりなんか出来ひんよ。』私は真っ直ぐにそう話した。

    2006-10-30 21:55:00
  • 303:

    トキ

    『ありがとう‥ユキちゃん、ありがとう‥』マチのお母さんは、何かがふっ切れた様に私の目の前で泣いていた。
    マチからの手紙であろう紙を握りしめながら。

    2006-10-30 21:58:00
  • 304:

    トキ

    人間の終わりとゆうものは、実に儚い。けれど、彼女は笑っていた。
    生きながらにして死んでいったマチ。
    彼女の生涯は輝いて見えた。
    皆がそれぞれの想いを抱え、マチを天国へと見送った初夏の夕暮れ。

    2006-10-30 22:03:00
  • 305:

    トキ

    −‥これが運命だったとゆうのなら、その運命を変える鍵はマチ自身が持っていたのだろうか‥−。
    私の掌には銀色のジッポが2つ、光っていた。

    2006-10-30 22:06:00
  • 306:

    夢羽?

    凄く切なくて感情移入してしまいました?これからも頑張って下さい??

    2006-10-30 22:38:00
  • 307:

    名無しさん

    待ってます☆

    2006-11-01 21:10:00
  • 308:

    トキ

    ↑のレスくれた2人の方、ありがと-ございます(゚∀゚*)
    夢羽チャン、お嬢のとこで発見したよ☆
    今から少し更新しますm(__)m

    2006-11-02 02:39:00
  • 309:

    トキ

    −マチの死から1か月−。
    季節はもう本格的な夏に入り、街のアスファルトはギリギラしていた。
    マチが居なくても毎朝を迎える日常。悲しみや虚しさを感じながらも、必ずお腹は減る。
    "生きている"とゆう事に生々しさを覚えた。

    2006-11-02 02:42:00
  • 310:

    トキ

    私は、自分の母を病気で亡くしてからの10年間、父との間には微妙な確執があった。
    仕事で忙しい父とは、どんどん距離が出来ていき、父もまた、そんな私の心境の変化を微妙に感じとっていたんだろう。
    サクとの結婚、妊娠。それらを報告した時も何も言わず、ただ『娘を宜しく頼みます』と、サクとサクのお父さんに深々と頭を下げていた。そんな父を目の前にしても、父との冷たい隙間からは目を逸らしていた。

    2006-11-02 02:45:00
  • 311:

    トキ

    そんな中、マチが居なくなり仕事をしながらユイトの世話を頑張り奮闘するユウマ。そんなユウマの姿を間近で見ていた私は、不思議と父との間に変化があった。
    きっと、自分の父とユウマを重ねていたんだろう。
    【お父さんも苦労してんな。男手ひとつで必死やったんやな‥】初めて素直にそう思えた。
    皮肉にも、マチの死がきっかけになり、そんな事に気付けた。

    2006-11-02 02:49:00
  • 312:

    トキ

    私は妊娠5か月を無事迎え、もうすぐ6か月目に入ろうとしていた。そんなある日。仕事から帰って来たサクと夕飯を食べ終え、横になりテレビを見ていた時、お腹を中からポコっと蹴られた。
    『サク!今赤ちゃんお腹蹴った!』『マジで!?』そう言いながら私のお腹に手を当てるサク。
    『あっ!今また蹴った!』『本間や!すげぇ‥』2人で初めての胎動に感動した。
    【マチもこんな風にユウマと喜んだんかな‥】そんな事を考え、優しい気持ちになれた。

    2006-11-02 02:52:00
  • 313:

    トキ

    それから数カ月。マチの居なくなった日々は寂しかったが、幸い妊娠生活は順調なものだった。
    専業主婦も定着し、暇があれば作った事のない料理に挑戦する。マチが居なくなってからとゆうもの、時間の使い方がわからなくなり、結局はそれが私の趣味になっていた。

    2006-11-02 02:55:00
  • 314:

    トキ

    時には、あらゆる理由で独り身子有りが共通点の3人、実家の父とサクのお父さん、そしてユウマにおすそ分けをしたりしていた。

    2006-11-02 03:00:00
  • 315:

    トキ

    暑さが少しずつ落ち着きだした9月。妊娠8か月の時点で赤ちゃんの性別が判明。その日の検診の帰り道は、いつもより浮かれ気分だった。
    直ぐにサクにメ-ルで報告する私。
    [赤ちゃん、女の子やって!]−送信−
    すると、直ぐさまサクの着信音が鳴る。

    2006-11-02 03:04:00
  • 316:

    トキ

    『はいよ-』『女の子ってわかったん!?』『うん。ほぼ確実やってさ』私はテクテク歩きながら話す。
    『そっか-!女の子か!名前考えないとな!服もそろそろ買い揃えないと!あ-早く会いたいなぁ』お腹の中の我が子の新しい発見に興奮気味の父親サク。そんなサクが妙に可笑しくて笑ってしまった。

    2006-11-02 03:07:00
  • 317:

    トキ

    『何笑ってん?』『いや、何も。親馬鹿やな-って(笑)』『‥何かあれやな。ユキやっとちゃんと笑ってくれたな!』サクのその発言に私は驚いた。
    『何が?』『‥マチ居なくなってからは、ユキあんまり笑ってなかったから』『‥‥‥』ふと思い返す自分。
    【笑ってなかったんや‥】

    2006-11-02 03:10:00
  • 318:

    トキ

    『ごめんな‥』何となくサクに申し訳なく思った私はそう言った。
    『気にしてないから謝んなよ。気持ちは充分わかってるし‥辛いと思う事は否定したらあかんでユキ。俺と赤ちゃん、ユウマとかも側に居るんやから』『‥うん』
    −ありがとう−何故か口に出しては言えなかったけれど、サクには本当に救われた。

    2006-11-02 03:16:00
  • 319:

    トキ

    サクが居たから‥お腹の赤ちゃんが居たからこそ、私は正気を保てていた。ひとつでも何かが崩れていたら、私は私じゃなかった。
    けれど、この時の私はそんな重みにすら、何も気付けていなかったのかもしれない。

    2006-11-02 03:21:00
  • 320:

    トキ

    私のお腹は、みるみるうちに大きくなっていく。そんなお腹を、サクはいつも優しく触っていた。
    −サクが居たから‥−。

    2006-11-02 03:24:00
  • 321:

    夢羽?

    わぁい?更新されてるぅ?あはは?お嬢の所で発見されたかぁ?トキちゃん無理せず頑張って下さいねっ?

    2006-11-02 09:35:00
  • 322:

    トキ

    夢羽ちゃん、ありがとう(^-^)
    今から更新しますm(__)m

    2006-11-06 08:59:00
  • 323:

    トキ

    風の涼しい秋が終わりを向かえ、そろそろ本格的にコ-トが手放せない寒さが到来した師走の季節。
    予定日よりも少し遅れて、私の体を鈍痛が襲った。
    【陣痛かも‥やっと陣痛きたかも!】
    正午を過ぎた頃、私は病院に電話をかけた。すぐに入院準備を持って病院に来なさいと言われ、タクシ-を呼び病院に向かう用意をする。

    2006-11-06 09:02:00
  • 324:

    トキ

    重たい体を引きずる様に自宅を出てタクシ-に乗り込み、病院へ急いでもらった。車内で直ぐさまサクに電話をする。
    『陣痛きた‥痛い』『マジで!?仕事早く終わらせて病院向かうわ!大丈夫か?すぐ行くから頑張れよ!』『うん、大丈夫。だんだん痛み強くなってきたけど‥頑張るわ(笑)』
    そんな会話をして電話を切った。

    2006-11-06 09:08:00
  • 325:

    トキ

    もうすぐ我が子に対面出来ると思うと嬉しいはずなのに、この時の私は恐怖と不安に駆られるばかりだった。
    強まる陣痛。体験した事の無い経験をこれから迎えるであろう想像。
    それらが私の妄想を掻き立てる。

    2006-11-06 09:12:00
  • 326:

    トキ

    病院に着いた私は、産婦人科へと足を運んだ。この時すでに10分間隔の陣痛の波が私を襲っていた。
    『まだまだやね-!子宮口もまだ全開じゃないし、陣痛辛いと思うけどベッドで横なっててね-』
    内診を終えた先生は、用事をしながら私に言う。
    『いつ産まれるんですか‥?』『夕方には全開なってるやろうから、分娩台に上がるのはそれからやよ-』

    2006-11-06 09:15:00
  • 327:

    トキ

    【マジで‥すでにかなり痛いんですけど】
    今までにない痛みにゾッとした。
    ベッドに横になり痛みを逃がす様に体制を変えながら、時間が過ぎるのを待つ。
    酷くなる陣痛。徐々に腰の方にも痛みが広がっていき、吐き気までしてくる。痛みの波が段々と狭まっていき汗も出てきた。

    2006-11-06 10:52:00
  • 328:

    トキ

    −『生理痛を100倍にした痛さって感じ』−
    マチが言っていた事を思い出す。まさにその通りだと思った。
    時間は3時。
    【まだ2時間ちょいしか過ぎてないやん‥】そんな事を考えながら痛みに耐えていると、看護婦さんと先生が来た。

    2006-11-06 10:55:00
  • 329:

    トキ

    それから分娩台に乗り、破水するのを待つ。その間にも陣痛の波は止まる事なく襲ってくる。
    『旦那さん来はったよ-』時計の針が4時を過ぎた頃、看護婦さんと共に一緒に入ってきたサク。
    『ユキ大丈夫か?』『大丈夫じゃない‥痛い。痛すぎる』私は分娩台で疼くまりながら言う。
    『も-すぐ産まれるんやろ?頑張って!』『立ち合いするん?グロいって聞いたし、やめといた方が良いんちゃう?(笑)』『大丈夫!産まれる瞬間見たいし一緒に頑張るから』『そっか‥なんしか痛いわ』そんな会話をしている間に、出血と破水をしたらしく先生が来た。

    2006-11-06 11:03:00
  • 330:

    トキ

    1回‥2回‥3回‥4回‥サクの手をきつくきつく握りイキんだ。
    【いい加減出てきてよ‥!】
    そんな事を思った瞬間。ズルっと生々しい何かが、私の中から滑る様に出てきた。
    元気な泣き声と共に‥

    2006-11-06 11:10:00
  • 331:

    トキ

    −12月3日 午後5時10分−
    『産まれたよ-!女の子!元気に泣いてるわ!』先生の方に目を向けると、真っ赤な顔をしてクシャクシャに泣く我が子の姿がそこに在った。
    『ユキ!産まれたで!』『うん‥産まれた』
    一瞬の出来事の様に感じた。小さい体で、泣く事だけしか出来ないけれど、"自分がそこに居る"とゆう事を一生懸命に主張している。

    2006-11-06 11:14:00
  • 332:

    トキ

    初めて抱く我が子。腕の中に居る約3000グラムは、小さくてフニャフニャで、だけど凄く重みのあるものだった。
    『ユキ、ありがとう‥可愛いなぁ。ありがとう‥!』我が子を抱き、涙を流しながらそう言うサクを見て、本当にこの人と一緒になって良かったと心底思った。
    今までに味わった事の無い達成感と疲労感、それに、何よりも幸福感でいっぱいだった。

    2006-11-06 11:17:00
  • 333:

    トキ

    『名前ど-する?』『ん-‥何にしよ』
    新生児室で眠る我が子を眺めるサクと私。
    『‥サチは‥?』『サチ?』『うん幸せの"幸"って書いてサチ』何気に思いついた私が言った。
    −『響きがマチと似てるな(笑)良いやん!幸せになれる様にサチって事にしよか☆』−

    2006-11-06 11:20:00
  • 334:

    トキ

    −‥幸せが訪れる様に。幸せを運べる様に。
    幸せな人生を歩める様に。
    一生懸命に産まれてきた貴女へ、私達からの最初のプレゼント‥
    サチ‥−。

    2006-11-06 11:23:00
  • 335:

    トキ

    後産が辛いものの、サチを出産後は幸せだった。本当にサチが幸福を運んでくれたとさえ思うくらいに。
    皆に祝福され、−おめでとう−とゆう言葉がどれだけ素敵なものか、身に染みて解った。

    2006-11-07 03:14:00
  • 336:

    トキ

    初めての抱っこ、初めての授乳、初めてのオムツ交換。それらは本当に新鮮で、おぼつかないながらにも必死で世話をした。
    体調は、母子共々順調で5日後に退院出来る事になった。

    2006-11-07 03:17:00
  • 337:

    トキ

    『ユイト大きくなったなぁ!』お見舞いに来てくれていたユウマに言った。抱かれているユイトは、機嫌良さそうにニコニコ笑っている。
    『まだ半年しか経ってないけど、やっぱ新生児と比べたら大きいなぁ!』息子の成長を嬉しそうに話すユウマ。そんなユウマを横目に、愛娘にメロメロのサク。親馬鹿な父親2人を目の前に、何だかほほえましかった。

    2006-11-07 03:20:00
  • 338:

    トキ

    −マチ、産まれたで。ちゃんと祈ってくれてた?あんたの息子も元気に成長してるわ−
    そんな事を考えていた。

    2006-11-07 03:24:00
  • 339:

    トキ

    想像もしていなかった。この時は−。
    さらなる事態が私を狂わす事になるなんて‥
    もう誰も失いたくない。誰も傷つけたくない。ただ、それだけ。それだけなのに‥私には、今を生きる事しか出来ないのに−。
    この小さな世界で、目に見えるものさえも守りぬく事が難しいとしたならば、一体何を信じれば良いのだろうか。

    2006-11-07 03:27:00
  • 340:

    夢羽?

    待ってまぁ?ス??

    2006-11-10 23:01:00
  • 341:

    名無しさん

    誕生日一緒ゃぁ?

    2006-11-11 00:54:00
  • 342:

    名無しさん

    あげ??

    2006-11-16 01:24:00
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